せっ‐とく【説得】例文一覧 17件

  1. ・・・――彼はこう心の中に何度も彼自身を説得しようとした。しかし目のあたりに見た事実は容易にその論理を許さぬほど、重苦しい感銘を残していた。 けれどもプラットフォオムの人々は彼の気もちとは没交渉にいずれも、幸福らしい顔をしていた。保吉はそれに・・・<芥川竜之介「寒さ」青空文庫>
  2. ・・・ 僕は半ば僕自身を説得するように言いつづけた。「お前だってまだ若いんだしするから、そんなことはとやかく言いはしない。ただその人さえちゃんとしていれば、……」 妻はもう一度僕の顔を見上げた。僕はその顔を眺めた時、とり返しのつかぬこ・・・<芥川竜之介「死後」青空文庫>
  3. ・・・が、口を酸くして何と説得しても「ンな考は毛頭ない、」とばかり主張って、相談はとうとうそれきりとなってしまった。現在自分の口から言出して置きながら、人に看透かされたと思うと直ぐコロリと一転下して、一端口外した自家意中の計画をさえも容易に放擲し・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  4. ・・・とか、或は、「優しく角立たぬように説得した」とか云う類は、屡々欧文に見る同一例である。これらは凡て文章の意味を明らかにする以外、音調の関係からして、副詞を入れたいから入れたり、二つで充分に足りている形容詞をも、一つ加えて三つとしたりするので・・・<二葉亭四迷「余が翻訳の標準」青空文庫>
  5. ・・・情感へのアッピールの調子から理性への説得にうつった。 この時期の評論が、どのように当時の世界革命文学の理論の段階を反映し、日本の独自な潰走の情熱とたたかっているかということについての研究は、極めて精密にされる必要がある。そして、当時のプ・・・<宮本百合子「巖の花」青空文庫>
  6. ・・・やっと家のものを説得して専門学校は出たけれども、出てから先の生活を考えると、何ともいえない心持がして来る、だって、その先にある生活は、もう大体わかっているんですもの、と。そういう述懐をもっている方は、きょうの会に来ていらっしゃる方々の中に一・・・<宮本百合子「新しい卒業生の皆さんへ」青空文庫>
  7. ・・・あるいは失業者の息子が二人、店に掻払いにきたのに、亀のチャーリーがつかまえて説得して「本」をやると「二人はやがていいピオニイルに成長して、いつも二人で組になって活動した」と。 あとからあとからそのようにしてつくられるピオニイルらは、どこ・・・<宮本百合子「一連の非プロレタリア的作品」青空文庫>
  8. ・・・キュリー夫人は戦争の長びくことが分るにつれ、あらゆる手段を講じて、官僚と衝突してそれを説得し、個人の援助も求めて自動車を手に入れ、それをつぎつぎに研究所で装置して送り出した。そのようにして集められた車は二十台あった。マリアはその一台を自分の・・・<宮本百合子「キュリー夫人」青空文庫>
  9. ・・・働くことを肯じがたい心持の失望と苦悩、そういう久作の昔気質の職人肌なものの考えかたは女房友代への態度にも発揮されて最後にその久作も情勢の圧力と妻の情愛、仲間たちのさしのばす手、情理をわきまえた理事長の説得などによって今は軍需品をつくっている・・・<宮本百合子「「建設の明暗」の印象」青空文庫>
  10. ・・・大いに堂々と云われている結論なり断定なりが、十分精密強固な客観的事実の綜合の結果として、そう云われざるを得ないものであったことを文章のなかで自然と納得させて行く、という魅力、説得力を欠いている。文筆上の軍需景気とユーモアをもってゴシップに現・・・<宮本百合子「今日の文章」青空文庫>
  11. ・・・とヴィナスの胸像も、やっぱり高等学校時代の買物で、これを貧乏書生が苦心して買って家へもって帰って来たら、八十何歳かの祖母が、そんな目玉もない真白な化物はうちさいれられねえごんだと国言葉で憤慨し、それを説得するに大骨を折ったと話したりしたこと・・・<宮本百合子「写真に添えて」青空文庫>
  12. ・・・一握りの思慮分別の足りない頭のわるいものたちの抵抗は、一人一人の自分を説得する名目を発見しながらおとなしくファシズムのもとにひしがれることを観念しつつある知性を刺戟した。実体はファシズムや治安維持法そのものに対する嫌悪であり反撥であったのだ・・・<宮本百合子「世紀の「分別」」青空文庫>
  13. ・・・彼女を愛す善良で進歩的な男たちが、新しい内容で男女の結婚生活の可能を説得しようとしても、アグネスは執拗にその手をふりもぎって、最も悲惨な形での妻、母の生活の絵から、目をはなそうとしない。彼女の幼年時代、少女時代、その境遇は十分彼女の心にその・・・<宮本百合子「中国に於ける二人のアメリカ婦人」青空文庫>
  14. ・・・との説得に、新しい愛人としての優越感ばかりで誇らかであり得るだろうか。職場で働き、職場でたたかいつつある若い独立した婦人であったらばこそ、女の上に新鮮な意志と情感が花咲いていた。もしせまい家庭にかがまって夫に依存する女になったら、急に色あせ・・・<宮本百合子「文学と生活」青空文庫>
  15. ・・・そして、私たちは搾取しようなどと夢にも思っていない、産業軍の一兵卒として自分から身を挺して働いているのであるというようなことを熱心に説得する対手の感情にまきこまれ、彼等の舌代的なところがある作品が出来上って、おやおやということがあったという・・・<宮本百合子「文学の大衆化論について」青空文庫>
  16. ・・・エフレイノフは美しい長髪を振りながら、善良な心に燃えてゴーリキイを説得した。「君は生れつき科学に奉仕するために作られているんだ。――大学は正に君のような若者を必要としているのだ」 そして、エフレイノフの言葉に従えば、カザンへ行ったら・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの伝記」青空文庫>
  17. ・・・ 働いている若い女のひとと、働らかないで暮していられる女のひととを並べて、毎日の生活感情に空虚感なんかない筈の理由を説得しようとしても、現実にそれは承引され難い。だが、近頃、若い男女が、反動に対する消極的な反撥のポーズの一つとして、今日・・・<宮本百合子「私たちの社会生物学」青空文庫>