せい‐ふく【征服】例文一覧 30件

  1. ・・・が、支那はそのために、我々を征服出来たでしょうか? たとえば文字を御覧なさい。文字は我々を征服する代りに、我々のために征服されました。私が昔知っていた土人に、柿の本の人麻呂と云う詩人があります。その男の作った七夕の歌は、今でもこの国に残って・・・<芥川竜之介「神神の微笑」青空文庫>
  2. ・・・己は第一に、妙な征服心に動かされた。袈裟は己と向い合っていると、あの女が夫の渡に対して持っている愛情を、わざと誇張して話して聞かせる。しかも己にはそれが、どうしてもある空虚な感じしか起させない。「この女は自分の夫に対して虚栄心を持っている。・・・<芥川竜之介「袈裟と盛遠」青空文庫>
  3. ・・・ちょうどそれと同じように、無線電信や飛行機がいかに自然を征服したと云っても、その自然の奥に潜んでいる神秘な世界の地図までも、引く事が出来たと云う次第ではありません。それならどうして、この文明の日光に照らされた東京にも、平常は夢の中にのみ跳梁・・・<芥川竜之介「妖婆」青空文庫>
  4. ・・・彼は征服した敵地に乗り込んだ、無興味な一人の将校のような気持ちを感じた。それに引きかえて、父は一心不乱だった。監督に対してあらゆる質問を発しながら、帳簿の不備を詰って、自分で紙を取りあげて計算しなおしたりした。監督が算盤を取りあげて計算をし・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  5. ・・・しかしやがて疲労は凡てを征服した。死のような眠りが三人を襲った。 遠慮会釈もなく迅風は山と野とをこめて吹きすさんだ。漆のような闇が大河の如く東へ東へと流れた。マッカリヌプリの絶巓の雪だけが燐光を放ってかすかに光っていた。荒らくれた大きな・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  6. ・・・ こう言って、青木が僕の方を見た時には、僕の目に一種の勝利、征服、意趣返し、または誇りとも言うべき様子が映ったので、ひょッとすると、僕と吉弥の関係を勘づいていて特に金ずくで僕に対してこれ見よがしのふりをするのではないかと思われた。 ・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  7. ・・・世に勝つの力、地を征服する力はやはり信仰であります。ユグノー党の信仰はその一人をもって鋤と樅樹とをもってデンマーク国を救いました。よしまたダルガス一人に信仰がありましてもデンマーク人全体に信仰がありませんでしたならば、彼の事業も無効に終った・・・<内村鑑三「デンマルク国の話」青空文庫>
  8. ・・・みんな、あなたに征服されます。あなたをおそれないものはおそらく、この宇宙に、ただの一つもありますまい。」 これを聞くと、運命の星は、快げにほほえみました。そして、うなずいたのであります。 また、しばらく時が過ぎました。空に風が出たよ・・・<小川未明「ある夜の星たちの話」青空文庫>
  9. ・・・ 曾て、彼等の祖先によって、この地球が征服されていた時代があったことを考えなければならぬ。そして、また気候の変化したる幾万年の後に至るも果して、今日の如く、人類がこの地球の征服者であると誰が確信するものがありましょうか。適者生存は、犯し・・・<小川未明「天を怖れよ」青空文庫>
  10. ・・・そして今や現実の世界を遠く脚下に征服して、おもむろに宇宙人生の大理法、恒久不変の真理を冥想することのできる新生活が始ったのだと、思わないわけに行かないのであった。 彼は慣れぬ腰つきのふらふらする恰好を細君に笑われながら、肩の痛い担ぎ竿で・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  11.  彼は永年病魔と闘いました。何とかしてその病魔を征服しようと努力しました。私も又彼を助けて、共にその病魔を斃そうと勉めましたが、遂に最後の止めを刺されたのであります。 本年二月二十六日の事です。何だか身体の具合が平常と違・・・<梶井久「臨終まで」青空文庫>
  12. ・・・しかしよくしたもので、男性は女性を圧迫するように見えても、だんだんと女性を尊敬するようになり、そのいうことをきくようになり、結局は女性に内側から征服されていく。社会の進歩というものは、ある意味で、この男性が女性の霊の力に征服されてきた歴史な・・・<倉田百三「女性の諸問題」青空文庫>
  13.    一、反戦文学の階級性      一 戦争には、いろ/\な種類がある。侵略的征服的戦争がある。防禦戦がある。又、民族解放戦争、革命も、そこにはある。 戦争反対の文学は、かなり昔から存在して居るが、ブル・・・<黒島伝治「反戦文学論」青空文庫>
  14. ・・・ それは西暦千八百六十五年の七月の十三日の午前五時半にツェルマットという処から出発して、名高いアルプスのマッターホルンを世界始まって以来最初に征服致しましょうと心ざし、その翌十四日の夜明前から骨を折って、そうして午後一時四十分に頂上・・・<幸田露伴「幻談」青空文庫>
  15. ・・・何らかの威力が迫って来て、私のこの知識を征服してくれたら、私は始めて信じ得るの幸福に入るであろう。 されば現下の私は一定の人生観論を立てるに堪えない。今はむしろ疑惑不定のありのままを懺悔するに適している。そこまでが真実であって、その先は・・・<島村抱月「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」青空文庫>
