せ‐ぼね【背骨】例文一覧 19件

  1. ・・・彼女は怯ず怯ず椅子を離れ、目八分に杯をさし上げたまま、いつか背骨さえ震え出したのを感じた。 彼等はある電車の終点から細い横町を曲って行った。夫はかなり酔っているらしかった。たね子は夫の足もとに気をつけながらはしゃぎ気味に何かと口を利いた・・・<芥川竜之介「たね子の憂鬱」青空文庫>
  2. ・・・女房の遺書の、強烈な言葉を、ひとつひとつ書き写している間に、異様な恐怖に襲われた。背骨を雷に撃たれたような気が致しました。実人生の、暴力的な真剣さを、興覚めする程に明確に見せつけられたのであります。たかが女、と多少は軽蔑を以て接して来た、あ・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  3. ・・・そう気がついたとき、私は、ふたたび起きあがることが出来ぬほどに背骨を打ちくだかれていたようだ。私は、このごろ、肉親との和解を夢に見る。かれこれ八年ちかく、私は故郷へ帰らない。かえることをゆるされないのである。政治運動を行ったからであり、情死・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  4. ・・・縁の下で鳴いているのですけれど、それが、ちょうど私の背筋の真下あたりで鳴いているので、なんだか私の背骨の中で小さいきりぎりすが鳴いているような気がするのでした。この小さい、幽かな声を一生忘れずに、背骨にしまって生きて行こうと思いました。この・・・<太宰治「きりぎりす」青空文庫>
  5. ・・・三井君の小説は、ところどころ澄んで美しかったけれども、全体がよろよろして、どうもいけなかった。背骨を忘れている小説だった。それでも段々よくなって来ていたが、いつも私に悪口を言われ、死ぬまで一度もほめられなかった。肺がわるかったようである。け・・・<太宰治「散華」青空文庫>
  6. ・・・もちろん、その上に、尾の上の背骨に針を打ち込んだりするそうであるが、このようにものをかぶせる事が「針よりも大切なまじない」だと考えられている。またこれと共通な点のあるのは、平生のギバよけのまじないとして、馬に腹当てをさせるとよい、ただしそれ・・・<寺田寅彦「怪異考」青空文庫>
  7. ・・・のほかに五つ六つ肩のうしろの背骨の両側にやけどの跡をつけられてしまった。なんでもいろいろのごほうびの交換条件で納得させられたものらしい。 大学の二年の終わりに病気をして一年休学していた間に「片はしご」というのをおろしてくれたのが近所の国・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  8. ・・・また他の分派は中心にかたい背骨ができて、そのいちばん発展したのが人間だという事である。私にはこの説がどれだけほんとうだかわからない。しかしいずれにしても昆虫の世界に行なわれると同じような闘争の魂があらゆる有脊椎動物を伝わって来て、最後の人間・・・<寺田寅彦「簔虫と蜘蛛」青空文庫>
  9. ・・・乃至は背骨でもない。もしくは帝王の腹の中でもない。彼が指さして、あすこだけを注意して御覧、king がよく見えると教えてくれた所は、燦爛たる冠を戴く彼の頭であります。この注意をうけた吾々は今まで全局に眼をちらつかせて要領を得んのに苦しんでい・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  10. ・・・まず背骨なら二十米はあるだろう。巨きなもんだぞ。」大学士はまるで雀躍してその足あとをつけて行く。足跡はずいぶん続きどこまで行くかわからない。それに太陽の光線は赭くたいへん足が疲れたのだ。どうもおかしいと思いながら・・・<宮沢賢治「楢ノ木大学士の野宿」青空文庫>
  11. ・・・正直に、手前の背骨を痛くして耕してた百姓から牛までとっちまって、日傭いになり下がらせる社会主義ってのは分らねえんだ」 集団農場組織に対しては都会の労働者の間にさえそういう無理解が一部のこされた。当時ソヴェト同盟の遠い隅々で集団農場組織に・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」青空文庫>
  12. ・・・を主張しているそうですが、バーや女給やデカダンスの中では毅然たるものが発生しにくいし他に生活はないし、背骨が立たぬから説話体をこね上げたらし。解子さんなどこういう才能の跳梁に「私は小説を書いてゆけるかしら」とききに来られました。作家の生活の・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  13. ・・・けれども、文学運動の面では、新日本文学会の創立大会でも、その後につづく第四回までの大会でも、民主主義文学運動の背骨としての労働者階級の文学の性格と方向とは、明確に規定されなかった。それには次のような原因があった。昔のプロレタリア文学運動の時・・・<宮本百合子「五〇年代の文学とそこにある問題」青空文庫>
  14. ・・・ 皆の者は、そのうす汚れた布片れにくるんであった、赤錆のついた鉄棒か斧が、真暗の湯殿に立って、若し誰でも来たらと身構えて居る男の背後にかくされてある様子を思うと、ほんとに背骨の一番とっぽ先が、痛痒い様な感じを起して来る。 若し自分で・・・<宮本百合子「盗難」青空文庫>
  15. ・・・いろいろ個性的な色彩をもった随筆がうかがわれたが、その中には、一応随筆の体裁をもちながらも、その奥には何となく魚のような背骨をひそめていて、小さくても弱くても、人間の生活と芸術のまともさを守り、その希望の閃きを見失うまいとした随筆もあった。・・・<宮本百合子「はしがき(『女靴の跡』)」青空文庫>
  16. ・・・プーシュキン、ゴーゴリ、レルモントフ等をはじめ、トルストイ、チェホフ、ゴーリキイなどをのぞいたら、世界の文学は云わば背骨の大切な部分をひきぬかれたようなものだ。チェルヌイシェフスキー、ベリンスキーその他の人々の文芸評論は、世界文学に、社会と・・・<宮本百合子「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」青空文庫>
  17. ・・・ 芥川龍之介は、ブルジョア文学の背骨の中に漱石がのこして行った宿題を、その生涯で解いた作家であった。社会的制約の間に切っぱつまった自我の姿を凝視しつつ、彼は自己を破壊することでそれを主張したのであった。 プロレタリア文学の擡頭は・・・<宮本百合子「文学における今日の日本的なるもの」青空文庫>
  18. ・・・は、何と云う強靭さで私の背骨を繋ぎ合わせて居る事だろう。 皮の下に、肉の下に、繋ぎ合わされた骨と骨とを貫いて絶えず満ちて居る髄溶液を自覚して居るものが何処に在るだろうか。自然は生育の過程の何時の間にか、堅い折れ易い骨の裡に、流動する液体・・・<宮本百合子「無題」青空文庫>
  19. ・・・彼らは口先で人を言い負かそうとするような、性格の弱い、道義的背骨のない人物であって、おのれより優れたものを猜み、劣ったものを卑しめる。このそねみと卑しめとは、他に対する批判と厳密に区別されなくてはならない。法螺ふきをそしるとか、自慢話を言い・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>