ずんぐり例文一覧 22件

  1. ・・・その枝に半ば遮られた、埃だらけの硝子窓の中にはずんぐりした小倉服の青年が一人、事務を執っているのが見えました。「あれですよ。半之丞の子と言うのは。」「な」の字さんもわたしも足を止めながら、思わず窓の中を覗きこみました。その青年が片頬・・・<芥川竜之介「温泉だより」青空文庫>
  2. ・・・とその魚売が笊をひょいと突きつけると、煮染屋の女房が、ずんぐり横肥りに肥った癖に、口の軽い剽軽もので、「買うてやらさい。旦那さん、酒の肴に……はははは、そりゃおいしい、猪の味や。」と大口を開けて笑った。――紳士淑女の方々に高い声では申兼・・・<泉鏡花「小春の狐」青空文庫>
  3. ・・・ ただ一人、水に入ろうとする、ずんぐりものの色の黒い少年を、その諸足を取って、孫八爺が押えたのが見える。押えられて、手を突込んだから、脚をばったのように、いや、ずんぐりだから、蟋蟀のようにもがいて、頭で臼を搗いていた。「――そろ・・・<泉鏡花「神鷺之巻」青空文庫>
  4. ・・・ ――後に、四童、一老が、自動車を辞し去った時は、ずんぐりとして、それは熊のように、色の真黒な子供が、手がわりに銃を受取ると斉しく、むくむく、もこもこと、踊躍して降りたのを思うと、一具の銃は、一行の名誉と、衿飾の、旗表であったらしい。・・・<泉鏡花「燈明之巻」青空文庫>
  5. ・・・ 押並んで、めくら縞の襟の剥げた、袖に横撫のあとの光る、同じ紺のだふだふとした前垂を首から下げて、千草色の半股引、膝のよじれたのを捻って穿いて、ずんぐりむっくりと肥ったのが、日和下駄で突立って、いけずな忰が、三徳用大根皮剥、というのを喚・・・<泉鏡花「露肆」青空文庫>
  6. ・・・ 首が短かく、肩がずんぐりと張り、色が黒い。亀吉というのが本名なら、もう綽名をつける必要はない。 豹吉の傍へ寄って来ると、「兄貴、えらいこっちゃ。刑事の手が廻った!」 亀吉は血相を変えていきなり言った。 お加代の顔に・・・<織田作之助「夜光虫」青空文庫>
  7. ・・・可哀そうなのは、苦労をともにしている瞳のことだと、松本は忘れていた女の顔を、坂田のずんぐりした首に想い出した。 ちょっと見には、つんとしてなにかかげの濃い冷い感じのある顔だったが、結局は疳高い声が間抜けてきこえるただの女だった。坂田のよ・・・<織田作之助「雪の夜」青空文庫>
  8.  この月の二十日前後と産婆に言われている大きな腹して、背丈がずんぐりなので醤油樽か何かでも詰めこんでいるかのような恰好して、おせいは、下宿の子持の女中につれられて、三丁目附近へ産衣の小ぎれを買いに出て行った。――もう三月一日だった。二三・・・<葛西善蔵「死児を産む」青空文庫>
  9. ・・・そして耕吉の窓の下をも一二度、口鬚の巡査は剣と靴音とあわてた叫声を揚げながら、例の風呂敷包を肩にした、どう見ても年齢にしては発育不良のずんぐりの小僧とともに、空席を捜し迷うて駈け歩いていた。「巡査というものもじつに可愛いものだ……」耕吉は思・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  10. ・・・手綱が引かれて馬が止ると同時に防寒帽子の毛を霜だらけにした若いずんぐりした支那人がとびおりた。ひと仕事すまして帰ってきたのだ。「どうしたい?」 毛布を丸めている呉清輝にきいた。「田川がうたれただよ」と呉は朗らかに笑った。「時にゃ・・・<黒島伝治「国境」青空文庫>
  11. ・・・ ずんぐりした方が一寸テレて、帽子の縁に手をやった。 ごじゃ/\と書類の積まさった沢山の机を越して、窓際近くで、顎のしゃくれた眼のひッこんだ美しい女の事務員が、タイプライターを打ちながら、時々こっちを見ていた。こういう所にそんな女を・・・<小林多喜二「独房」青空文庫>
