せい‐そ【清×楚】例文一覧 13件

  1. ・・・その側にある筆硯類は、いずれも清楚と云うほかはない。と思うとまた人を待つように、碧玉の簫などもかかっている。壁には四幅の金花箋を貼って、その上に詩が題してある。詩体はどうも蘇東坡の四時の詞に傚ったものらしい。書は確かに趙松雪を学んだと思う筆・・・<芥川竜之介「奇遇」青空文庫>
  2. ・・・まだ十八になったばかしの、痛痛しいばかりに初々しい清楚な娘さんである。 その娘さんがお茶を立てるのを見ながら、自分は苦しいばかりの幸福感をのんでいたと、あとで彼は私に語った。話はすぐ纒った。 しかし、娘さんの両親は、結婚式はこんど晴・・・<織田作之助「十八歳の花嫁」青空文庫>
  3. ・・・娘の風俗はなるべく清楚に。その自分の好みから父さんは割り出して、袖子の着る物でも、持ち物でも、すべて自分で見立ててやった。そして、いつまでも自分の人形娘にしておきたかった。いつまでも子供で、自分の言うなりに、自由になるもののように…… ・・・<島崎藤村「伸び支度」青空文庫>
  4. ・・・を見つめながら箸を動かしていたのであるが、図の中央に王子のような、すこやかな青春のキリストが全裸の姿で、下界の動乱の亡者たちに何かを投げつけるような、おおらかな身振りをしていて、若い小さい処女のままの清楚の母は、その美しく勇敢な全裸の御子に・・・<太宰治「俗天使」青空文庫>
  5. ・・・時は仕官懸命の地をうらやみ、まさか仏籬祖室の扉の奥にはいろうとは、思わなかったけれど、教壇に立って生徒を叱る身振りにあこがれ、機関車あやつる火夫の姿に恍惚として、また、しさいらしく帳簿しらべる銀行員に清楚を感じ、医者の金鎖の重厚に圧倒され、・・・<太宰治「春の盗賊」青空文庫>
  6. ・・・ 浴場は、つい最近新築されたものらしく、よごれが無く、純白のタイルが張られて明るく、日光が充満していて、清楚の感じである。湯槽は割に小さく、三坪くらいのものである。浴客が、五人いた。私は湯槽にからだを滑り込ませて、ぬるいのに驚いた。水と・・・<太宰治「美少女」青空文庫>
  7. ・・・しかし部屋が割合に気持のいい部屋で、すべてが清楚な感じを与えた。のみならず、そこで食わせる料理も、味が軽くて、分量があまり多くなくて、自分の鈍い胃には比較的に工合がいいので、何かの機会にそこで食事をする事も稀ではなかった。 広いこの都会・・・<寺田寅彦「雑記(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」青空文庫>
  8.        一 清楚な感じのする食堂で窓から降りそそぐ正午の空の光を浴びながらひとり静かに食事をして最後にサーヴされたコーヒーに砂糖をそっと入れ、さじでゆるやかにかき交ぜておいて一口だけすする。それから上着の右のか・・・<寺田寅彦「詩と官能」青空文庫>
  9. ・・・学校の内、きわめて清楚、壁に疵つくる者なく、座を汚す者なく、妄語せず、乱足せず、取締の法、ゆきとどかざるところなし。かつ学校の傍にその区内町会所の席を設け、町役人出張の場所となして、町用を弁ずるの傍に生徒の世話をも兼ぬるゆえ、いっそうの便利・・・<福沢諭吉「京都学校の記」青空文庫>
  10. ・・・外観が清楚でおどろいたが、内部のこの清潔さはどうだ! タイルを張った受付のところでも、直ぐ見える階段でも、真白で、靴からこぼれた泥らしいものさえない。 白い布で頭を包んだ女に、自分は対外文化連絡協会からの手紙を渡した。「一寸まって下・・・<宮本百合子「モスクワ日記から」青空文庫>
  11. ・・・いかにも清楚で柔らかな感じを持った画である。『いでゆ』を作者と同じ立場に立って批評すれば、第一に、温泉浴室の柔艶な情趣を生かし得た事において成功である。湯気のためにほの白くなった檜の色も、湯気に包まれてほのかに輝く女の体も、この情趣を画・・・<和辻哲郎「院展遠望」青空文庫>
  12. ・・・その円い滑らかな肩の美しさ。清楚なしかもふくよかなその胸の神々しさ。清らかな、のびのびした円い腕。肢体を包んで静かに垂直に垂れた衣。そうして柔らかな、無限の慈悲を湛えているようなその顔。――そこにはいのちの美しさが、波の立たない底知れぬ深淵・・・<和辻哲郎「偶像崇拝の心理」青空文庫>
  13. ・・・あるとき藤村は、置き物を一つか二つに限った清楚な座敷をながめて、こうきれいに片づいていると、寒々とした感じがしますね、と言ったことがある。 その藤村が自分の家を建てたいと考え始めたのは、たぶん長男の楠雄さんのために郷里で家を買ったころか・・・<和辻哲郎「藤村の個性」青空文庫>