せい‐りつ【成立】例文一覧 30件

  1. ・・・保たしむるにあらざるよりは、我に貞なりとはいうことを得ずとなし、はじめよりお通の我を嫌うこと、蛇蝎もただならざるを知りながら、あたかも渠に魅入たらんごとく、進退隙なく附絡いて、遂にお通と謙三郎とが既に成立せる恋を破りて、おのれ犠牲を得たりし・・・<泉鏡花「琵琶伝」青空文庫>
  2. ・・・等二三の重なる雑誌でさえが其執筆者又は寄書家に相当の報酬を支払うだけの経済的余裕は無かったので、当時の雑誌の存在は実は操觚者の道楽であって、ビジネスとして立派に成立していたのでは無かった。従って操觚者が報酬を受くる場合は一冊の著述をする外な・・・<内田魯庵「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」青空文庫>
  3. ・・・早稲田大学は本と高田、天野、坪内のトライアンビレートを以て成立した。三君各々相譲らざる功労がある。シカシ世間が早稲田を認めるのは、政治科及び法律科が沢山の新聞記者や代議士や実業家を輩出したにも関らず、政治科でも法律科でもなくて文学科である。・・・<内田魯庵「明治の文学の開拓者」青空文庫>
  4. ・・・即ち文章とは、己が思想感情をそのまゝに披瀝することによって、初めて成立するものであると。 そこから、更にこういうことも云える。古来日本の文章には、何々して何々侍るというような雅文体や、何々し何々すべけんやというような漢文体なぞが行われて・・・<小川未明「文章を作る人々の根本用意」青空文庫>
  5. ・・・幾子は恥かしくて言えないのだから、自分が言えばそれで話は成立するわけだと思った。で、口をひらこうとした途端、いきなり幾子が、「話っていうのはね。……あなた、入山さんとお友達でしょう?」「うん。友達や」 彼の顔はふと毛虫を噛んだよ・・・<織田作之助「四月馬鹿」青空文庫>
  6. ・・・いったい今度の金は、どうかして君の作家としての生活を成立させたいというつもりから立替えた金なんで、それを君が間違いなく返してくれると、この次ぎの場合にも、僕がしなくもまたきっと他の誰かがしてくれるだろう、そうなればあるいは君の作家生活もなり・・・<葛西善蔵「遁走」青空文庫>
  7. ・・・或る一人が他の一人を窘めようと思って、非常に字引を調べて――勿論平常から字引をよく調べる男でしたが、文字の成立まで調べて置いて、そして敵が講じ了るのを待ち兼ねて、難問の箭を放ちました。何様も十分調べて置いてシツッコク文字論をするので講者は大・・・<幸田露伴「学生時代」青空文庫>
  8. ・・・何故螺線的運動をするかというに、世界は元来、なんでも力の順逆で成立ッているのだから、東へ向いて進む力と、西に向て進む力、又は上向と下向、というようにいつでも二力の衝突があるが、その二力の衝突調和という事は是非直線的では出来ないものに極ッてる・・・<幸田露伴「ねじくり博士」青空文庫>
  9. ・・・地上の熱度漸く下降し草木漸く萠生し那辺箇辺の流潦中若干原素の偶然相抱合して蠢々然たる肉塊を造出し、日照し風乾かし耳目啓き手足動きて茲に乃ち人類なる者の初て成立せし以来、我日本の帝室は常に現在して一回も跡を斂めたることなし。我日本の帝室は開闢・・・<幸徳秋水「文士としての兆民先生」青空文庫>
  10. ・・・本当の恋を囁いている間に自身の芸術家の虫が、そろそろ頭をもたげて来て、次第にその虫の喜びのほうが増大して、満場の喝采が眼のまえにちらつき、はては、愛慾も興覚めた、という解釈も成立し得ると思います。まことに芸術家の、表現に対する貪婪、虚栄、喝・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  11. ・・・南京に、新政府の成立する日であります。私は、政治の事は、あまり存じません。けれども、「和平建国」というロマンチシズムには、やっぱり胸が躍ります。日本には、戦争を主として描写する作家も居りますけれど、また、戦争は、さっぱり書けず、平和の人の姿・・・<太宰治「三月三十日」青空文庫>
  12. ・・・じっさい、自惚れが無ければ、恋愛も何も成立できやしませんが、僕はそれから毎晩のようにトヨ公に通い、また、昼にはおかみと一緒に銀座を歩いたり、そうして、ただもう自惚れを増すばかりで、はたから見たら、あさましい馬か狼がよだれを流して荒れ狂ってる・・・<太宰治「女類」青空文庫>
  13.  数年前に「ボーヤ」と名づけた白毛の雄猫が病死してから以来しばらくわが家の縁側に猫というものの姿を見ない月日が流れた。先年、犬養内閣が成立したとおなじ日に一羽のローラーカナリヤが迷い込んで来たのを捕えて飼っているうち、ある朝・・・<寺田寅彦「ある探偵事件」青空文庫>
  14. ・・・従ってこの変った家庭の成立についても細君の元の身分についても、何事も確かな事は聞かれなかった。今は黒田も地方へ行ってしまってイタリア人の話をする機会も絶えた。 こんな事を色々思い出して帰って来ると宅のきたないのが今更のように目に付く。よ・・・<寺田寅彦「イタリア人」青空文庫>
  15. ・・・     映画の成立 以上のようなわけであるから、映画とは何かという問題を考えるには、抽象的な議論をする前にまず映画がどうして作られるかという実際上の過程を考えてみることが必要であると思う。 一つの映画が作り上げられるま・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  16. ・・・ 従ってイズムは既に経過せる事実を土台として成立するものである。過去を総束するものである。経験の歴史を簡略にするものである。与えられたる事実の輪廓である。型である。この型を以て未来に臨むのは、天の展開する未来の内容を、人の頭で拵えた器に・・・<夏目漱石「イズムの功過」青空文庫>
