すら‐すら例文一覧 30件

  1. ・・・ 女はちょいと云い澱んだ後、今度は朗読でもするようにすらすら用向きを話し出した。新之丞は今年十五歳になる。それが今年の春頃から、何ともつかずに煩い出した。咳が出る、食欲が進まない、熱が高まると言う始末である、しのは力の及ぶ限り、医者にも・・・<芥川竜之介「おしの」青空文庫>
  2. ・・・ 隔の襖は裏表、両方の肩で圧されて、すらすらと三寸ばかり、暗き柳と、曇れる花、淋しく顔を見合せた、トタンに跫音、続いて跫音、夫人は衝と退いて小さな咳。 さそくに後を犇と閉め、立花は掌に据えて、瞳を寄せると、軽く捻った懐紙、二隅へはた・・・<泉鏡花「伊勢之巻」青空文庫>
  3. ・・・ よし、それとても朧気ながら、彼処なる本堂と、向って右の方に唐戸一枚隔てたる夫人堂の大なる御廚子の裡に、綾の几帳の蔭なりし、跪ける幼きものには、すらすらと丈高う、御髪の艶に星一ツ晃々と輝くや、ふと差覗くかとして、拝まれたまいぬ。浮べる眉・・・<泉鏡花「一景話題」青空文庫>
  4. ・・・ 綺麗さも凄かった。すらすらと呼吸をする、その陽炎にものを言って、笑っているようである。 真赤な蛇が居ようも知れぬ。 が、渠の身に取っては、食に尽きて倒るるより、自然に死ぬなら、蛇に巻かれたのが本望であったかも知れぬ。 袂に・・・<泉鏡花「瓜の涙」青空文庫>
  5. ・・・書き出しの文章は案外すらすらと出て来たのだが、しかし、行き当りばったりの王手に過ぎない。いや、王手とも言えないくらいだ。これはどういうわけであろうと考えて、新吉はふと、この詰将棋の盤はいつもの四角い盤でなく、円形の盤であるためかなとも思った・・・<織田作之助「郷愁」青空文庫>
  6. ・・・「何とお詫びしてええやら」すらすら彼は言葉が出て、種吉とお辰はすこぶる恐縮した。 母親の浴衣を借りて着替えると、蝶子の肚はきまった。いったん逐電したからにはおめおめ抱主のところへ帰れまい、同じく家へ足踏み出来ぬ柳吉と一緒に苦労する、「も・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  7. ・・・ 耕吉は半信半疑の気持からいろいろと問訊してみたが、小僧の答弁はむしろ反感を起させるほどにすらすらと淀みなく出てきた。年齢は十五だと言った。で、「それは本当の話だろうね。……お前嘘だったらひどいぞ」と念を押しながら、まだ十二時過ぎたばか・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  8. ・・・机の前ではどうしても書けなかったのが割合すらすら書けた。 古本屋と思って入った本屋は新しい本ばかりの店であった。店に誰もいなかったのが自分の足音で一人奥から出て来た。仕方なしに一番安い文芸雑誌を買う。なにか買って帰らないと今夜が堪らない・・・<梶井基次郎「泥濘」青空文庫>
  9. ・・・ 堯はその口上が割合すらすら出て来る番頭の顔が変に見え出した。ある瞬間には彼が非常な言い憎さを押し隠して言っているように見え、ある瞬間にはいかにも平気に言っているように見えた。彼は人の表情を読むのにこれほど戸惑ったことはないと思った。い・・・<梶井基次郎「冬の日」青空文庫>
  10. ・・・僕はかねてかくあるべしと期していたから、すらすらと読んで『これが何です』と叫んだ。『お前は日本人か。』『ハイ日本人でなければ何です。』『夷狄だ畜生だ、日本人ならよくきけ、君、君たらずといえども臣もって臣たらざるべからずというのが先王の教・・・<国木田独歩「初恋」青空文庫>
  11. ・・・高さ五間以上もある壁のような石垣ですから、私は驚いて止めようと思っているうちに、早くも中ほどまで来て、手近の葛に手が届くと、すらすらとこれをたぐってたちまち私のそばに突っ立ちました。そしてニヤニヤと笑っています。「名前はなんというの?」・・・<国木田独歩「春の鳥」青空文庫>
  12. ・・・と大森は巻き紙をとってすらすらと書きだした。その間に客は取り散らしてあった書類を丁寧に取りそろえて、大きな手かばんに納めた。「中西の宿はずいぶんしみったれているが、彼奴よく辛抱して取り換えないね。」と大森は封筒へあて名を書きながら言った・・・<国木田独歩「疲労」青空文庫>
  13. ・・・ 船は追手の風で浪の上をすらすらと走って、間もなく大きな大海の真中へ出ました。 そうすると、さっきのむく犬が、用意してある百樽のうじ虫をみんな魚におやりなさいと言いました。ウイリイはすぐに樽をあけて、うじ虫をすっかり海へ投げこみまし・・・<鈴木三重吉「黄金鳥」青空文庫>
  14. ・・・ 女は間もなく、髪をすいてしまって、すらすらとこちらへ歩いて来ました。ギンはだまってパンとバタをさし出しました。女はそれを見ると顔をふって、「かさかさのパンをもった人よ、 私はめったに、つかまりはしませんよ。」と言う・・・<鈴木三重吉「湖水の女」青空文庫>
  15. ・・・どこまで出るかと続けて引っ張るとすらすらとすっかり出る。 自分はそれをいくつにも畳んでみたり、手の甲へ巻きつけたりしていじくる。後には頭から頤へ掛けて、冠の紐のように結んで、垂れ下ったところを握ったまま、立膝になって、壁の摺絵を見つめる・・・<鈴木三重吉「千鳥」青空文庫>
