セルロイド【celluloid】例文一覧 16件

  1. ・・・鈴のついたセルロイドのおもちゃだよ。」 O君もこう言って笑い出した。そのうちに妻は僕等に追いつき、三人一列になって歩いて行った。僕等は妻の常談を機会に前よりも元気に話し出した。 僕はO君にゆうべの夢を話した。それは或文化住宅の前にト・・・<芥川竜之介「蜃気楼」青空文庫>
  2. ・・・ と恭しく帽を脱いだ、近頃は地方の方が夏帽になるのが早い。セルロイドの目金を掛けている。「ええ、大割引で勉強をしとるです。で、その、ちょっとあらかじめ御諒解を得ておきたいのですが、お客様が小人数で、車台が透いております場合は、途中、・・・<泉鏡花「燈明之巻」青空文庫>
  3. ・・・なお黒いセルロイドのバンドをしめていた。いかにも町の女房めいて見えた。胸を洗っているところを見ると、肺を病んでいるのだろうか、痩せて骨が目立ち、顔色も蒼ざめていた。「亀さん」は私の顔を見ると、えらいとこ見られたと大袈裟にいった。そして、こん・・・<織田作之助「大阪発見」青空文庫>
  4. ・・・何故もっとしゃんと、――この頃は相当年輩の人だって随分お洒落で、太いセルロイドの縁を青年くさく皺の上に見せているのに、――まるでその人と来たら、わざとではないかとはじめ思った、思いたかったくらい、今にもずり落ちそうな、ついでに水洟も落ちそう・・・<織田作之助「天衣無縫」青空文庫>
  5. ・・・母親のお辰はセルロイド人形の内職をし、弟の信一は夕刊売りをしていたことは蝶子も知っていたが、それにしてもどうして工面して払ったのかと、瞼が熱くなった。それで、はじめて弟に五十銭、お辰に三円、種吉に五円、それぞれくれてやる気が出た。そこで貯金・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  6. ・・・子供がセルロイドの人形のように坂の芝生の上にひっくりかえった。 汚れたジャケツは、吃驚して、三尺ほど空へとび上った。何事が起ったのか一分間ばかりジャケツが理解できないでいるさまが兵士達に見えた。 ジャケツに抱き上げられた子供は泣声を・・・<黒島伝治「パルチザン・ウォルコフ」青空文庫>
  7. ・・・小供はセルロイドの玩器を持つ、年寄は楽焼の玩器を持つ、と小学読本に書いて置いても差支ない位だ。また金持はとかくに金が余って気の毒な運命に囚えられてるものだから、六朝仏印度仏ぐらいでは済度されない故、夏殷周の頃の大古物、妲己の金盥に狐の毛が三・・・<幸田露伴「骨董」青空文庫>
  8. ・・・さまざまの挨拶の言葉が小さいセルロイドの風車のように眼にもとまらぬ速さで、くるくると頭の中で廻転した。風車がぴたりと停止した時、「ありがとう!」明朗な口調で青年が言った。 私もはっきり答えた。「ハバカリサマ。」 それは、どん・・・<太宰治「作家の手帖」青空文庫>
  9. ・・・映画の批評となると、まさかそれほどでもないかもしれないが、大多数の映画の大衆観客にとっての生命はひと月とはもたない。セルロイドフィルムの保存期間が延長されない限りいくら長くても数十年を越えることはむつかしい。こういう短命なものを批評するのと・・・<寺田寅彦「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」青空文庫>
  10. ・・・     五 紙獅子 銀座や新宿の夜店で、薄紙をはり合わせて作った角張ったお獅子を、卓上のセルロイド製スクリーンの前に置き、少しはなれた所から団扇で風を送って乱舞させる、という、そういう玩具を売っているのである。これは物理的・・・<寺田寅彦「錯覚数題」青空文庫>
  11. ・・・その途中で、車の前面の幌にはまったセルロイドの窓越しに見る街路の灯が、妙にぼやけた星形に見え、それが不思議に物狂わしくおどり狂うように思われたのであった。 先生からはいろいろのものを教えられた。俳句の技巧を教わったというだけではなくて、・・・<寺田寅彦「夏目漱石先生の追憶」青空文庫>
  12. ・・・ここで幌を着せられたから自分の眼界はただ方幾寸くらいのセルロイドの窓にかぎられてしまった。寝台はまた静かに持ち上げられて廊下をゆられて行った。廊下の曲り角を廻る時にはよくわかった。北の階段を下りる時には何だか少し気分が悪かった。いよいよ玄関・・・<寺田寅彦「病中記」青空文庫>
  13. ・・・たとえばセルロイドで作ったキューピーなどのてかてかした肌合や、ブリキ細工の汽車や自動車などを見てもなんだか心持ちが悪い。それでも年に一度ぐらいは自分の子供らにこんなおもちゃを奮発して買ってやらないわけではない。おもちゃその物の効果については・・・<寺田寅彦「丸善と三越」青空文庫>
  14. ・・・芝居行の靴下をはき、オカッパの上へセルロイド櫛をさした若い細君が、時々気にしては新しい藤色フランス縮緬の襟飾に手をやりながら、紺のトルストフカの亭主によりそって四辺を見まわしつつ散歩している。“905”日本女の受けとった外套防寒靴預番号・・・<宮本百合子「三月八日は女の日だ」青空文庫>
  15. ・・・ すると、紺サージの洋服をつけ、後で丸めた髪を白セルロイドの大きなお下髪止めでとめた瘠せて小柄な鈴子が、効果を意識した口調で、「だからさ、そんなことは人によって違うんですよ、私だって三十六になったけれど、そんな気は一遍も起りゃしませ・・・<宮本百合子「帆」青空文庫>
  16. ・・・池の岸に赤セルロイドのしゃぼん箱のふたがころがっていた。 池を眺めて並木路が通っている。木の根っこのこぶに腰かけて半ズボンの男の子が靴下を穿きかけている。前に両方の紐でくくりつけた靴がほうり出してある。 そばでもう一寸年の小さいのが・・・<宮本百合子「ロンドン一九二九年」青空文庫>