せい‐ぜん【整然】例文一覧 20件

  1. ・・・粟野さんは今日も煙草の缶、灰皿、出席簿、万年糊などの整然と並んだ机の前に、パイプの煙を靡かせたまま、悠々とモリス・ルブランの探偵小説を読み耽っている。が、保吉の来たのを見ると、教科書の質問とでも思ったのか、探偵小説をとざした後、静かに彼の顔・・・<芥川竜之介「十円札」青空文庫>
  2. ・・・ と、肩に斜なその紫包を、胸でといた端もきれいに、片手で捧げた肱に靡いて、衣紋も褄も整然とした。「絵ですか、……誰の絵なんです。」「あら、御存じない?……あなた、鴾先生のじゃありませんか。」「ええ、鴾君が、いつね、その絵を。・・・<泉鏡花「開扉一妖帖」青空文庫>
  3. ・・・髪の薄い天窓を真俯向けにして、土瓶やら、茶碗やら、解かけた風呂敷包、混雑に職員のが散ばったが、その控えた前だけ整然として、硯箱を右手へ引附け、一冊覚書らしいのを熟と視めていたのが、抜上った額の広い、鼻のすっと隆い、髯の無い、頤の細い、眉のく・・・<泉鏡花「朱日記」青空文庫>
  4. ・・・思いなしか、気のせいか、段々窶れるようには見えるけんど、ついぞ膝も崩した事なし、整然として威勢がよくって、吾、はあ、ひとりでに天窓が下るだ、はてここいらは、田舎も田舎だ。どこに居た処で何の楽もねえ老夫でせえ、つまらねえこったと思って、気が滅・・・<泉鏡花「琵琶伝」青空文庫>
  5. ・・・「そうだろうな、あの気象でも、極りどころは整然としている。嫁入前の若い娘に、余り聞かせる事じゃないから。 ――さて、問題の提灯だ。成程、その人に、切籠燈のかわりに供えると、思ったのはもっともだ。が、そんな、実は、しおらしいとか、心入・・・<泉鏡花「縷紅新草」青空文庫>
  6. ・・・ 机の上を見ると、教科書用の書籍そのほかが、例のごとく整然として重ねてある。その他周囲の物すべてが皆なその処を得て、キチンとしている。 室の下等にして黒く暗憺なるを憂うるなかれ、桂正作はその主義と、その性情によって、すべてこれらの黒・・・<国木田独歩「非凡なる凡人」青空文庫>
  7. ・・・ 清潔、整然、金色の光を放ち、ふくいくたる香気が発するくらい。タンス、鏡台、トランク、下駄箱の上には、可憐に小さい靴が三足、つまりその押入れこそ、鴉声のシンデレラ姫の、秘密の楽屋であったわけである。 すぐにまた、ぴしゃりと押入れをし・・・<太宰治「グッド・バイ」青空文庫>
  8. ・・・首尾ノ一貫、秩序整然。ケサノコノ走リ書モマタ、純粋ノ主観的表白ニアラザルコトハ、皆様承知。プンクト、ナドノ君ノ気持チト思イ合セヨ。急ニ書キタクナクナッタ。 スベテノ言、正シク、スベテノ言、嘘デアル。所詮ハ筏ノ上ノ組ンヅホツレツデアル、ヨ・・・<太宰治「創生記」青空文庫>
  9. ・・・       七 むかでの歩くのを見ていると、あのたくさんの足が実に整然とした運動をしている。一種の疎密波が身長に沿うて虫の速度よりは早い速度で進行する。 もしか自分がむかでになってあれだけのたくさんな足を一つ一つ意識的・・・<寺田寅彦「藤棚の陰から」青空文庫>
  10. ・・・また書き方が如何にも整然としていて、粗雑な点が少しもない。」「優れた科学者のうちに、一つの問題に対する『最初の言葉』を云う人と、『最後の言葉』を述べる人とあったとしたら、レーリーは多分後者に属したかもしれない。」 しかし彼はまたかなり多・・・<寺田寅彦「レーリー卿(Lord Rayleigh)」青空文庫>
