1. 五十音図ヤ行の第1音。硬口蓋と前舌との間を狭めて発する半母音[j]と母音[a]とから成る音節。[ja]

  1. 平仮名「や」は「也」の草体から。片仮名「ヤ」は「也」の草体を楷書化したもの。

[補説]「や」は、また、「きゃ」「しゃ」「ちゃ」などの拗音音節を表すのに、「き」「し」「ち」などの仮名とともに用いられる。現代仮名遣いでは、拗音の「や」は、なるべく小書きすることになっている。

《「よ(四)」の母音交替形としてその倍数を表したもの》

  1. はち。やっつ。声を出してかぞえるときの語。やあ。「いつ、むう、なな、—」

  1. はち。やっつ。多く、名詞の上に付けて用いる。「七転び—起き」

  1. 名詞の上に付けて、数量が多いことを表す。「—重咲きの花」「—雲たつ」

  1. 武器・狩猟具の一。弓の弦 (つる) につがえ、距離を隔てた目的物を射るもの。木または竹で作った棒状のもので、一方の端に羽をつけ、他方の端に鏃 (やじり) をつける。「—をつがえる」

  1. 木材や石など、かたいものを割るのに使うくさび。

  1. 紋所の名。1の形を組み合わせて図案化したもの。

谷あいの地。やつ。やと。地名に残っている語。「—中」「雑司ヶ—」

[名]
  1. 住むための建物家屋。いえ。「我が—」「一軒—」

  1. 屋根

    1. 声高になのたまひそ。—の上にをる人どもの聞くに、いとまさなし」〈竹取

[接尾]名詞に付く。
  1. それを売買する人や家の意を表す。「本—」「菓子—」

  1. そのような性質の人をいう。使う人、場合によって軽蔑自嘲の意を込めて用いられることもある。「気取り—」「わからず—」「がんばり—」

  1. 役者屋号や文人の雅号などとして用いる。「紀の国—」「鈴の—」

  1. 商業などを営んでいる家の屋号として用いる。「越後—」「近江—」

  1. そのことを専門にしている人、ある技術に優れている人などをさしていう。使う人、場合によって自慢げに、うらやましげに、あるいは自嘲軽蔑の意を込めても用いられる。「事務—」「技術—」「政治—」「チーム随一の飛ばし—だ」「速いだけが取り柄の走り—さ」

  1. ひろびろとした地。のはら。の。

    1. 「風強く秋声—にみつ」〈独歩武蔵野

  1. 官職につかないこと。民間。「—にある逸材

車輪の軸と外側の輪とを結ぶ、放射状に取り付けられた数多くの細長い棒。スポーク。

[形動]いや(嫌)」の音変化。感動詞的に用いることもある。「顔を見るのも—なやつ」「手伝うなんて—なこった」「—だ、食べたくない」
[副]《「八 (や) 」と同語源》程度がよりはなはだしいさま。ますます。いよいよ。
  • 「下堅く—堅く取らせ秀罇 (ほだり) 取らす子」〈・下・歌謡

[感]

  1. 驚いたときや不意に気づいたときに発する語。「—、火事だ」

  1. 突然または偶然に出会った人に呼びかけるときに発する語。「—、しばらく」

  1. 力をこめたり気合いをかけたりするときに発する語。また、音曲などの囃子詞 (はやしことば) 。やっ。

  1. 呼びかけに答える語。はい。

    1. 「『して太刀は』『—、ござらぬな』」〈虎明狂・真奪〉

[助動]敬語の助動詞「やる」の命令形「やれ」の音変化》…なさいな。
[接助]動詞・動詞型活用語の終止形に付く。ある動作作用が行われると同時に、他の動作作用が行われる意を表す。…とすぐに。…すると。「わたしの顔を見る—逃げ出した」
[副助]名詞、名詞に準じる語に付く。「やもしれない」などの形で、軽い疑問の意を表す。…か。「午後から雨が降る—もしれない」
[終助]活用語の終止形・命令形に付く。
  1. 同輩・目下の者などに対して軽く促す意を表す。「そろそろ出かけよう—」「もう帰れ—」

  1. 軽く言い放すような気持ちを表す。「もう、どうでもいい—」

  1. 疑問反語の意を表す。…(だろう)か。…だろうか(いや、そうではない)。「この結末はどうなりましょう—」「どうして私に言えましょう—」

[間助]名詞、名詞に準じる語、副詞に付く。
  1. 呼びかけを表す。「花子—、ちょっとおいで」

    1. 「我妹子 (わぎもこ) —我 (あ) を忘らすな石上 (いそのかみ) 袖布留川 (そでふるかわ) の絶えむと思へや」〈・三〇一三〉

  1. 強意を表す。「今—、経済危機を迎えようとしている」「またも—地震が起こった」

  1. 詠嘆感動の意を表す。

    1. 「いで、あな幼な—」〈若紫

    2. 夏草—つはものどもが夢の跡/芭蕉」〈奥の細道
[並助]名詞、名詞に準じる語に付く。事物並列列挙する意を表す。「赤—黒—青が混ざり合っている」「海—山などに行く」「甘いの—辛いのがある」
    1. 「羽音ガ台風—、雷 (イカヅチ) ナドノヤウニ聞コエタレバ」〈天草本平家・二〉

[係助]名詞、活用語の連用形・連体形、副詞助詞などに付く。なお、上代には活用語の已然形にも付く。
  1. 文中にあって、疑問反語を表す。

    1. 疑問を表す。…(だろう)か。…かしら。

      「ももしきの大宮人は暇 (いとま) あれ—梅をかざしてここに集 (つど) へる」〈・一八八三〉

    2. 「男、異心 (ことごころ) ありてかかるに—あらむと思ひ疑ひて」〈伊勢・二三〉
    3. 反語を表す。…だろうか(いや、そうではない)。

      「月—あらぬ春—昔の春ならぬわが身一つはもとの身にして」〈伊勢・四〉

  1. 文末用法。

    1. 疑問を表す。…(だろう)か。…かしら。

      「いかにぞ、からめたり—」〈古本説話集・下〉

    2. 反語を表す。…だろうか(いや、そうではない)。→やは

      「妹 (いも) が袖別れて久 (ひさ) になりぬれど一日 (ひとひ) も妹を忘れて思へ—」〈・三六〇四〉

    3. 「かばかり守る所に、天の人にも負けむ—」〈竹取
[補説]は「ドアが開くやいなや、ホームに飛び降りた」のように「やいなや」の形で慣用的に用いられることが多い。1場合文末の活用語は連体形で結ばれる。「ぼろぼろ(=虚無僧)といふもの、昔はなかりけるにや」のように結びの言葉が省略されることもある。また、2を終助詞とする説もある。
[接尾]人を表す名詞や人名などに付いて、親しみの意を添える。「ねえ—」「坊—」「爺—」「きよ—」
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