せつ‐れつ【拙劣】例文一覧 27件

  1. ・・・が、文字にする時は兎に角、わたしの口ずから話したはいずれも拙劣を極めたものだった。   又 わたしは第三者と一人の女を共有することに不平を持たない。しかし第三者が幸か不幸かこう云う事実を知らずにいる時、何か急にその女に憎悪を・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  2. ・・・彼等の技術は最高のものと言われているかも知れないが、しかし、いつかは彼等の技術を拙劣だとする時代が来ることを、私は信じている。 私はことさらに奇矯な言を弄しているのでもなければ、また、先輩大家を罵倒しようという目的で、あらぬことを口・・・<織田作之助「可能性の文学」青空文庫>
  3. ・・・ 田島は窮して、最もぶざまで拙劣な手段、立っていきなりキヌ子に抱きつこうとした。 グワンと、こぶしで頬を殴られ、田島は、ぎゃっという甚だ奇怪な悲鳴を挙げた。その瞬間、田島は、十貫を楽々とかつぐキヌ子のあの怪力を思い出し、慄然として、・・・<太宰治「グッド・バイ」青空文庫>
  4. ・・・ 隣部屋で縫物をしていた妻が、あとで出て来て、私の応対の仕方の拙劣を笑い、商人には、うんと金のある振りを見せなければ、すぐ、あんなにばかにするものだ、四円が痛かったなど、下品なことは、これから、おっしゃらないように、と言った。・・・<太宰治「市井喧争」青空文庫>
  5. ・・・というものであった。拙劣さである。不器用さである。文化の表現方法の無い戸惑いである。私はまた、自身にもそれを感じた。けれども同時に私は、それに健康を感じた。ここから、何かしら全然あたらしい文化そんなものが、生れるのではなかろうか。愛情のあた・・・<太宰治「十五年間」青空文庫>
  6. ・・・(借金の手紙として全く拙劣を極むるものと認む。要するに、微塵「これはひどいですねえ。」私は思わず嘆声を発した。「ひどいだろう? 呆れたろう。」「いいえ、あなたの朱筆のほうがひどいですよ。僕の文章は、思っていた程でも無かった。狡智・・・<太宰治「誰」青空文庫>
  7. ・・・そうして、はなはだ拙劣な、無能きわまる一法を案出した。あわれな窮余の一策である。私は、とにかく、犬に出逢うと、満面に微笑を湛えて、いささかも害心のないことを示すことにした。夜は、その微笑が見えないかもしれないから、無邪気に童謡を口ずさみ、や・・・<太宰治「畜犬談」青空文庫>
  8. ・・・それは皆、拙劣きわまる演技でしかない。稲妻。あー こわー なんて男にしがみつく、そのわざとらしさ、いやらしさ。よせやい、と言いたい。こわかったら、ひとりで俯伏したらいいじゃないか。しがみつかれた男もまた、へたくそな手つきで相手の肩を必要以上・・・<太宰治「チャンス」青空文庫>
  9. ・・・しかも頗る、操作拙劣の兵である。私ひとり参加した為に、私の小隊は大いに迷惑した様子であった。それほど私は、ぶざまだった。けれども、実に不慮の事件が突発した。査閲がすんで、査閲官の老大佐殿から、今日の諸君の成績は、まずまず良好であった。という・・・<太宰治「鉄面皮」青空文庫>
  10. ・・・私は、貴下の無学あるいは文章の拙劣、あるいは人格の卑しさ、思慮の不足、頭の悪さ等、無数の欠点をみとめながらも、底に一すじの哀愁感のあるのを見つけたのです。私は、あの哀愁感を惜しみます。他の女の人には、わかりません。女のひとは、前にも申しまし・・・<太宰治「恥」青空文庫>
  11. ・・・ これに反して拙劣なるモンタージュは、動的な画像の単調無味なる堆積によってかえって観客のあくびを促すような静的なものを作り出すことも可能である。下手な剣劇の立ち回りがそれであろう。 エイゼンシュテインは、日本の文化のあらゆる諸要素が・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  12. ・・・ はなはだ拙劣でしかも連句の格式を全然無視したものではあるがただエキスペリメントの一つとして試みにここに若干の駄句を連ねてみる。草を吹く風の果てなり雲の峰 娘十八向日葵の宿死んで行く人の片頬に残る笑 秋の実りは豊・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  13. ・・・文章の拙劣な科学的名著というのは意味をなさないただの言葉であるとも言われよう。 若い学生などからよく、どうしたら文章がうまくなれるか、という質問を受けることがある。そういう場合に、自分はいつも以上のような答えをするのである。何度繰り返し・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  14. ・・・例えば若い教授または助教授が研究している研究題目あるいは研究の仕振りが先輩教授から見て甚だ凡庸あるいは拙劣あるいは不都合に「見える」場合には、自然に且つ多くの場合に当事者の無意識の間に、色々の拘束障害が発生して来て、その研究は結局中止するか・・・<寺田寅彦「学問の自由」青空文庫>
