せっ‐しょく【接触】例文一覧 30件

  1. ・・・「温度の異なる二つの物体を互に接触せしめるとだね、熱は高温度の物体から低温度の物体へ、両者の温度の等しくなるまで、ずっと移動をつづけるんだ。」「当り前じゃないか、そんなことは?」「それを伝熱作用の法則と云うんだよ。さて女を物体と・・・<芥川竜之介「寒さ」青空文庫>
  2. ・・・河上氏がそうであるごとく、ことに私は第四階級とはなんらの接触点をも持ちえぬのだ。私が第四階級の人々に対してなんらかの暗示を与ええたと考えたら、それは私の謬見であるし、第四階級の人が私の言葉からなんらかの影響を被ったと想感したら、それは第四階・・・<有島武郎「宣言一つ」青空文庫>
  3. ・・・     二 むろん思想上の事は、かならずしも特殊の接触、特殊の機会によってのみ発生するものではない。我々青年は誰しもそのある時期において徴兵検査のために非常な危惧を感じている。またすべての青年の権利たる教育がその一部分――・・・<石川啄木「時代閉塞の現状」青空文庫>
  4. ・・・となると忽ち逍遥博士と交を訂し、続いて露伴、鴎外、万年、醒雪、臨風、嶺雲、洒竹、一葉、孤蝶、秋骨と、絶えず向上して若い新らしい知識に接触するに少しも油断がなかった。根柢ある学問はなかったが、不断の新傾向の聡明なる理解者であった。が、この学問・・・<内田魯庵「斎藤緑雨」青空文庫>
  5. ・・・とは、いうもの、この間、街頭の響きから、人間との接触から、そこに感じられた複雑な人生の幾多の変遷と推移が、文壇の上にも、もしくは、他の社会の上にもあったことを考え出さずにはいられません。私自身にとっても、憧憬、煩悶、反抗、懐疑、信仰、いろ/・・・<小川未明「机前に空しく過ぐ」青空文庫>
  6. ・・・そして、彼等は、各の接触するところのものを真実に描かなければならぬ。そして、時に彼等の代弁となり、時に彼等の忠言者たらなければならぬものである。これを称して、私は、大衆作家と言い、或は民衆作家とも呼ぼうとします。 しかるに、今日は、『大・・・<小川未明「作家としての問題」青空文庫>
  7. ・・・従って、語る人と聴く者との心の接触から生ずる同化が大切であるのであります。 真実というものが、いかに相手を真面目にさせるか、熱情というものが、いかに相手の心を打つか、こうした時に分るものです、それであるから、語る人の態度は、自から聴く人・・・<小川未明「童話を書く時の心」青空文庫>
  8. ・・・またそれとともに、職能というものは真摯にラディカルに従事して行けば、必ず人生哲学的な根本問題に接触してくるものである。医者は生と、精神の課題に、弁護士は倫理と社会制度の問題に、軍人は民族と国際協同の問題に接触せずにはおられない。その最も適切・・・<倉田百三「学生と読書」青空文庫>
  9. ・・・人と人との接触というものは軽くおろそかに扱えばそれまでの偶然事で深い気持などは起こるものではない。合うも別れるも野面を吹く風の過ぎ去る如くである。しかし君臣となり、親子、夫婦、朋友、師弟、兄弟となった縁のかりそめならぬことを思い、対人関係に・・・<倉田百三「人生における離合について」青空文庫>
  10. ・・・郷里以外の地で見聞きし、接触した人と人との関係や性格よりも、郷里で見るそれの方が、私には、より深い、細かい陰影までが会得されるような気がする。 が、それと共に、自然の風物もいまでは、痛く私の心を引く。絶対安静の病床で一カ月も米杉の板を張・・・<黒島伝治「海賊と遍路」青空文庫>
  11. ・・・その他曰く何、曰く何と相接触して居る関係点は非常に沢山あることでござりまするから、それらをいちいち遺漏無く申上げる事は甚だ困難の事で、かつまた一席の御話には不適当な事でございますから、ただ今はただ馬琴の小説中に現われて居りまする人物と当時の・・・<幸田露伴「馬琴の小説とその当時の実社会」青空文庫>
  12. ・・・太郎は母者人の乳房にもみずからすすんでしゃぶりつくようなことはなく、母者人のふところの中にいて口をたいぎそうにあけたまま乳房の口への接触をいつまででも待っていた。張子の虎をあてがわれてもそれをいじくりまわすことはなく、ゆらゆら動く虎の頭を退・・・<太宰治「ロマネスク」青空文庫>
  13. ・・・ただ一つの逸話として伝えられているのは、彼が五歳の時に、父から一つの羅針盤を見せられた事がある、その時に、何ら直接に接触するもののない磁針が、見えざる力の作用で動くのを見て非常に強い印象を受けたという事である。その時の印象が彼の後年の仕事に・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  14. ・・・ こういう種類の思わぬ縁故で先生の生涯の一部に接触した事のある人がまだまだ方々にいくらでも隠れているのではないかという気がする。 われわれ先生に親しかった人々はよほど用心していないととかく自分等だけの接触した先生の世界の一部分を、先・・・<寺田寅彦「埋もれた漱石伝記資料」青空文庫>
