する‐する例文一覧 30件

  1. ・・・何気なく陀多が頭を挙げて、血の池の空を眺めますと、そのひっそりとした暗の中を、遠い遠い天上から、銀色の蜘蛛の糸が、まるで人目にかかるのを恐れるように、一すじ細く光りながら、するすると自分の上へ垂れて参るのではございませんか。陀多はこれを見る・・・<芥川竜之介「蜘蛛の糸」青空文庫>
  2. ・・・と思うとその幕は、余興掛の少尉の手に、するすると一方へ引かれて行った。 舞台は日本の室内だった。それが米屋の店だと云う事は、一隅に積まれた米俵が、わずかに暗示を与えていた。そこへ前垂掛けの米屋の主人が、「お鍋や、お鍋や」と手を打ちながら・・・<芥川竜之介「将軍」青空文庫>
  3. ・・・ 早く去ってもらいたさの、女房は自分も急いで、表の縁へするすると出て、此方に控えながら、「はい、」 という、それでも声は優しい女。 薄黒い入道は目を留めて、その挙動を見るともなしに、此方の起居を知ったらしく、今、報謝をしよう・・・<泉鏡花「海異記」青空文庫>
  4. ・・・ 何をする。 風呂敷を解いた。見ると、絵筒である。お妻が蓋を抜きながら、「雪おんなさん。」「…………」「あなたがいい、おばけだから、出入りは自由だわ。」 するすると早や絹地を、たちまち、水晶の五輪塔を、月影の梨の花が・・・<泉鏡花「開扉一妖帖」青空文庫>
  5. ・・・その上へ、真白な形で、瑠璃色の透くのに薄い黄金の輪郭した、さげ結びの帯の見える、うしろ向きで、雲のような女の姿が、すっと立って、するすると月の前を歩行いて消えた。……織次は、かつ思いかつ歩行いて、丁どその辻へ来た。       四・・・<泉鏡花「国貞えがく」青空文庫>
  6. ・・・中なる三人の婦人等は、一様に深張りの涼傘を指し翳して、裾捌きの音いとさやかに、するすると練り来たれる、と行き違いざま高峰は、思わず後を見返りたり。「見たか」 高峰は頷きぬ。「むむ」 かくて丘に上りて躑躅を見たり。躑躅は美なりしな・・・<泉鏡花「外科室」青空文庫>
  7. ・・・ すると、正ちゃんは するすると すべりだいを すべりました。しゃしんやさんは こまって しまいました。「この つぎに しましょうか。」と、おかあさんは おっしゃいました。 かんがえて いた しゃしんやさんは、すっかり うつ・・・<小川未明「しゃしんやさん」青空文庫>
  8. ・・・爺さんが綱の玉を段々にほごすと、綱はするするするするとだんだん空の方へ、手ぐられでもするように、上がって行くのです。とうとう綱の先の方は、雲の中へ隠れて、見えなくなってしまいました。 もうあといくらも綱が手許に残っていなくなると、爺さん・・・<小山内薫「梨の実」青空文庫>
  9. ・・・寝ぼけた眼で下から見たら、首がするする伸びてるように思うやおまへんか。ところで、なんぜ油を嘗めよったかと言うと、いまもいう節で、虐待されとるから油でも嘗めんことには栄養の取り様がない。まあ、言うたら、止むに止まれん栄養上の必要や。それに普通・・・<織田作之助「秋深き」青空文庫>
  10. ・・・暮れにくい夏の日もいつか暮れて行き、落日の最後の明りが西の空に沈んでしまうと、夜がするすると落ちて来た。 急いで帰らねば、外出時間が切れてしまう。しかし、このまま手ぶらで帰れば、咽から手の出るほどスキ焼きを待ちこがれている隊長の手が、狂・・・<織田作之助「昨日・今日・明日」青空文庫>
  11. ・・・ やがて、その人が駅の改札口をはいって行くその広い肩幅をひそかに見送って、再びその広場へ戻って来ると、あたりはもうすっかり暗く、するすると夜が落ちていた。「お姉さま。道子はお姉さまに代って、お見送りしましたわよ。」 道子はそう呟・・・<織田作之助「旅への誘い」青空文庫>
  12. ・・・昔の河遊びの手練がまだのこっていて、船はするすると河心に出た。 遠く河すそをながむれば、月の色の隈なきにつれて、河霧夢のごとく淡く水面に浮かんでいる。豊吉はこれを望んで棹を振るった。船いよいよ下れば河霧次第に遠ざかって行く。流れの末は間・・・<国木田独歩「河霧」青空文庫>
  13. ・・・しかし確に箪笥を開ける音がした、障子をするすると開ける音を聞いた、夢か現かともかくと八畳の間に忍足で入って見たが、別に異変はない。縁端から、台所に出て真闇の中をそっと覗くと、臭気のある冷たい空気が気味悪く顔を掠めた。敷居に立って豆洋燈を高く・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  14. ・・・トロッコは、山を下ることが愉快であるかのように、するすると流れるように線路を、辷っていた。井村は、坑内で、自分等が、どれだけ危険に身をさらしているか、それを検査官に見せ付てやろうとしたことが、全く裏をかゝれてしまったことを感じた。畜生! 検・・・<黒島伝治「土鼠と落盤」青空文庫>
  15. ・・・ 棒はこう言うが早いか、たちまちするするとからだをのばして、おやッという間に、もう高い高い雲の中へ頭をつっこんでしまいました。そして、ひょい/\/\と五足六足歩いたと思いますともう五、六里向うへとんでいました。それからまたひょい/\/\・・・<鈴木三重吉「ぶくぶく長々火の目小僧」青空文庫>
