すや‐すや例文一覧 21件

  1. ・・・するとたちまち道ばたに農夫の子らしい童児が一人、円い石を枕にしたまま、すやすや寝ているのを発見した。加藤清正は笠の下から、じっとその童児へ目を落した。「この小倅は異相をしている。」 鬼上官は二言と云わずに枕の石を蹴はずした。が、不思・・・<芥川竜之介「金将軍」青空文庫>
  2. ・・・その内に祖母は病気の孫がすやすや眠り出したのを見て、自分も連夜の看病疲れをしばらく休める心算だったのでしょう。病間の隣へ床をとらせて、珍らしくそこへ横になりました。 その時お栄は御弾きをしながら、祖母の枕もとに坐っていましたが、隠居は精・・・<芥川竜之介「黒衣聖母」青空文庫>
  3. ・・・多加志は妻の母の腕を枕に、すやすや寝入っているらしかった。妻は自分の来たのを知ると一人だけ布団の上に坐り、小声に「どうも御苦労さま」と云った。妻の母もやはり同じことを云った。それは予期していたよりも、気軽い調子を帯びたものだった。自分は幾分・・・<芥川竜之介「子供の病気」青空文庫>
  4. ・・・妹のアグネスは同じ床の中で、姉の胸によりそってすやすやと静かに眠りつづけていた。千二百十二年の三月十八日、救世主のエルサレム入城を記念する棕櫚の安息日の朝の事。 数多い見知り越しの男たちの中で如何いう訳か三人だけがつぎつぎにクララの夢に・・・<有島武郎「クララの出家」青空文庫>
  5. ・・・まだそれよりか、毒虫のぶんぶん矢を射るような烈い中に、疲れて、すやすや、……傍に私の居るのを嬉しそうに、快よさそうに眠られる時は、なお堪らなくって泣きました。」 聞く方が歎息して、「だってねえ、よくそれで無事でしたね。」 顔見ら・・・<泉鏡花「女客」青空文庫>
  6. ・・・日あたりの納戸に据えた枕蚊帳の蒼き中に、昼の蛍の光なく、すやすやと寐入っているが、可愛らしさは四辺にこぼれた、畳も、縁も、手遊、玩弄物。 犬張子が横に寝て、起上り小法師のころりと坐った、縁台に、はりもの板を斜めにして、添乳の衣紋も繕わず・・・<泉鏡花「海異記」青空文庫>
  7. ・・・ ト枕を並べ、仰向になり、胸の上に片手を力なく、片手を投出し、足をのばして、口を結んだ顔は、灯の片影になって、一人すやすやと寝て居るのを、……一目見ると、それは自分であったので、天窓から氷を浴びたように筋がしまった。 ひたと冷い汗に・・・<泉鏡花「星あかり」青空文庫>
  8. ・・・ とほんのり瞼を染めながら、目を塞いでしかも頼母しそう、力としまするよう、小宮山の胸で顔を隠すように横顔を見せ、床を隔てながら櫛巻の頭を下げ、口の上辺まで衾の襟を引寄せましたが、やがてすやすやと寐入ったのでありまする。 その時の様子・・・<泉鏡花「湯女の魂」青空文庫>
  9. ・・・私は一軒の貧しげな家をのぞきますと、二人の子供は、昼間の疲れですやすやとよく休んでいました。姉のほうの子は、工場へいって働いているのです。弟のほうの子は、電車の通る道の角に立って新聞を売っているのです。二人の子供は、よくお母さんのいうことを・・・<小川未明「ある夜の星たちの話」青空文庫>
  10. ・・・ その明くる日、おじいさんは気分が悪くなって床につくと、すやすやと眠るように死んでしまいました。いいおじいさんをなくして、村人は悲しみました。そうして、懇ろにおじいさんを葬って、みんなで法事を営みました。「ほんとうに、だれからでも慕・・・<小川未明「犬と人と花」青空文庫>