  16. ・・・おかみさんと顔が合ったとたんに私は、自分でも思いがけなかった嘘をすらすらと言いました。「あの、おばさん、お金は私が綺麗におかえし出来そうですの。今晩か、でなければ、あした、とにかく、はっきり見込みがついたのですから、もうご心配なさらない・・・<太宰治「ヴィヨンの妻」青空文庫>
  17. ・・・ 嘘が不思議なくらい、すらすらと出ました。本当にその日は、お盆の十三日でした。よその女の子は、綺麗な着物を着て、そのお家の門口に出て、お得意そうに長い袂をひらひらさせて遊んでいるのに、うちの子供たちは、いい着物を戦争中に皆焼いてしまった・・・<太宰治「おさん」青空文庫>
  18. ・・・鴎外自身の小説だって、みんな書き出しが巧いですものね。すらすら読みいいように書いて在ります。ずいぶん読者に親切で、愛情持っていた人だと思います。二つ、三つ、この第十六巻から、巧い書き出しを拾ってみましょう。みんな巧いので、選出するのに困難で・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  19. ・・・そうしておもしろいことにはこのシーンの伴奏となりまた背景ともなる音響のほうはなんの滞りもなくすらすらと歌の言葉と旋律を運んで進行していることである。もしもこれが無声であるかあるいは歌はあってもこの律動的な画像がなかったとしたら効果は二分の一・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  20. ・・・ひらへのせて、毎日暇さえあればしみじみとながめている、するとその米粒がだんだんに大きく見えて来ておしまいには玉子のように、また盆のように大きく見えてくる、その時にまつ毛を一本抜いて、それに墨汁を浸し「すらすらと書けばよい」という話である。真・・・<寺田寅彦「記録狂時代」青空文庫>
  21. ・・・というのは、現代の科学者が統計学の理論を持出してしかめつらしく論じることを、すらすらと大和言葉で云っているのである。この道理を口を酸くして説いても、どうしても耳に入らぬ人が現代のいわゆる知識階級や立派な学者の中にでもいくらでも見出されるのは・・・<寺田寅彦「徒然草の鑑賞」青空文庫>
  22. ・・・これから御話をする事はこの三四頁の内容に過ぎんのでありますからすらすらとやってしまうと十五分くらいですぐすんでしまう。いくらついでにする演説でもそれではあまり情ない。からこの三四頁を口から出まかせに敷衍して進行して行きます。敷衍しかたをあら・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  23. ・・・現に此原稿は魯庵君が使って見ろといってわざわざ贈って呉れたオノトで書いたのであるが、大変心持よくすらすら書けて愉快であった。ペリカンを追い出した余は其姉妹に当るオノトを新らしく迎え入れて、それで万年筆に対して幾分か罪亡ぼしをした積なのである・・・<夏目漱石「余と万年筆」青空文庫>
  24. ・・・余は最後に美しい婦人に逢った事とその婦人が我々の知らない事やとうてい読めない字句をすらすら読んだ事などを不思議そうに話し出すと、主人は大に軽蔑した口調で「そりゃ当り前でさあ、皆んなあすこへ行く時にゃ案内記を読んで出掛けるんでさあ、そのくらい・・・<夏目漱石「倫敦塔」青空文庫>
  25. ・・・ 芭蕉は「発句は頭よりすらすらと言い下し来たるを上品とす」と言い、門人洒堂に教えて「発句は汝がごとく物二、三取り集むる物にあらず、こがねを打ちのべたるごとくあるべし」と言えり。洒堂の句の物二、三取り集むるというは鳩吹くや渋柿原の・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  26. ・・・私どもはもう尋常五年生でしたからすらすら読みました。「本日は東北長官一行の出遊につきこれより中には入るべからず。東北庁」 私はがっかりしてしまいました。慶次郎も顔を赤くして何べんも読み直していました。「困ったねえ、えらい人が来る・・・<宮沢賢治「二人の役人」青空文庫>
  27. ・・・その日キッコが学校から帰ってからのはしゃぎようと云ったら第一におっかさんの前で十けたばかりの掛算と割算をすらすらやって見せてよろこばせそれから弟をひっぱり出して猫の顔を写生したり荒木又右エ門の仇討のとこを描いて見せたりそしておしまいもう・・・<宮沢賢治「みじかい木ぺん」青空文庫>
  28. ・・・ 作者がある意味で話し上手で、楽な印象を与えるから、壺井さんの作品をよむと成程自分もこんな風にすらすら話して行けばいいのだと思えるかもしれないけれど、強ち誰にでもああ書けるものではない。模倣されそうで案外それはむずかしい。壺井さんは十年・・・<宮本百合子「『暦』とその作者」青空文庫>
  29. ・・・に関する報告の中で、たいへんわかりよく概括していられたように、日本の民主化はけっしてすらすら行われておりません。良心的に行われていません。正直にも行われていません。政府は自身の権力を保持したいために、私ども日本人すべてが持っている新しいいろ・・・<宮本百合子「一九四六年の文壇」青空文庫>
  30. ・・・声は低いが発音は好い。すらすらと読むのを私は聞いていて、意味をはっきり聞き取ることが出来た。「もう好いから、君その意味を言って聞かせ給え」と、私は云った。 F君は殆ど術語のみから組み立ててある原文の意味を、苦もなく説き明かした。・・・<森鴎外「二人の友」青空文庫>