[動ラ五(四)]《上一段活用動詞「まいる」に「い(入)る」の付いた「まいいる」の音変化で、貴人のもとに参入する意が原義
  1. 行く」の謙譲語で、行く先方を敬う。

    1. ㋐神仏に詣でる。参詣する。「墓に—・る」

    2. ㋑貴人のもとや貴所参上する。宮中出仕する。入内する。⇔罷出 (まかず) 

      「暁に御迎へに—・るべきよし申してなむまかで侍りぬる」〈夕顔

  1. 主として会話に用い、聞き手に対し、「行く」「来る」を、へりくだる気持ちをこめて丁重表現する丁寧語。

    1. ㋐「行く・来る」の先方が聞き手のところの場合には、その先方を敬いながら、「行く・来る」を丁重にいう。「明日、お宅へ—・ります」「御当地に—・って、はじめて知りました」

    2. ㋑単に「行く・来る」を丁重にいう場合。このときにも謙譲の気持ちは残るので、敬うべき人の動作には用いない。現在、「先生もまいられますか」のような言い方は適切でないとされる。「私の家に弟が—・るはずです」「列車が—・ります」「雨が降って—・りました」

  1. 2のへりくだる気持ちが失せて、「行く」を重々しくいう。「そう簡単には—・らぬぞ」

    1. 「日本の王政維新のように旨く—・るか—・らぬか」〈福沢福翁自伝

相手優位を占められる、屈するの意に変化したもの。
  1. 負ける。降参する。「どうだ、—・ったか」

  1. 閉口する。よわる。困る。「今年の暑さには—・った」

  1. 死ぬ。やや、卑しめて言う。「とうとうあいつも—・ったか」

  1. 異性などに心を奪われる。「彼女に—・っている」

貴人のもとへ物などが行くところから、差し上げる意に変化したもの。
  1. 貴人・上位者に対する下位者の行動についての謙譲語。

    1. ㋐貴人に対して何かをさし上げる。献上する。

      親王に、うまの頭 (かみ) 大御酒 (おほみき) —・る」〈伊勢・八二〉

    2. ㋑貴人のために何かをしてさし上げる。奉仕する。

      「(源氏ノタメニ)加持など—・るほど」〈若紫

    3. ㋒上位者に対して、この手紙をさし上げますの意で、男女ともに手紙脇付に用いる語。終止形だけが用いられる。

      「母様—・る冠者丸と書てあり」〈浄・嫗山姥

  1. 奉仕を受ける貴人の動作そのものを表すように変化した尊敬語。

    1. ㋐「食う」「飲む」の尊敬語。召し上がる。

      「心地もまことに苦しければ、ものもつゆばかり—・らず」〈・総角〉

    2. ㋑「する」の尊敬語。なさる。

      「大殿油短く—・りて御覧ずるに」〈梅枝

[可能]まいれる
[動ワ上一]貴人・高貴の人のもとへ行く意の謙譲語。参上する。上る。
  • 「岩根踏み山越え野行き都辺 (へ) に—・ゐしわが背を」〈・四一一六〉
[補説]上代に、連用形「まゐ」のほか、「まいく」「まいず」「まいのぼる」など複合動詞の一部としての例がみられるだけなので、終止形が「まう」のワ行上二段活用とする説もある。

出典:青空文庫

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