ぜん‐き【前記】例文一覧 30件

  1. ・・・ 通信部はそれからも、つづいて開いた。前記の諸君を除いて、平塚君、国富君、砂岡君、清水君、依田君、七条君、下村君、その他今は僕が忘れてしまって、ここに表彰する光栄を失したのを悲しむ。幾多の諸君が、熱心に執筆の労をとってくださったのは・・・<芥川竜之介「水の三日」青空文庫>
  2. ・・・かつて少年の頃、師家の玄関番をしていた折から、美しいその令夫人のおともをして、某子爵家の、前記のあたりの別荘に、栗を拾いに来た。拾う栗だから申すまでもなく毬のままのが多い。別荘番の貸してくれた鎌で、山がかりに出来た庭裏の、まあ、谷間で。御存・・・<泉鏡花「木の子説法」青空文庫>
  3. ・・・ 場所は――前記のは、桂川を上る、大師の奥の院へ行く本道と、渓流を隔てた、川堤の岐路だった。これは新停車場へ向って、ずっと滝の末ともいおう、瀬の下で、大仁通いの街道を傍へ入って、田畝の中を、小路へ幾つか畝りつつ上った途中であった。 ・・・<泉鏡花「若菜のうち」青空文庫>
  4. ・・・四 狂歌師岡鹿楼笑名 前記の報条は多分喜兵衛自作の案文であろう。余り名文ではないが、喜兵衛は商人としては文雅の嗜みがあったので、六樹園の門に入って岡鹿楼笑名と号した。狂歌師としては無論第三流以下であって、笑名の名は狂歌の専門・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  5. ・・・ら町の子供相手の紙芝居に出かける支度中の長藤君は古谷氏の話を聞いて狂喜しさっそくこの旨を既報“人生紙芝居”のワキ役、済生会大阪府支部主事田所勝弥氏、東成禁酒会宣伝隊長谷口直太郎氏に報告、一同打ち揃って前記古谷氏宅に秋山君を訪れ、ここに四年ぶ・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  6. ・・・間接に師と仰いだのは、前記の作家たち、ことにスタンダール、そしてそこから出ているアラン。なお、小林秀雄氏の文芸評論はランボオ論以来ひそかに熟読した。 西鶴を本当に読んだのは「夫婦善哉」を単行本にしてからである。私のスタイルが西鶴に似てい・・・<織田作之助「わが文学修業」青空文庫>
  7. ・・・しかも前記三氏の場合、その三偉人はおのおの、その時、奇妙に高い優越感を抱いていたらしい節がほの見えて、あれでは茶坊主でも、馬子でも、ぶん殴りたくなるのも、もっともだと、かえってそれらの無頼漢に同情の心をさえ寄せていたのである。殊に神崎氏の馬・・・<太宰治「親友交歓」青空文庫>
  8. ・・・それで、この場合における自分と、前記の亀さんや試写会の子供とちがうのはただ四十余年の年齢の相違だけである。従ってこの年取った子供のこの一夕の観覧の第一印象の記録は文楽通の読者にとってやはりそれだけの興味があるかもしれない。 入場したとき・・・<寺田寅彦「生ける人形」青空文庫>
  9. ・・・しかしそういう劇的な脚色の問題とは離れて、前記の「実験」の意味からいうと、本筋のストーリーよりもあのおおぜいの女学生の集団の中に現われる若いドイツ女性のケックハイト、デルブハイトといったようなものの描写の中に若干の真実の表現があるようで、見・・・<寺田寅彦「映画雑感(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」青空文庫>
  10. ・・・ これに比べて現代を取り扱った邦画はいくらか有利な地位にある。前記第一の点の不自然さから免れやすく、第四のセットに関してもおのずから無理のないものになりやすい傾向がある。従って見ていてたまらなく不快な破綻を感じる程度が剣劇に比して少ない・・・<寺田寅彦「映画時代」青空文庫>
  11. ・・・ この二十世紀の巧妙な有線電信機の生命となっている同時調節の応用も、その根本原理においては前記の古代ギリシアの二千何百年前の無線光波通信機の原理と少しも変ったことはないのである。 写真電送機械の機構にもやはり同様な原理が応用されてい・・・<寺田寅彦「変った話」青空文庫>
  12. ・・・ この想像のテストは前記の人工音合成の実験よりはずっと簡単である。すなわち、鳥の「モシモシカメヨ」と人間のそれとのレコードを分析し、比較するだけの手数でいずれとも決定されるからである。 こうした研究の結果いかんによっては、ほととぎす・・・<寺田寅彦「疑問と空想」青空文庫>
  13. ・・・あの敏捷さがわれわれの驚嘆の的になるが、彼はまさに前記の侏儒国の住民であるのかもしれない。 象が何百年生きても彼らの「秒」が長いのであったら、必ずしも長寿とは言われないかもしれない。「秒」の長さは必ずしも身長だけでは計られないであろ・・・<寺田寅彦「空想日録」青空文庫>
  14. ・・・ 研究している仕事が行き詰まってしまってどうにもならないような時に、前記の意味でのコーヒーを飲む。コーヒー茶わんの縁がまさにくちびると相触れようとする瞬間にぱっと頭の中に一道の光が流れ込むような気がすると同時に、やすやすと解決の手掛かり・・・<寺田寅彦「コーヒー哲学序説」青空文庫>
  15. ・・・これは前記のサンスクリトの「クシューラ」とよく似ている。これはたしかに不思議である。 床屋も不思議だがハタゴヤもなぜ旅館だかわからない。 ギリシアの宿屋が pandocheion でいくらか似ているのはおもしろい。パドケヤとハタゴヤ・・・<寺田寅彦「言葉の不思議」青空文庫>
