せっ‐かい【切開】例文一覧 14件

  1. ・・・眼を瞑ったようなつもりで生活というものの中へ深入りしていく気持は、時としてちょうど痒い腫物を自分でメスを執って切開するような快感を伴うこともあった。また時として登りかけた坂から、腰に縄をつけられて後ざまに引き下されるようにも思われた。そうし・・・<石川啄木「弓町より」青空文庫>
  2. ・・・おそらく今日の切開術は、眼を開きてこれを見るものあらじとぞ思えるをや。 看護婦はまた謂えり。「それは夫人、いくらなんでもちっとはお痛みあそばしましょうから、爪をお取りあそばすとは違いますよ」 夫人はここにおいてぱっちりと眼をけり・・・<泉鏡花「外科室」青空文庫>
  3. ・・・化膿せる腫物を切開した後の痛快は、やや自分の今に近い。打撃はもとより深酷であるが、きびきびと問題を解決して、総ての懊悩を一掃した快味である。わが家の水上僅かに屋根ばかり現われおる状を見て、いささかも痛恨の念の湧かないのは、その快味がしばらく・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  4. ・・・私は切開した腹部のいたみで、一寸もうごけなかった。そのうちに私は肺をわるくした。意識不明の日がつづいた。医者は責任を持てないと、言っていたと、あとで女房が教えて呉れた。まる一月その外科の病院に寝たきりで、頭をもたげることさえようようであった・・・<太宰治「川端康成へ」青空文庫>
  5. ・・・あるちょっとした腫物を切開しただけで脳貧血を起して卒倒し半日も起きられなかった大兵肥満の豪傑が一方の代表者で、これに対する反対に気の強い方の例として挙げられたのは六十余歳の老婆であった。舌癌で舌の右だか左だかの半分を剪断するというので、麻酔・・・<寺田寅彦「追憶の医師達」青空文庫>
  6. ・・・そこへ追付いた敵が彼の咽喉を切開したというのである。 一方ではまた捕虜になって餓死したとか、世の中が厭になって断食して死んだとか色々の説があるから本当のことは何だか分らない。しかし豆畑へはいるのがいやでわざわざ殺されたというのが本当だと・・・<寺田寅彦「ピタゴラスと豆」青空文庫>
  7. ・・・ある生まれつき盲目の人が生長後手術を受けて眼瞼を切開し、始めて浮き世の光を見た時に、眼界にある物象はすべて自分の目の表面に糊着したものとしか思えなかったそうである。こういう無経験な純粋な感覚のみにたよれば一間前にある一尺の棒と十間の距離にあ・・・<寺田寅彦「物理学と感覚」青空文庫>
  8. ・・・ そいで何どすか、切開でもした様だっか。「うん先月の十一日に切ったそうや。 もう一月やな。 そいに、何故、もっと早う云うて来んのやろ。 何と思うて、今まで、延ばしよったんか、そいやから彼の娘、いつもいつも抜けや云われるん・・・<宮本百合子「栄蔵の死」青空文庫>
  9. ・・・手術後、ガーゼのつめかえの方法をいい加減にしたので、膿汁が切開したところから出きらず、内部へ内部へと病毒が侵入して、病勢は退院後悪化した。同志今野が、どうも頭は痛くなって来たし変だと思い、苦痛を訴えたら、済生会の軍医は、却ってこれまで一日お・・・<宮本百合子「刻々」青空文庫>
  10. ・・・スエ子の盲腸は糖尿で切開が望ましくないから、何だかまだおなかが堅いと蒼い顔してフラフラです。太郎は益愛らしい。可愛い可愛い小僧です。 私の住むところ、国府津を思いついて下さいましたが、私はもうあすこには住めないと思う。父と最後に行って、・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  11. ・・・十三年ばかり前、癌だと云われ、切開されそうになった経験があった。その時、まさ子はその方面では大家である専門医と議論し、頑張って到頭切開させなかった。それは後になって見ると実際癌ではなかった。幽門の潰瘍風のものであったと見え、まさ子は殆ど医者・・・<宮本百合子「白い蚊帳」青空文庫>
  12. ・・・ 大学に入院して切開して貰ったのだけれ共、後から聞くと、自分は斯うやって死ぬ運命を与えられて居るのだから病院へ等入って、終るべき命を無理算段で延して置く事は望まないと云ってなかなかきかなかったそうである。けれ共私の母や親類の者は気を揉ん・・・<宮本百合子「追憶」青空文庫>
  13. ・・・その後私は盲腸炎を患ったが、切開することが出来なかったからいつ迄も工合わるくて、下駄が右の腹に響いて歩いてもいやな気分がつづいた。その話をきいて、又別の年長の友達が私に一つの漢方薬を教えてくれた。それをのんでいて、いくらかずつおなかのいやな・・・<宮本百合子「鼠と鳩麦」青空文庫>
  14. ・・・を守ることにならないきょうの現実を、私たちの前に切開して示している。「人間的な尊厳」に立って自由に離婚したとしても、それからさきの生活をちゃんと自由に建設してゆく社会条件が婦人にひらかれていない場合、どういうことになるだろう。 工場に働・・・<宮本百合子「離婚について」青空文庫>