せい‐じん【成人】例文一覧 30件

  1. ・・・緋縅の鎧や鍬形の兜は成人の趣味にかなった者ではない。勲章も――わたしには実際不思議である。なぜ軍人は酒にも酔わずに、勲章を下げて歩かれるのであろう?   武器 正義は武器に似たものである。武器は金を出しさえすれば、敵にも味方・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  2. ・・・たった五年、たった十年、――子供さえ成人すれば好いのです。それでもいけないと云うのですか? 使 さあ、年限はかまわないのですが、――しかしあなたをつれて行かなければ代りが一人入るのです。あなたと同じ年頃の、…… 小町 (興奮では誰で・・・<芥川竜之介「二人小町」青空文庫>
  3. ・・・殊に自分なぞはそれから七八年、中学から高等学校、高等学校から大学と、次第に成人になるのに従って、そう云う先生の存在自身さえ、ほとんど忘れてしまうくらい、全然何の愛惜も抱かなかったものである。 すると大学を卒業した年の秋――と云っても、日・・・<芥川竜之介「毛利先生」青空文庫>
  4. ・・・そして小屋の中が真暗になった日のくれぐれに、何物にか助けを求める成人のような表情を眼に現わして、あてどもなくそこらを見廻していたが、次第次第に息が絶えてしまった。 赤坊が死んでから村医は巡査に伴れられて漸くやって来た。香奠代りの紙包を持・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  5. ・・・……しかし立派に御成人じゃな。」「お恥かしゅう存じます。」「久しぶりじゃ、ちと庫裡へ。――渋茶なと進ぜよう。」「かさねまして、いずれ伺いますが、旅さきの事でございますし、それに御近所に参詣をしたい処もございますから。」「ああ・・・<泉鏡花「夫人利生記」青空文庫>
  6. ・・・この点は、成人を相手とする読物以上に骨の折れることであって、技巧とか、単なる経験有無の問題でなく天分にもよるのであるが、また、いかに児童文学の至難なるかを語る原因でもあります。 もし、その作者が、真実と純愛とをもって世上の子供達を見た時・・・<小川未明「新童話論」青空文庫>
  7. ・・・殊に、文芸の必要なるべきは、少年期の間であって、すでに成人に達すれば、娯楽として文芸を求むるにすぎません。しからざれば、趣味としてにとゞまります。世間に出るに及んで、生活の規矩を政治、経済に求むるが、むしろ当然だからです。 さらば、何故・・・<小川未明「近頃感じたこと」青空文庫>
  8. ・・・凡そ、そこには、子供と成人の区別すらないにちがいない。 真に、美しいもの、また正しいものは、いつでも、無条件にそうあるのであって、それは、理窟などから、遙かに超越する。そして、直ちに、人間の感情に迫るのである。 独り、それは、花の美・・・<小川未明「名もなき草」青空文庫>
  9. ・・・山間僻地のここらにしてもちと酷過ぎる鍵裂だらけの古布子の、しかもお坊さんご成人と云いたいように裾短で裄短で汚れ腐ったのを素肌に着て、何だか正体の知れぬ丸木の、杖には長く天秤棒には短いのへ、五合樽の空虚と見えるのを、樹の皮を縄代りにして縛しつ・・・<幸田露伴「雁坂越」青空文庫>
  10. ・・・長いこと親戚のほうに預けてあった娘が学齢に達するほど成人して、また親のふところに帰って来たということは、私に取っての新しいよろこびでもあった。そのころの末子はまだ人に髪を結ってもらって、お手玉や千代紙に余念もないほどの小娘であった。宿屋の庭・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  11. ・・・その児は乳房を押えて飲むほどに成人していた。「俺にもおくれやれ」と鞠子は母が口をモガモガさせるのに目をつけた。「オンになんて言っちゃ不可の。ね。私に頂戴ッて」 お島はなぐさみに鯣を噛んでいた。乳呑児の乳を放させ、姉娘に言って聞か・・・<島崎藤村「岩石の間」青空文庫>
  12. ・・・私たちの王子と、ラプンツェルも、お互い子供の時にちらと顔を見合せただけで、離れ難い愛着を感じ、たちまちわかれて共に片時も忘れられず、苦労の末に、再び成人の姿で相逢う事が出来たのですが、この物語は決してこれだけでは終りませぬ。お知らせしなけれ・・・<太宰治「ろまん燈籠」青空文庫>
  13. ・・・自分はどうかこうか世間並の坊ちゃんで成人し、黒田のような苦労の味をなめた事もない。黒田の昔話を小説のような気で聞いていた。月々郷里から学資を貰って金の心配もなし、この上気楽な境遇はなかった筈であるが、若い心には気楽無事だけでは物足りなかった・・・<寺田寅彦「イタリア人」青空文庫>
  14. ・・・廟堂の諸君も昔は若かった、書生であった、今は老成人である。残念ながら御ふるい。切棄てても思想はきょうきょうたり。白日の下に駒を駛せて、政治は馬上提灯の覚束ないあかりにほくほく瘠馬を歩ませて行くというのが古来の通則である。廟堂の諸君は頭の禿げ・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  15. ・・・ その頃作った漢詩や俳句の稿本は、昭和四年の秋感ずるところがあって、成人の後作ったいろいろの原稿と共に、わたくしは悉くこれを永代橋の上から水に投じたので、今記憶に残っているものは一つもない。 わたくしは或雑誌の記者から、わたくしの少・・・<永井荷風「十六、七のころ」青空文庫>
