せい‐よく【性欲/性×慾】例文一覧 30件

  1. ・・・   恋愛 恋愛は唯性慾の詩的表現を受けたものである。少くとも詩的表現を受けない性慾は恋愛と呼ぶに価いしない。   或老練家 彼はさすがに老練家だった。醜聞を起さぬ時でなければ、恋愛さえ滅多にしたことはない。・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  2. ・・・あれは少年に現われたサアド型性欲ではないであろうか? 杉浦は僕のクラスの中でも最も白はくせきの少年だった。のみならずある名高い富豪の妾腹にできた少年だった。     二七 画 僕は幼稚園にはいっていたころには海軍将校になるつ・・・<芥川竜之介「追憶」青空文庫>
  3. ・・・彼は、愛も憎みも、乃至また性欲も忘れて、この象牙の山のような、巨大な乳房を見守った。そうして、驚嘆の余り、寝床の汗臭い匂も忘れたのか、いつまでも凝固まったように動かなかった。――楊は、虱になって始めて、細君の肉体の美しさを、如実に観ずる事が・・・<芥川竜之介「女体」青空文庫>
  4. ・・・私の心の中では聖書と性慾とが激しい争闘をしました。芸術的の衝動は性欲に加担し、道義的の衝動は聖書に加担しました。私の熱情はその間を如何う調和すべきかを知りませんでした。而して悩みました。その頃の聖書は如何に強烈な権威を以て私を感動させました・・・<有島武郎「『聖書』の権威」青空文庫>
  5. ・・・芸術的の衝動は性欲に加担し、道義的の衝動は聖書に加担しました。私の熱情はその間を如何う調和すべきかを知りませんでした。而して悩みました。その頃の聖書は如何に強烈な権威を以て私を感動させましたろう。聖書を隅から隅にまですがりついて凡ての誘惑に・・・<有島武郎「『聖書』の権威」青空文庫>
  6. ・・・人間の自然性だの性欲の満足だのとあまり流行臭い思想で浅薄に解し去ってはいけない。 世に親というものがなくなったときに、われらを産んでわれらを育て、長年われらのために苦労してくれた親も、ついに死ぬ時がきて死んだ。われらはいま多くのわが子を・・・<伊藤左千夫「去年」青空文庫>
  7. ・・・ゆくまいというは道徳心の省作で、行きたい行きたいとするのは性欲の省作とでもいおうか。一方は行かない方がえいとはいうけれど、一方では行きたい行きたいの念がむらむらと抑え切れない。 もしおとよさんが、こっそり湯端へきて何とか言ったらどうしよ・・・<伊藤左千夫「隣の嫁」青空文庫>
  8. ・・・私は業を煮やして、あの小説は嘘を書いただけでなく、どこまで小説の中で嘘がつけるかという、嘘の可能性を試してみた小説だ、嘘は小説の本能なのだ、人間には性慾食慾その他の本能があるが、小説自体にももし本能があるとすれば、それは「嘘の可能性」という・・・<織田作之助「可能性の文学」青空文庫>
  9. ・・・彼がそのなかに見る半ば夢想のそして半ば現実の男女の姿態がいかに情熱的で性欲的であるか。またそれに見入っている彼自身がいかに情熱を覚え性欲を覚えるか。窓のなかの二人はまるで彼の呼吸を呼吸しているようであり、彼はまた二人の呼吸を呼吸しているよう・・・<梶井基次郎「ある崖上の感情」青空文庫>
  10. ・・・健康なる青年にあってはその性慾の目ざめと同時に、その倫理的感覚が呼びさまされ、恋愛と正義とがひとつに融かされて要請されるものである。 さてかような倫理的要請は必ず倫理学という学に向かうとは限らない。一般に科学というものを知らなかった上古・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  11. ・・・人情にはむしろこの方が適し、小乗の宗教に通じる。性欲を満したいという意欲と、国君に殉死したいという意欲とに、そのものとしての価値等級を付さないことは人情には無理である。大乗の宗教はしかしそこまで徹しなければならないのであるが、倫理学が宗教な・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  12. ・・・現実主義者が恋愛は性慾と生殖作用の上部構造にすぎないといっても、精神的憧憬の深いイデアリストは恋愛が性慾をこえた側面を持ち、むしろそのこえんとする悩みにこそ、恋愛の秘義があると主張してやまないであろう。 青年学生はいずれ関心事たる恋愛に・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  13. ・・・ 少佐の性慾の××になったのだ。兵卒達はそういうことすら知らなかった。 何故、シベリアへ来なければならなかったか。それは、だれによこされたのか? そういうことは、勿論、雲の上にかくれて彼等、には分らなかった。 われわれは、シベリ・・・<黒島伝治「渦巻ける烏の群」青空文庫>
  14. ・・・それで彼は生理的な発作のようにくる性慾のために、夜通し興奮して寝れないことがあった。こんなことで苦しむのはばかげたことかもしれない。が、プルドーンが、そんな時屋根の上にあがり、星を眺め、気を沈め、しばらくそうしてから室に帰り眠るということを・・・<小林多喜二「雪の夜」青空文庫>
  15. ・・・○あたりまえの人になりたい努力。○所詮は、言葉だ。やっぱり、言葉だ。すべては、言葉だ。○KR女史に、耳環を贈る約束。○人の子には、ひとつの顔しか無かった。○性慾を憎む。○明日。 読んでいって、てるには、ひどく不思・・・<太宰治「古典風」青空文庫>
