せっ‐きょく〔セキ‐〕【積極】例文一覧 30件

  1. ・・・いや、むしろ積極的に、彼女が密かに抱いていた希望、――たといいかにはかなくとも、やはり希望には違いない、万一を期する心もちを打ち砕いたのも同様だった。男は道人がほのめかせたように、実際生きていないのであろうか? そう云えば彼女が住んでいた町・・・<芥川竜之介「奇怪な再会」青空文庫>
  2. ・・・既にあきらめに住すと云う、積極的に強からざるは弁ずるを待たず。久保田君の芸術は久保田君の生活と共にこの特色を示すものと云うべし。久保田君の主人公は常に道徳的薄明りに住する閭巷無名の男女なり。是等の男女はチエホフの作中にも屡その面を現せども、・・・<芥川竜之介「久保田万太郎氏」青空文庫>
  3. ・・・と云う事を、積極的に肯定するだけの、勇気が出ずにいたのである。 下人は、大きな嚔をして、それから、大儀そうに立上った。夕冷えのする京都は、もう火桶が欲しいほどの寒さである。風は門の柱と柱との間を、夕闇と共に遠慮なく、吹きぬける。丹塗の柱・・・<芥川竜之介「羅生門」青空文庫>
  4. ・・・時勢が積極的となり、事実また、ほんとうに、社会のためにも働いているような人々が、五十以上の人にも多いのを知ると、昔の人の言った、この厭世的な見解は誤っていたということを知るのであります。そして、自分も、これからだと思い、また、真剣に、しなけ・・・<小川未明「机前に空しく過ぐ」青空文庫>
  5. ・・・そして、積極的に彼等がいかなる、境遇に置かれつゝあるかと認識することによって、その中の可能なるものより、速かに実現されんことを希うのである。<小川未明「児童の解放擁護」青空文庫>
  6. ・・・しからざるかぎり、たとえ、積極的には、間違ったことを伝えなくとも、そこに、喜びがなく、たゞあるものが、怠屈ばかりであったら、それは、何も与えなかったことになるばかりでなく、徒らに、読者をして、焦燥に悶えしめるものです。 事務的に書かれた・・・<小川未明「読むうちに思ったこと」青空文庫>
  7. ・・・ 不思議なもので一度、良心の力を失なうと今度は反対に積極的に、不正なこと、思いがけぬ大罪を成るべく為し遂んと務めるものらしい。 自分はそっとこの革包を私宅の横に積である材木の間に、しかも巧に隠匿して、紙幣の一束を懐中して素知らぬ顔を・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  8. ・・・すなわち人間のあらゆる積極的な意欲はことごとく、道徳の実質であって道徳律はその意欲そのものを褒貶するのでなく、その意欲間の普遍妥当なる関係をきめるのである。しかしながらこの意欲そのもの、すなわち生の実質にかかわりなく純粋に形式的に行為を決定・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  9. ・・・日蓮はここにおいて決するところあり、自ら進んで、積極的に十一通の檄文を書いて、幕府の要路及び代表的宗教家に送って、正々堂々と、公庁が対決的討論をなさんことを申しいどんだ。 これは憂国の至情黙視しておられなかったのであるが、また彼の性格の・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  10. ・・・しかしながら現代の男女としてはかような情緒にほだされていわゆる濡れ場めいた感情過多の陥穽に陥るようなことはその気稟からも主義からも排斥すべきであって、もっと積極的に公共の建設的動機と知性とをもって明るく賢く快活に生きるべきであろう。 さ・・・<倉田百三「人生における離合について」青空文庫>
  11. ・・・小村は内気で、他人から云われたことは、きっとするが、物事を積極的にやって行くたちではなかった。吉田は出しゃばりだった。だが人がよかったので、自分が出しゃばって物事に容喙して、結局は、自分がそれを引き受けてせねばならぬことになってしまっていた・・・<黒島伝治「雪のシベリア」青空文庫>
  12. ・・・四 知識で押して行けば普通道徳が一の方便になるとともに、その根柢に自己の生を愛するという積極的な目標が見えて来る。世間にはこの目標を目障りだと言って見まいとするものもあるが、自分にはどうしても見えると言う方が正直としか思われ・・・<島村抱月「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」青空文庫>
  13. ・・・私は不器用で、何か積極的な言動に及ぶと、必ず、無益に人を傷つける。友人の間では、私の名前は、「熊の手」ということになっている。いたわり撫でるつもりで、ひっ掻いている。塚本虎二氏の、「内村鑑三の思い出」を読んでいたら、その中に、「或夏、信・・・<太宰治「作家の像」青空文庫>
  14. ・・・批判はあっても、自分の生活に直接むすびつける積極性の無いこと。無反省。本当の自覚、自愛、自重がない。勇気のある行動をしても、そのあらゆる結果について、責任が持てるかどうか。自分の周囲の生活様式には順応し、これを処理することに巧みであるが、自・・・<太宰治「女生徒」青空文庫>
  15. ・・・ へんな事を言うようですが、私はこれでも、結婚にあたって私のほうから積極的に行動を開始した事は一度も無く、すべて女性のほうから私のところに押しかけて来るという工合で、いや、でもこれは決してのろけではございません。女性には、意志薄弱のダメ・・・<太宰治「男女同権」青空文庫>