  15. ・・・これは二つの画面の接触作用によって観客の心に生ずる反応作用をその自然のリズムに従って誘導して行くのである。それでこのモンタージュのリズムが観客の期待のリズムに共鳴するときにはじめて最大の効果を収めうるので、これは音楽の場合と全く同様である。・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  16. ・・・二十日ばかりのお絹との接触点を振り返えると、今でもやっぱり彼女は謎であった。<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  17. ・・・以前文芸は道徳を超絶するという議論があり、またこれを論じた大家もあったのでありますけれども、これは大なる間違で、なるほど道徳と文芸は接触しない点もあるけれども、大部分は相連っている。ただ僅かに倫理と芸術と両立せないで、どちらかを捨てねばなら・・・<夏目漱石「教育と文芸」青空文庫>
  18. ・・・その理由は無論明白な話で、前詳しく申上げた開化の定義に立戻って述べるならば、吾々が四五十年間始めてぶつかった、また今でも接触を避ける訳に行かないかの西洋の開化というものは我々よりも数十倍労力節約の機関を有する開化で、また我々よりも数十倍娯楽・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  19.  長谷川君と余は互に名前を知るだけで、その他には何の接触もなかった。余が入社の当時すらも、長谷川君がすでにわが朝日の社員であるという事を知らなかったように記憶している。それを知り出したのは、どう云う機会であったか今は忘却して・・・<夏目漱石「長谷川君と余」青空文庫>
  20. ・・・ だから、早く云って見れば、文学と接触して摩れ摩れになって来るけれども、それが始めは文学に入らないで、先ず社会主義に入って来た。つまり文学趣味に激成されて社会主義になったのだ。で、社会主義ということは、実社会に対する態度をいうのだが、同・・・<二葉亭四迷「予が半生の懺悔」青空文庫>
  21. ・・・哲学上の見解から小説と人生との接触を見たんではないらしい。にも係らず其無意味のことに意味をつけて、やれ触れたの、やれ人生の真髄は斯うだのと云う。一片の形容詞が何時の間にか人生観と早変りをするのは、これ何とも以て不思議の至りさ。 いや、何・・・<二葉亭四迷「私は懐疑派だ」青空文庫>
  22. ・・・ 日本の婦人作家が幾人か、戦時中、海をわたって、彼女たちにとってはじめての海外旅行をし、他国の人々に接触した。そのとき、それらの人々のおかれた役割はなんであったろう。侵略の銃につけられた花束であったというのだろうか。それとも、故国にとり・・・<宮本百合子「明日の知性」青空文庫>
  23. ・・・わたしたちが激しい現実を生きてゆく道で、偶然に接触するいろいろの現象を箱入り風にあらかじめ選んでゆけるわけはない。肉体とともに精神も、実に荒っぽくもまれる。エロティックなものにもふれ、人格分裂の風景にふれる。その、それぞれに反応する生きた心・・・<宮本百合子「新しい文学の誕生」青空文庫>
  24. ・・・内科の家庭医となって、一つの家庭に接触すると、病気そのものよりも、むしろ、病気をしている主人なり妻なり老人なりに対するその家族のひとたちの感情の複雑さにおどろく場合が少くないと云われています。看護婦の立場も全くそのとおりと思われますが、わた・・・<宮本百合子「生きるための協力者」青空文庫>
  25. ・・・この文壇の人々と予とは、あるいは全く接触点を闕いでいる、あるいは些の触接点があるとしても、ただ行路の人が彼往き我来る間に、忽ち相顧みてまた忽ち相忘るるが如きに過ぎない。我は彼に求むる所がなく、彼もまた我に求むる所がない。縦いまた樗牛と予との・・・<森鴎外「鴎外漁史とは誰ぞ」青空文庫>
  26. ・・・隣家の子供との間に何等の心的接触も成り立たない。そこでいよいよ本に読み耽って、器に塵の附くように、いろいろの物の名が記憶に残る。そんな風で名を知って物を知らぬ片羽になった。大抵の物の名がそうである。植物の名もそうである。 父は所謂蘭医で・・・<森鴎外「サフラン」青空文庫>
  27. ・・・その頃種々な人に接触した結果、無政府主義になったのだそうだ。それから彼得堡の大学に這入って、地学を研究した。自分でも学術上に価値のある事業は、三十歳の時に刊行した亜細亜地図だと云っている。Jura へ行ったのも、英国で地学上の用務を嘱托せら・・・<森鴎外「食堂」青空文庫>
  28.  私が漱石と直接に接触したのは、漱石晩年の満三個年の間だけである。しかしそのおかげで私は今でも生きた漱石を身近に感じることができる。漱石はその遺した全著作よりも大きい人物であった。その人物にいくらかでも触れ得たことを私は今でも幸福に感じ・・・<和辻哲郎「漱石の人物」青空文庫>
  29. ・・・西田先生はその八月の末に東京に移られたが、九月には井上、元良、上田などの諸氏としきりに接触していられる。そうして十月十日の日記には「午前井上先生を訪う。先生の日本哲学をかける小冊子を送らる。……元良先生を訪う。小生の事は今年は望みなしとの事・・・<和辻哲郎「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」青空文庫>
  30. ・・・わたくしのわずかな接触の間にも、この問題についておりにふれて教えられたことは、かなり多く記憶に残っている。漢字をいきなり象形文字と考えるのは非常な間違いで、音を写した文字の方が多いこと、同じ音で偏だけ異なっているのは偏によって意味の違いを表・・・<和辻哲郎「露伴先生の思い出」青空文庫>