せん‐こう〔‐クワウ〕【×閃光】例文一覧 21件

  1. ・・・蜘蛛の眼がキラキラ閃光を放って、じっとこちらを見ているように思った。夜なかに咳が出て閉口した。 翌朝眼がさめると、白い川の眺めがいきなり眼の前に展けていた。いつの間にか雨戸は明けはなたれていて、部屋のなかが急に軽い。山の朝の空気だ。それ・・・<織田作之助「秋深き」青空文庫>
  2. ・・・ 訊きながら私は、今日はいつもの仔猫がいないことや、その前足がどうやらその猫のものらしいことを、閃光のように了解した。「わかっているじゃないの。これはミュルの前足よ」 彼女の答えは平然としていた。そして、この頃外国でこんなのが流・・・<梶井基次郎「愛撫」青空文庫>
  3. ・・・束の間の閃光が私の生命を輝かす。そのたび私はあっあっと思った。それは、しかし、無限の生命に眩惑されるためではなかった。私は深い絶望をまのあたりに見なければならなかったのである。何という錯誤だろう! 私は物体が二つに見える酔っ払いのように、同・・・<梶井基次郎「筧の話」青空文庫>
  4. ・・・二人は、森のはずれに立って、云い合わせたように、遠い寺の塔に輝く最後の閃光を見詰める。 一度乾いていた涙が、また止め度もなく流れる。しかし、それはもう悲しみの涙ではなくて、永久に魂に喰い入る、淋しい淋しいあきらめの涙である。 夜が迫・・・<寺田寅彦「秋の歌」青空文庫>
  5. ・・・プドーフキンは爆発の光景を現わすのに本物のダイナマイトの爆発を撮ってみたがいっこうにすごみも何もないので、試みにひどく黒煙を出す炬火やら、マグネシウムの閃光やを取り交ぜ、おまけに爆発とはなんの縁もない、有り合わせの河流の映像を插入してみたら・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  6. ・・・ある瞬間までに読んで来たものの積分的効果が読者の頭に作用して、その結果として読者の意識の底におぼろげに動きはじめたある物を、次に来る言葉の力で意識の表層に引き上げ、そうして強い閃光でそれを照らし出すというのでなかったら、その作品は、ともかく・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  7. ・・・銀とクリスタルガラスとの閃光のアルペジオは確かにそういう管弦楽の一部員の役目をつとめるものであろう。 研究している仕事が行き詰まってしまってどうにもならないような時に、前記の意味でのコーヒーを飲む。コーヒー茶わんの縁がまさにくちびると相・・・<寺田寅彦「コーヒー哲学序説」青空文庫>
  8. ・・・ だんだん目が馴れて来ると弾が上がって行く途中の経路を明瞭に認める事が出来る、そして破裂する時に、先ず一方へ閃光のように迸り出る火焔も見え、外被が両分して飛び分れるところも明らかに見る事が出来る。風の影響もあるだろうが、それよりもむしろ・・・<寺田寅彦「雑記(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」青空文庫>
  9. ・・・左舷に五秒ごとに閃光を発する平舘燈台を見る。その前方遥かに七秒、十三秒くらいの間隔で光るのは竜飛岬の燈台に相違ない。強い光束が低い雲の底面を撫でてぐるりと廻るのが見える。青森湾口に近づくともう前面に函館の灯が雲に映っているのが見られる。マス・・・<寺田寅彦「札幌まで」青空文庫>
  10. ・・・たその晩に私の宅へ遊びに来てトリオの合奏をやっていたら、突然某新聞記者が写真班を引率して拙宅へ来訪しそうして玄関へその若い学者T君を呼び出し、その日発表した研究の要旨を聞き取り、そうしてマグネシウムの閃光をひらめかし酸化マグネシウムを含んだ・・・<寺田寅彦「ジャーナリズム雑感」青空文庫>
