せん‐ごく【戦国】例文一覧 20件

  1. ・・・しかも巌がくれの裏に、どうどうと落ちたぎる水の音の凄じく響くのは、大樋を伏せて二重に城の用水を引いた、敵に対する要害で、地下を城の内濠に灌ぐと聞く、戦国の余残だそうである。 紫玉は釵を洗った。……艶なる女優の心を得た池の面は、萌黄の薄絹・・・<泉鏡花「伯爵の釵」青空文庫>
  2. ・・・ 僕の母なども先祖の言い伝えだからといって、この戦国時代の遺物的古家を、大へんに自慢されていた。その頃母は血の道で久しく煩って居られ、黒塗的な奥の一間がいつも母の病褥となって居た。その次の十畳の間の南隅に、二畳の小座敷がある。僕が居ない・・・<伊藤左千夫「野菊の墓」青空文庫>
  3. ・・・今日のような思想上の戦国時代に在っては文人は常に社会に対する戦闘者でなければならぬが、内輪同士では年寄の愚痴のような繰言を陳べてるが、外に対しては頭から戦意が無く沈黙しておる。 二十五年の歳月が聊かなりとも文人の社会的位置を進めたのは時・・・<内田魯庵「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」青空文庫>
  4. ・・・ だが、この両管領との合戦記は、馬琴が失明後の口授作にもせよ、『水滸伝』や『三国志』や『戦国策』を襲踏した痕が余りに歴々として『八犬伝』中最も拙陋を極めている。一体馬琴は史筆椽大を以て称されているが、やはり大まかな荒っぽい軍記物よりは情・・・<内田魯庵「八犬伝談余」青空文庫>
  5. ・・・ある戦国時代の城主の血をかすかに引いている金助の立派な家柄がそれでわかるのだったが、はじめて見る品であった。金助からさような家柄についてついぞ一言もきかされたこともなく、むろん軽部も知らず、軽部がそれを知らずに死んだのは彼の不幸の一つだった・・・<織田作之助「雨」青空文庫>
  6. ・・・御覧なさいまし、『八犬伝』は結城合戦に筆を起して居ますから足利氏の中葉からです、『弓張月』は保元からですから源平時代、『朝夷巡島記』は鎌倉時代、『美少年録』は戦国時代です。『夢想兵衛胡蝶物語』などは、その主人公こそは当時の人ですが、これはま・・・<幸田露伴「馬琴の小説とその当時の実社会」青空文庫>
  7. ・・・生きて甲斐ない身の上だ、むかし春秋戦国の世にかの屈原も衆人皆酔い、我独り醒めたり、と叫んでこの湖に身を投げて死んだとかいう話を聞いている、乃公もこの思い出なつかしい洞庭に身を投げて死ねば、或いは竹青がどこかで見ていて涙を流してくれるかも知れ・・・<太宰治「竹青」青空文庫>
  8. ・・・馬は総身に汗をかいて、白い泡を吹いているに、乗手は鞭を鳴らして口笛をふく。戦国のならい、ウィリアムは馬の背で人と成ったのである。 去年の春の頃から白城の刎橋の上に、暁方の武者の影が見えなくなった。夕暮の蹄の音も野に逼る黒きものの裏に吸い・・・<夏目漱石「幻影の盾」青空文庫>
  9. ・・・たとえば我が日本にて古来、足利の末葉、戦国の世にいたるまで、文字の教育はまったく仏者の司どるところなりしが、徳川政府の初にあたりて主として林道春を採用して始めて儒を重んずるの例を示し、これより儒者の道も次第に盛にして、碩学大儒続々輩出したり・・・<福沢諭吉「政事と教育と分離すべし」青空文庫>
  10. ・・・ また、戦国の世にはすべて武人多くして、出家の僧侶にいたるまでも干戈を事としたるは、叡山・三井寺等の古史に徴して知るべし。社会の公議輿論、すなわち一世の気風は、よく仏門慈善の智識をして、殺人戦闘の悪業をなさしめたるものなり。右はいずれも・・・<福沢諭吉「徳育如何」青空文庫>
  11. ・・・ また古来士風の美をいえば三河武士の右に出る者はあるべからず、その人々について品評すれば、文に武に智に勇におのおの長ずるところを殊にすれども、戦国割拠の時に当りて徳川の旗下に属し、能く自他の分を明にして二念あることなく、理にも非にもただ・・・<福沢諭吉「瘠我慢の説」青空文庫>
  12. ・・・ 戦国時代ある大名の夫人が、戦いに敗れてその城が落ちるとき、実父の救い出しの使者を拒んで二人の娘とともに自分の命をも絶って城と運命を共にした話は、つよく心にのこすものをもっていると思う。当時の男のこしらえた女らしさの掟にしたがって、その・・・<宮本百合子「新しい船出」青空文庫>
  13. ・・・だから結婚などと申しましても、何も女の幸福ということが眼目ではございませんで、昔からたくさんあるいろいろなお話をお読みになってもわかる通りに、戦国時代の女の人と申しますのは、父や兄という人達が戦略上自分が一番喧嘩しそうな敵へ人質として自分の・・・<宮本百合子「幸福の建設」青空文庫>
  14. ・・・そして道を距てた前に民芸館と称する、同スタイルの大建築がまるで戦国時代の城のように建ちかけている。木食上人、ブレーク、アルトの歌手。それとこの家! 実にびっくりして凄いような気がしました。Yの父は三井の大したところの由。私はブリティシュ・ミ・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  15. ・・・やがて戦国時代に入る。ヨーロッパにルネッサンスの花が開きはじめた時代から日本が武家時代に入ったということを、私たちは忘れてはならないと思う。この事実は明治維新に影響し、今日の日本の民主化の問題に重大な関係をもっているのである。 武家時代・・・<宮本百合子「女性の歴史」青空文庫>
  16. ・・・「ひかげの花」の境地には賛成しているのである。「戦国時代には、弱者たる普通の民衆は、戦々きょうきょうとしてその日その日をどうにか生き延びていたであろうが、せちがらい今日『ひかげの花』の男女が、どうにか生きのびているのも同じ訳ではあるまいか」・・・<宮本百合子「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」青空文庫>
  17. ・・・それにもうかがわれるとおり一九一八年に敗戦国となったドイツの人民はカイゼルの軍国主義政治、植民地をひろげようとする侵略政策をやめて、当時発達していたドイツの科学と工業の実力で平和で人民的な生産様式をもつ国――社会主義の要素の多い社会に前進し・・・<宮本百合子「それらの国々でも」青空文庫>
  18. ・・・ 戦国時代にこうして一旦崩れ分散した支配権力は、信長によって、或る程度まとめられた。織田信長は当時の群雄たちの中では、誰よりも早く新らしい戦術を輸入した。種子島へ来た鉄砲をどっさり買い込んで、自分の歩兵を武装させ機動的な戦争の方法を組織・・・<宮本百合子「私たちの建設」青空文庫>
  19. ・・・このようなところにも世の乱れとてぜひもなく、このころ軍があッたと見え、そこここには腐れた、見るも情ない死骸が数多く散ッているが、戦国の常習、それを葬ッてやる和尚もなく、ただところどころにばかり、退陣の時にでも積まれたかと見える死骸の塚が出来・・・<山田美妙「武蔵野」青空文庫>
  20. ・・・虚飾に流れていた前代の因襲的な気風に対して、ここには実力の上に立つあけすけの態度がある。戦国時代のことであるから、陰謀、術策、ためにする宣伝などもさかんに行なわれていたことであろうが、しかし彼は、そういうやり方に弱者の卑劣さを認め、ありのま・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>