せい‐しょ【清書】例文一覧 15件

  1. ・・・ 父親は偏窟の一言居士で家業の宿屋より新聞投書にのぼせ、字の巧い文子はその清書をしながら、父親の文章が縁談の相手を片っ端からこき下す時と同じ調子だと、情なかった。 秋の夜、目の鋭いみすぼらしい男が投宿した。宿帳には下手糞な字で共産党・・・<織田作之助「実感」青空文庫>
  2. ・・・机の前に端座して生徒の清書を点検したり、作文を観たり、出席簿を調べたり、倦ぶれた時はごろりとそこに寝ころんで天井をながめたりしている。 午後二時、この降るのに訪ねて来て、中二階の三段目から『時田!』と首を出したのは江藤という画家である、・・・<国木田独歩「郊外」青空文庫>
  3. ・・・其方に手を執って世話を仕て貰うと清書なども能く出来るような気が仕た。お蝶さんという方は後に關先生の家の方になられた。其頃習うたものは、「いろは」を終って次が「上大人丘一巳」というものであったと覚えて居る。 弱い体は其頃でも丈夫にならなか・・・<幸田露伴「少年時代」青空文庫>
  4. ・・・僕がそれを片はしから清書いたしますから。」 井伏さんも、少し元気を取り戻したようで、握り飯など召し上りながら、原稿用紙の裏にこまかい字でくしゃくしゃと書く。私はそれを一字一字、別な原稿用紙に清書する。「ここは、どう書いたらいいものか・・・<太宰治「『井伏鱒二選集』後記」青空文庫>
  5. ・・・元気を得て、さらに手を入れ、消し去り書き加え、五回ほど清書し直して、それから大事に押入れの紙袋の中にしまって置いた。今年の正月ごろ友人の檀一雄がそれを読み、これは、君、傑作だ、どこかの雑誌社へ持ち込め、僕は川端康成氏のところへたのみに行って・・・<太宰治「川端康成へ」青空文庫>
  6. ・・・い、目的のためには手段を問わないのは、彼ら腕力家の特徴ではあるが、カンシャクみたいなものを起して、おしっこの出たいのを我慢し、中腰になって、彼は、くしゃくしゃと原稿を書き飛ばし、そうして、身辺のものに清書させる。それが、彼の文章のスタイルに・・・<太宰治「如是我聞」青空文庫>
  7. ・・・その中のおもな事を改めてここに清書しておきたいと思う。 宣伝という文字自身には元来別にそう押しつけがましい意味はなくてもよいように思う。道や教えを宣べ伝えるという事は、取りようではたいへん穏やかな仕事のように思われる。しかし同じ事で・・・<寺田寅彦「神田を散歩して」青空文庫>
  8. ・・・図は次の月曜までに清書して出すことにした。ぼくはあの図を出して先生に直してもらったら次の日曜に高橋君を頼んで僕のうちの近所のをすっかりこしらえてしまうんだ。僕のうちの近くなら洪積と沖積があるきりだしずっと簡単だ。それでも肥料の入れようや・・・<宮沢賢治「或る農学生の日誌」青空文庫>
  9. ・・・ イエニーはカールの読みにくい原稿の清書もよくした。けれども、決してトルストイ夫人の「有名な清書」のようにではなく。 一八六七年、遂に世界的な名著『資本論』第一巻が出版された。カールは四十九歳、イエニーは五十三の時であった。 一・・・<宮本百合子「カール・マルクスとその夫人」青空文庫>
  10. ・・・ 鶏舎に面した木戸の方へ廻ると十五の子の字で、雨風にさらされて木目の立った板の面に白墨で、 花園  園主  世話人  助手人と、お清書の様にキッパリキッパリ書いてある。 微笑まずに居られない。 気がついて見る・・・<宮本百合子「後庭」青空文庫>
  11. ・・・南フランスから出て来たドーデが巴里でそのような可憐ないくつかの小説を書きはじめた時分、小さな一人の男の子が書斎の父さんのところから、隣室で清書している母さんのところまでよちよちと書きあげられた原稿を一枚一枚運ぶ役をつとめた。ドーデはその回想・・・<宮本百合子「今日の生活と文化の問題」青空文庫>
  12. ・・・ まさか背負っても行かれまいが、と思いながら、珍らしい気持がして、久し振りに誰はばかる事なく、すいた垣越しに、散らかった埃の中の孝ちゃんの清書だの、閉て切った雨戸の外側に筆太く「馬鹿」と書いてあるのをながめて居た。・・・<宮本百合子「二十三番地」青空文庫>
  13. ・・・その下に低い机をすえて、ひろ子が、その清書をやっていた。「何だか足のさきがつめたいな」 重吉が、日ざしは暖かいのに、という風に南の縁側の日向を眺めながら云った。十一月に入ったばかりの穏やかな昼すぎであった。「ほんとなら今頃菊の花・・・<宮本百合子「風知草」青空文庫>
  14. ・・・口書下書を読み聞せられて、酉の下刻に引き取った。 二十三日には筒井から四度目の呼出が来た。口書清書に実印、爪印をさせられた。 二十八日には筒井から五度目の呼出が来た。用番老中水野越前守忠邦の沙汰で、九郎右衛門、りよは「奇特之儀に付構・・・<森鴎外「護持院原の敵討」青空文庫>
  15. ・・・ いちは起きて、手習いの清書をする半紙に、平がなで願書を書いた。父の命を助けて、その代わりに自分と妹のまつ、とく、弟の初五郎をおしおきにしていただきたい、実子でない長太郎だけはお許しくださるようにというだけの事ではあるが、どう書きつづっ・・・<森鴎外「最後の一句」青空文庫>