せつ‐やく【節約】例文一覧 30件

  1. ・・・難解の、――もっとも時間を節約するために、時には辞書を引いて見ずに教わりに出かけたこともない訣ではない。が、こう云う場合には粟野さんに対する礼儀上、当惑の風を装うことに全力を尽したのも事実である。粟野さんはいつも易やすと彼の疑問を解決した。・・・<芥川竜之介「十円札」青空文庫>
  2. ・・・    * 道徳の与えたる恩恵は時間と労力との節約である。道徳の与える損害は完全なる良心の麻痺である。    * 妄に道徳に反するものは経済の念に乏しいものである。妄に道徳に屈するものは臆病ものか怠けものである。    ・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  3. ・・・ その頃はもう事変が戦争になりかけていたので、電力節約のためであろうネオンの灯もなく眩しい光も表通りから消えてしまっていたが、華かさはなお残っており、自然その夜も――詳しくいえば昭和十五年七月九日の夜(といまなお記憶しているのは、その日・・・<織田作之助「世相」青空文庫>
  4. ・・・お辰は存分に材料を節約したから、祭の日通り掛りに見て、種吉は肩身の狭い想いをし、鎧の下を汗が走った。 よくよく貧乏したので、蝶子が小学校を卒えると、あわてて女中奉公に出した。俗に、河童横町の材木屋の主人から随分と良い条件で話があったので・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  5. ・・・「炭はなるほど高価なったに違ないが宅で急にそれを節約するほどのことはなかろう」 真蔵は衣食台所元のことなど一切関係しないから何も知らないのである。「どうして兄様、十一月でさえ一月の炭の代がお米の代よりか余程上なんですもの。これか・・・<国木田独歩「竹の木戸」青空文庫>
  6. ・・・薪を節約して、囲爐裏も焚かずに夜なべをしながら、おしかは夫の為吉をなじった。 おしかは、人間は学問をすると健康を害するというような固陋な考えを持っていた。清三が小学を卒業した時、身体が第一だから中学へなどやらずに、百姓をさして一家を立て・・・<黒島伝治「老夫婦」青空文庫>
  7. ・・・どうしても古代に溯りたいなら、せめてサイラスやアルタセルキセスなどは節約して、文化に貢献したアルキメーデス、プトレモイス、ヘロン、アポロニウスの事でも少し話してもらいたい。全課程を冒険者や流血者の行列にしないために発明家や発見家も入れてもら・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  8. ・・・ この困難を避けるにはできるだけ言語を節約するという方針が生まれる、そうして字幕との妥協が講究される。 言葉の節約によって始めて発見されたおもしろい事実は、発声映画によって始めて完全に「沈黙」が表現されうるということであった。無声映・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  9. ・・・ベーアはできるだけエネルギーを節約し貯蓄しておいて、稀有な有利の瞬間をねらいすまして一ぺんに有りったけの力を集注するという作戦計画と見られた。十回目あたりからベーアのつけていた注文の時機が到来したと見えて猛烈をきわめた連発的打撃に今までたく・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  10. ・・・それだからわれわれはもう少し充分にこれらの背景と環境とを見せてもらいたいのであるが、通例のフィルムではこれが惜しいように節約されている。そのためにせっかくのありがたい体験がややもすれば概念化される恐れがある。 フーヴァーの演説にしてもそ・・・<寺田寅彦「映画時代」青空文庫>
  11. ・・・また反対に零細のスケッチを無価値として軽侮する人もあるかもしれないが、科学というものの本来の目的が知識の系統化あるいは思考の節約にあるとすれば、まずこれらのスケッチを集めこれを基として大きな製作をまとめ渾然たる系統を立てるのが理想であろう。・・・<寺田寅彦「科学者と芸術家」青空文庫>
  12. ・・・同時に非常に長い時間と多大な費用を節約し得られるのである。ある映画監督は猫が鼠を捕る光景を撮るために七十時間とそれに相当するフィルムを費やしたそうである。 極めて平凡なものの観察でさえも映画によって始めて可能な利益があるとすれば、映画技・・・<寺田寅彦「教育映画について」青空文庫>
  13. ・・・ しかしわが貧乏国日本の忠実な少壮学者は貧乏な大学の研究所のために電池のわずかな費用を節約しつつ、たくあんをかじり、渋茶に咽喉を潤してそうして日本学界の名誉のために、また人間の知恵のために骨折り働いているのである。 ろうそくをはい上・・・<寺田寅彦「小浅間」青空文庫>
  14. ・・・そうしてそれが当日行われたいわゆる「節約デー」に因んだものだという事に気が付いた。 鮭と節約との関係は別問題として、私にはこの「節約デー」という文字自身が何となく妙な感じを与えた。その感じはちょっと簡単に説明し難い種類のものである。それ・・・<寺田寅彦「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  15. ・・・この場合には自分のわずかな時間と労力の節約のために他の同乗者のおのおのから数十秒ずつの時間を強要し消費することになるのである。これも遠慮したほうがよさそうに思われる。 しかし、昇降機のほうから言えば何階で止まるも止まらぬのもたいした動力・・・<寺田寅彦「蒸発皿」青空文庫>
