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せつ‐な・い【切ない】例文一覧 30件

  1. ・・・しまいには、畳の縁の交叉した角や、天井の四隅までが、丁度刃物を見つめている時のような切ない神経の緊張を、感じさせるようになった。 修理は、止むを得ず、毎日陰気な顔をして、じっと居間にいすくまっていた。何をどうするのも苦しい。出来る事なら・・・<芥川竜之介「忠義」青空文庫>
  2. ・・・しかし、妻は、弱い女の身として、世間の疑の的になると云う事が、如何にも切ないのでございましょう。あるいはまた、ドッペルゲンゲルと云う現象が、その疑を解くためには余りに異常すぎたせいもあるのに相違ございません。妻は私の枕もとで、いつまでも啜り・・・<芥川竜之介「二つの手紙」青空文庫>
  3. ・・・が、私の心の上には、切ない程はっきりと、この光景が焼きつけられた。そうしてそこから、或得体の知れない朗な心もちが湧き上って来るのを意識した。私は昂然と頭を挙げて、まるで別人を見るようにあの小娘を注視した。小娘は何時かもう私の前の席に返って、・・・<芥川竜之介「蜜柑」青空文庫>
  4. ・・・あてこともねえ、どうじゃ、切ないかい、どこぞ痛みはせぬか、お肚は苦しゅうないか。」と自分の胸を頑固な握拳でこツこツと叩いて見せる。 ト可愛らしく、口を結んだまま、ようようこの時頭を振った。「は、は、痛かあない、宜いな、嬉しいな、可し・・・<泉鏡花「葛飾砂子」青空文庫>
  5. ・・・ あの容色で家の仇名にさえなった娘を、親身を突放したと思えば薄情でございますが、切ない中を当節柄、かえってお堅い潔白なことではございませんかね、旦那様。 漢方の先生だけに仕込んだ行儀もございます。ちょうど可い口があって住込みましたの・・・<泉鏡花「政談十二社」青空文庫>
  6. ・・・ああ、切ない、あはははは、あはッはッはッ、おお、コ、こいつは、あはは、ちゃはは、テ、チ、たッたッ堪らん。ははは。」 と込上げ揉立て、真赤になった、七顛八倒の息継に、つぎ冷しの茶を取って、がぶりと遣ると、「わッ。」と咽せて、灰吹を掴ん・・・<泉鏡花「売色鴨南蛮」青空文庫>
  7. ・・・静と立ってると、天窓がふらふら、おしつけられるような、しめつけられるような、犇々と重いものでおされるような、切ない、堪らない気がして、もはや! 横に倒れようかと思った。 処へ、荷車が一台、前方から押寄せるが如くに動いて、来たのは頬被をし・・・<泉鏡花「星あかり」青空文庫>
  8. ・・・打ああ、切ない、苦しい。苦しい、切ない。人形使 ううむ堪らねえ、苦しいが、可い塩梅だ。堪らねえ、いい気味だ。画家 (土手を伝わって窪地に下りる。騒がず、しかし急ぎ寄り、遮り止貴女、――奥さん。夫人 あら、先生。(瞳をくとともに、・・・<泉鏡花「山吹」青空文庫>
  9. ・・・       六「その時はどんなに可恐しゅうございましょう、苦しいの、切ないの、一層殺して欲しいの、とお雪さんが呻きまして、ひいひい泣くんでございますもの、そしてね貴方、誰かを掴えて話でもするように、何だい誰だ、などと言うで・・・<泉鏡花「湯女の魂」青空文庫>
  10. ・・・せめてこの木戸でもあったらと切ない思いが胸にこみあげる。連日の雨で薄濁りの水は地平線に平行している。ただ静かに滑らかで、人ひとり殺した恐ろしい水とも見えない。幼い彼は命取らるる水とも知らず、地平と等しい水ゆえ深いとも知らずに、はいる瞬間まで・・・<伊藤左千夫「奈々子」青空文庫>
  11. ・・・ある切ない塊が胸を下ってゆくまでには、必ずどうすればいいのかわからない息苦しさを一度経なければならなかった。それが鎮まると堯はまた歩き出した。 何が彼を駆るのか。それは遠い地平へ落ちて行く太陽の姿だった。 彼の一日は低地を距てた灰色・・・<梶井基次郎「冬の日」青空文庫>
  12. 上 鳥が其巣を焚かれ、獣が其窟をくつがえされた時は何様なる。 悲しい声も能くは立てず、うつろな眼は意味無く動くまでで、鳥は篠むらや草むらに首を突込み、ただ暁の天を切ない心に待焦るるであろう。獣は所謂駭き心になって急に奔ったり・・・<幸田露伴「雪たたき」青空文庫>
  13. ・・・妻として尊敬された無事な月日よりも、苦い嫉妬を味わせられた切ない月日の方に、より多く旦那のことを思出すとは。おげんはそんな夫婦の間の不思議な結びつきを考えて悩ましく思った。婆やが来てそこへ寝床を敷いてくれる頃には、深い秋雨の戸の外を通り過ぎ・・・<島崎藤村「ある女の生涯」青空文庫>
  14. ・・・雪に対する日ましにつのるこの切ない思慕の念は、どうしたことであろう。私が十日ほど名を借りたかの新進作家は、いまや、ますます文運隆々とさかえて、おしもおされもせぬ大作家になっているのであるが、私は、――大作家になるにふさわしき、殺人という立派・・・<太宰治「断崖の錯覚」青空文庫>
  15. ・・・、ごぞんじ無いのだ、と私は苦しさを胸一つにおさめて、けれども、その事実を知ってしまってからは、なおのこと妹が可哀そうで、いろいろ奇怪な空想も浮んで、私自身、胸がうずくような、甘酸っぱい、それは、いやな切ない思いで、あのような苦しみは、年ごろ・・・<太宰治「葉桜と魔笛」青空文庫>
