
「Tea Party Movement」(茶会運動)国際ニュースの話題をご紹介するこのコラム、しばらくお休みしていてすみません。しかも久々に復活するかと思えば木曜ではなく金曜だというのが、実に私らしいと思います。ともあれ、アメリカ中間選挙まであと1カ月弱。日本でも「Yes We Can」ブームを巻き起こしたオバマ民主党が、2年たって有権者に否定されるのか、それとも番狂わせが起きるのか、これから見ていこうと思います(「番狂わせ=与党勝利」だということからも、どういう状況か分かろうというものです)。(gooニュース 加藤祐子)
「必死だな」の民主党
久々のコラムなので少しおさらいになりますが、オバマ民主党は今、「必死だな」と言われてしまう状況にあります。なにせオバマ再選をかけた2012年大統領選にむけて副大統領を入れ替えて有権者にアピールしようかなどというウルトラCが、政府与党内で検討されていたらしいので。
民主党支持者にとって、アメリカの政治状況は今かなりやばい状態です。進化論は科学だし、先進国は国民に等しく健康保険を保障すべきだし、銃器は規制すべきだし、アメリカで生まれた者はみな等しくアメリカ国民だ——と信じる人にとっても、かなりやばい状態にあります。「オバマのやることすべてに賛成はしないけど、だからって彼はヒットラーなんかじゃないよ」と思う人にとっても、心配な状態です。
「Yes We Can」の大興奮から2年、政権の中間成績表とも言える中間選挙が11月2日に行われます。ギャラップ調査によるとこの2年間でオバマ大統領の支持率は67%から43%に下落しました(まるでどこかの国の与党のよう)。さらに同社調査によると、共和党に投票すると答える人は10月3日現在で56%、民主党は38%。
このままいくと中間選挙で民主党は上下両院の多数を失うかもしれない。そしてそのまま行ってしまえば2012年の大統領選でオバマ氏は再選されないかもしれない。そういう危機感が民主党支持者を覆っています。しかも政権が民主党から共和党に戻るだけなら、それは「いつものこと(business as usual)」なのですが、アメリカ政治にはいま第三の極が台頭してきている。欧州で極右政党が国政の場に出るようになって久しいですが、アメリカでも、共和党よりもさらに輪をかけて保守的な運動がワシントンへ猛進しているのです。
日本のメディアも中間選挙まで1カ月を切って詳しく解説しはじめましたが、台風の目となっているのが、白人保守層を中心とする「Tea Party Movement(茶会運動)」です(Tea Party=お茶会の意味もあるし、party=政党でもあります)。
お茶会でアカだのヒットラーだのと
アメリカ独立戦争のきっかけのひとつになった「ボストン茶会事件(Boston Tea Party)」にちなんだ呼び名です。ボストン茶会事件は、本国イギリスの議会がアメリカを含む植民地へ輸出される茶葉に勝手に増税したことに怒って、茶葉をボストン湾に投げ捨てた抵抗運動、反政府行動でした。これを「お茶会、パーティ」と呼ぶそのセンスは素晴らしいとかねてから思っていました。
そして現代アメリカにおける「Tea Party」もやはり、「連邦政府が勝手に増税するな!」が主な主張です。簡単に言ってしまえば「小さい政府」主義者の集まりで、「大きい政府」にとことん反対。だから、医療保険を連邦政府が取り仕切るなど言語道断(特に、貧困世帯や不就労世帯などにも保険を提供するために、自分たちの保険料が上がるのはけしからんという感覚のようです)。大企業を救済するために政府が資金を投入するのもけしからん。ここらへんまでが、いわゆる古典的な「財政保守」勢力の主張です。
ここに、「進化論は信じない、地球は6000年前にできた、同性愛は罪だ、レイプ被害者だろうと妊娠中絶は殺人だ、銃の携行はアメリカ人の基本的権利」というようなことを固く信じる人たち、いわゆる古典的な「社会的保守」の人たちが加わった(財政保守派と社会保守派は重なることもあれば線引きされることもあり、人によって十人十色です)。
こうやって並べた財政保守や社会保守だけならば、従来の共和党支持基盤なはずですが、さすが、茶葉をエイヤッと港に投げ込んだ先人たちにちなむだけのことはあります。「Tea Party」運動に賛同する人たちは、共和党でさえしょせんは一般国民のことなど考えない、既得権益まみれの「Washington politician(ワシントン政治家)」に過ぎないと嫌悪しているのです。彼らにとって「ワシントン」とか「政治家」は侮蔑語なのです(なんだか、欧州の現代史によく似た先例がありすぎて、とても不穏な感じがします)。
だから、東部デラウェア州の共和党上院予備選で、共和党重鎮を破った「Tea Party」候補のクリスティーン・オドネルという女性は、ほとんど何の政治経験もないのを逆手にとって「これは単なる選挙戦というよりは、使命なのです。ワシントンに乗り込んで、ワシントンを変えてみせます」と言って支持されたわけです。政治資金の私的流用疑惑が指摘されていても。度重なる学歴詐称が指摘されていても。家のローン不払いや長年の税金不払いを指摘されていても。
「だったら尚のこと、私たち普通のアメリカ人らしくていいと思う」と支持者がCNNに語るのを見て、私は唖然としたものです。
執筆者:加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊と同い年。8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ・パイソン」の洗礼を受け、イギリス英語も体得。怪しい関西弁も少しできる。全国紙社会部と経済部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイト「CNN.co.jp」で 2000年と2004年米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。フィナンシャル・タイムズ翻訳も担当。英語屋のニュース屋。最新の訳書に「策謀家チェイニー 副大統領が創った『ブッシュのアメリカ』」(朝日新聞出版)。
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