じ【辞】 例文一覧 30件

  1. ・・・そこで、彼は、わざと重々しい調子で、卑下のを述べながら、巧にその方向を転換しようとした。「手前たちの忠義をお褒め下さるのは難有いが、手前一人の量見では、お恥しい方が先に立ちます。」 こう云って、一座を眺めながら、「何故かと申し・・・<芥川竜之介「或日の大石内蔵助」 青空文庫>
  2. ・・・わが私の餞別ならず、里見殿の賜ものなるに、わで納め給えと言う。」――僕はそこを読みながら、おととい届いた原稿料の一枚四十銭だったのを思い出した。僕等は二人ともこの七月に大学の英文科を卒業していた。従って衣食の計を立てることは僕等の目前に迫・・・<芥川竜之介「海のほとり」 青空文庫>
  3. ・・・そうしてその人間は、迂余曲折をきわめたしちめんどうな句の間に、やはり人間らしく苦しんだりもがいたりしていた。だから樗牛は、うそつきだったわけでもなんでもない。ただ中学生だった自分の眼が、この樗牛の裸の姿をつかまえそくなっただけである。自分・・・<芥川竜之介「樗牛の事」 青空文庫>
  4. ・・・定的の内容が、その後ようやく、第一義慾とか、人生批評とか、主観の権威とか、自然主義中の浪漫的分子とかいう言葉によって表さるる活動的、自己主張的の内容に変ってきたことや、荷風氏が自然主義者によって推讃のを贈られたことや、今度また「自己主張の・・・<石川啄木「時代閉塞の現状」 青空文庫>
  5. ・・・て幼少より養育されて、母とも思う叔母に会して、永き離別を惜まんため、朝来ここに来りおり、聞くこともはた謂うことも、永き夏の日に尽きざるに、帰営の時刻迫りたれば、謙三郎は、ひしひしと、戎衣を装い、まさにし去らんとして躊躇しつ。 書斎に品・・・<泉鏡花「琵琶伝」 青空文庫>
  6. ・・・そうかと思うと一方には、代がわりした『毎日新聞』の翌々日に載る沼南署名の訣別ののゲラ刷を封入した自筆の手紙を友人に配っている。何人に配ったか知らぬが、僅に数回の面識しかない浅い交際の私の許へまで遣したのを見るとかなり多数の知人に配ったらし・・・<内田魯庵「三十年前の島田沼南」 青空文庫>
  7.  十一月十五日栃木県氏家在狭間田に開かれたる聖書研究会に於て述べし講演の草稿。 聖書は来世の希望と恐怖とを背景として読まなければ了解らない、聖書を単に道徳の書と見て其言は意味を為さない、聖書は旧約と新約とに分れて神・・・<内村鑑三「聖書の読方」 青空文庫>
  8. ・・・しかし、若し、世界が現状のまゝの行程を辿るかぎり、いかに巧言令の軍縮会議が幾たび催されたればとて、急転直下の運命から免れべくもない。こう思って、何も知らずに、無心に遊びつゝある子供等の顔を見る時、覚えず慄然たらざるを得ないのであります。・・・<小川未明「男の子を見るたびに「戦争」について考えます」 青空文庫>
  9. ・・・と腹立しそうに言ったが、そのも私には分らなかった。八 その翌朝、同宿の者が皆出払うのを待って、銭占屋は私に向って、「ねえ君、妙な縁でこうして君と心安くしたが、私あ今日向地へ渡ろうと思うからね、これでいよいよお別れだ。お・・・<小栗風葉「世間師」 青空文庫>
  10. ・・・、もう露西亜も糞もあったものじゃねえ、日本の猟船はドシドシコマンドルスキー辺へもやって来るという始末で、島から救い出されると、俺はすぐその船で今日まで稼いで来たんだが……考えて見りゃ運がよかったんだ。も何にも分らねえ髭ムクチャの土人の中で・・・<小栗風葉「深川女房」 青空文庫>
  11. ・・・過去において明らかにかような名を用いたのは、私の知る限りでは、Professor W. H. Hudson のルーソー論に Naturalism in Life と言っているのなどがその最近の例である。これは言うまでもなくルーソーの「自然・・・<島村抱月「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」 青空文庫>
  12. ・・・一友人から、銅像演技という讃を贈られた。恰好の舞台がないのである。舞台を踏み抜いてしまう。野外劇場はどうか。 俳優で言えば、彦三郎、などと、訪客を大いに笑わせて、さてまた、小声で呟くことには、「悪魔はひとりすすり泣く。」この男、なかな・・・<太宰治「一日の労苦」 青空文庫>
  13. ・・・たいへんなお世である。男爵は言い終って、首筋の汗をそっとハンケチで拭った。「そんなでもないさ。」相手の男は、そう言って、ひひと卑屈に笑った。「うちの撮影所、見たいか?」 男爵は、もう、見たくなかった。「ぜひとも。」と力こめてた・・・<太宰治「花燭」 青空文庫>
  14. ・・・君は、以後、讃を素直に受けとる修行をしなければいけない。吉田生。」「はじめて、手紙を差上げる無礼、何卒お許し下さい。お蔭様で、私たちの雑誌、『春服』も第八号をまた出せるようになりました。最近、同人に少しも手紙を書かないので連中の気持は・・・<太宰治「虚構の春」 青空文庫>
  15. ・・・著名の学者の筆になる「蠅を憎むの」が現代的科学的修に飾られて、しばしばジャーナリズムをにぎわした。 しかし蠅を取りつくすことはほとんど不可能に近いばかりでなく、これを絶滅すると同時に、蛆もこの世界から姿を消す、するとそこらの物陰にい・・・<寺田寅彦「蛆の効用」 青空文庫>