  12. ・・・浪は、太って、ずんぐりして、ちっとも美しくなかった。私は、やたらに酒を呑んだ。酔って来たら、多少ロマンチックな気持も蘇って来て、「あなたは十年まえに、馬に乗って、Kという村に来たこと、なかったかね?」「あったわ。」女は、なんでも無さ・・・<太宰治「デカダン抗議」青空文庫>
  13. ・・・愛嬌もそっけもない、ただずんぐり大きい醜貌の三十男にすぎなくなった。この男を神は、世の嘲笑と指弾と軽蔑と警戒と非難と蹂躙と黙殺の炎の中に投げ込んだ。男はその炎の中で、しばらくもそもそしていた。苦痛の叫びは、いよいよ世の嘲笑の声を大にするだけ・・・<太宰治「答案落第」青空文庫>
  14. ・・・もひやかしに一、二度聴いたことがあったが、西洋人にしては脊の低いずんぐりした体格で、それが高い聴講席をふり仰ぎながら活溌に手を振り身体を動かし頸を曲げてゼスチュアの賑やかな講義をして見せた。ポアンカレのいわゆるゲオメーター型の学者と思われた・・・<寺田寅彦「ベルリン大学(1909-1910)」青空文庫>
  15. ・・・石南花など、七八年前札幌植物園の巖の間で見た時は、ずんぐりで横にがっしりした、まあ謂わば私みたいな形だったのに、ここで見ると同じ種類でもすらりとし、背にのびている。 これは、別府でふと心づいたことだが、九州を歩いて見、どこの樹木でも大体・・・<宮本百合子「九州の東海岸」青空文庫>
  16. ・・・つまりずんぐりなのです。父もお前に似たのをさがしたと申しました。どちらかというと粗末なものなのだけれども、これで私は時計はどれもそれぞれ因縁のあるものをもっていることになったし、寒暖計もあり 馬のついた文鎮、ガラスのペン皿もあり、それぞれの・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  17. ・・・男の方はざらにある、ずんぐりで、年より早く禿が艷と面積とを増したという見かけだ。女は――これも好奇心を呼び起す或る原因だったと云えるが――割に、夜化粧することの好きな外国婦人としては粗末な服装であった。男の小指にはダイアモンドが光っているの・・・<宮本百合子「三鞭酒」青空文庫>
  18. ・・・ 一台ポールの向きをかえるごとに、安全地帯の上をコツ、コツ、歩いている赧ら顔に新しいカンカン帽をかぶり、縞ズボンに白い襟がついた黒チョッキ、黒上衣といういでたちのずんぐりした四十男が、「××橋行きでございます。××橋行きの方はおのり・・・<宮本百合子「電車の見えない電車通り」青空文庫>
  19. ・・・彼女の博士論文から引出された論によると、女学生の体格は統計上背が高くすらりとしたタイプであり、女工たちの体はずんぐりで低く、四肢が短い。この統計によって見ても明かなように高級な智脳活動にはすらりとした背も高いタイプが適し、工場の労働、農業な・・・<宮本百合子「花のたより」青空文庫>
  20. ・・・そしていよいよ事務所まで買いかけたことがわかった時、大柄なずんぐりな二十の息子であるバルザックは父親と大論判をはじめた。バルザックはどうしても文学をやるのだと云って「大声に泣き叫ぶ」騒動を演じた。 母のとりなし、特に妹のロオルの支持で、・・・<宮本百合子「バルザックに対する評価」青空文庫>
  21. ・・・ 袷の対を着て、きっちり髪をわけている幸治は、武骨っぽいずんぐりした体つきに似合わない軟かい笑いをたたえて、テーブルのところへゆっくりした動作で坐った。「随分しばらくお目にかかりませんでしたね」「ついかけちがって……」 多喜・・・<宮本百合子「二人いるとき」青空文庫>
  22. ・・・主人はずんぐりな、眼の小汚い男で、よくゴーリキイをたしなめた。「ほら、また腕なんか掻いてる! お前は町の目抜の商店に勤めてるんだ。これを忘れちゃいけねえ。小僧ってものは扉口んところへ木偶のようにじっと立っているもんだ」 凝っと立って・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの伝記」青空文庫>