せい‐しき【正式】例文一覧 20件

  1. ・・・どういうものか、正式に学校から授けない、ものの巧者は、学士を飛越えて博士になる。博士神巫が、亭主が人殺しをして、唇の色まで変って震えているものを、そんな事ぐらいで留めはしない……冬の日の暗い納戸で、糸車をじい……じい……村も浮世も寒さに喘息・・・<泉鏡花「神鷺之巻」青空文庫>
  2. ・・・ が、正式に画を習い初めたのは淡島屋の養子となってから後であった。小さい時から長袖が志望であったというから、あるいは画師となって立派に門戸を張る心持がまるきりなかったとも限らないが、その頃は淡島屋も繁昌していたし、椿岳の兄の伊藤八兵衛は・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  3. ・・・いるのは、たぶん新聞の誤植であろうと、道子は一応考えたが、しかしひょっとして同じ大阪から受験した女の人の中に自分とよく似た名の田村道子という人がいるのかも知れない、そうだとすれば大変と思って、ひたすら正式の通知を待ちわびた。 合格の通知・・・<織田作之助「旅への誘い」青空文庫>
  4. ・・・「俺も正式に学校でも出ていて、まじめに勤めをするとか、翻訳の稽古でもしていたら、今ごろはこうしたことにもならずにすんだものを、創作なぞと柄にもないことを空想して与太をやってきたのが間違いだったかしれん。どうせ俺のような能なし者には、妻子・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  5. ・・・孩児の頃より既に音律を好み、三歳、痘を病んで全く失明するに及び、いよいよ琴に対する盲執を深め、九歳に至りて隣村の瞽女お菊にねだって正式の琴三味線の修練を開始し、十一歳、早くも近隣に師と為すべき者無きに至った。すぐに京都に上り、生田流、松野検・・・<太宰治「盲人独笑」青空文庫>
  6. ・・・あれの、正式の食べかたは、どういうのかしら。一本のとうもろこしに、食いついている姿は、ハアモニカを懸命に吹き鳴らしているようである。などと、ばかなことを、ふと考える。どんなにひどいニヒルにでも、最後まで附きまとうものは、食べものであるらしい・・・<太宰治「懶惰の歌留多」青空文庫>
  7. ・・・ その後おもちゃ屋で虫めがねのレンズを買って来て、正式の幻燈器械を作ろうとしたが失敗した。今考えてみると光学上の初歩の知識さえ皆無であり、それに使ったレンズがきわめて粗悪なものであるのみならず、焦点距離が長いのに、原画をあまり近く置きす・・・<寺田寅彦「映画時代」青空文庫>
  8. ・・・この種の人は正式の教育を受けない独創的気分の勝った人に往々見受ける事で甚だ惜しむべき事である。とにかく簡単なことについて歴史的に教えることも幾分加味した方が有益だと確信するのである。<寺田寅彦「研究的態度の養成」青空文庫>
  9. ・・・お民の兄は始め芸者を引かせて内に入れたが、間もなく死別れて、二度目は田舎から正式に妻を迎え一時神田辺で何か小売商店を営んでいたところ、震災後商売も次第に思わしからず、とうとう店を閉じて郡部へ引移り或会社に雇われるような始末に、お民は兄の家の・・・<永井荷風「申訳」青空文庫>
  10. ・・・自分は傘を突いたまましばらく玄関の前に立っていた。正式にいうと、あらかじめ重吉に通知をしたうえ、なおH着の時間を電報で言ってやるべきであるが、なるべくお互いの面倒を省いて簡略に事を済ますのが当世だと思って、わざと前触れなしに重吉を襲ったので・・・<夏目漱石「手紙」青空文庫>
  11. ・・・という名をつけている。正式にはドンギョあんであるが、ドンコあんと読まれてもさしつかえないことにしている。 ドンコはいくら下手でも、女子供でも、年よりでも釣れる。それはいくら釣りそこなっても、とにかく釣りあげられるまではエサに食いつくから・・・<火野葦平「ゲテ魚好き」青空文庫>
  12. ・・・譬えば封建の時代に武家は百姓町人を斬棄てると言いながら実際に斬棄てたる者なきが如く、正式に名を存するのみにして習慣の許さゞる所なり。但し天地は広し、真実の父母が銭の為めに娘を売る者さえある世の中ならば、所謂親の威光を以て娘の嫁入を強うる者も・・・<福沢諭吉「新女大学」青空文庫>
  13. ・・・ けれども日本の一九三七年はメーデーを正式に禁止し、蘆溝橋事件をきっかけに中国への侵略戦争が拡大されつつあった。日独伊防共協定が調印されて、国民精神総動員中央連盟が結成された。ブェノスアイレスの第十四回国際ペンクラブ大会へ出席した島崎藤・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」青空文庫>
  14. ・・・ね、首輪がついて居ないから正式に何処の飼犬でもなかったのよ。ね、丁度みかん箱も一つあるから。」 良人は、「どれ」と仔犬を抱きあげ、北向の三坪ばかりの空地につれて行った。私も後をついて出た。 地面におろすと、仔犬は・・・<宮本百合子「犬のはじまり」青空文庫>
  15. ・・・は大胆に拡げ、ラップによって指導されている工場の文学研究会員も、ラップの正式な資格ある加盟員とした。 工場内の文学研究会指導の任務は、五ヵ年計画第三年目当初において、従来に倍する重要な意味をもって、プロレタリア作家の前に現れたのである。・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」青空文庫>
  16. ・・・経歴書を出すということは、正式に組織上の手続きをするという意味であろう。「それは、わたしとしては当然なことだけれど……」 ひろ子には、今、直ぐ、ここで、という用意がなかった。二つの仕事が両側から一時に迫って感じられた。文学の仕事と、・・・<宮本百合子「風知草」青空文庫>
  17. ・・・允子が自分の姙娠を知って正式の結婚を求めるが公荘は、允子には話さなかった病妻が在り、堕胎をせまる。允子はそれを強く拒絶する。「国法を犯すことがこわいというより、胎内に芽んだものを枯らしてしまうことが恐しいのだ。」「どうにか育てられるものなら・・・<宮本百合子「山本有三氏の境地」青空文庫>
  18. ・・・ゴーリキイはこの旅行に正式に結婚していなかった妻を同伴したところ、アメリカの清教徒婦人の間からそのことで、講演開催に反対する運動がはじめられたのであった。 これらの活動でゴーリキイの肺病が悪化した。この旅行の帰途ゴーリキイは政治的移民と・・・<宮本百合子「逝けるマクシム・ゴーリキイ」青空文庫>
  19. ・・・ 与力の座を立ったあとへ、城代太田備中守資晴がたずねて来た。正式の見回りではなく、私の用事があって来たのである。太田の用事が済むと、佐佐はただ今かようかようの事があったと告げて自分の考えを述べ、さしずを請うた。 太田は別に思案もない・・・<森鴎外「最後の一句」青空文庫>
  20. ・・・F君は女学生と秘密に好い中になっていたが、とうとう人に隠されぬ状況になったので、正式に結婚しようとした。それを四国の親元で承引しない。そこで親達を説き勧めにF君が安国寺さんを遣ったと云うのである。 私はそれを聞いて、「安国寺さんを縁談の・・・<森鴎外「二人の友」青空文庫>