せい‐そく【生息/×棲息/×栖息】例文一覧 30件

  1. ・・・して見れば我我の棲息する地球も、――是等の結合の一つたる地球も太陽系中の一惑星に限らず、無限に存在している筈である。この地球上のナポレオンはマレンゴオの戦に大勝を博した。が、茫々たる大虚に浮んだ他の地球上のナポレオンは同じマレンゴオの戦に大・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  2. ・・・     九 蓬莱橋は早や見える、折から月に薄雲がかかったので、野も川も、船頭と船とを淡く残して一面に白み渡った、水の色は殊にやや濁を帯びたが、果もなく洋々として大河のごとく、七兵衛はさながら棲息して呼吸するもののない、月世界の海を・・・<泉鏡花「葛飾砂子」青空文庫>
  3. ・・・ たゞ然し、最も妥当なる順序は、われ/\の現在生息しつゝある現代の文学書に親しみ、次第に過去時代の産物に遡ることを以て、効果多い方法と信ずる。たとえばルソーの『懺悔録』あたりから、近代精神の何ものであるかを知って、更にわれ/\の時代に近・・・<小川未明「文章を作る人々の根本用意」青空文庫>
  4. ・・・まして地球に生息する一切の有機体をや。細は細菌より、大は大象にいたるまでの運命である。これは、天文・地質・生物の諸科学が、われらにおしえるところである。われら人間が、ひとりこの拘束をまぬがれることができようか。 いな、人間の死は、科学の・・・<幸徳秋水「死刑の前」青空文庫>
  5. ・・・ 是れ太陽の運命である、地球及び総ての遊星の運命である、況して地球に生息する一切の有機体をや、細は細菌より大は大象に至るまでの運命である、これ天文・地質・生物の諸科学が吾等に教ゆる所である、吾等人間惟り此鈎束を免るることが出来よう歟。・・・<幸徳秋水「死生」青空文庫>
  6. ・・・思っても見よ太古の動物が太古そのままの姿で、いまもなお悠然とこの日本の谷川に棲息し繁殖し、また静かにものを思いつつある様は、これぞまさしく神ながら、万古不易の豊葦原瑞穂国、かの高志の八岐の遠呂智、または稲羽の兎の皮を剥ぎし和邇なるもの、すべ・・・<太宰治「黄村先生言行録」青空文庫>
  7. ・・・王廟は、三国時代の呉の将軍甘寧を呉王と尊称し、之を水路の守護神としてあがめ祀っているもので、霊顕すこぶるあらたかの由、湖上往来の舟がこの廟前を過ぐる時には、舟子ども必ず礼拝し、廟の傍の林には数百の烏が棲息していて、舟を見つけると一斉に飛び立・・・<太宰治「竹青」青空文庫>
  8. ・・・ 池中に棲息するある生物の研究を、学位論文の題目とした先輩が、少なくも二人はあるそうである。 田中館先生が電流による水道鉄管の腐蝕に関する研究をされた時、やはりこの池の水中でいろいろの実験をやられたように聞いている。その時に使われた・・・<寺田寅彦「池」青空文庫>
  9. ・・・ しかし蝗やフラミンゴーに限らず、ゼブラでもニューでも、インパラでもジラフでもみんな群れをなして棲息している。アフリカでは食うことの不自由はないであろうからやはり生命の敵に対する防衛の便宜から自然に集団生活に慣らされたのか、それとも生殖・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  10. ・・・実際今でも世界じゅうには生涯一冊の書物も所有せず、一行の文章も読んだことのない人間は、かなりたくさんに棲息していることであろう。こういうふうに考えてみると、書物という商品は、岐阜提灯や絹ハンケチや香水や白粉のようなものと同じ部類に属する商品・・・<寺田寅彦「読書の今昔」青空文庫>
  11. ・・・海でなくて奥山にこんな貝がいるというのがいかにも不思議に思われたが、その貝の棲息状態などについてはだれも話してくれる人はなかった。海の「オコゼ」は魚であるのになぜ山の「オコゼ」が貝であるかも不可解であった。「山オコゼ」がどうして売り物に・・・<寺田寅彦「物売りの声」青空文庫>
  12. ・・・『註文帳』は廓外の寮に住んでいる娼家の娘が剃刀の祟でその恋人を刺す話を述べたもので、お歯黒溝に沿うた陰欝な路地裏の光景と、ここに棲息して娼妓の日用品を作ったり取扱ったりして暮しを立てている人たちの生活が描かれている。研屋の店先とその親爺・・・<永井荷風「里の今昔」青空文庫>
  13. ・・・ 夜烏子は山の手の町に居住している人たちが、意義なき体面に累わされ、虚名のために齷齪しているのに比して、裏長屋に棲息している貧民の生活が遥に廉潔で、また自由である事をよろこび、病余失意の一生をここに隠してしまったのである。或日一家を携え・・・<永井荷風「深川の散歩」青空文庫>
  14. ・・・その結果は現に吾々が生息している社会の実況を目撃すればすぐ分ります。活力節約の方から云えばできるだけ労働を少なくしてなるべくわずかな時間に多くの働きをしようしようと工夫する。その工夫が積り積って汽車汽船はもちろん電信電話自動車大変なものにな・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  15. ・・・御母さんは駄菓子を犬に取られるたびに泣き得るような平面に立って社会に生息していられるものではない。写生文家は思う。普通の小説家は泣かんでもの事を泣いている。世の中に泣くべき事がどれほどあると思う。隣りのお嬢さんが泣くのを拝見するのは面白い。・・・<夏目漱石「写生文」青空文庫>