  11. ・・・大阪、京都などのような都会は、違った文化が見られて悪るくはないと思いますが、旅として見て、東海道あたりの海が見え、松があるといった美しいだけで、唯長々と眠につづいている整然とした風景よりも、変化のある北の方が好ましいと思います。 旅行で・・・<宮本百合子「愛と平和を理想とする人間生活」青空文庫>
  12. ・・・建物も整然、子供らも整然整然。すべてこれ優等児製造はかくの如き文化性から生み出されるかという印象を与える雰囲気、画面の所謂芸術写真風な印画美であるが、私たち数人の観衆はこの文化映画として紹介されているもののつめたさに対して何か人間としての・・・<宮本百合子「映画の語る現実」青空文庫>
  13. ・・・婦人従業員をふくめた自衛団が組織され、全員十六歳から二十五歳という青年だがその統制が整然としていること。職場の特殊性をすべて争議団側に有利なように科学的に利用している点とともに、革命的指導による極めて新しいストライキの型を示すものであった。・・・<宮本百合子「刻々」青空文庫>
  14. ・・・愉快そうで、整然としていて、胸も躍る光景だ。「五ヵ年計画ヲ四ヵ年デ!」「ブルジョア反ソヴェト陰謀ヲブッ潰セ!」 次から次へ赤いプラカードが来る。あいまには、張物だ。ブルジョア、地主、坊主が、社会主義社会建設のために働くプロレタリ・・・<宮本百合子「勝利したプロレタリアのメーデー」青空文庫>
  15. ・・・だから十二三位の子供と話して見ると、彼等の有っている知識が実に整然としていて、範囲が非常に広く、国際的であるのにびっくりする。無駄がない。 それからまた一方に、ソヴェトの教育は、労作と結び付いている教育である。だから例えば我々が学校・・・<宮本百合子「ソヴェト・ロシアの素顔」青空文庫>
  16. ・・・ 勿論、人間の生活が徒に秩序正しいので完全なものだとも云えなければ、整然としたのばかりがよいのではありません。然し、我々の生活では、頭や心が何等かの意味に於て混乱している時、願っても順序よい生産的な日常を持つことは出来ないのではあります・・・<宮本百合子「男女交際より家庭生活へ」青空文庫>
  17. ・・・メリメの作品の力と欠点とは整然とした描写の統制の中にある。 バルザックの文章は、書かれている事件が複雑な歴史に踏みへらされたパリの石敷道にブルジョアの馬車が立ててゆく埃を浴びているばかりでなく、文章そのものが、まるで、一見無駄なものや、・・・<宮本百合子「バルザックに対する評価」青空文庫>
  18. ・・・と大旗を立て整然とした男女の大部隊がつづいてくる。とりわけ元気に、赤旗を先頭に立ててきた一団の中にあの顔、見なれた若い女の人たちがいて、互に行列の中と歩道から思わず声をかけて手をとり合い、わたしは、もうほんの少しで行進の中にさらいこまれそう・・・<宮本百合子「メーデーに歌う」青空文庫>
  19. ・・・ 単純であった為、整然としていた自己というものは、極度に分裂してしまいました。分裂した一部分が、それぞれの活力と発言権とをもって対立する。 この時、私が、実際生活上に起る諸事の軽重を弁え、兎に角自己の立てるべき処を失わずに日々を処理・・・<宮本百合子「われを省みる」青空文庫>
  20. ・・・雑多な記憶材料に一定の方向を与え、それを整然とした形に結晶させた力は、あくまでも探求心である。 言語の問題に関しては先生はいつも活発な関心を持っていられた。わたくしのわずかな接触の間にも、この問題についておりにふれて教えられたことは、か・・・<和辻哲郎「露伴先生の思い出」青空文庫>