1. 五十音図ハ行の第4音。咽頭の無声摩擦子音[h]と母音[e]とから成る音節。[he]

  1. 平仮名「へ」、片仮名「ヘ」は、ともに「部」の旁 (つくり) 「阝」の草体から。

[補説](1) 「へ」は、古くは両唇の無声摩擦子音[Φ]と母音[e]とから成る音節[Φe]であり、さらに奈良時代以前には[pe]であったかともいわれる。室町時代末までは[Φe]であったが、江戸時代に入り、[he]となった。(2) 「へ」は、平安時代半ば以後、語中語尾では一般に[we][je]と混同し、室町時代末には[je]と発音されたが、のちさらに[e]と発音されるようになった。これらは歴史的仮名遣いでは「へ」と書くが、現代仮名遣いでは、助詞「へ」以外はすべて「え」と書く。

洋楽音名の一で、日本音名の第4音。

上。表面。

「いかにあらむ日の時にかも声知らむ人の膝の—我が枕かむ」〈・八一〇〉

民の家。また、それを数える語。

「秦人 (はたひと) の—の数、惣 (す) べて七千五十三—」〈欽明紀〉

[名]
  1. そのものにごく近い場所、また、それへの方向を示す。近く。ほとり。あたり。

    1. 「大君の—にこそ死なめ」〈続紀・聖武・歌謡

  1. (多く「」と対句になって)海のほとり。うみべ。

    1. 「沖見ればとゐ波立ち—見れば白波さわく」〈・二二〇〉

[接尾]名詞、動詞の連体形の下に付く。普通「え」と発音され、また濁音化して「べ」ともなる。
  1. その辺り、その方向などの意を表す。「片 (かた) —」「行 (ゆ) く—」「海— (うみべ) 」「水— (みずべ) 」

  1. その頃の意を表す。「去 (い) にし—」「春— (はるべ) 」「夕— (ゆうべ) 」

  1. 肛門 (こうもん) から放出されるガス。飲み込んだ空気や、腸の内容物の発酵で生じる。おなら。「—をひる」

  1. 値打ちのないもの、つまらぬもののたとえ。「—にもならない」

酒などを入れる容器。瓶 (かめ) 。

「—二十ばかり据ゑて」〈宇津保・吹上上〉

《「いへ」の音変化》いえ。人家

「春の野に鳴くやうぐひすなつけむと我が—の園に梅が花咲く」〈・八三七〉

船の先端部。船首。へさき。みよし。

「艫 (とも) に—にま櫂しじ貫きい漕ぎつつ」〈・四二五四〉

かまど。へっつい。

「慎 (ゆめ) 、よもつ—ものを莫 (な) 食ひそ」〈霊異記・中〉

[感]

  1. 応答のとき、軽くへりくだった気持ちを示して発する声。「—、恐れ入ります」

  1. こばかにする気持ちを表すときに発する声。ふん。へん。「—、つまらないことを言うね」

[格助]現在では「え」と発音する》名詞に付く。
  1. 動作作用移動進行する目標地点・方向を表す。…の方向に向かって。…の方へ。「西—向かう」

    1. 「今日 (けふ) 、車、京—とりにやる」〈土佐

  1. 動作作用の行われる場所・帰着点を表す。…に。「庭—物を捨てるな」「父も母も留守のところ—訪ねてきた」

    1. 「十月十四日、関東下着 (げちゃく) 」〈平家・八〉

  1. 動作作用の向けられる相手対象を表す。…に対して。…に。「父—送った手紙」「お母さん—よろしくお伝えください」

    1. 「われらが主の太政入道殿—、いかで参らであるべき」〈平家・二〉

[補説]「あたり」の意を表す名詞「辺 (へ) 」から転じたもの。本来は「に」が場所動作作用の帰着点を静止的に指示するのに対し、「へ」は、動作作用の向かう目標を移動的に指示する傾向が強い。しかし、平安時代末ごろから、23用法が生まれ、「に」との境界がしだいにあいまいになる。
goo辞書は無料で使える辞書・辞典の検索サービスです。1999年にポータルサイト初の辞書サービスとして提供を開始しました。出版社による信頼性の高い語学辞典(国語辞書、英和辞書、和英辞書、類語辞書、四字熟語、漢字など)と多種多様な専門用語集を配信しています。すべての辞書をまとめて検索する「横断検索」と特定の辞書を検索する「個別検索」が可能です。国語辞書ではニュース記事や青空文庫での言葉の使用例が確認でき、使い方が分からない時に便利です。

gooIDでログインするとブックマーク機能がご利用いただけます。保存しておきたい言葉を200件まで登録できます。