ぜ‐ひ【是非】例文一覧 30件

  1. ・・・「早水氏が是非こちらへ参れと云われるので、御邪魔とは思いながら、罷り出ました。」 伝右衛門は、座につくと、太い眉毛を動かしながら、日にやけた頬の筋肉を、今にも笑い出しそうに動かして、万遍なく一座を見廻した。これにつれて、書物を読んで・・・<芥川竜之介「或日の大石内蔵助」青空文庫>
  2. ・・・…… この解釈の是非はともかく、半三郎は当日会社にいた時も、舞踏か何かするように絶えず跳ねまわっていたそうである。また社宅へ帰る途中も、たった三町ばかりの間に人力車を七台踏みつぶしたそうである。最後に社宅へ帰った後も、――何でも常子の話・・・<芥川竜之介「馬の脚」青空文庫>
  3. ・・・だから今度地主が来たら一同で是非とも小作料の値下を要求するのだ。笠井はその総代になっているのだが一人では心細いから仁右衛門も出て力になってくれというのであった。「白痴なことこくなてえば。二両二貫が何高値いべ。汝たちが骨節は稼ぐようには造・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  4. ・・・当時米国の公使として令名のあった森有礼氏に是非米国の婦人を細君として迎えろと勤めたというのもその人だ。然し黒田氏のかゝる気持は次代の長官以下には全く忘れられてしまった。惜しいことだったと私は思う。 私は北海道についてはもっと具体的なこと・・・<有島武郎「北海道に就いての印象」青空文庫>
  5. ・・・ ――消さないかい―― ――堪忍して―― 是非と言えば、さめざめと、名の白露が姿を散らして消えるばかりに泣きますが。推量して下さいまし、愛想尽しと思うがままよ、鬼だか蛇だか知らない男と一つ処……せめて、神仏の前で輝いた、あの、光・・・<泉鏡花「菎蒻本」青空文庫>
  6. ・・・ そういたしますと今度の事、飛んでもない、旦那様、五百円紛失の一件で、前申しました沢井様へ出入の大八百屋が、あるじ自分で罷出ましてさ、お金子の行方を、一番、是非、だまされたと思って仁右衛門にみておもらいなさいまし、とたって、勧めたのでご・・・<泉鏡花「政談十二社」青空文庫>
  7. ・・・ いかがでしょうか、物の十分間もかかるまいと思いますから、是非お許しを願いたいですが、それにこのすぐ下は水が深くてとうてい牛を牽く事ができませんから、と自分は詞を尽して哀願した。 そんな事は出来ない。いったいあんな所へ牛を置いちゃい・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  8. ・・・兄夫婦とお増と外に男一人とは中稲の刈残りを是非刈って終わねばならぬ。民子は僕を手伝いとして山畑の棉を採ってくることになった。これはもとより母の指図で誰にも異議は云えない。「マアあの二人を山の畑へ遣るッて、親というものよッぽどお目出たいも・・・<伊藤左千夫「野菊の墓」青空文庫>
  9. ・・・或る楼へ遊びに行ったら、正太夫という人が度々遊びに来る、今晩も来ていますというゆえ、その正太夫という人を是非見せてくれと頼んで、廊下鳶をして障子の隙から窃と覗いて見たら、デクデク肥った男が三枚も蒲団を重ねて木魚然と安座をかいて納まり返ってい・・・<内田魯庵「斎藤緑雨」青空文庫>
  10. ・・・ 女房は是非縛って貰いたいと云って、相手を殺したという場所を精しく話した。 それから人を遣って調べさせて見ると相手の女学生はおおよそ一時間程前に、頸の銃創から出血して死んだものらしかった。それから二本の白樺の木の下の、寂しい所に、物・・・<著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外「女の決闘」青空文庫>
  11. ・・・既に形式的に出来上っているところの主義の為めの作物、主義の為めの批評と云うものは、虚心平気で、自己対自然の時に感じた真面目な感じとは是非区別されるものと思う。 よく真面目と云うことを云う。僕はこの真面目と云うことは即ち自分が形式に囚われ・・・<小川未明「動く絵と新しき夢幻」青空文庫>
  12. ・・・「恥かしいですけど、お茶はあんまりしてませんの。是非教わろうと思てるんですけど。――ところで、話ちがいますけど、貴方キネマスターで誰がお好きですか?」「…………」「私、絹代が好きです。一夫はあんまり好きやあれしません。あの人は高・・・<織田作之助「秋深き」青空文庫>
  13. ・・・けれども理由を被仰い、是非其の理由を聞きましょう。』と酔に任せて詰寄りました。すると母は僕の剣幕の余り鋭いので喫驚して僕の顔を見て居るばかり、一言も発しません。『サア理由を聞きましょう。怨霊が私に乗移って居るから気味が悪いというのでしょ・・・<国木田独歩「運命論者」青空文庫>
  14. ・・・童貞の学生が年増の女給と愛し合おうと、盲目の娘と将来を誓おうと、ただそれだけで是非をいうことはできない。恋愛の最高原理を運命におかずして、選択におくことは決して私の本意ではない。それは結婚の神聖と夫婦の結合の非功利性とを説明し得ない。私は「・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  15. ・・・ 明治の諸作家が戦争を如何に描いたか、戦争に対してどんな態度を取ったかは、是非とも研究して置かなければならない重要な題目である。若し戦争について、それを真正面から書いていないにしても、戦争に対する作家の態度は、注意して見れば一句一節の中・・・<黒島伝治「明治の戦争文学」青空文庫>