  16. ・・・ 余は日本人として、神武天皇以来の日本人が、如何なる事業をわが歴史上に発展せるかの大問題を、過去に控えて生息するものである。固より余一人の仕事は、余一人の仕事に違いないのだから、余一人の意志で成就もし破壊もするつもりではあるが、余の過去・・・<夏目漱石「『東洋美術図譜』」青空文庫>
  17. ・・・以上を一口にして云えば物の内容を知り尽した人間、中味の内に生息している人間はそれほど形式に拘泥しないし、また無理な形式を喜ばない傾があるが、門外漢になると中味が分らなくってもとにかく形式だけは知りたがる、そうしてその形式がいかにその物を現す・・・<夏目漱石「中味と形式」青空文庫>
  18. ・・・ 我々人間としてこの世に存在する以上どうもがいても道徳を離れて倫理界の外に超然と生息する訳には行かない。道徳を離れることができなければ、一見道徳とは没交渉に見える浪漫主義や自然主義の解釈も一考して見る価値がある。この二つの言葉は文学者の・・・<夏目漱石「文芸と道徳」青空文庫>
  19. ・・・だから現今ぴんぴん生息している人間は皆不正直もので、律義な連中はとくの昔に、汽車に引かれたり、川へ落ちたり、巡査につかまったりして、ことごとく死んでしまったと御承知になれば大した間違はありません。 すでに空間ができ、時間ができれば意識を・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  20. ・・・してみるといわゆる文明社界に生息している人間ほど平等的なるものはなく、また個人的なるものはない。すでに平等的である以上は圏を画して圏内圏外の別を説く必要はない。英国の二大政党のごときは単に採決に便宜なる約束的の団隊と見傚して差支ない。またす・・・<夏目漱石「文壇の趨勢」青空文庫>
  21. ・・・第一、ドンコは南方の魚で、日本では大体、琵琶湖から西方のみに棲息している。ダボハゼに似ているので、関東方面でもドンコを見たという人があるけれども、学問的にもいないことが証明されている。 魚の辞典を引いてみると、ドンコはドンコ属という独立・・・<火野葦平「ゲテ魚好き」青空文庫>
  22. ・・・それだのに、きょうのわたしたちの現実にからみついて棲息している旧いものの力はどうだろう。それがいっそういとわしいことには、民主的だとか新しい日本の建設だとかいういいかたのうちに、いつも六分まで旧いものをもりこんで、出されて来ることである。日・・・<宮本百合子「偽りのない文化を」青空文庫>
  23. ・・・わたくしとはいわず、あたくしと、はやりどおりにいうこの女性は、どうしてこんなに賢こげな言葉をつらねてすべてまともであるべき問題を、はぐらかし、銀色に光っているとすれば、それは不潔のうちに棲息するなめくじの這い跡のようでなくてはならないのだろ・・・<宮本百合子「傷だらけの足」青空文庫>
  24. ・・・今日文化の全面に亙って棲息している事大的な棒振り的理論を、作曲家たちも演奏者たちも、しっかりした音楽的教養、人間としての判断力、穢れざる趣味で選択批判してゆかなければならないでしょう。 それにつけて、音楽批評家の任務は重大と思われますが・・・<宮本百合子「期待と切望」青空文庫>
  25. ・・・私たちが自分たちの世代を歴史の水深計でつかみ、その上に漂いその間に棲息するだけでなくて、波間の底まで触れて描いて行けたらどんなに面白いだろう。小説は話ではなくて作家にとってはもう一度その世界を生きかえそうとする情熱であることを忘られてはなら・・・<宮本百合子「今日の文学の諸相」青空文庫>
  26. ・・・ 生きているということが人間にとっては只棲息しているという意味ではなく、歴史を自覚して生活してゆくということであってみれば、私たちが体だけは丈夫にと思う心の中に自然、精神も丈夫に、という思いもこもっている次第でしょう。 日本が世界歴・・・<宮本百合子「歳々是好年」青空文庫>
  27. ・・・「いつも文学を文壇の習慣と結びつけなければ棲息出来ぬ因循さが、自然主義以来牢固として脱けず、テーマがあってもモチーフがなければ仕事は出来ぬという完成にまで達するに到った。」そして横光氏は、彼によって何ものかである如く示される自意識の整理の要・・・<宮本百合子「作家に語りかける言葉」青空文庫>
  28. ・・・プロレタリア文学が自分の歴史性を喪って、治安維持法と検閲の枠内だけに棲息する文学になり下るモメントとなった。三二年に国際的決定を見た日本の半封建社会は、その社会に即する半封建の思惟力と文学のよわい脚との上に、プロレタリア文学運動もろとも社会・・・<宮本百合子「作家の経験」青空文庫>
  29. ・・・破産の噂が、殆ど別な世界に栖息していると云って好い僕なんぞの耳に這入る位であるから、怜悧らしいあの女がそれに気が附かずにいる筈はない。なぜ死期の近い病人の体を蝨が離れるように、あの女は離れないだろう。それに今の飾磨屋の性質はどうだ。傍観者で・・・<森鴎外「百物語」青空文庫>
  30. ・・・従ってまた個人は、社会に安全に生息するために、ある型に自分をはめ込まねばならぬ、というような必要から全然解放せられた。何人も、何らの束縛なしに、彼自身であってよい。何者にも盲従するには当たらない。しかし人間が超個人的な永遠な事業を完成するた・・・<和辻哲郎「世界の変革と芸術」青空文庫>