  16. ・・・みんなに揶揄われる度に切ない情がこみあげて来てそうして又胸がせいせいとした。其秋からげっそりと寂しいマチが彼の心に反覆された。威勢のいい赤は依然として太十にじゃれついて居た。太十は数年来西瓜を作ることを継続し来った。彼はマチの小遣を稼ぎ出す・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  17. ・・・堪えがたいほど切ないものを胸に盛れて忍んでいた。その切ないものが身体中の筋肉を下から持上げて、毛穴から外へ吹き出よう吹き出ようと焦るけれども、どこも一面に塞がって、まるで出口がないような残刻極まる状態であった。 そのうちに頭が変になった・・・<夏目漱石「夢十夜」青空文庫>
  18. ・・・うう、こわいこわい。おれは地獄行きのマラソンをやったのだ。うう、切ない。」といいながらとうとう焦げて死んでしまいました。        * なるほどそうしてみると三人とも地獄行きのマラソン競争をしていたのです。・・・<宮沢賢治「蜘蛛となめくじと狸」青空文庫>
  19. ・・・これからはこんな切ないことはありません。」 楢夫が息をはずませながら、ようやく起き上って云いました。「ここはどこだい。そして、今頃お日さまがあんな空のまん中にお出でになるなんて、おかしいじゃないか。」 大将が申しました。「い・・・<宮沢賢治「さるのこしかけ」青空文庫>
  20. ・・・これらの立場は女としてはた目にも切ない。婦人代議士たちは代議士になってみて、今更切実に、既成政党が婦人代議士に求めていたものは、宣伝の色どりであって、実質的な政治への参加でもなければ、婦人の社会的、政治的成長でもなかったことを知らされている・・・<宮本百合子「一票の教訓」青空文庫>
  21. ・・・の貼紙は、何とまざまざと、日本の家庭というもののよるべなさ、妻の活動能力の低さ、切ないこころをつつむにあまる姿で示しているだろう。一九四七年の日本インフレーションのこんなすさまじい波風にもまれて、電柱に和服裁縫内職の紙のひらめいている光景は・・・<宮本百合子「衣服と婦人の生活」青空文庫>
  22. ・・・ 私の親しい只一人の友達が止を得ぬ事からその名を呼びずてにされて他人の用を足さなければならない境遇にあるかと思うと、涙もこぼれないまでに切ない。 私はどうあってもM子の心を慰めてやらなければならない。 長い間の親しい友達として私・・・<宮本百合子「M子」青空文庫>
  23. ・・・ 仕立て上げて手も通さずにある赤い着物を見るにつけ桃色の小夜着を見るにつけて歎く姉の心をせめて万が一なりと知って呉れたら切ない思い出にふける時のまぼろしになり夢になり只一言でも私のこの沈み勝な心を軽く優しくあの手(さな手で撫でても呉れる・・・<宮本百合子「悲しめる心」青空文庫>
  24. ・・・いサラリーマン、勤労青年たちが、いささかの慰みとしてアパートの部屋でかけて聴いている蓄音器、レコードその他の楽器に新しく税がかかったり、写真機に税がかかったりすることは、直接月給が減ったのと同じような切ない感情を呼びさまされるのである。・・・<宮本百合子「カメラの焦点」青空文庫>
  25. ・・・自分、段々段々その死んで漂って行った若い男が哀れになり、太陽が海を温めているから、赤い小旗は活溌にひらひらしているから、猶々切ない心持であった。夜こわく悲しく、Yに確り体を捉えて貰ってやっと寝た。〔一九二七年九月〕・・・<宮本百合子「狐の姐さん」青空文庫>
  26. ・・・ 私は失業中で切ない暮しですが、傍聴にはこれから出来るだけ度々来ようと決心しました。私を失業させたのはこのブルジョア社会です。私はそれとどんなに闘うかというやりかたを少しでも、闘士たちの闘争ぶりから学ぼうと決心したのです。あの人々は命が・・・<宮本百合子「共産党公判を傍聴して」青空文庫>
  27. ・・・村田という病む人物と妻美津子との切ない関係は「縫い音」と対蹠する。村田の生きようとしてすさまじくなった心理も描かれている。この作品にも他の作品にもリルケの詩を愛読することがかかれている。その文学趣味のありかた本質について、作者は考えて見てよ・・・<宮本百合子「『健康会議』創作選評」青空文庫>
  28. ・・・ 薄田研二の久作は、久作という人物の切ない気質をよく描き出して演じていた。無口で、激情的で、うつりゆく時世を犇々と肌身にこたえさせつつギリギリのところまで鉄瓶を握りしめている心持が肯ける。久作という人物は、しかしあの舞台では本間教子の友・・・<宮本百合子「「建設の明暗」の印象」青空文庫>
  29. ・・・間もなく、今野は唸るのをやめ、力いっぱい血走った眼で上眼をつかいハッ、ハッと息を切りながら、「中條さん……切ないよゥ」 自分はたまらなくなった。錠をはずしてある鉄扉を押しあけ、房の内に入った。高熱で留置場の穢れた布団が何とも云えぬ臭・・・<宮本百合子「刻々」青空文庫>
  30. ・・・では見ていても切ないもの。 島田の方では、達治さんの除隊が一番たのしみでいらっしゃいます。 これは、私達二人の楽しみで、まだ島田へは申さないのですが達治さんがお嫁を貰うとあのお家では狭いの。お風呂場のところをね、改造してお父上のゆっ・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>