  15. ・・・どんなに拙劣でもいいから、生まれてまだ見た事のない自分の油絵というものに対してみたいというのであった。 このような望みは起こっては消え起こっては消え十数年も続いて来た。それがことしの草木の芽立つと同時に強い力で復活した。そしてその望みを・・・<寺田寅彦「自画像」青空文庫>
  16. ・・・その際に、もしかこれが旧劇だと、例えば河内山宗俊のごとく慌てて仰山らしく高頬のほくろを平手で隠したりするような甚だ拙劣な、友達なら注意してやりたいと思うような挙動不審を犯すのであるが、ここはさすがに新劇であるだけに、そういう気の利かない失策・・・<寺田寅彦「初冬の日記から」青空文庫>
  17. ・・・ 現代俳句の新型式を生んだ原因となるものは多様であろう。拙劣な譬喩をかりて言えば外国のいろいろな詩形から放散する「輻射線」の刺激もあるであろうし、マルキシズムの注入によって周囲の媒質の「酸度」に変更を生じたためもあろうし、また一般文化の・・・<寺田寅彦「俳句の型式とその進化」青空文庫>
  18. ・・・       三 同じ年の五月に、わたしがその年から数えて七年ほど前に書いた『三柏葉樹頭夜嵐』という拙劣なる脚本が、偶然帝国劇場女優劇の二の替に演ぜられた。わたしが帝国劇場の楽屋に出入したのはこの時が始めてである。座附女優諸・・・<永井荷風「十日の菊」青空文庫>
  19. ・・・その講談は老人の猶衰えなかった頃徒歩して昼寄席に通い、其耳に親しく聴いたものに較べたなら、呆れるばかり拙劣な若い芸人の口述したものである。然し老人は倦まずによく之を読む。 わたくしが菊塢の庭を訪うのも亦斯くの如くである。老人が靉靆の力を・・・<永井荷風「百花園」青空文庫>
  20.  戦争後に流行しだしたものの中には、わたくしのかつて予想していなかったものが少くはない。殺人姦淫等の事件を、拙劣下賤な文字で主として記載する小新聞の流行、またジャズ舞踊の劇場で婦女の裸体を展覧させる事なども、わたくしの予想し・・・<永井荷風「裸体談義」青空文庫>
  21. ・・・ 読者はこの作家の実行運動において最も拙劣な、機械的なオルグを見るのである。強制献金のための村の衆の集りに出て、アジ・プロしようという機会そのものの積極的なとらえかたは、間違った方法によって失敗に帰したのだが、僕というプロレタリア作家は・・・<宮本百合子「一連の非プロレタリア的作品」青空文庫>
  22. ・・・相互関係は、伸子がまだそこにある社会生活を総括して政治的なその根元からつかめず、次々に接触する事物からの感銘や批判を摂取して目に見えず内面変革にすすんでゆく、その段階においてとらえられているのである。拙劣に扱われているかもしれないが、伸子と・・・<宮本百合子「心に疼く欲求がある」青空文庫>
  23. ・・・使徒パウロからユダヤ人サウルへの拙劣な転身をした。驚くほど破廉恥な諸矛盾をその本の中にさらけ出している。党及び政府の一般的な方針に反対する批判の権利だけを認めているジイドは、ソヴェト内でトロツキイストたちの大ぴらな声をきくことが出来ないのを・・・<宮本百合子「ジイドとそのソヴェト旅行記」青空文庫>
  24. ・・・ 民主的出版物の編集が、ひとり合点で、不馴れであるし拙劣である上に、第三者に真の努力を感じさせるだけの迫力を欠いているということは、出版文化委員会の席上で、しばしば発言されたことであった。出版の仕事は客観的な現実のうちにさらされている事・・・<宮本百合子「しかし昔にはかえらない」青空文庫>
  25. ・・・うんと陳腐な所謂変態心理と性慾を、最も拙劣な筋書きで見せてる。 ――レヴューは? ――ソヴェト式レヴューがあるよ。 ――オペレットは? ――ある。でも、やっぱりソヴェト式だ。 ――……ついでだから、どうだい一つ見て来た芝・・・<宮本百合子「ソヴェトの芝居」青空文庫>
  26. ・・・とか、政府への反抗に先手をうつつもりで、かなり拙劣に人々の気分を不安にする空気をつくった。下山事件はその典型であった。下山事件につづいておこった三鷹の無人電車暴走、そしてそのことが思いがけない犠牲者を出した事件については、こんにちでもまだわ・・・<宮本百合子「それに偽りがないならば」青空文庫>
  27. ・・・その後あらわにしたように、現実からの逃避や、主観的観念性、幻想の壤土となるからである。現実での暴虐、流血を神秘主義に色どって、その強烈さで、理性を麻痺させることは、ヒトラーの方式であった。その拙劣な真似に、日本の軍部の方式があった。「暁に祈・・・<宮本百合子「文芸時評」青空文庫>