せっ‐ぷん【接×吻】例文一覧 30件

  1. ・・・昔、ジァン・リシュパンは通りがかりのサラア・ベルナアルへ傍若無人の接吻をした。日本人に生れた保吉はまさか接吻はしないかも知れないけれどもいきなり舌を出すとか、あかんべいをするとかはしそうである。彼は内心冷ひやしながら、捜すように捜さないよう・・・<芥川竜之介「お時儀」青空文庫>
  2. ・・・「一体接吻をする時には目をつぶっているものなのでしょうか? それともあいているものなのでしょうか?」 あらゆる女学校の教課の中に恋愛に関する礼法のないのはわたしもこの女学生と共に甚だ遺憾に思っている。   貝原益軒 ・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  3. ・・・あれは何人もの接吻の為に……」 僕はふと口を噤み、鏡の中に彼の後ろ姿を見つめた。彼は丁度耳の下に黄いろい膏薬を貼りつけていた。「何人もの接吻の為に?」「そんな人のように思いますがね」 彼は微笑して頷いていた。僕は彼の内心では・・・<芥川竜之介「歯車」青空文庫>
  4. ・・・殊にそれが、接吻によって、迅速に伝染すると云う事実は、私以外にほとんど一人も知っているものはございません。この例は、優に閣下の傲慢なる世界観を破壊するに足りましょう。……       ×          ×          ×・・・<芥川竜之介「二つの手紙」青空文庫>
  5. ・・・クララは小箱の蓋に軽い接吻を与えて元の通りにしまいこんだ。淋しい花嫁の身じたくは静かな夜の中に淋しく終った。その中に心は段々落着いて力を得て行った。こんなに泣かれてはいよいよ家を逃れ出る時にはどうしたらいいだろうと思った床の中の心配は無用に・・・<有島武郎「クララの出家」青空文庫>
  6. ・・・だからおまえの額に一度だけみんなで接吻するのを許しておくれ。なあ戸部いいだろう。戸部  よし、一度限り許してやる。花田  ともちゃんさよなら。とも子 さよなら花田さん。沢本  俺はまあやめとく。握手だけしとく。とも子 さ・・・<有島武郎「ドモ又の死」青空文庫>
  7. ・・・しかしそれも退屈だと見えて、直ぐに飛び上がって手を広げて、赤い唇で春の空気に接吻して「まあ好い心持だ事」といった。 その時何と思ったか、犬は音のしないように娘の側へ這い寄ったと思うと、着物の裾を銜えて引っ張って裂いてしまって、直ぐに声も・・・<著:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ 訳:森鴎外「犬」青空文庫>
  8. ・・・これは西洋において、いやこの頃は、もっと近くで行るかも知れない……爪さきに接吻をしようとしたのではない。ものいう間もなし、お誓を引倒して、危難を避けさせようとして、且つ及ばなかったのである。 その草伏の小県の目に、お誓の姿が――峰を抽い・・・<泉鏡花「神鷺之巻」青空文庫>
  9. ・・・そして、ぼけの花が、真紅な唇でまりを接吻してくれました。「まりさん、どこへいままでいっていなさいました? みんなが、毎日、あなたを探していましたよ。」と、ぼけは、なつかしげにまりをながめていいました。 まりは、この地上のものを美しく・・・<小川未明「あるまりの一生」青空文庫>
  10. ・・・私は熱のため、頭痛がするのを床の上に起き直って、暗紫色にうまそうな水をたゝえた果物を頬につけたり接吻したりしました。 その時、丁度、珍らしくも、皆既食が、はじまったのでした。私は、わい/\人々が、戸外に出て語っているのを夢の中で聞くよう・・・<小川未明「果物の幻想」青空文庫>
  11. ・・・乞食の子は喜んで、かわいい人形のほおに接吻いたしました。 やがてそこへ、おみよは白い菊の花を摘んで帰ってきますと、もう垣根のそばには、乞食の子の影が見えませんでした。そしてござのところへきて、これからごちそうをこしらえて人形にやろうと思・・・<小川未明「なくなった人形」青空文庫>
  12. ・・・ その夕方、豹一は簡単に紀代子と接吻した。女めいた口臭をかぎながらちょっとした自尊心の満足があった。けれども、紀代子が拒みもしないどころか、背中にまわした手にぐいぐい力をいれてくるのを感ずると、だしぬけに気が変った。物も言わずに突き放し・・・<織田作之助「雨」青空文庫>
  13. ・・・白い手が伸びて首に巻きつき、いきなり耳に接吻された。 あとは無我夢中で、一種特別な体臭、濡れたような触感、しびれるような体温、身もだえて転々する奔放な肢体、気の遠くなるような律動。――女というものはいやいや男のされるがままになっているも・・・<織田作之助「世相」青空文庫>
  14. ・・・乙女の星はこれを見て早くも露の涙うかべ、年わかき君の心のけだかきことよと言い、さて何事か詩人の耳に口寄せて私語き、私語きおわれば恋人たち相顧みて打ちえみつ、詩人の優しき頬にかわるがわる接吻して、安けく眠りたまえと言い言い出で去りたり。 ・・・<国木田独歩「星」青空文庫>
