ばいどく【梅毒】

【英】Syphilis, Lues

どんな病気か

 トレポネーマパリダという細菌の感染でおこる病気です。治療しないで放置すると、十数年かけて徐々に進行し、全身の臓器がおかされます。
 梅毒にかかっている人との性行為によって、皮膚や粘膜(ねんまく)の小さな傷からトレポネーマが侵入して感染します。
 梅毒にかかっている人の血液を輸血(ゆけつ)されて感染したり(輸血梅毒)、医療従事者が、梅毒にかかっている人の血液に誤って触れて感染したり、トレポネーマを含む体液のついた衣類、食器、カミソリなどに触れて感染することもありますが、これはまれです。
 また、梅毒にかかっている女性が妊娠(にんしん)すると、おなかの赤ちゃんに先天梅毒(せんてんばいどく)(コラム「先天梅毒」)がおこります。

症状

 梅毒は、症状が現われたり、消えたりしながら、長期間かけて進行する病気で、経過は、第1期~第4期に分けられています(図「梅毒の経過」)。

第1期

(感染後3か月まで)
 トレポネーマが感染しても、約3週間は症状が現われずに経過します(第1潜伏期)。
 感染後3週間たつと、トレポネーマが侵入した部分(おもに陰部、ときにくちびる・乳房・手指など)に直径数mmのかたいしこり(初期硬結(こうけつ))が1個でき、ついで、付近のリンパ節(せつ)(初期硬結が陰部にできれば鼠径(そけい)リンパ節(せつ)、乳房にできれば腋下(えきか)リンパ節(せつ))がかたく腫(は)れますが、痛みはありません(無痛性横痃(おうげん))。
 初期硬結は表面がただれて潰瘍(かいよう)になり、硬性下疳(こうせいげかん)という状態になります。このただれた面にはトリポネーマが多数存在し、触れた人に感染します。
 以上の病変は、治療をしなくても数週間以内に自然に治り、第2潜伏期に入りますが、この間にトリポネーマは血流にのって全身に広がります。

第2期

(感染後3か月~3年まで)
 感染後3か月たつと、全身に広がったトレポネーマのため、微熱、全身倦怠感(ぜんしんけんたいかん)、後頭部の虫くい状の脱毛(だつもう)などが生じ、全身のリンパ節が腫れ、発疹(ほっしん)(梅毒疹(ばいどくしん))が現われます。
 梅毒疹は、最初は小指の先ほどの大きさで、淡紅色をした斑(はん)が全身にまばらに現われます。これを梅毒性バラ疹(しん)といい、治療しなくても数か月で消え、第2潜伏期に入ります。
 数か月すると、皮膚から盛り上がったぶつぶつ(梅毒性丘疹(きゅうしん))が出たり、膿(うみ)をもったぶつぶつ(梅毒性膿疱(のうほう))が出たりといったぐあいに、どちらかの発疹が3~6か月の間隔で出没をくり返します。
 そして、約3年の間には、発疹は小型のものから大型のものに変化し、全身にちらばって出ていたものが、からだの一部だけにかぎって現われるようになります。
 また、肛門(こうもん)の周囲、陰唇(いんしん)、乳房の下などの皮膚が湿気をおびる部位に梅毒性丘疹ができると、平らに盛り上がってかたく、表面がふやけた結節になります(扁平(へんぺい)コンジローマ)。
 口腔(こうくう)の粘膜に大豆(だいず)ほどの大きさの乳白色のややかたい斑(はん)(乳白斑(にゅうはくはん))ができたり、咽頭(いんとう)の扁桃(へんとう)のあたりに潰瘍(梅毒性アンギーナ)ができたりします。これらの梅毒疹は、どれもかゆみも痛みもなく、出る部位も人によって一定ではありません。
 梅毒疹には、スピロヘータが多数いて、他人が触れると感染します。
 第2期で、発疹の現われていない時期を第2期潜伏梅毒といいます。

第3期

(感染後3年から10年まで)
 感染後、この時期まで適切な治療を受けずにいると、結節性梅毒(けっせつせいばいどく)ゴム腫(しゅ)が現われてきます。
 これは、顔、鼻、くちびる、舌、骨、筋肉、内臓などの一部分に、かたいしこりや腫瘤(しゅりゅう)(こぶ)ができ、周囲の組織を破壊するもので、治ると瘢痕(はんこん)になり、顔にできるとみにくい容貌(ようぼう)になります。

第4期

(感染後10年以上)
 トレポネーマに脳や脊髄(せきずい)がおかされ、しだいに性格が変化して認知症状態になる進行まひ脳梅毒(のうばいどく))、手足がしびれて起立や歩行障害がおこる脊髄癆(せきずいろう)になります。また、心臓や血管系統もおかされ、大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)や大動脈炎もおこります。

検査と診断

 感染を受ける機会があったかどうか、これまでにどんな症状があって、現在どんな症状があるかが診断するうえで重要です。正直に報告してください。
 診断の決め手となるのは、病変からトレポネーマが検出されることと、梅毒血清反応(ばいどくけっせいはんのう)(コラム「梅毒血清反応」)が陽性になることです。

治療

 ペニシリン系とセフェム系の抗生物質が有効です。
 ペニシリン過敏症ではなく、早期梅毒(第2期梅毒まで)であれば、ペニシリン注射を10~20日間、または内服を30日間続けます。
 晩期梅毒(第3期梅毒以降)の場合は、梅毒血清反応の成績を参考にして、この治療を反復します。
 なお、晩期梅毒になると、十分に治療をして、完治したはずなのに、梅毒血清反応が陰性にならないことがあります(コラム「梅毒血清反応」)。


出典:家庭医学館