せい‐めい【生命】例文一覧 38件

  1. ・・・作の力、生命を掴むものが本当の批評家である。」と云う説があるが、それはほんとうらしい嘘だ。作の力、生命などと云うものは素人にもわかる。だからトルストイやドストエフスキイの翻訳が売れるのだ。ほんとうの批評家にしか分らなければ、どこの新劇団でも・・・<芥川竜之介「江口渙氏の事」青空文庫>
  2. ・・・一つの種子の生命は土壌と肥料その他唯物的の援助がなければ、一つの植物に成育することができないけれども、そうだからといって、その種子の生命は、それが置かれた環境より価値的に見て劣ったものだということができないのと同じことだ。 しかるに空想・・・<有島武郎「想片」青空文庫>
  3. ・・・B 歌のような小さいものに全生命を託することが出来ないというのか。A おれは初めから歌に全生命を託そうと思ったことなんかない。何にだって全生命を託することが出来るもんか。おれはおれを愛してはいるが、そのおれ自身だってあまり信用しては・・・<石川啄木「一利己主義者と友人との対話」青空文庫>
  4. ・・・ 人の妻と、かかる術して忍び合うには、疾く我がためには、神なく、物なく、父なく、母なく、兄弟なく、名誉なく、生命のないことを悟っていたけれども、ただ世に里見夫人のあるを知って、神仏より、父より、母より、兄弟より、名誉より、生命よりは便に・・・<泉鏡花「伊勢之巻」青空文庫>
  5. ・・・ 僕の今を率直にいえば、妻子が生命の大部分だ。野心も功名もむしろ心外いっさいの欲望も生命がどうかこうかあってのうえという固定的感念に支配されているのだ。僕の生命からしばらくなりとも妻や子を剥ぎ取っておくならば、僕はもう物の役に立たないも・・・<伊藤左千夫「去年」青空文庫>
  6. ・・・僕はそのふくれている様子を想像出来ないではないが、いりもしない反動心が起って来ると同時に、今度の事件には僕に最も新らしい生命を与える恋――そして、妻には決して望めないの――が含んでいるようにも思われた。それで、妾にしても芸者をつれて帰るかも・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  7. ・・・尺寸の小幀でも椿岳一個の生命を宿している。古人の先蹤を追った歌舞伎十八番のようなものでも椿岳独自の個性が自ずから現われておる。多い作の中には不快の感じを与えられるものもあるが、この不快は椿岳自身の性癖が禍いする不快であって、因襲の追随から生・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  8. ・・・けれども、私が考えてみると、今日第一の欠乏は Life 生命の欠乏であります。それで近ごろはしきりに学問ということ、教育ということ、すなわち Cultureということが大へんにわれわれを動かします。われわれはドウしても学問をしなければならぬ・・・<内村鑑三「後世への最大遺物」青空文庫>
  9. ・・・みんなの希望まで、自分の生命の中に宿して、大空に高く枝を拡げて、幾万となく群がった葉の一つ一つに日光を浴びなければならないと思いましたが、それはまだ遠いことでありました。 最初、この木の芽の生えたのを見つけたものは、空を渡る雲でありまし・・・<小川未明「明るき世界へ」青空文庫>
  10. ・・・しかし、平常は無口でも、いざとなればべらべらとこなして行くのが年期を入れた俳優の生命で、文壇でも書きにくい大阪弁を書かせてかなり堂に入った数人の作家がいる。 しかし、その作家たちの書いている大阪弁を読むと、同じ書き方をしている作家は一人・・・<織田作之助「大阪の可能性」青空文庫>
  11. ・・・私の生命力といったようなものが、涸渇してしまったのであろうか? 私は他人の印象から、どうかするとその人の持ってる生命力とか霊魂とかいったものの輪郭を、私の気持の上に描くことができるような気のされる場合があるが、それが私自身のこととなると、私・・・<葛西善蔵「遁走」青空文庫>
  12. ・・・束の間の閃光が私の生命を輝かす。そのたび私はあっあっと思った。それは、しかし、無限の生命に眩惑されるためではなかった。私は深い絶望をまのあたりに見なければならなかったのである。何という錯誤だろう! 私は物体が二つに見える酔っ払いのように、同・・・<梶井基次郎「筧の話」青空文庫>
  13. ・・・目であったが、自分でも少し可笑しくなって来たか急に調子を変え、声を低うし笑味を含ませて、「何となれば、女は欠伸をしますから……凡そ欠伸に数種ある、その中尤も悲むべく憎くむ可きの欠伸が二種ある、一は生命に倦みたる欠伸、一は恋愛に倦みたる欠・・・<国木田独歩「牛肉と馬鈴薯」青空文庫>
  14. ・・・ すなわち一つは宇宙の生命の法則の見地から見て、かりのきめであって、固執すると無理があるということだ。も一つはたとい多少の無理を含んでいても、進化してきた人間の理想として、男女の結合の精神的、霊的指標として打ち立て、築き守って、行くべき・・・<倉田百三「愛の問題(夫婦愛)」青空文庫>
  15. ・・・また撃ち合いだ。生命がどうなるか。誰れが知るもんか! 誰れが知るもんか!   六 松木は、酒保から、餡パン、砂糖、パインアップル、煙草などを買って来た。 晩におそくなって、彼は、それを新聞紙に包んで丘を登った。石のように・・・<黒島伝治「渦巻ける烏の群」青空文庫>
