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しん‐ぼう〔‐バウ〕【辛抱】例文一覧 30件

  1. ・・・たとい皮肉は爛れるにしても、はらいそ(天国の門へはいるのは、もう一息の辛抱である。いや、天主の大恩を思えば、この暗い土の牢さえ、そのまま「はらいそ」の荘厳と変りはない。のみならず尊い天使や聖徒は、夢ともうつつともつかない中に、しばしば彼等を・・・<芥川竜之介「おぎん」青空文庫>
  2. ・・・「辛抱しろよ。己だって、腹がへるのや、寒いのを辛抱しているのだからな。どうせ生きているからには、苦しいのはあたり前だと思え。それも、鼠よりは、いくら人間の方が、苦しいか知れないぞ………」          中 雪曇りの空が、・・・<芥川竜之介「仙人」青空文庫>
  3. ・・・「まあ辛抱してやるがいい。ここの親方は函館の金持ちで物の解った人だかんな」 そういって小屋を出て行った。仁右衛門も戸外に出て帳場の元気そうな後姿を見送った。川森は財布から五十銭銀貨を出してそれを妻の手に渡した。何しろ帳場につけとどけ・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  4. ・・・「後で私を殺しても可いから、もうちと辛抱なさいよ。」「お稲さん。」「ええ。」となつかしい低声である。「僕は大空腹。」「どこかで食べて来た筈じゃないの。」「どうして貴方に逢うまで、お飯が咽喉へ入るもんですか。」「ま・・・<泉鏡花「伊勢之巻」青空文庫>
  5. ・・・おらが、いろッて泣かしちゃ、仕事の邪魔するだから、先刻から辛抱してただ。」と、かごとがましく身を曲る。「お逢いなさいまし、ほほほ、ねえ、お浜、」 と女房は暗い納戸で、母衣蚊帳の前で身動ぎした。「おっと、」 奴は縁に飛びついた・・・<泉鏡花「海異記」青空文庫>
  6. ・・・と、おやじは今まで辛抱していた膝ッこを延ばして、ころりと横になり、「ああ、もう、こういうところで、こうして、お花でも引いていたら申し分はないが――」「お父さんはじきあれだから困るんです。お花だけでも、先生、私の心配は絶えないんですよ・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  7. 一 二葉亭が存命だったら 二葉亭が存命だったら今頃ドウしているだろう? という問題が或る時二葉亭を知る同士が寄合った席上の話題となった。二葉亭はとても革命が勃発した頃まで露都に辛抱していなかったろうと思うが、仮に当時に居合わした・・・<内田魯庵「二葉亭追録」青空文庫>
  8. ・・・「それほどまでに、下界へいってみたいなら、やってあげないこともないが、しかし、一度いったなら、三年は、辛抱してこの天国へ帰ってきてはなりません。もし、その決心がついたなら、やってあげましょう……。」と、お母さまはいわれました。 美し・・・<小川未明「海からきた使い」青空文庫>
  9. ・・・そんなわけだからね、この五十銭で二三日のところを君がここで辛抱してりゃ、私が向地から旅用の足しぐらいは間違いなく送ってあげらあ、ね。そのつもりで、私がいなくなったってすぐよそへ行かねえで、――いいかね。」 ほかの者の辞なら知らず、私はけ・・・<小栗風葉「世間師」青空文庫>
  10. ・・・ちっとの間の辛抱だ。行って来い。行って梨の実を盗んで来い。」 すると、子供が泣きながら、こう言いました。「お爺さん。御免よ。若し綱が切れて高い所から落っこちると、あたい死んじまうよ。よう。後生だから勘弁してお呉れよ。」 いくら子・・・<小山内薫「梨の実」青空文庫>
  11. ・・・けれど、気の弱い私は宿の者にその旨申し出ることもできず、辛抱して、なるべく温味の多そうな隅の方にちぢこまって、ぶるぶる顫えていると、若い男がはいって来た。はれぼったい瞼をした眼を細めて、こちらを見た。近視らしかった。 湯槽にタオルを浸け・・・<織田作之助「秋深き」青空文庫>
  12. ・・・序に頭の機能も止めて欲しいが、こればかりは如何する事も出来ず、千々に思乱れ種々に思佗て頭に些の隙も無いけれど、よしこれとても些との間の辛抱。頓て浮世の隙が明いて、筐に遺る新聞の数行に、我軍死傷少なく、負傷者何名、志願兵イワーノフ戦死。いや、・・・<著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷「四日間」青空文庫>
  13. ・・・ が、やっぱし辛抱が出来なくなる。そして、逃げ廻る。…… 処で彼は、今度こそはと、必死になって三四ヵ月も石の下に隠れて見たのだ。がその結果は、やっぱし壁や巌の中へ封じ込められようということになったのだ。…… Kへは気の毒である。けれ・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  14. ・・・と思ってはその期待に裏切られたり、今日こそは医者を頼もうかと思ってはむだに辛抱をしたり、いつまでもひどい息切れを冒しては便所へ通ったり、そんな本能的な受身なことばかりやっていた。そしてやっと医者を迎えた頃には、もうげっそり頬もこけてしまって・・・<梶井基次郎「のんきな患者」青空文庫>
  15. ・・・私も可哀そうでならなかったけエど、つまり私の傍に居た処が苦しいばかりだし、又た結局あの人も暫時は辛い目に遇て生育つのですから今時分から他人の間に出るのも宜かろうと思って、心を鬼にして出してやりました、辛抱が出来ればいいがと思って、……それ源・・・<国木田独歩「二少女」青空文庫>