  16. ・・・ ただ、見馴れない吾々にはどうもあまりひねり過ぎたと思われるような、あるいは無用に誇張したと思われるような句が目に立って、却って感興をそがれるような気のするのもありました。一体にもう少し修法を練る余地があるのではないかと思われました・・・<寺田寅彦「御返事(石原純君へ)」 青空文庫>
  17. ・・・ 陶工が陶土およびその採掘者に対して感謝のを述べる場合は少ない。これは不都合なようにも思われるが、よく考えてみると、名陶工にはだれでもはなれないが、土を掘ることはたいていだれにでもできるからであろう。 独創力のない学生が、独創力の・・・<寺田寅彦「空想日録」 青空文庫>
  18. ・・・一層遠く柔に聞えて来る鐘の声は、鈴木春信の古き版画の色と線とから感じられるような、疲労と倦怠とを思わせるが、これに反して秋も末近く、一宵ごとにその力を増すような西風に、とぎれて聞える鐘の声は屈原が『楚』にもたとえたい。 昭和七年の夏よ・・・<永井荷風「鐘の声」 青空文庫>
  19. ・・・知人の婚礼にも葬式にも行かないので、歯の浮くような祝や弔を傾聴する苦痛を知らない。雅叙園に行ったこともなければ洋楽入の長唄を耳にしたこともない。これは偏に鰥居の賜だといわなければならない。        ○ 森鴎外先生が・・・<永井荷風「西瓜」 青空文庫>
  20. ・・・これは虚礼のではない。十年前であったなら、さほどまでにうれしいとは思わなかったかも知れない。しかし今は時勢に鑑みまた自分の衰老を省みて、今なおわたくしの旧著を精読して批判の労を厭わない人があるかと思えば満腔唯感謝の情を覚ゆるばかりである。・・・<永井荷風「正宗谷崎両氏の批評に答う」 青空文庫>
  21. ・・・新しきを嫌わず、古きをせず、人の見知らぬ盾あらば貸し玉え」 老人ははたと手を拍つ。「望める盾を貸し申そう。――長男チアーは去ぬる騎士の闘技に足を痛めて今なお蓐を離れず。その時彼が持ちたるは白地に赤く十字架を染めたる盾なり。ただの一度の・・・<夏目漱石「薤露行」 青空文庫>
  22. ・・・私が十五日の晩に、先生の家をして帰ろうとした時、自分は今日本を去るに臨んで、ただ簡単に自分の朋友、ことに自分の指導を受けた学生に、「さようならごきげんよう」という一句を残して行きたいから、それを朝日新聞に書いてくれないかと頼まれた。先生は・・・<夏目漱石「ケーベル先生の告別」 青空文庫>
  23. ・・・やがて宴が始まってデザート・コースに入るや、停年教授の前に坐っていた一教授が立って、明晰なる口調で慰労のを述べた。停年教授はと見ていると、彼は見掛によらぬ羞かみやと見えて、立つて何だか謝らしいことを述べたが、口籠ってよく分らなかった。宴・・・<西田幾多郎「或教授の退職の辞」 青空文庫>
  24. ・・・亡人即ち今日の内君にして、禍源は一男子の悪徳に由来すること明々白々なれば、苟も内を治むる内君にして夫の不行跡を制止すること能わざるは、自身固有の権利を放棄して其天職を空うする者なりと言わるゝも、弁解のはある可らず。嫉妬云々の俗評を憚りて萎・・・<福沢諭吉「新女大学」 青空文庫>
  25. ・・・無心の小児が父を共にして母を異にするの理由を問い、隣家には父母二人に限りて吾が家に一父二、三母あるは如何などと、不審を起こして詰問に及ぶときは、さすが鉄面皮の乃父も答うるになく、ただ黙して冷笑するか顧みて他を言うのほかなし。即ちその身の弱・・・<福沢諭吉「日本男子論」 青空文庫>
  26. ・・・蕪村は徂徠ら修派の主張する、文は漢以上、詩は唐以上と言えるがごとき僻説には同意するものにあらざるべけれど、唐以上の詩をもって粋の粋となしたること疑いあらじ。蕪村が書ける春泥集の序の中に曰く、彼も知らず、我も知らず、自然に化して俗を・・・<正岡子規「俳人蕪村」 青空文庫>
  27. ・・・これ大祭開式の、最後糟粕の部分である。祭司次長ウィリアム・タッピング祭司長ヘンリー・デビスに代ってこれを述べる。」 拍手は天幕もひるがえるばかり、この間デビスはただよろよろと感激して頭をふるばかりでありました。 その拍手の中でデビ・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」 青空文庫>
  28. ・・・ 四郎は一寸お儀をして云いました。「この間は失敬。それから今晩はありがとう。このお餅をみなさんであがって下さい。」 狐の学校生徒はみんなこっちを見ています。 紺三郎は胸を一杯に張ってすまして餅を受けとりました。「これは・・・<宮沢賢治「雪渡り」 青空文庫>
  29. ・・・とかいう句は時利あらず、いかような羽目にたちいたろうともわがこころに愧じるところなく、確信ゆるがずという文句である。「あら尊と音なく散りし桜花」という東條英機の芭蕉もじりの発句には、彼の変ることない英雄首領のジェスチュアがうかがわれる。二・・・<宮本百合子「新しい潮」 青空文庫>
  30. ・・・友情という抽象名で描かれてゆくものでなくて、互の間の日々に生きこめてゆかれるものなのである。 異性の間の友情というと、何かそこに特別なものが待たれているように思われなくもない。異性の間では、一方が男であり一方が女であるのだから、そ・・・<宮本百合子「異性の間の友情」 青空文庫>

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