  16. ・・・科学の場合には方則の普遍性とか思考の節約とかいう事が標準となって科学者の自然に対する見方を指導しその価値を定めて行くのである。これに比べて芸術家が自然に対する見方は非常に多様であり得る事は勿論である。科学者はなるたけ自分というものを捨ててか・・・<寺田寅彦「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」青空文庫>
  17. ・・・このような截断節約は詩形の短いという根本的な規約から生ずる結果であるが、同時にまた詩形の短さを要する原因ともなるのである。 同じ二つのものを句上に排列する前後によって句は別物になる。これは初心の句作者も知るところである。てにはただ一字の・・・<寺田寅彦「俳諧の本質的概論」青空文庫>
  18. ・・・そこで径路の選択という問題が起こり、この選択の標準とするものはつまり人間の便宜である、思想の節約である。この際もし車掌がある一つの主義を偏執してたとえば大通りばかりを選ぶとするとそれを徹底させるためには時にはたいへんな迂路を取らねばならぬよ・・・<寺田寅彦「物理学と感覚」青空文庫>
  19. ・・・「思考の節約」という事を旗じるしに押し立てて進んで来たいわゆる精密科学は、自然界におけるあらゆる物並びにその変化と推移を連続的のものと見做そうとする傾向を生じた。そして事情の許す限りは物質を空隙のないコンチニウムと見做す事によってその運・・・<寺田寅彦「厄年と etc.」青空文庫>
  20. ・・・しかし多くの人がその三尺の距離の歩行を節約すると見えて芝生がそこだけ踏みつぶされてかわいそうにはげている。この事を人に話したら、それは設計が悪いのだという。そんな所へ芝生をこしらえるのが間違っていると言われてなるほどそれもそうかと思った。・・・<寺田寅彦「LIBER STUDIORUM」青空文庫>
  21. ・・・ 唖々子はかつて硯友社諸家の文章の疵累を指したように、当世人の好んで使用する流行語について、例えば発展、共鳴、節約、裏切る、宣伝というが如き、その出所の多くは西洋語の翻訳に基くものにして、吾人の耳に甚快らぬ響を伝うるものを列挙しはじめた・・・<永井荷風「十日の菊」青空文庫>
  22. ・・・さて吾々の活力が外界の刺戟に反応する方法は刺戟の複雑である以上固より多趣多様千差万別に違ないが、要するに刺戟の来るたびに吾が活力をなるべく制限節約してできるだけ使うまいとする工夫と、また自ら進んで適意の刺戟を求め能うだけの活力を這裏に消耗し・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  23. ・・・開化とは人間の energy の発現の径路で、この活力が二つの異った方向に延びて行って入り乱れて出来たので、その一つは活力節約の移動といって energy を節約せんとする吾人の努力、他の一つは活力を消耗せんとする趣向、即ち consump・・・<夏目漱石「無題」青空文庫>
  24. ・・・これに対して、物価調節、各家庭に対する節約宣伝のような、やや消極的方面の問題、また積極的には女性の自給自立、労銀等の問題から、根本に近い、社会主義上の諸問題が、惹起されます。これ等は、おもに流動する貨幣のみちびきかた、適当な配分を考究して、・・・<宮本百合子「男…は疲れている」青空文庫>
  25. ・・・現代の科学の能力を最大限に発揮して刻々に活動している機械の速力、能率、音響、あらゆるものが、その機械を支配し操って働く者に、精神と肉体の極めて節約整理された敏速さと合理性とを求めており、それが可能な一定の近代工業のリズムを必要としている。近・・・<宮本百合子「今日の生活と文化の問題」青空文庫>
  26. ・・・木綿も節約せよ。食糧も代用食に訓練しておけ。子供の弁当に大豆類を多くせよ、などの警報にひかれている。今日の日本の財政のまかない手である蔵相はラジオで放送して、銃後の民の心がけというものをとかれた。輸入品の節約をするように。国産品も節約をする・・・<宮本百合子「祭日ならざる日々」青空文庫>
  27.  用紙節約から廃刊になるということはさけがたいことながらやはりそれぞれにつながる編輯者のこれ迄の御骨折りや読者の好意について感想を新しくいたします。これ迄の足かけ八年間にこの雑誌のつくして来た文化の上での意義が読者の生活の裡・・・<宮本百合子「終刊に寄す」青空文庫>
  28. ・・・レオニード・グレゴリウィッチが電車賃を節約するために勤め先と同じ区内にこの貸間を見つけたのであった。主人は請負師であったが、この男は家にいない。妻らしい女も見えなかった。階下には六畳、三畳、台所とある、日光のよくささないところに六十余の婆と・・・<宮本百合子「街」青空文庫>
  29. ・・・先ずガソリン節約でバスがまた一日二三度しか通らなくなったことから始まって、村の空気は段々しかも急速に変化して来た。 近所に出磬山という妙な重箱よみの名をもった山があってその麓一帯何万坪かの田畑が今度買いあげられ、そこに兵営が出来ることに・・・<宮本百合子「村の三代」青空文庫>
  30. ・・・きょう、やかましい産児制限のことも、こうして、住む家をもたず、家事負担から解放されない若夫婦が、初々しい親となってゆく喜びさえ節約して、食べられない俸給に耐えてゆくための一条件のようでさえある。今日、産児制限は、優生学の立場からというよりは・・・<宮本百合子「離婚について」青空文庫>