せと‐ないかい【瀬戸内海】例文一覧 17件

  1. ・・・また舞子に来ても、所謂、瀬戸内海の晴れた海を見ることが出来ないのをよく/\運のないことゝ思った。目の下を男と女と二人並で散歩している。二人は海を見て立止った。潮風が二人の袂と裾を飜している。流石に、避暑地に来たらしい感もした。 夕飯の時・・・<小川未明「舞子より須磨へ」青空文庫>
  2.  私は気の早い男であるから、昭和二十年元旦の夢をはや先日見た。田舎道を乗合馬車が行くのを一台の自動車が追い駈けて行く、と前方の瀬戸内海に太陽が昇りはじめる、馬車の乗客が「おい、見ろ、昭和二十年の太陽だ」という――ただそれだけ・・・<織田作之助「電報」青空文庫>
  3.  私の郷里、小豆島にも、昔、瀬戸内海の海賊がいたらしい。山の上から、恰好な船がとおりかゝるのを見きわめて、小さい舟がする/\と島かげから辷り出て襲いかゝったものだろう。その海賊は、又、島の住民をも襲ったと云い伝えられている。・・・<黒島伝治「海賊と遍路」青空文庫>
  4. ・・・などにさながらにかかれているところであるが、瀬戸内海のうちの同じ島でも、私の村はそのうちの更に内海と称せられる湖水のような湾のなかにあるので、そこから丘を一つ越えてここへ来るとやや広々とした海と、その向うの讃岐阿波の連山へ見晴しがきいて、又・・・<黒島伝治「短命長命」青空文庫>
  5. ・・・そうしてとうとう、瀬戸内海のある小さい島の旅館で、私はその医学生に捨てられました。それから一箇月近く私はその旅館の、帳場の小箪笥の引出しにいれられていましたが、何だかその医学生は、私を捨てて旅館を出てから間もなく瀬戸内海に身を投じて死んだと・・・<太宰治「貨幣」青空文庫>
  6. ・・・あなたが、瀬戸内海の故郷から、親にも無断で東京へ飛び出して来て、御両親は勿論、親戚の人ことごとくが、あなたに愛想づかしをしている事、お酒を飲む事、展覧会に、いちども出品していない事、左翼らしいという事、美術学校を卒業しているかどうか怪しいと・・・<太宰治「きりぎりす」青空文庫>
  7. ・・・関西の豊麗、瀬戸内海の明媚は、人から聞いて一応はあこがれてもみるのだが、なぜだか直ぐに行く気はしない。相模、駿河までは行ったが、それから先は、私は未だ一度も行って見たことが無い。もっと、としとってから行ってみたいと思っている。心に遊びの余裕・・・<太宰治「佐渡」青空文庫>
  8. ・・・この友人もまた、瀬戸内海の故郷の島から追放されているのである。「故郷なんてものは、泣きぼくろみたいなものさ。気にかけていたら、きりが無い。手術したって痕が残る。」この友人の右の眼の下には、あずき粒くらいの大きな泣きぼくろが在るのだ。・・・<太宰治「善蔵を思う」青空文庫>
  9. ・・・ 夏期瀬戸内海地方で特に夕なぎが著しいのはどういうわけかと思って調べてみると、瀬戸内海では、元来どこでもいったいに強くない夏の季節風が、地勢の影響のために特に弱められている。そのために海陸風が最も純粋に発達する。従って風の変わり目の無風・・・<寺田寅彦「海陸風と夕なぎ」青空文庫>
  10. ・・・ 島へ渡ったのは、たぶん大阪高知間飛行の話の時に思い浮かべた瀬戸内海の島が素因をなしているかと思われる。 前日の昼食時にA君が、自分の昔の同窓の一人で現に生存しているある人の事についてほんのちょっとばかり話をした。その瞬間に自分の頭・・・<寺田寅彦「三斜晶系」青空文庫>
  11.  瀬戸内海はその景色の美しいために旅行者の目を喜ばせ、詩人や画家の好い題目になるばかりではありません。また色々な方面の学者の眼から見ても面白い研究の種になるような事柄が沢山あります。一体、あのような込み入った面白い地形がどう・・・<寺田寅彦「瀬戸内海の潮と潮流」青空文庫>
  12. ・・・ 私が初めて平円盤蓄音機に出会ったのは、瀬戸内海通いの汽船の客室であったように記憶する。その後大学生時代に神戸と郷里との間を往復する汽船の中でいつも粗悪な平円盤レコードの音に悩まされた印象がかなり強く残っている。船にいくじがなくて、胸に・・・<寺田寅彦「蓄音機」青空文庫>
  13.  夕凪は郷里高知の名物の一つである。しかしこの名物は実は他国にも方々にあって、特に瀬戸内海沿岸にこれが著しいようである。そうして国々で○○の夕凪、□□の夕凪といって他の名物を自慢するように自慢にしているらしい。普通は特有な好・・・<寺田寅彦「夕凪と夕風」青空文庫>
  14. ・・・この結果によると、太平洋岸や瀬戸内海沿岸の多くの場所では、いわゆる陸軟風と季節的な主風とが相殺するために、夕なぎの時間が延長されるのであるが、東京では、特殊な地形的関係のおかげでこの相殺作用が成立しない。そのために、正常な天候でさえあれば、・・・<寺田寅彦「涼味数題」青空文庫>
  15. ・・・ こんな風だったから、瀬戸内海などを航行する時、後ろから追い抜こうとする旅客船や、前方から来る汽船や、帆船など、第三金時丸を見ると、厄病神にでも出会ったように、慄え上ってしまった。 彼女は全く酔っ払いだった。彼女の、コムパスは酔眼朦・・・<葉山嘉樹「労働者の居ない船」青空文庫>
  16. ・・・下関が集散地になっているだけで、河豚は瀬戸内海はもちろん、玄海灘でも、どこの海でもとれる。東京近海にもたくさんいる。ただ、周防灘の姫島付近の河豚が一等味がよく、いわゆる下関河豚の本場となっている。(因 私は北九州若松港に生まれて育ったの・・・<火野葦平「ゲテ魚好き」青空文庫>
  17.  義弟が、生れたばかりの赤坊と若い妻と母とをおいて再び出征するので、二十日ばかり瀬戸内海に沿った村へかえっていた。そこは、海辺近くだから春はめばる、夏は鱸と魚にこと欠いた経験はなくて何十年来暮していたところ、今度行ってみると・・・<宮本百合子「主婦意識の転換」青空文庫>