  16. ・・・一方にはきわめて消極的な涙もろい意気地ない絶望が漲るとともに、一方には人間の生存に対する権利というような積極的な力が強く横たわった。 疼痛は波のように押し寄せては引き、引いては押し寄せる。押し寄せるたびに脣を噛み、歯をくいしばり、脚を両・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  17. ・・・尤もこの考えはオリンピアの昔から、あらゆる試験制度に通じて現われているので、それ自身別に新しいことではないが、問題は制度の力で積極的にどこまで進めるかにある、と著者は云っている。これに対するアインシュタインの考えは試験嫌いの彼に相当したもの・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  18. ・・・西行や芭蕉は消極的に言えば世をのがれたに相違ないが、積極的に見ればこの自由を求めたとも見られる。 これはしかしただ自分がこの映画を見たときに偶然そう感じたというだけのことであって、もとより作者の意図ではないかもしれない。それにしてもこの・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  19. ・・・科学と芸術それぞれの発展に積極的な障害はあるまい。しかしこの二つの世界を離れた第三者の立場から見れば、この二つの階級は存外に近い肉親の間がらであるように思われて来るのである。<寺田寅彦「科学者と芸術家」青空文庫>
  20. ・・・ その二通りのうち一つは積極的のもので、一つは消極的のものである。何か月並のような講釈をしてすみませんが、人間活力の発現上積極的と云う言葉を用いますと、勢力の消耗を意味する事になる。またもう一つの方はこれとは反対に勢力の消耗をできるだけ・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  21. ・・・ 何しろそんな風で今日迄やって来たのだが、以上を綜合して考えると、私は何事に対しても積極的でないから、考えて自分でも驚ろいた。文科に入ったのも友人のすすめだし、教師になったのも人がそう言って呉れたからだし、洋行したのも、帰って来て大学に・・・<夏目漱石「処女作追懐談」青空文庫>
  22. ・・・ しかしながら、一の理想をあらわすときに、他の理想を欠いている場合と、積極的に他の理想を打ち崩している場合とは少々違うのであります。欠いているのはただ含んでおらんと云うまでで、打ち壊すとなると明かにその理想に違背しているのですからして、・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  23. ・・・今日の有様を以て事の本位と定め、これより進むものを積極となし、これより退くものを消極となし、余輩をしてその積極を望ましむれば期するところ左のごとし。 すなわち今の事態を維持して、門閥の妄想を払い、上士は下士に対して恰も格式りきみの長座を・・・<福沢諭吉「旧藩情」青空文庫>
  24. ・・・積極的美 美に積極的と消極的とあり。積極的美とはその意匠の壮大、雄渾、勁健、艶麗、活溌、奇警なるものをいい、消極的美とはその意匠の古雅、幽玄、悲惨、沈静、平易なるものをいう。概して言えば東洋の美術文学は消極的美に傾き、西洋の・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  25. ・・・ こうして、各面で婦人の参加が積極的な、重大な意味をもって来るとき、日本の民法が主婦を、無能者ときめていることは、何たる愚かな滑稽であろう。その無能力者を、刑法では、そう認めず、処罰にあたっては、忽ち同一の主婦が能力者として扱われるとい・・・<宮本百合子「合図の旗」青空文庫>
  26. ・・・な事実としてこの事を観察すると、私は、日本の現在の階級対立のけわしさや、そのきびしい抑圧の中からも何かの可能性をひき出し、たとえ半歩たりとも具体的に前進しようとする階級の、いよいよ強靭にされる連帯性、積極性の大小さまざまの情熱的な現実の内容・・・<宮本百合子「新しい一夫一婦」青空文庫>
  27. ・・・『近代文学』のグループといえば、ブルジョア民主主義の限界内で、個人主義的な主体性の確立の論議にとらわれていたようだけれども、去年の夏からファシズム反対の積極的な活動体となってきています。少くともこんにちのまじめな文化人は、一九三〇年代の終り・・・<宮本百合子「新しい抵抗について」青空文庫>
  28. ・・・ 自然主義の小説というものの内容で、人の目に附いたのは、あらゆる因襲が消極的に否定せられて、積極的には何の建設せられる所もない事であった。この思想の方嚮を一口に言えば、懐疑が修行で、虚無が成道である。この方嚮から見ると、少しでも積極的な・・・<森鴎外「沈黙の塔」青空文庫>
  29. ・・・人が何らか積極的の生を営み得るためには「虚無」さえも偶像であり得る。 偶像が破壊せられなくてはならないのは、それが象徴的の効用を失って硬化するゆえである。硬化すればそれはもう生命のない石に過ぎぬ。あるいは固定観念に過ぎぬ。けれどもこの硬・・・<和辻哲郎「『偶像再興』序言」青空文庫>
  30. ・・・そうして先生の方へ積極的に進んで行く代わりに、先生の冷たさを感じていた。こういう感じを抱いた者はおそらく私一人ではなかったろうと思う。 この事実を先生の方から見ればどうなるか。私はそれを明らかにするために先生の手紙の一節を引く。――・・・<和辻哲郎「夏目先生の追憶」青空文庫>