  16. ・・・自己の中に、アルプスの嶮にまさる難所があって、それを征服するのに懸命です。僕たちは、それを為しとげた人を個人英雄という言葉で呼んで、ナポレオンよりも尊敬して居ります。」 来た。待っていたものが来た。新しい、全く新しい次のジェネレーション・・・<太宰治「花燭」青空文庫>
  17. ・・・まず、あいつを完全に征服し、あいつを遠慮深くて従順で質素で小食の女に変化させ、しかるのちにまた行進を続行する。いまのままだと、とにかく金がかかって、行進の続行が不可能だ。 勝負の秘訣。敵をして近づかしむべからず、敵に近づくべし。 彼・・・<太宰治「グッド・バイ」青空文庫>
  18. ・・・馬を斃し、たまさかには獅子と戦ってさえこれを征服するとかいうではないか。さもありなんと私はひとり淋しく首肯しているのだ。あの犬の、鋭い牙を見るがよい。ただものではない。いまは、あのように街路で無心のふうを装い、とるに足らぬもののごとくみずか・・・<太宰治「畜犬談」青空文庫>
  19. ・・・私は学生がアレキサンダー大王その外何ダースかの征服者の事を少しも知らなくても、大した不幸だとは思わない。こういう人物が残した古文書的の遺産は、無駄なバラストとして記憶の重荷になるばかりである。どうしても古代に溯りたいなら、せめてサイラスやア・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  20. ・・・ このようにカメラの焦点とその位置および視角の移動によって現在の映画は、事実上、少なくも心理的には立体的実体的な空間を征服しているのである。それでこの上に多大の苦心をしていわゆる立体映画がようやく成功したとしても、その効能はおそらくそう・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  21. ・・・西洋のある国が世界を征服する日を夢みているような日本人があったら、そういう人はこの映画を見るといいと思う。 この酋長の子が食われたので、映画師らは酋長に合わせる顔がないといってしょげる場面はどうも少し芝居じみる。A life for a・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  22. ・・・眼だけを何故私は征服することが出来なかっただろうか。 若し彼女が私の眼を見ようものなら、「この人もやっぱり外の男と同じだわ」と思うに違いないだろう。そうすれば、今の私のヒロイックな、人道的な行為と理性とは、一度に脆く切って落されるだろう・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  23. ・・・桃太郎が桃から生れて、犬、猿、キジをひきつれて鬼という架空的存在を征服して、宝物をひとりで取って平気でいるのでは、ものにならない。 桃太郎は貧乏な小作人の子で、鬼は悪地主だ。三人の仲間を中心として悪地主をやっつけて、村の農民みんなのため・・・<宮本百合子「新たなプロレタリア文学」青空文庫>
  24. ・・・ 中年に成って、アンネットはその恋愛に征服された。彼女は精力的な、社会の下層から身をのし上げた、有名な、派手な、素晴らしく天才的な外科医を愛するようになった。アンネットは、その男が征服的な、革命的な、精力に満ちた社会的闘士でなかったら愛・・・<宮本百合子「アンネット」青空文庫>
  25. ・・・クリスチアーナという女の愛に失望したマリオ・ルドヴィッチ中尉が従来の生活環境と感情とから脱却するために、アフリカのリビヤへ赴きそこの守備隊に加って土民征服に出かける。この経験から生きる目的を一変させた中尉ルドヴィッチは後を慕って来たクリスチ・・・<宮本百合子「イタリー芸術に在る一つの問題」青空文庫>
  26. ・・・「お前はヨーロッパを征服する奴は何者だと思う」「それは陛下が一番よく御存知でございましょう」「いや、余よりもよく知っている奴がいそうに思う」「何者でございます」 ナポレオンは答の代りに、いきなりネーのバンドの留金がチョッ・・・<横光利一「ナポレオンと田虫」青空文庫>
  27. ・・・彼らの憎悪と怨恨と反逆とは、征服者の予想を以て雀躍する。軈て自由と平等とはその名の如く美しく咲くであろう。その尽きざる快楽の欣求を秘めた肺腑を持って咲くであろう。四騎手は血に濡れた武器を隠して笑うであろう。しかし我々は、彼らの手からその武器・・・<横光利一「黙示のページ」青空文庫>
  28. ・・・アメリカを征服したヨーロッパ人たちが、このアフリカの沿岸にも侵入し、侵入した限りは破壊し去ったのである。なぜか。アメリカの新しい土地が奴隷を必要としたからである。アフリカは奴隷を供給した。何百、何千の奴隷を、船荷のようにして。しかし人身売買・・・<和辻哲郎「アフリカの文化」青空文庫>
  29. ・・・私たちはこの穢ないものを恥じるゆえに、抑圧し征服し得るゆえに、安んじていていいものでしょうか。私は自分に親しい者たちの心の内に同じような穢ないものがある事を想像するのはとてもたまらない。それと同じく他の人も私の心の暗い影を想像するのは非常に・・・<和辻哲郎「ある思想家の手紙」青空文庫>
  30. ・・・生が自然と戦いそれを征服している。 私はそこに現われた集中と純一と全存在的な活動とのゆえにしばし恍惚とした。 この気持ちのよさは我々がすべての活動に追い求めている所の一種の法悦であった。我々の内にもまた、生の焔はかく燃え上がらなくて・・・<和辻哲郎「生きること作ること」青空文庫>