  16. ・・・と善良な夫は反問の言外に明らかにそんなことはせずとよいと否定してしまった。是非も無い、簡素な晩食は平常の通りに済まされたが、主人の様子は平常の通りでは無かった。激しているのでも無く、怖れているのでも無いらしい。が、何かと談話をしてその糸・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  17. ・・・彼女の真意では、しばらく蜂谷の医院に養生した上で、是非とも東京の空まではとこころざしていた。東京には長いこと彼女の見ない弟達が居たから。 蜂谷の医院は中央線の須原駅に近いところにあった。おげんの住慣れた町とは四里ほどの距離にあった。彼女・・・<島崎藤村「ある女の生涯」青空文庫>
  18. ・・・これは、お国のため、というよりは、この町のため、いや、お前たち一家のために是非とも、聞きいれてくれろ。だいいちには、圭吾自身のため、またお前のため、またばばちゃのため、それから、お前たちの祖先、子孫のため、何としても、こんどのおれの願い一つ・・・<太宰治「嘘」青空文庫>
  19. ・・・これらの疑問ももし精密な実測による統計材料が豊富にあればいつかは是非いずれとも解決し得られる問題であろうと思われる。     二 九官鳥の口まね せんだって三越の展覧会でいろいろの人語をあやつる九官鳥の一例を観察する機会を得・・・<寺田寅彦「疑問と空想」青空文庫>
  20. ・・・町の文化が東から西へ移ってゆく自然の成行きから、西の方のすばらしい発展を見せているのも、是非がなかった。「ここは格式ばっているだけ損や」お絹は言っていたが、あながち絶望もしていなかった。「さあ格式を崩したら、なおいかんじゃないかしら・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  21. ・・・私は是非とも、新に二度目の飼犬を置くように主張したが、父は犬を置くと、さかりの時分、他処の犬までが来て生垣を破り、庭を荒すからとて、其れなり、家中には犬一匹も置かぬ事となった。尤も私は、その以前から、台所前の井戸端に、ささやかな養所が出来て・・・<永井荷風「狐」青空文庫>
  22. ・・・日本における教育を昔と今とに区別して相比較するに、昔の教育は、一種の理想を立て、その理想を是非実現しようとする教育である。しこうして、その理想なるものが、忠とか孝とかいう、一種抽象した概念を直ちに実際として、即ち、この世にあり得るものとして・・・<夏目漱石「教育と文芸」青空文庫>
  23. ・・・此セメントを使った月日と、それから委しい所書と、どんな場所へ使ったかと、それにあなたのお名前も、御迷惑でなかったら、是非々々お知らせ下さいね。あなたも御用心なさいませ。さようなら。 松戸与三は、湧きかえるような、子供たちの騒ぎを身の・・・<葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」青空文庫>
  24. ・・・左れば我輩は女大学を見て女子教訓の弓矢鎗剣論と認め、今日に於て毫も重きを置かずと雖も、論旨の是非は擱き、記者が女子を教うるの必要を説く其熱心に至りては唯感服の外なし。依て今我輩の腹案女子教育説の大意を左に記し、之を新女大学と題して地下に記者・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  25. 人物の善悪を定めんには我に極美なかるべからず。小説の是非を評せんには我に定義なかる可らず。されば今書生気質の批評をせんにも予め主人の小説本義を御風聴して置かねばならず。本義などという者は到底面白きものならねば読むお方にも・・・<二葉亭四迷「小説総論」青空文庫>
  26. ・・・火を付けたのは、しようかせまいかと考えてしたのではなく、恋のためには是非ともしなくてはならぬ事をしたものを、なぜにその事についてお七が善いの悪いのというて考えて見ようか。もしそれを考えるほどなら恋は初から成り立って居なかったのだ。あるいは、・・・<正岡子規「恋」青空文庫>
  27. ・・・ 平和が齎されたとき、一つの文化的な記念として戦線から兵士たちが家郷に送った家信集が、是非収録出版されるべきである。今日、所謂高級ではない雑誌に時々のせられているそれらの手紙は、実に読者をうつものをもっている。これらの飾らず、たくまざる・・・<宮本百合子「明日の言葉」青空文庫>
  28. ・・・その相続人たる権兵衛でみれば、死を賜うことは是非がない。武士らしく切腹仰せつけられれば異存はない。それに何事ぞ、奸盗かなんぞのように、白昼に縛首にせられた。この様子で推すれば、一族のものも安穏には差しおかれまい。たとい別に御沙汰がないにして・・・<森鴎外「阿部一族」青空文庫>
  29.  優れた作品を書く方法の一つとして、一日に一度は是非自分がその日のうちに死ぬと思うこと、とジッドはいったということであるが、一日に一度ではなくとも、三日に一度は私たちでもそのように思う癖がある。殊に子供を持つようになってからはなおさらそ・・・<横光利一「作家の生活」青空文庫>
  30. ・・・ですが僕はこんなに気楽には見えてもあのように終りまで心にかけて、僕のようなものの行末を案じて下すった奥さまに対して、是非清い勇ましい人物にならなくッてはならないと、始終考えているんです。・・・<若松賤子「忘れ形見」青空文庫>