  17. ・・・ 四十余年間の歴史を見ると、昔は理想から出立した教育が、今は事実から出発する教育に変化しつつあるのであります、事実から出発する方は、理想はあるけれども実行は出来ぬ、概念的の精神に依って人は成立する者でない、人間は表裏のあるものであるとし・・・<夏目漱石「教育と文芸」青空文庫>
  18. ・・・その時ふとこの顔とこの様子から、自分の住む現在の社会が成立しているのだという考がどこからか出て来て急に不安になるのです。そうして早々自分の穴へ帰りたくなるんです。 そのときはまだ好いが、次にきっと自分も人から見れば、やっぱり浮いた顔をし・・・<夏目漱石「虚子君へ」青空文庫>
  19. ・・・無論、古語というものは我々の言語の源であり、我民族の成立と共に、我国語の言語的精神もそこに形成せられたものとして、何処までも深く研究すべきはいうまでもない。しかし言語というものは生きたものということを忘れてはならない。『源氏』などの中にも、・・・<西田幾多郎「国語の自在性」青空文庫>
  20. ・・・いずれの国家民族も、それぞれの歴史的地盤に成立し、それぞれの世界史的使命を有するのであり、そこに各国家民族が各自の歴史的生命を有するのである。各国家民族が自己に即しながら自己を越えて一つの世界的世界を構成すると云うことは、各自自己を越えて、・・・<西田幾多郎「世界新秩序の原理」青空文庫>
  21. ・・・然らばといって、たといそれが意識一般といっても主観の綜合統一によって成立すると考えられる世界は、何処までも自己によって考えられた世界、認識対象界たるに過ぎない。かかる対象的実在の世界からは、実践的当為の出て来ないのはいうまでもない。デカルト・・・<西田幾多郎「デカルト哲学について」青空文庫>
  22. ・・・人と人との交際ということは、所詮相互の自己抑制と、利害の妥協関係の上に成立する。ところで僕のような我がまま者には、自己を抑制することが出来ない上に、利害交換の妥協ということが嫌いなので、結局ひとりで孤独に居る外はないのである。ショーペンハウ・・・<萩原朔太郎「僕の孤独癖について」青空文庫>
  23. ・・・初より条理以外に成立して居る恋は今更条理を考えて既往を悔む事はないはずだ。ある時はいとしい恋人の側で神鳴の夜の物語して居る処を夢見て居る。ある時は天を焦す焔の中に無数の悪魔が群りて我家を焼いて居る処を夢見て居る。ある時は万感一時に胸に塞がっ・・・<正岡子規「恋」青空文庫>
  24. ・・・京漢鉄道総工会の成立大会を武力解散させた軍閥呉佩孚に対して中国労働者がジェネストを起し、英国の労働運動に一つのエポックをつくった。今日三百万の党員をもち中国人口の三五パーセントを解放地区に包括しつつある中共は、一九二三年に第三次党大会をもち・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」青空文庫>
  25. ・・・ 一八六四年の第一インターナショナルの成立。一八七〇年の普仏戦争と、翌年三月十八日に起ったパリ・コンミューンとその悲劇的な、然し名誉ある結末などは、歴史上有名なバクーニンとマルクスとの対立分離をもたらした。激しい国際情勢の変化と、ますま・・・<宮本百合子「カール・マルクスとその夫人」青空文庫>
  26. ・・・しかしながら、昔の言いかたでの小説ではなくても、それが芸術作品であり文学であり得るためには、やはり実生活と文学との関係が、この作品におけるような逆立の姿では成立しない。文学の本質はその逆立の瞬間に振い落され吐き出されてしまっているのである。・・・<宮本百合子「「結婚の生態」」青空文庫>
  27. ・・・子爵の所へ知らせてよこしたが、その中にはイタリア復興時代だとか、宗教革新の起原だとか云うような、歴史その物の講義と、史的研究の原理と云うような、抽象的な史学の講義とがあるかと思うと、民族心理学やら神話成立やらがある。プラグマチスムスの哲学史・・・<森鴎外「かのように」青空文庫>
  28. ・・・また、海軍との関係の成立した日の腹痛の翌日、新飛行機の性能実験をやらされたとき、栖方は、垂直に落下して来る機体の中で、そのときでなければ出来ない計算を四度び繰り返した話もした。そして、尾翼に欠点のあることを発見して、「よくなりますよ。あの飛・・・<横光利一「微笑」青空文庫>
  29. ・・・この思想は正義と仁愛との相即を中核とする点において特徴のあるものであるが、しかし日本では古くから成立していたものであって、この時代に限った現象ではない。この時代として特に注目せらるべき点は、武家の権力政治が数世紀にわたって行なわれた後に、な・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>
  30. ・・・この像の美しさを公衆が理解し得ず、ただ肉感的な刺戟のみを受けるという事実があって初めて禁止の理由が成立する。この事実はいかにして捕えられたか。検閲官が自らそういう刺戟のみを受けたという事実によって、公衆がすべてそうであると認定することはでき・・・<和辻哲郎「蝸牛の角」青空文庫>