  16. ・・・ わたくしは子供のころ、西瓜や真桑瓜のたぐいを食うことを堅く禁じられていたので、大方そのせいでもあるか、成人の後に至っても瓜の匂を好まないため、漬物にしても白瓜はたべるが、胡瓜は口にしない。西瓜は奈良漬にした鶏卵くらいの大きさのものを味・・・<永井荷風「西瓜」青空文庫>
  17. ・・・小児の時のみではない成人してからも始終訪問れた。クララの居る所なら海の底でも行かずにはいられぬ。彼はつい近頃まで夜鴉の城へ行っては終日クララと語り暮したのである。恋と名がつけば千里も行く。二十哩は云うに足らぬ。夜を守る星の影が自ずと消えて、・・・<夏目漱石「幻影の盾」青空文庫>
  18. ・・・ かくて、地上には無限に肥った一人の成人と、蒼空まで聳える轢殺車一台とが残るのか。 そうだろうか! そうだとするとお前は困る。もう啖うべき赤ん坊がなくなったじゃないか。 だが、その前に、お前は年をとる。太り過ぎた轢殺車がお前・・・<葉山嘉樹「牢獄の半日」青空文庫>
  19. ・・・箇月の苦しみを経て出産の上、夏の日冬の夜、眠食の時をも得ずして子を育てたる其心労は果して大ならざるか、小児に寒暑の衣服を着せ無害の食物を与え、言葉を教え行儀を仕込み、怪我もさせぬように心を用いて、漸く成人させたる其成跡は果して大ならざるか、・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  20. ・・・ 民権論者とて悉皆老成人に非ず。あるいは白面の書生もあらん、あるいは血気の少年もあらん。その成行決して安心すべからず。万々一もこの二流抱合の萌を現わすことあらば、文明の却歩は識者をまたずして知るべし。これすなわち禍の大なるものなり。国の・・・<福沢諭吉「学者安心論」青空文庫>
  21. ・・・いわゆる教育なるものは則ち能力の培養にして、人始めて生まれ落ちしより成人に及ぶまで、父母の言行によって養われ、あるいは学校の教授によって導かれ、あるいは世の有様に誘われ、世俗の空気に暴されて、それ相応に萌芽を出し生長を遂ぐるものなれば、その・・・<福沢諭吉「家庭習慣の教えを論ず」青空文庫>
  22. ・・・ その趣は、老成人が少年に向い、直接にその遊冶放蕩を責め、かえって少年のために己が昔年の品行を摘発枚挙せられ、白頭汗を流して赤面するものに異ならず。直接の譴責は各自個々の間にてもなおかつ効を見ること少なし。いわんや天下億万の後進生に向っ・・・<福沢諭吉「徳育如何」青空文庫>
  23. ・・・それから食べ物がなくなると殺 須利耶さまは何気ないふうで、そんな成人のようなことを云うもんじゃないとは仰っしゃいましたが、本統は少しその天の子供が恐ろしくもお思いでしたと、まあそう申し伝えます。 須利耶さまは童子を十二のとき、少し離・・・<宮沢賢治「雁の童子」青空文庫>
  24. ・・・卑怯な成人たちに畢竟不可解なだけである。四 これは田園の新鮮な産物である。われらは田園の風と光の中からつややかな果実や、青い蔬菜といっしょにこれらの心象スケッチを世間に提供するものである。注文の多い料理店はその十二巻のセリー・・・<宮沢賢治「『注文の多い料理店』新刊案内」青空文庫>
  25. ・・・ 文化に対する理解がそこにあるとされているが、そういう国では現在青年群に与える読みものとしてそういう古典を整頓しているほか、その青年たちが成人したときその世代の文化的創造力を溌溂旺盛ならしめるために、どんな独創の可能を培いつつあるのだろ・・・<宮本百合子「明日の実力の為に」青空文庫>
  26. ・・・なぜなら、こんにち十八歳になった日本の青年男女たちは、いちども、こういう事実は見知らされないで成人して来なければならなかったのだから。そして、青春こそ、いつも歴史の英雄であり得るとともに、いたましい犠牲でもあるのだから。わたしはこの一冊を、・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」青空文庫>
  27. ・・・夫人、成人して若い妻となっている令嬢、その良人その他幼い洋服姿の男の子、或は先夫人かと思われるような婦人まで、正座の画家をめぐって花で飾られたテーブルのまわりをきっしりととりかこんでいるのである。 一応は和気藹々たるその光景は、主人公が・・・<宮本百合子「或る画家の祝宴」青空文庫>
  28. ・・・文化関係で、ラジオの民主化のための放送委員会、軍国主義の出版統制の遺風を民主化するための用紙割当委員会、出版文化委員会、教育の民主化、成人教育のための社会教育委員会、そのほか一九四六年から次の年の春までぐらいにつくられた委員会の多くは、正直・・・<宮本百合子「「委員会」のうつりかわり」青空文庫>
  29. ・・・嫡子光尚の周囲にいる少壮者どもから見れば、自分の任用している老成人らは、もういなくてよいのである。邪魔にもなるのである。自分は彼らを生きながらえさせて、自分にしたと同じ奉公を光尚にさせたいと思うが、その奉公を光尚にするものは、もう幾人も出来・・・<森鴎外「阿部一族」青空文庫>
  30. ・・・祈り終って声は一層幽に遠くなり、「坊や坊には色々いい残したいことがあるが、時迫って……何もいえない……ぼうはどうぞ、無事に成人して、こののちどこへ行て、どのような生涯を送っても、立派に真の道を守ておくれ。わたしの霊はここを離れて、天の喜びに・・・<若松賤子「忘れ形見」青空文庫>