  16. ・・・ こういう兵営で二カ年間辛抱しなければならないのかと思うと、うんざりしていた。 私は、内地で一年あまりいて、それからシベリアへやられた。 内地で、兵卒同志で、殴りあいをしたり寝台の下の早馳けなどは、あとから思い出すとむしろ無・・・<黒島伝治「入営前後」青空文庫>
  17. ・・・をしていらしって、も少しするとおまえのところの叔父さんにちゃんと談をなすって、何でもおまえのために悪くないようにしてあげようって云っていらっしゃるのだから、辛いだろうがそんな心持を出さないで、少しの間辛抱おしでなくちゃあ済まないわ。」と・・・<幸田露伴「雁坂越」青空文庫>
  18. ・・・しかし、もう一度この屋根の下に辛抱してみようと思う心はすでにその時に私のうちにきざして来た。 今一つは、次郎の事だ。私は太郎から聞いて来た返事を次郎に伝えて、いよいよ郷里のほうへ出発するように、そのしたくに取り掛からせることにした。・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  19. ・・・誰に言われずとも、しばらくは、辛抱せずばなるまい。<太宰治「一燈」青空文庫>
  20. ・・・敵の捨てて遁げた汚い洋館の板敷き、八畳くらいの室に、病兵、負傷兵が十五人、衰頽と不潔と叫喚と重苦しい空気と、それにすさまじい蠅の群集、よく二十日も辛抱していた。麦飯の粥に少しばかりの食塩、よくあれでも飢餓を凌いだ。かれは病院の背後の便所を思・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  21. ・・・悪口を云われる方では辛抱して罵詈の嵐を受け流しているのを、後に立っている年寄の男が指で盆の窪を突っついてお辞儀をさせる、取巻いて見物している群集は面白がってげらげら笑い囃し立てる、その観客の一人一人のクローズアップの中からも吾々はいくらも故・・・<寺田寅彦「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」青空文庫>
  22. ・・・今一足の辛抱が足らなかった。しかし誰が彼らをヤケにならしめたか。法律の眼から何と見ても、天の眼からは彼らは乱臣でもない、賊子でもない、志士である。皇天その志を憐んで、彼らの企はいまだ熟せざるに失敗した。彼らが企の成功は、素志の蹉跌を意味した・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  23. ・・・やってる方だって長いのは疲れますからできるだけ労力節約の法則に従って早く切り上げるつもりですから、もう少し辛抱して聴いて下さい。 それで現代の日本の開化は前に述べた一般の開化とどこが違うかと云うのが問題です。もし一言にしてこの問題を決し・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  24. ・・・がもう一学期半辛抱すれば、華やかな東京に出られるのだからと強いて独り慰め、鼓舞していた。 十月の末であった。 もう、水の中に入らねばしのげないという日盛りの暑さでもないのに、夕方までグラウンドで練習していた野球部の連中が、泥と汗とを・・・<葉山嘉樹「死屍を食う男」青空文庫>
  25. ・・・因て成るべく端折って記せば暫時の御辛抱を願うになん。 凡そ形あれば茲に意あり。意は形に依って見われ形は意に依って存す。物の生存の上よりいわば、意あっての形形あっての意なれば、孰を重とし孰を軽ともしがたからん。されど其持前の上より・・・<二葉亭四迷「小説総論」青空文庫>
  26. ・・・そこで草臥た高慢の中にある騙された耳目は得べき物を得る時無く、己はこの部屋にこの町に辛抱して引き籠っているのだ。世間の者は己を省みないのが癖になって、己を平凡な奴だと思っているのだ。(家来来て桜実一皿を机の上に置き、バルコンの戸を鎖戸はまあ・・・<著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外「痴人と死と」青空文庫>
  27. ・・・ほんとうに辛抱の強い、稼ぎに身を入れる善い上さんだ。これにこそ福を与えて善かろう。もしこの上さんに福をやらなければ福をやるべき人間は外にあるはずはない。この上さんが毎晩五銭ずつを貯金箱に入れる事にきめて居るのだが、せめてそれを十銭ずつにして・・・<正岡子規「熊手と提灯」青空文庫>
  28. ・・・ そのために母親は、自分の都合でばかり子供を叱らず、忙しくても辛抱して、とっくりと子供の言い分をきいてやり、親の思いちがいであったならば、さっぱりと、母さんが間違えていてわるかったね、ごめんよ、と云ってやることが大切です。こういう親・・・<宮本百合子「新しい躾」青空文庫>
  29. ・・・これまでも我々は只お前と寝食を共にすると云うだけで、給料と云うものも遣らず、名のみ家来にしていたのに、お前は好く辛抱して勤めてくれた。しかしもう日本全国をあらかた遍歴して見たが、敵はなかなか見附からない。この按排では我々が本意を遂げるのは、・・・<森鴎外「護持院原の敵討」青空文庫>
  30. ・・・「もうちょっとの辛抱さ。直き苦しくなくなるよ。」「あ、もう、あなたの顔が、見えなくなった。」と妻はいった。 彼は暴風のように眼がくらんだ。妻は部屋の中を見廻しながら、彼の方へ手を出した。彼は、激しい愛情を、彼女の一本の手の中に殺・・・<横光利一「花園の思想」青空文庫>