  16. ・・・例えば『永代蔵』では前記の金餅糖の製法、蘇枋染で本紅染を模する法、弱った鯛を活かす法などがあり、『織留』には懐炉灰の製法、鯛の焼物の速成法、雷除けの方法など、『胸算用』には日蝕で暦を験すこと、油の凍結を防ぐ法など、『桜陰比事』には地下水脈験・・・<寺田寅彦「西鶴と科学」青空文庫>
  17. ・・・ 前記の小説家もこんなことぐらいはもちろん承知の上でそれとは少し別の意味でそう云ったには相違ないが、しかし不用意に読み流した読者の中には著者の意味とちがった風に解釈して、それだから概括的に小説は高級なもので随筆は低級なものであるという風・・・<寺田寅彦「雑記帳より(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」青空文庫>
  18. ・・・今回地震の起因のごときも、これを前記の定説や仮説に照らして考究するは無用の業ではない。これによって少なくも有益な暗示を得、また将来研究すべき事項に想い到るべき手懸りを得るのではあるまいか。 地震だけを調べるのでは、地震の本体は分りそうも・・・<寺田寅彦「地震雑感」青空文庫>
  19. ・・・また一方で前記の放射状対流渦の立派に現われる場合は、いずれも求心的流動の場合であるから、放電陰像の場合もあるいは求心的な物質の流れがあるのではないかと想像させる。水流の場合には一般に流線の広がる時に擾乱が起こるが流線が集約する時にはそれが整・・・<寺田寅彦「自然界の縞模様」青空文庫>
  20. ・・・その後にまた麻布の伊藤泰丸氏から手紙をよこされて、前記原氏のほかに後藤道雄、青地正皓、相原千里等の各医学博士の鍼灸に関する研究のある事を示教され、なお中川清三著「お灸の常識」という書物を寄贈された、ここに追記して大泉氏ならびに伊藤氏に感謝の・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  21. ・・・当時先生の宿は西子飼橋という橋の近くで、前記の化学のK先生と同宿しておられた。厳格な先生のところへ、そういう不届き千万な要求を持ち込むのだから心細い。しかられる覚悟をきめて勇気をふるって出かけて行ったが、先生は存外にこうしたわれわれの勝手な・・・<寺田寅彦「田丸先生の追憶」青空文庫>
  22. ・・・しかしまた前記のように地形図がアップ・ツ・デートでないためもあるかもしれない。 地形図の価値はその正確さによる。昔ベルリン留学中かの地の地埋学教室に出入していたころ、一日P教授が「おもしろいものを見せてやろう」といって見せてくれたのは、・・・<寺田寅彦「地図をながめて」青空文庫>
  23. ・・・あるいはまた津田君の寡黙な温和な人格の内部に燃えている強烈な情熱のほのおが、前記の後期印象派画家と似通ったところがあるとすれば猶更の事であろう。 ある批評家はセザンヌの作品とドストエフスキーの文学との肖似を論じている。自分も偶然に津田君・・・<寺田寅彦「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」青空文庫>
  24. ・・・この事はやはり前記の鉱産に関する所説と本質的に連関をもっているのである。すなわち、日本の地殻構造が細かいモザイックから成っており、他の世界の種々の部分を狭い面積内に圧縮したミニアチュアとでもいったような形態になっているためであろうと思われる・・・<寺田寅彦「日本人の自然観」青空文庫>
  25. ・・・と言っているのも同じことで、畢竟は前記の風雅の道に立った暗示芸術の一つの相である。「言いおおせて何かある」「五六分の句はいつまでも聞きあかず」「七八分ぐらいに言い詰めてはけやけし」「句にのこすがゆえに面影に立つ」等いずれも同様である。このよ・・・<寺田寅彦「俳諧の本質的概論」青空文庫>
  26. ・・・たとえば鎌鼬の現象がかりに前記のような事であるとすれば、ほんとうの科学的研究は実はそこから始まるので、前に述べた事はただ問題の構成であって解決ではない。またこの現象が多くの実験的数理的研究によって、いくらか詳しくわかったとしたところ・・・<寺田寅彦「化け物の進化」青空文庫>
  27. ・・・ もう一つの可能性がある。前記の浴室より、もう少し左上に当たる崖の上に貸し別荘があって、その明け放した座敷の電燈が急に点火するときにそれをこっちのベランダで見ると、時によっては、一道の光帯が有限な速度で横に流出するように見えることがある・・・<寺田寅彦「人魂の一つの場合」青空文庫>
  28. ・・・またこれらが偶然でないとすれば、前記の人事も全くの偶然ではないかもしれないと思われる。少なくも、宅に取り込み事のある場合に家内の人々の精神状態が平常といくらかちがうことは可能であろう。 年末から新年へかけて新聞紙でよく名士の訃音が頻繁に・・・<寺田寅彦「藤の実」青空文庫>
  29. ・・・ 高知は毎時観測の材料がなくて調べなかったが、広島や大阪では、前記の地方的季節風が比較的弱くて、その代りに海陸風がかなり著しく発達している、そうして夕方から夜へかけては前者が後者と相殺する、そのために夕凪がかなりはっきり現れる、そうして・・・<寺田寅彦「夕凪と夕風」青空文庫>
  30. ・・・その事をまず小生は前記の手紙によって感じさせられたのである。 正直に言えば自分は、二十七日の事件を聞いたとき、自ら皇室を警衛しに行こうという心持ちは起こさなかった。皇室警衛のために東京には近衛師団がある。巡査や憲兵も沢山いる。警手もいる・・・<和辻哲郎「蝸牛の角」青空文庫>