  11. ・・・ただかえってこんな思わぬ不用意の瞬間に閃光のごとくそれを感じるだけであろうかと思われる。 この雪夜の橇の幻の追憶はまた妙な聯想を呼出す。父が日清戦争に予備役で召集されて名古屋にいたのを、冬の休みに尋ねて行ってしばらく同じ宿屋に泊っていた・・・<寺田寅彦「追憶の冬夜」青空文庫>
  12. ・・・雲は太く且つ広く空を掩うて一直線に進んで来る。閃光を放ちながら雷鳴が殷々として遠く聞こえはじめた。東南の空際にも柱の如き雲が相応じて立った。文造は此の気象の激変に伴う現象を怖れた。彼は番小屋へ駆け込んで太十を喚んだ。太十は死んだようになって・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  13. ・・・多くの言葉は費されていないが、私はこの条を読んだ時、一すじの閃光が鴎外という人の複雑な内部の矛盾・構成の諸要素の配列の上に閃いたという感銘を受けた。そして、彼が自分の子供たちに皆マリ、アンヌ、オットウ、ルイなどという西洋の名をつけていたこと・・・<宮本百合子「鴎外・漱石・藤村など」青空文庫>
  14. ・・・複雑なそれらの要素は夜も昼も停止することのない生活の波の上に動いているわけで、私たちはその動きやまない生活の閃光のようにおりおりの幸福感を心の底深くに感じる。だけれども、その感じは大体感覚の本性にしたがって、ある時が経てば消える。 この・・・<宮本百合子「幸福の感覚」青空文庫>
  15. ・・・ 犬養暗殺のニュースは、私に重く、暗く、鋭い情勢を感じさせた。閃光のように、刑務所や警察の留置場で闘っている同志たちのこと、更に知られざる無数の革命的労働者・農民のことが思われた。 十六日留置場の看守は交代せず、話しかけられるのを防・・・<宮本百合子「刻々」青空文庫>
  16. ・・・と結び、それによって逆効果をひき起し、ある機智的な鋭さで、閃光のように作家としての良心の敏さ、芸術境の独自性を全篇の内部に照りかえそうと試みられそうであったかもしれない。ところが、「父母」全篇を通じての一番普通の人間はわかりよいこの文句には・・・<宮本百合子「十月の文芸時評」青空文庫>
  17. ・・・ その微かな閃光、その高まり来る諧調を、誤たず、混同せず文字に移し載せられた時、私共は、真個に、湧き出た新鮮な創作の真と美とに触れられる。昔、仏像の製作者が、先ず斎戒沐浴して鑿を執った、そのことの裡に潜む力は、水をかぶり、俗界と絶つ緊張・・・<宮本百合子「透き徹る秋」青空文庫>
  18. ・・・ 室へ帰って手帳に物を書いていたら、薄いカーテンに妙に青っぽい閃光が映り、目をあげて外を見ると、窓前のプラタナスに似た街路樹の葉へも、折々そのマグネシュームをたいた時のような光が差して来る。不思議に思って首をさし出したら、つい先が小公園・・・<宮本百合子「石油の都バクーへ」青空文庫>
  19. ・・・折々鋭い稲妻の閃光が暗い闇を劈いて一瞬の間、周囲を青白い輝きの中に包みはしても、光りの消えたと同時に、またその暗い闇がすべてを領してしまう。 それと同様に、ときどきは、いかほど熾んな感激の焔に照らされはしても、彼女の生活の元来は暗かった・・・<宮本百合子「地は饒なり」青空文庫>
  20. ・・・ だが、この陰翳に富んだ、逆説的な分子のこもった会話は、当時のゴーリキイが民衆、学生、デレンコフや彼自身の関係に対して抱いていた複雑な感情の深淵を何と微妙な閃光で我々に啓いて見せることであろう。 これは、ゴーリキイが、セミョーノフの・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの伝記」青空文庫>
  21. ・・・けさの新聞には、「閃光を見るな、十秒間は伏せ」という原子委員会の警告さえのっている。 湯川秀樹博士は、このような軍事的発熱状態にある日本へ帰って来た。彼の科学者としての声に、ヒューマニティーある科学の展望を与える響を期待するのは、決して・・・<宮本百合子「私の信条」青空文庫>