せ‐わ【世話】例文一覧 38件

  1. ・・・「又お前がこの間のように、私に世話ばかり焼かせると、今度こそお前の命はないよ。お前なんぞは殺そうと思えば、雛っ仔の頸を絞めるより――」 こう言いかけた婆さんは、急に顔をしかめました。ふと相手に気がついて見ると、恵蓮はいつか窓際に行っ・・・<芥川竜之介「アグニの神」青空文庫>
  2. ・・・お婆様は気丈な方で甲斐々々しく世話をすますと、若者に向って心の底からお礼をいわれました。若者は挨拶の言葉も得いわないような人で、唯黙ってうなずいてばかりいました。お婆様はようやくのことでその人の住っている所だけを聞き出すことが出来ました。若・・・<有島武郎「溺れかけた兄妹」青空文庫>
  3. ・・・ 先刻もいう通り、私の死んでしまった方が阿母のために都合よく、人が世話をしようと思ったほどで、またそれに違いはなかったんですもの。 実際私は、貴女のために活きていたんだ。 そして、お民さん。」 あるじが落着いて静にいうのを、・・・<泉鏡花「女客」青空文庫>
  4. ・・・無理に勧めて嫁にやったのが、こういうことになってしまった……たとい女の方が年上であろうとも本人同志が得心であらば、何も親だからとて余計な口出しをせなくもよいのに、この母が年甲斐もなく親だてらにいらぬお世話を焼いて、取返しのつかぬことをしてし・・・<伊藤左千夫「野菊の墓」青空文庫>
  5. ・・・友人の紹介で、ある寺の一室を借りるつもりであったのだが、たずねて行って見ると、いろいろ取り込みのことがあって、この夏は客の世話が出来ないと言うので、またその住持の紹介を得て、素人の家に置いてもらうことになった。少し込み入った脚本を書きたいの・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  6. ・・・ 椿岳の米三郎が淡島屋の養子となったは兄伊藤八兵衛の世話であった。「出雲なる神や結びし淡島屋、伊勢八幡の恵み受けけり」という自祝の狂歌は縁組の径路を証明しておる。媒合わされた娘は先代の笑名と神楽坂路考のおらいとの間に生れた総領のおくみで・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  7. ・・・非常に面白い下女で、私のところに参りましてから、いろいろの世話をいたします。ある時はほとんど私の母のように私の世話をしてくれます。その女が手紙を書くのを側で見ていますと、非常な手紙です。筆を横に取って、仮名で、土佐言葉で書く。今あとで坂本さ・・・<内村鑑三「後世への最大遺物」青空文庫>
  8. ・・・あの子には、俺も、おまえも、いろいろ世話をしてやったものだ。」「私は、あの子に、他所から、くつをくわえてきてやった。また、着物をさらってきてやったことがある。」と、たかはいいました。 ひのきの木は、身動きをしながら、「俺は、あの・・・<小川未明「あらしの前の木と鳥の会話」青空文庫>
  9. ・・・私はね、お前さんが親類付合いとお言いだったから、それからふと考えたんだが……お前さんだってどうせ貰わなきゃならないんだから、一人よさそうなのを世話して上げたら私たちが仲人というので、この後も何ぞにつけ相談対手にもなれようと思って、それで私は・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  10. ・・・蹴ったくそわるいさかい、オギアオギアせえだい泣いてるとこイ、ええ、へっつい直しというて、天びん担いで、へっつい直しが廻ってきよって、事情きくと、そら気の毒やいうて、世話してくれたンが、大和の西大寺のそのへっつい直しの親戚の家やった。そンでま・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  11. ・・・一寸手を延すだけの世話で、直ぐ埒が明く。皆打切らなかったと見えて、弾丸も其処に沢山転がっている。 さア、死ぬか――待ってみるか? 何を? 助かるのを? 死ぬのを? 敵が来て傷を負ったおれの足の皮剥に懸るを待ってみるのか? それよりも寧そ・・・<著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷「四日間」青空文庫>
  12. ・・・彼はこの種を蒔いたり植え替えたり縄を張ったり油粕までやって世話した甲斐もなく、一向に時が来ても葉や蔓ばかし馬鹿延びに延びて花の咲かない朝顔を余程皮肉な馬鹿者のようにも、またこれほど手入れしたその花の一つも見れずに追い立てられて行く自分の方が・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  13. ・・・そしてそれを機会にひとまず吉田も吉田の母も弟も、それまで外で家を持っていた吉田の兄の家の世話になることになり、その兄がそれまで住んでいた町から少し離れた田舎に、病人を住ますに都合のいい離れ家のあるいい家が見つかったのでそこへ引っ越したのがま・・・<梶井基次郎「のんきな患者」青空文庫>
  14. ・・・』『女房をサ、何もそんなに感心する事はなかろう、今度のようなちよっとした風邪でも独身者ならこそ商売もできないが女房がいれば世話もしてもらえる店で商売もできるというものだ、そうじゃアないか』と、もっともなる事を言われて、二十八歳の若者、こ・・・<国木田独歩「置土産」青空文庫>
  15. ・・・ 性交は夫婦でなくてもできるが、子どもを育てるということは人間のように愛が進化し、また子どもが一人前になるのに世話のやける境涯では、夫婦生活でなくては不都合だ。それが夫婦生活を固定させた大きな条件なのだから、したがって、夫婦愛は子どもを・・・<倉田百三「愛の問題(夫婦愛)」青空文庫>