  11. ・・・あの人は私に折檻されながら、酒をのんでるわけでもないのに、いつの間にかすやすやと眠ってしまった。ほんとうにそう言う人なのだ。それを私は言いたいのです。結果があとさきになったけれど、誰だってそんな風に眠ってしまうあの人を見れば、折檻したくなる・・・<織田作之助「天衣無縫」青空文庫>
  12. ・・・吉田はいくら一日の看護に疲れても寝るときが来ればいつでもすやすやと寝ていく母親がいかにも楽しそうにもまた薄情にも見え、しかし結局これが己の今やらなければならないことなんだと思い諦めてまたその努力を続けてゆくほかなかった。 そんなある晩の・・・<梶井基次郎「のんきな患者」青空文庫>
  13. ・・・ 妻のお政はすやすやと寝入り、その傍に二歳になる助がその顔を小枕に押着けて愛らしい手を母の腮の下に遠慮なく突込んでいる。お政の顔色の悪さ。さなきだに蒼ざめて血色悪しき顔の夜目には死人かと怪しまれるばかり。剰え髪は乱れて頬にかかり、頬の肉・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  14. ・・・ 祖母はすやすや寝ている小さい弟を起して、古い負いこに包んで背負うと、彼を醸造場へつれて行った。年が寄って寒むがりになった祖母は、水鼻を垂らして歩きながら、背の小さい弟をゆすり上げてすかした。 醸造場へ行くと、彼女は、孫の仁助に・・・<黒島伝治「まかないの棒」青空文庫>
  15. ・・・       四 ウイリイは犬を外に待たせておいて、大きな部屋をいくつも通りぬけて、一ばん奥の部屋にはいりますと、そこに、金色をした鳥が一ぴき、すやすやと眠っていました。その鳥の羽根は、ウイリイが先にひろった羽根と同じ羽根で・・・<鈴木三重吉「黄金鳥」青空文庫>
  16. ・・・小母さんはいつしか顔を出してすやすやと眠っている。大根を引くので疲れたのかもしれない。小母さんの静かな寝顔をじっと見ていると、自分もだんだんに瞼が重くなる。 千鳥の話は一と夜明ける。 自分は中二階で長い手紙を書いている。藤さんが・・・<鈴木三重吉「千鳥」青空文庫>
  17. ・・・すると王女は間もなく、すやすやと寝入ってしまいました。 王子はその長いすのそばのテイブルのところへいって、ひじをついて、手のひらでおとがいをささえながら、目ばたきもしないで、王女の顔を見つめていました。 ところがそのうちに、王子はだ・・・<鈴木三重吉「ぶくぶく長々火の目小僧」青空文庫>
  18. ・・・しずかに寝巻に着換えていたら、いままですやすや眠ってるとばかり思っていたお母さん、目をつぶったまま突然言い出したので、びくっとした。お母さん、ときどきこんなことをして、私をおどろかす。「夏の靴がほしいと言っていたから、きょう渋谷へ行った・・・<太宰治「女生徒」青空文庫>
  19. ・・・るという事になるんだろうが、これだって自分の家ではない、寓居だ、そのように三界に家なしと言われる程の女が、別にその孤独を嘆ずるわけでもなし、あくせくと針仕事やお洗濯をして、夜になると、その他人の家で、すやすやと安眠しているじゃないか、たいし・・・<太宰治「鉄面皮」青空文庫>
  20. ・・・そして何か考えてでもいるような風であったが間もなくすやすや寝入ってしまった。<寺田寅彦「小さな出来事」青空文庫>
  21. ・・・旅人は安心した様にすやすやとね入りました。女はソーとその手を引きながらもなおその目をはなしませんでした。そして小さい声で、女「ほんとうに美くしい人、これで私の心がわかるかしら」あこがれるような眼をしてそのかるくむすんだ、やわらかい唇にい・・・<宮本百合子「無題(一)」青空文庫>