  16. ・・・、素知らぬ顔をして話題をかえ、ひそかに冷汗拭うて思うことには、ああ、かのドアの陰いまだ相見ぬ当家のお女中さんこそ、わが命の親、この笑いの波も灯のおかげ、どうやら順風の様子、一路平安を念じつつ綱を切ってするする出帆、題は、作家の友情について。・・・<太宰治「喝采」青空文庫>
  17. ・・・両親の居間の襖をするするあけて、敷居のうえに佇立すると、虫眼鏡で新聞の政治面を低く音読している父も、そのかたわらで裁縫をしている母も、顔つきを変えて立ちあがる。ときに依っては、母はひいという絹布を引き裂くような叫びをあげる。しばらく私のすが・・・<太宰治「玩具」青空文庫>
  18. ・・・女難の系統は、私の祖父から発していて、祖父が若いとき、女の綱渡り名人が、村にやって来て、三人の女綱渡りすべて、祖父が頬被りとったら、その顔に見とれて、傘かた手に、はっと掛声かけて、また祖父を見おろし、するする渡りかけては、すとんすとんと墜落・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  19. ・・・をのぞいて、そこに次兄がひとり坐っているのを見つけ、こわいものに引きずられるように、するすると傍へ行って坐った。内心、少からずビクビクしながら、「お母さんは、どうしても、だめですか?」と言った。いかにも唐突な質問で、自分ながら、まずいと・・・<太宰治「故郷」青空文庫>
  20. ・・・螺旋状の縮みが伸びて、するすると一度にほごれ広がるものと見える。それでからすうりの花は、言わば一種の光度計のようなものである。人間が光度計を発明するよりもおそらく何万年前からこんなものが天然にあったのである。 からすうりの花がおおかた開・・・<寺田寅彦「からすうりの花と蛾」青空文庫>
  21. ・・・それが、空の光の照明度がある限界値に達すると、多分細胞組織内の水圧の高くなるためであろう、螺旋状の縮みが伸びて、するすると一度にほごれ拡がるものと見える。それで烏瓜の花は、云わば一種の光度計のようなものである。人間が光度計を発明するよりもお・・・<寺田寅彦「烏瓜の花と蛾」青空文庫>
  22. ・・・そうして星がちょうど糸を通過する瞬間を頭の中の時のテープに突き止めるのであるが、まだよく慣れないうちは、あれあれと思う間に星のほうはするすると視野を通り抜けてしまってどうする暇もない。しかし慣れるに従って星がだんだんにのろく見えて来る、一秒・・・<寺田寅彦「空想日録」青空文庫>
  23. ・・・巻き縮んだ黒焦の紙が一枚一枚するすると伸びて焼けない前のページに変る。その中からシャリアピンの悲しくも美しいバスのメロディーが溢れ出るのであった。 歴史に名を止めたような、えらい武人や学者のどれだけのパーセントが一種のドンキホーテでなか・・・<寺田寅彦「雑記帳より(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」青空文庫>
  24. ・・・すると浅い桐の底に、奥の方で、なにかひっかかるような手ごたえがしたのが、たちまち軽くなって、するすると、抜けてきたとたんに、まき納めてねじれたような手紙の端がすじかいに見えた。自分はひったくるようにその手紙を取って、すぐ五、六寸破いて櫛をふ・・・<夏目漱石「手紙」青空文庫>
  25. ・・・とルーファスは革に釣る重き剣に手を懸けてするすると四五寸ばかり抜く。一座の視線は悉く二人の上に集まる。高き窓洩る夕日を脊に負う、二人の黒き姿の、この世の様とも思われぬ中に、抜きかけた剣のみが寒き光を放つ。この時ルーファスの次に座を占めたるウ・・・<夏目漱石「幻影の盾」青空文庫>
  26. ・・・とたくさんのふくろうどもが、お月さまのあかりに青じろくはねをひるがえしながら、するするするする出てきて、柏の木の頭の上や手の上、肩やむねにいちめんにとまりました。 立派な金モールをつけたふくろうの大将が、上手に音もたてないで飛んでき・・・<宮沢賢治「かしわばやしの夜」青空文庫>
  27. ・・・「うわあい。」と一郎は言いましたが、なんだかきまりが悪くなったように、「石取りさないが。」と言いながら白い丸い石をひろいました。「するする。」こどもらがみんな叫びました。「おれそれであ、あの木の上がら落とすがらな。」と一郎は・・・<宮沢賢治「風の又三郎」青空文庫>
  28. ・・・博士は名刺をとり出して、何かするする書き込んでブドリにくれました。ブドリはおじぎをして、戸口を出て行こうとしますと、大博士はちょっと目で答えて、「なんだ、ごみを焼いてるのかな。」と低くつぶやきながら、テーブルの上にあった鞄に、白墨のかけ・・・<宮沢賢治「グスコーブドリの伝記」青空文庫>
  29. ・・・するとテねずみは紙切れを出してするするするっと何か書いて捕り手のねずみに渡しました。 捕り手のねずみは、しばられてごろごろころがっているクねずみの前に来て、すてきにおごそかな声でそれを読みはじめました。「クねずみはブンレツ者によりて・・・<宮沢賢治「クねずみ」青空文庫>
  30. ・・・その六列目にかけて見物していたら、幕間に――と云っても、メイエルホリド劇場にはするすると下りて来るカーテン幕はないから、つまり舞台から俳優が引っこんで、電車製作工場内部を示す構成だけ舞台の上にのこったとき、作者ベズィメンスキーが挨拶に出た。・・・<宮本百合子「ソヴェトの芝居」青空文庫>