  16. ・・・あのダメな男につけ込んでさんざん痛めつけるという女性特有の本能を持っているからなのでございましょうか、とにかく私はそのすさまじい文章を或る詩の雑誌で読み、がたがた震えまして、極度の恐怖感のため、へんな性慾倒錯のようなものを起し、その六十歳を・・・<太宰治「男女同権」青空文庫>
  17. ・・・すなわち、性慾衝動に基づく男女間の激情。具体的には、一個または数個の異性と一体になろうとあがく特殊なる性的煩悶。色慾の Warming-up とでも称すべきか。」 ここに一個または数個と記したのは、同時に二人あるいは三人の異性を恋い慕い・・・<太宰治「チャンス」青空文庫>
  18. ・・・すなわち恋の風雅であり、風雅の一相としての恋愛であり性欲である。恋の中に浸りながら恋を静観しうる心の余裕があるものでなければ俳諧の恋の句を作る事はできない。実際芭蕉は人間禽獣はもちろん山川草木あらゆる存在に熱烈な恋をしかけ、恋をしかけられた・・・<寺田寅彦「俳諧の本質的概論」青空文庫>
  19. ・・・は、その惑溺の最中に書いた抒情詩の集編であり、したがつてあのショーペンハウエル化した小乗仏教の臭気や、性慾の悩みを訴へる厭世哲学のエロチシズムやが、集中の詩篇に芬々として居るほどである。しかし僕は、それよりも尚多くのものをニイチェから学んだ・・・<萩原朔太郎「ニイチェに就いての雑感」青空文庫>
  20. ・・・それに此女だって性慾の満足のためには、屍姦よりはいいのだ。何と云っても未だ体温を保っているんだからな。それに一番困ったことには、私が船員で、若いと来てるもんだから、いつでもグーグー喉を鳴らしてるってことだ。だから私は「好きなように」すること・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  21. ・・・畢竟するに其気品高尚にして性慾以上に位するが故なりと言わざるを得ず。曾て東京に一士人あり、頗る西洋の文明を悦び、一切万事改進進歩を気取りながら、其実は支那台の西洋鍍金にして、殊に道徳の一段に至りては常に周公孔子を云々して、子女の教訓に小学又・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  22. ・・・ ○彼等の運命の裡に於て、長与氏は、性慾を極端にまで厭うべき文字で呼んで居る。「結婚した許りの夜と同じく獣の真似をして居た。」或は「獣的遊戯」と呼んで居る。然し、性慾は、或は夫婦間の交接と云う事は、左様云うような不正な、根本・・・<宮本百合子「黄銅時代の為」青空文庫>
  23. ・・・  黄銅時代の為に、 トルストイの性慾論中より、「愛する者とのみ結合しようとするのは――結婚に依ると依らざるの別なく、よし又詩的に小説的に理想化せられ得るとしても――多くの人々が立派なものと思って居る豊富な美食を求めよう・・・<宮本百合子「結婚に関し、レークジョージ、雑」青空文庫>
  24. ・・・それは男性なれば極端な性欲或いは愛の葛藤も書け、そしてそれが批判される場合も、女性によって書かれたもの程つまらない好奇心を起させますまい。勿論、芸術品に対してそんな下劣な観賞者の言葉を気にする必要はないわけですが、この懸念が実際に女の心の中・・・<宮本百合子「今日の女流作家と時代との交渉を論ず」青空文庫>
  25. ・・・ 次に人の目に附いたのは、衝動生活、就中性欲方面の生活を書くことに骨が折ってある事であった。それも西洋の近頃の作品のように色彩の濃いものではない。言わば今まで遠慮し勝ちにしてあった物が、さほど遠慮せずに書いてあるという位に過ぎない。・・・<森鴎外「沈黙の塔」青空文庫>
  26. ・・・君は衣食の闕乏を憂えない。君は性慾を制している。君は尋常の徼幸者とは違う。君はとにかくえらいと、私は思った。そこで初め君との間に保留して置いた距離が次第に短縮するのを、私は妨げようとはしなかった。私の鑑識は或は錯っていたかも知れない。しかし・・・<森鴎外「二人の友」青空文庫>
  27. ・・・    良い夢 夢は夢らしくない夢がよい。人生は夢らしくない。それがよい。    性欲の夢 トルストイがゴルキーに君はどんな恐ろしい夢を見たかと質問した。「長靴がひとり雪の中をごそごそと歩いていた。」とゴ・・・<横光利一「夢もろもろ」青空文庫>
  28. ・・・題材が恋愛、性欲等であり、その題材自身が不倫な恋や肉欲の興味をそそり得る場合には、確かに風俗壊乱という影響を公衆の或る者に及ぼし得る。だからこの種の影響をうける人間が多数に存在する以上、検閲官がその作品を禁止するのは当然である。がしかしそれ・・・<和辻哲郎「蝸牛の角」青空文庫>
  29. ・・・その彼らはまた処女の神聖を神にささげると称して神殿を婚姻の床に代用する。性欲の神秘を神に帰するがゆえに、また神殿は娼婦の家ともなる。パウロはそれを自分の眼で見た。そうして「いたく心を痛め」た。桂の愛らしい緑や微風にそよぐプラタアネの若葉に取・・・<和辻哲郎「『偶像再興』序言」青空文庫>
  30. ・・・しかし彼らが社会の裏に住む無恥な女を描き、性慾の衝動に動く浮薄な男を描き、あるいは山国海辺、あるいは大都会小都会の風物情緒を描く時には、それがあらゆる階級の男女や東西南北の諸地方を材料とするにかかわらず、またそれぞれの境遇や土地をおのおのそ・・・<和辻哲郎「「自然」を深めよ」青空文庫>