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#アイドラフトコンテスト
応募期間2023年2月16日(木)12時00分~3月8日(水)23時59分
本ページの情報は、コンテスト実施当時の内容です。
エヌ・ティ・ティレゾナント株式会社は、
2023年7月1日(土)付で株式会社NTTドコモと
合併することとしました。
プレスリリース
優秀作品
『春の手紙』
著 以桁由唄
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春の手紙以桁由唄
「『夜の手紙』ってあるじゃないですか? なら私、『春の手紙』があってもいいと思うんです」
別れの日、彼女は私に栞をくれた。
「ほら、先輩って読書家じゃないですか。だから、こういうのがいいかなって」
栞にはピンク色の押花がラミネートされてある。
「勿忘草っていうんです。先輩ってピンク色が好きですし、すごくお洒落じゃないですか? やっぱり私、センスがいいみたいです」
そう言って彼女は笑う。
『夜に手紙は書くな』と言う。夜に書いた手紙は、どこか感情的だ。
じゃあ、春に書いた手紙はどうだろうか。
それはきっと、どこか悲しくて、でも明るく振る舞おうとして、やっぱり寂しい。『夜の手紙』よりも感情的な、別れの手紙。
「これが私から先輩への『春の手紙』です。できるだけ、大事にしてくださいね」
たとえ手紙の体をなしていなくても、花の色は鮮やかに、彼女の気持ちを伝えてくれる。数年経った今、彼女の手紙は物語の隙間に咲いている。花びらは少し色褪せてしまったけれど、言葉はいつまでも美しい。
ピンク色の勿忘草の花言葉は『真実の友情』。
私はこれから、久しぶりに彼女と再会する。
辻堂ゆめさんからのコメント
出会いと別れの季節の美しい瞬間を切り取った作品に、しばし心が奪われました。
『物語の隙間に咲いている』など、小説的な描写がひときわ光っていました。
「栞なのになぜ『手紙』?」という疑問に対するオチのつけ方と余韻がとてもよかったです。
優秀作品
『はるのうた』
著 橙乃なつみ
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はるのうた橙乃なつみ
うちの合唱部には時々幽霊が出る。
ぽーん
柔らかなピアノの音が誰もいないはずの音楽室から聴こえてきた。
私はノックもせずにがらがらと引き戸を開け、音の正体を確かめて眉間に皺を寄せた。
「そこで何してんですか、幽霊さん」
振り返った詰襟姿の幽霊はわざとらしくため息をつく。
「寂しいかと思って出てきてやったのに」
「頼んでないです」
「今日歌うんだろ、発声付き合うよ」
「強引な…」
「これで最後、もう明日からは化けて出ないよ」
そう笑う彼の胸には、桜の造花。
卒業式の今日、この学校からいなくなる数多いる生徒の1人。
「部員の募集頑張れよ」
「わかってます」
「俺がいなくても」
「もともと幽霊部員でしょう」
「失礼な必要な時は出てただろ、じゃなくて」
「なんですか」
「泣くなよ」
眉間に力を込めて、我慢してきたはずの涙が勝手に溢れていた。
「ただの花粉症です」
かおをぐちゃぐちゃにしながら、それでもつっけんどんに言い返す私に、先輩は困ったように笑った。
「このままじゃお前、来年は独唱部だぞ」
「うるさい」
最後までひとこと余計なこの幽霊のため、今日は精一杯歌おうと思う。
旅立ちにふさわしい、はるのうたを。
辻堂ゆめさんからのコメント
すっかり騙されました。そっちの『幽霊』だったのか……!
見える景色が一気に変わっていく小説的技法とストーリー展開が素晴らしかったです。
先輩と後輩の絶妙な距離感が微笑ましく、短い中でもキャラクターが立っていて、読むのがとても楽しかったです。
- 応募期間
- 2023年2月16日(木)12時00分~3月8日(水)23時59分
- 募集テーマ
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「春」をテーマにした小説
- ・文字数: 500文字程度(改行・空白含む/タイトル除く)
- ・一次創作に限ります
- 応募資格
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- ・18歳以上の方
- ・idraftをご利用の方
- ※gooIDの登録(登録無料)やプレミアムプラン(有料版)のご利用により、
一部機能の利用が可能になりますが、本コンテストの応募に必須ではありません。
- ※gooIDの登録(登録無料)やプレミアムプラン(有料版)のご利用により、
- 結果発表
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- ・ 2023年4月上旬予定
- ・コンテスト特設サイト(本サイト)にて発表予定
- ※スケジュールは変更になる可能性があります。
- ※朗読にあたり、優秀作品の内容を読みやすくするために一部加工、編集等をすることがあります。これらはidraftコンテスト事務局の裁量により行いますので、あらかじめご了承のうえご応募ください。