  16. ・・・上等兵の表情には、これまで、病院で世話になったことのないあかの他人であるような意地悪く冷酷なところがあった。 こういう態度の豹変は憲兵や警官にはあり勝ちなことだ。憲兵や警官のみならず、人間にはそういう頼りにならぬ一面が得てありがちなこと・・・<黒島伝治「穴」青空文庫>
  17. ・・・は無いのですが、それらの塾は実に小規模のもので、学舎というよりむしろただの家といった方が適当な位のものでして、先生は一人、先生を輔佐して塾中の雑事を整理して諸種の便宜を生徒等に受けさせる塾監みたような世話焼が二三人――それは即ち塾生中の先輩・・・<幸田露伴「学生時代」青空文庫>
  18. ・・・が讐敵にもさせまじきはこのことと俊雄ようやく夢覚めて父へ詫び入り元のわが家へ立ち帰れば喜びこそすれ気振りにもうらまぬ母の慈愛厚く門際に寝ていたまぐれ犬までが尾をふるに俊雄はひたすら疇昔を悔いて出入りに世話をやかせぬ神妙さは遊ばぬ前日に三倍し・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  19. ・・・主婦というもののない私の家では、子供らの着物の世話まで下女に任せてある。このお徳は台所のほうから肥った笑顔を見せて、半分子供らの友だちのような、慣れ慣れしい口をきいた。「次郎ちゃん、いい家があって?」「だめ。」 次郎はがっかりし・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  20. ・・・ ウイリイはうまや頭からおそわって、ていねいに王さまのお馬の世話をしました。じぶんの馬も大事にしました。そして、しばらくの間なにごともなく、暮していました。 ウイリイは厩のそばに、部屋をもらっていました。夕方仕事がすみますと、ウイリ・・・<鈴木三重吉「黄金鳥」青空文庫>
  21. ・・・ほんとうに、いつまでも、いつまでも、世話を焼かせて。……奥さんに、よろしくね。 ――うん。機会があれば、ね。」 次男は、ふっと口をつぐんだ。そうして、けッと自嘲した。二十四歳にしては、流石に着想が大人びている。「あたし、もう、結・・・<太宰治「愛と美について」青空文庫>
  22. ・・・ポルジイがドリスを囲って世話をして置く。これは身分相応の行為である。なぜと云うに、あれは伯爵の持物だと云われても、恥ずかしくない、意気な女だからである。どうもそれにしても、ポルジイは余り所嫌わずにそれを連れ歩くようではあるが、それは兎角そう・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  23. ・・・卒業後彼をどこかの大学の助手にでも世話しようとする者もあったが、国籍や人種の問題が邪魔になって思わしい口が得られなかった。しかし家庭の経済は楽でなかったから、ともかくも自分で働いて食わなければならないので、シャフハウゼンやベルンで私教師を勤・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  24. ・・・ 私はその温泉場で長いあいだ世話になっていた人たちのことを想い起こした。「おきぬさんも、今ならどんなにでもして、あげるよって芳ちゃんにそう言うてあげておくれやすと、そないに言うてやった。一度行ってみてはどうや」義姉はこの間もそんなこ・・・<徳田秋声「蒼白い月」青空文庫>
  25. ・・・山人は誠に畸人であって、わたくしの方から是非にといって頼むことは一向してくれないが、頼みもしない事を、時々心配して世話をやく妙な癖があった。或日わたくしに向って、何やら仔細らしく、真実子供がないのかと質問するので、わたくしは、出来るはずがな・・・<永井荷風「西瓜」青空文庫>
  26. ・・・太十が犬だけは自分で世話をした。壊れた箱へ藁しびを入れてそれを囲炉裏の側へ置いてやった。子犬はそれへくるまって寝た。霜の白い朝彼は起きて屹度犬の箱を覗く。犬は小さいながら成長した。春らしい日の光が稀にはほっかり射すようになって麦がみずみずし・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  27. ・・・実はあの婆々も四谷の宇野の世話で、これなら大丈夫だ独りで留守をさせても心配はないと母が云うからきめた訳さ」「それなら君の未来の妻君の御母さんの御眼鏡で人撰に預った婆さんだからたしかなもんだろう」「人間はたしかに相違ないが迷信には驚い・・・<夏目漱石「琴のそら音」青空文庫>
  28. ・・・ 下請は世話役に文句を云った。世話役が坑夫に、「もっと調子よくやれよ。八釜しくて仕様がないや」「八釜しい奴あ、耳を塞いどけよ」「そうじゃねえんだ。会社がうるせえんだよ」「だったらな。会社の奴に、発破を抑えつける奴を寄越せ・・・<葉山嘉樹「坑夫の子」青空文庫>
  29. ・・・花魁をお世話申したことはありませんからね」 吉里は返辞をしないでさッさッと行く。お熊はなお附き纏ッて離れぬ。「ですがね、花魁。あんまりわがままばかりなさると、私が御内所で叱られますよ」「ふん。お前さんがお叱られじゃお気の毒だね。・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  30. ・・・近年の男子中には往々此道を知らず、幼年の時より他人の家に養われて衣食は勿論、学校教育の事に至るまでも、一切万事養家の世話に預り、年漸く長じて家の娘と結婚、養父母は先ず是れにて安心と思いの外、この養子が羽翼既に成りて社会に頭角を顕すと同時に、・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>