  16. ・・・の上にはあるならんと疑いつ、呼び入れて問いただすに、秩父に生れ秩父に老いたるものの事とて世はなれたる山の上を憂しともせず、口に糊するほどのことは此地にのみいても叶えば、雲に宿かり霧に息つきて幾許もなき生命を生くという。おかしき男かなと思いて・・・<幸田露伴「知々夫紀行」青空文庫>
  17. ・・・ そして、この働きざかりのときにおいて、あるいは人道のために、あるいは事業のために、あるいは恋愛のために、あるいは意気のために、とにかく、自己の生命より重いと信ずるあるもののために、力のかぎり働いて、倒れてのちやまんとすることは、まず死・・・<幸徳秋水「死刑の前」青空文庫>
  18. ・・・今朝も、わたしの家では、十八九輪もの眼のさめるようなやつが互の小さな生命を競い合うように咲いている。これから追々と花も小さくなって、秋深い空気の中に咲き残るのもまた捨てがたい風情があろう。・・・<島崎藤村「秋草」青空文庫>
  19. ・・・ 第一の飛行機が日光へ向った同じ午前に、一方では、波多野中尉が一名の兵卒をつれて、同じく冒険的に生命をとして大阪に飛行し、はじめて東京地方の惨状の報告と、救護その他軍事上の重要命令を第四師団にわたし、九時間二十分で往復して来ました。それ・・・<鈴木三重吉「大震火災記」青空文庫>
  20. ・・・スバーの若い健やかな生命は、胸の中で高鳴りました。歓びと悲しさとが、彼女の身も心も、溢れるばかりに迫って来る。スバーは、際限のない自分の寂しささえ超えて恍惚として仕舞いました。彼女の心は、堪え難い程苦しく重い、而も、云うことは出来ないのです・・・<著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子「唖娘スバー」青空文庫>
  21. ・・・すこしも、よろこびが無い。生命力が貧弱です。 ばかに、威張ったような事ばかり言って、すみませんでした。」<太宰治「一問一答」青空文庫>
  22. ・・・希望、奮闘、勉励、必ずそこに生命を発見する。この濁った血が新しくなれると思う。けれどこの男は実際それによって、新しい勇気を恢復することができるかどうかはもちろん疑問だ。 外濠の電車が来たのでかれは乗った。敏捷な眼はすぐ美しい着物の色を求・・・<田山花袋「少女病」青空文庫>
  23. ・・・ 唄合戦の揚句に激昂した恋敵の相手に刺された青年パーロの瀕死の臥床で「生命の息を吹込む」巫女の挙動も実に珍しい見物である。はじめには負傷者の床の上で一枚の獣皮を頭から被って俯伏しになっているが、やがてぶるぶると大きくふるえ出す、やがてむ・・・<寺田寅彦「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」青空文庫>
  24. ・・・ちょうどおひろが高脚のお膳を出して、一人で御飯を食べているところで、これでよく生命が続くと思うほど、一と嘗めほどのお菜に茄子の漬物などで、しょんぼり食べていた。店の女たちも起きだして、掃除をしていた。「独りで食べてうまいかね」「わた・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  25. ・・・しかしながら当局者はよく記臆せなければならぬ、強制的の一致は自由を殺す、自由を殺すはすなわち生命を殺すのである。今度の事件でも彼らは始終皇室のため国家のためと思ったであろう。しかしながらその結果は皇室に禍し、無政府主義者を殺し得ずしてかえっ・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  26. ・・・人はその生命の終らぬ中から早く忘れられて行く。その事に思い至れば、生もまたその淋しい事において、甚しく死と変りがないのであろう。        ○ オペラ館の楽屋口に久しく風呂番をしていた爺さんがいた。三月九日の夜に死んだか・・・<永井荷風「草紅葉」青空文庫>
  27. ・・・以上述べた如くローマンチシズムの思想即ち一の理想主義の流れは、永久に変ることなく、深く人心の奥底に永き生命を有しているものであります。従ってローマン主義の文学は永久に生存の権利を有しております。人心のこの響きに触れている限り、ローマン主義の・・・<夏目漱石「教育と文芸」青空文庫>
  28. ・・・ただ翻身一回、此智、此徳を捨てた所に、新な智を得、新な徳を具え、新な生命に入ることができるのである。これが宗教の真髄である。宗教の事は世のいわゆる学問知識と何ら交渉もない。コペルニカスの地動説が真理であろうが、トレミーの天動説が真理であろう・・・<西田幾多郎「愚禿親鸞」青空文庫>
  29. ・・・でないと出来上った六神丸の効き目が尠いだろうから、だが、――私はその階段を昇りながら考えつづけた――起死回生の霊薬なる六神丸が、その製造の当初に於て、その存在の最大にして且つ、唯一の理由なる生命の回復、或は持続を、平然と裏切って、却って之を・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  30. ・・・』『生命があったらば。』と莞爾なすって。 私は若子さんの意の中を思遣って、見て居られなくなって横を向きました。 すると、直き傍で急に泣声が発ったのです。見ますとね、先刻の何人でも呪いそうな彼の可怖い眼の方が、隣の列車の窓につかま・・・<広津柳浪「昇降場」青空文庫>