  15. ・・・現に私は学生時代に、修身教育しか知らなかった愛人を、ゴッホや、ベルグソンがわかり、ロダンの「接吻」にいやな顔をしないところまで、一年間で教えこんでしまった。およそ青年学生時代に恋を語り合うとき、その歓語の半分くらいは愛人教育にならないような・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  16. ・・・深夜、裸形で鏡に向い、にっと可愛く微笑してみたり、ふっくらした白い両足を、ヘチマコロンで洗って、その指先にそっと自身で接吻して、うっとり眼をつぶってみたり、いちど、鼻の先に、針で突いたような小さい吹出物して、憂鬱のあまり、自殺を計ったことが・・・<太宰治「愛と美について」青空文庫>
  17. ・・・ 接吻して、ふたりならんで寝ころんで、「じゃあ、おわかれだ。生き残ったやつは、つよく生きるんだぞ。」 嘉七は、催眠剤だけでは、なかなか死ねないことを知っていた。そっと自分のからだを崖のふちまで移動させて、兵古帯をほどき、首に巻き・・・<太宰治「姥捨」青空文庫>
  18. ・・・ペテロやヨハネやバルトロマイ、そのほか全部の弟子共は、ばかなやつ、すでに天国を目のまえに見たかのように、まるで凱旋の将軍につき従っているかのように、有頂天の歓喜で互いに抱き合い、涙に濡れた接吻を交し、一徹者のペテロなど、ヨハネを抱きかかえた・・・<太宰治「駈込み訴え」青空文庫>
  19. ・・・ 最も変わったレコードとしては、アメリカのコーラスガールで、接吻の際における心臓鼓動数の増加が毎分十五という数字を得ているのがある。次点者は十三という数で惜敗したそうである。しかし事前におけるノルマルの鼓動数が書いてないから増加のパーセ・・・<寺田寅彦「記録狂時代」青空文庫>
  20. ・・・先生の一番目の嬢さんがまだ子供の時分この半身像にすっかりラヴしてしまって、おとうさんの椅子を踏み台にしては石像に接吻したそうです。そのさまを油絵にかかした額が客間にかかっていました。霧があって小雨が降って、誠に静かな日でした。 ゼネヴか・・・<寺田寅彦「先生への通信」青空文庫>
  21. ・・・イサーク寺では僧正の法衣の裾に接吻する善男善女の群れを見、十字架上の耶蘇の寝像のガラスぶたには多くのくちびるのあとが歴然と印録されていた。 通例日本の学者の目に触れるロシアの学者の仕事は、たいてい、ドイツあたりの学術雑誌を通して間接に見・・・<寺田寅彦「北氷洋の氷の割れる音」青空文庫>
  22. ・・・女かたの如く愛の式を返して男に接吻する」クララ遠き代の人に語る如き声にて君が恋は何れの期ぞと問う。思う人の接吻さえ得なばとクララの方に顔を寄せる。クララ頬に紅して手に持てる薔薇の花を吾が耳のあたりに抛つ。花びらは雪と乱れて、ゆかしき香りの一・・・<夏目漱石「幻影の盾」青空文庫>
  23. ・・・自分は首を前へ出して冷たい露の滴る、白い花弁に接吻した。自分が百合から顔を離す拍子に思わず、遠い空を見たら、暁の星がたった一つ瞬いていた。「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。第二夜 こんな夢を見た。・・・<夏目漱石「夢十夜」青空文庫>
  24. ・・・両方で頻りに接吻して居る。ジャガタラ雀がじっとして居ると、キンパラはその頭をかいてやる。よくよく見て居ると、その二羽は全く夫婦となりすまして居る。その後友達がキンカ鳥の番いと、キンパラの雄とを持って来て入れてくれたので籠の中が少し賑やかにな・・・<正岡子規「病牀苦語」青空文庫>
  25. ・・・火の様になった若人の頭に額に一寸手を置いて御やりなされ、さもなくば髪の毛の上にかるい娘らしい接吻をなげて御やりなされ。第二の精霊 して御やりなされ、悪い大神の御とがめをうくるほどの事ではない。精女、ためらいながら左の手につぼをも・・・<宮本百合子「葦笛(一幕)」青空文庫>
  26. ・・・ メーラに云わせれば、感動したインガとグラフィーラとが思わず互に抱き合ったのも、接吻しあったのも、小市民気質だそうである。けれども、今はただ一人の男のとり合いをやめて和睦した二人の女が抱き合ったのではない。ひろさの違いこそあれ、同じ目標・・・<宮本百合子「「インガ」」青空文庫>
  27. ・・・の著者、オストロフスキーをもわざわざ南露に訪ね、自分の生命の最後の一滴をも人類の発展のために注ぎつくそうとしているこの若く熱烈な不具の新人間の高貴な額に、尊敬と愛着との涙をもって接吻した。 特にフランスへ帰ろうとしていたセバストーポリの・・・<宮本百合子「ジイドとそのソヴェト旅行記」青空文庫>
  28. ・・・彼はソッと妻の上にかがみ込むと、花の匂いの中で彼女の額に接吻した。「お前は、俺があの汚い二階の紙屑の中に坐っている頃、毎夜こっそり来てくれたろう。」 妻は黙って頷いた。「俺はあの頃が一番面白かった。お前の明るいお下の頭が、あの梯・・・<横光利一「花園の思想」青空文庫>
  29. ・・・不断に涙をもって接吻しつづけても愛したりない自分の子供なのです。極度に敬虔なるべき者に対して私は極度に軽率にふるまいました。羞ずかしいどころではありません。 私はこの事によって自分のもっと重大ないろいろな欠点を示唆されたように思いました・・・<和辻哲郎「ある思想家の手紙」青空文庫>
  30.  芸術の検閲 ロダンの「接吻」が公開を禁止されたとき、大分いろいろな議論が起こった。がその議論の多くは、検閲官を芸術の評価者ででもあるように考えている点で、根本に見当違いがあったと思う。 検閲官は芸術の解らない人であって・・・<和辻哲郎「蝸牛の角」青空文庫>