せん‐さい【戦災】例文一覧 26件

  1. ・・・敗戦、戦災、失業、道義心の頽廃、軍閥の横暴、政治の無能。すべて当然のことであり、誰が考えても食糧の三合配給が先決問題であるという結論に達する。三歳の童子もよくこれを知っているといいたいところである。円い玉子はこのように切るべきだと、地球が円・・・<織田作之助「郷愁」青空文庫>
  2. ・・・さいわい、戦災にも遭わず、二人の子供は丸々と太り、老母と妻との折合いもよろしく、彼は日の出と共に起きて、井戸端で顔を洗い、その気分のすがすがしさ、思わずパンパンと太陽に向って柏手を打って礼拝するのである。老母妻子の笑顔を思えば、買い出しのお・・・<太宰治「家庭の幸福」青空文庫>
  3. ・・・ この土地は、東京の郊外には違いありませんが、でも、都心から割に近くて、さいわい戦災からものがれる事が出来ましたので、都心で焼け出された人たちは、それこそ洪水のようにこの辺にはいり込み、商店街を歩いても、行き合う人の顔触れがすっかり全部・・・<太宰治「饗応夫人」青空文庫>
  4.  れいの戦災をこうむり、自分ひとりなら、またべつだが、五歳と二歳の子供をかかえているので窮し、とうとう津軽の生家にもぐり込んで、親子四人、居候という身分になった。 たいていの人は、知っているかと思うが、私は生家の人たちと・・・<太宰治「十五年間」青空文庫>
  5. ・・・なんといったって、私は、ほとんど無一物の戦災者であって、妻子を引き連れ、さほど豊かでもないこの町に無理矢理割り込ませてもらって、以てあやうく露命をつなぐを得ているという身の上に違いないのであるから、この町の昔からの住民に対しては、いきおい、・・・<太宰治「親友交歓」青空文庫>
  6. ・・・「御苦労様だったな。」私のこんな時の挨拶は甚だまずい。しどろもどろになるのである。「君は?」「戦災というやつだ。念いりに二度だ。」「そう。」 向うも赤面し、私も赤面し、まごついて、それから、とにかく握手した。 慶四郎・・・<太宰治「雀」青空文庫>
  7. ・・・女の局員たちの噂では、なんでも、宮城県のほうで戦災に遭って、無条件降伏直前に、この部落へひょっこりやって来た女で、あの旅館のおかみさんの遠い血筋のものだとか、そうして身持ちがよろしくないようで、まだ子供のくせに、なかなかの凄腕だとかいう事で・・・<太宰治「トカトントン」青空文庫>
  8. ・・・彼は所謂よい家庭人であり、程よい財産もあるようだし、傍に良妻あり、子供は丈夫で父を尊敬しているにちがいないし、自身は風景よろしきところに住み、戦災に遭ったという話も聞かぬから、手織りのいい紬なども着ているだろう、おまけに自身が肺病とか何とか・・・<太宰治「如是我聞」青空文庫>
  9. ・・・「住んでいた家が、ばかに大きかったんだそうです。戦災で全焼していまは落ちぶれたんだそうですけどね、何せ帝都座と同じくらいの大きさだったというんだから、おどろきますよ。よく聞いてみると、何、小学校なんです。その小学校の小使さんの娘なんです・・・<太宰治「眉山」青空文庫>
  10. ・・・ 去年の春、初めて人家の庭、また農家の垣に梅花の咲いているのを見て喜んだのは、わたくしの身に取っては全く予想の外にあったが故である。戦災の後、東京からさして遠くもない市川の町の附近に、むかしの向嶋を思出させるような好風景の残っていたのを・・・<永井荷風「葛飾土産」青空文庫>
  11. ・・・大部分が戦災をうけ、親を失っている。淫売によって生きなければならない若い女の暮しぶりが、まるで民主日本のシムボルであるかのように描かれ、うつされ、ゴシップされている。 性の解放がジャーナリズムの上に誇張されているのに、現実の恋愛もたのし・・・<宮本百合子「偽りのない文化を」青空文庫>
  12. ・・・ 沢山の学校が戦災を蒙りました。そのために校舎が無くなったところもあります。大変不自由な一時凌ぎの場所で、この寒い冬を迎えて勉強してゆかなければならない人も、どっさり在りましょう。学校どころか、家が戦災で失われた方々も少くないでしょう。・・・<宮本百合子「美しく豊な生活へ」青空文庫>
  13.  それを見たことで その人の人生に何かが加わり 或は何かが変る丈の力がなくては 観光の対象として極めて薄弱だ。「戦災のあとも見て貰って 十分満足させて」云々。これは心ある日本人をして 何となくばつの悪い思いをさせた。日本・・・<宮本百合子「観光について」青空文庫>
  14. ・・・しかも一応六年を終った年ごろで親の役に立つようになった子供は買出しの手つだいにも行ったりして困難な日々のやりくりにまきこまれ時間がない。戦災者、復員者、引揚者みんな困窮している人々は六年を終った子供を生計のための助手にしなければやりきれない・・・<宮本百合子「女性の歴史」青空文庫>
  15. ・・・戦争や戦災で家を失い、又は夫を失って、実家へ子供を連れて帰って来た女の兄弟達の日暮しをみて、若い人々は、女の一生というものをどう思って眺めるだろう。長男の家族的な負担の重さは、長男という身分に生れあわせた青年達の自由さと身軽さと自分で選ぶ人・・・<宮本百合子「青年の生きる道」青空文庫>
  16. ・・・すべての交戦国にとって銃後というものは存在しなくなった。戦災という言葉は戦争によってひきおこされた輪の外での災難を意味してつかわれているようだけれども、そして、なにか附随的な現象であり、それは、のがれたものとのがれられなかったものとは本人た・・・<宮本百合子「世界の寡婦」青空文庫>
  17. ・・・ 世界に何千何万人の未亡人がいるか、孤児がいるか、戦災者がいるか、この人たちはみんな戦争を欲していません。 この社会を発展させようとしている世界の婦人は戦争を欲していない、彼女たちの涙がそれを教えました。 世界民主婦人連盟は八千・・・<宮本百合子「世界は平和を欲す」青空文庫>
  18. ・・・田村泰次郎氏の肉体主義は彼にりっぱな邸宅を買わせたと新聞に出ました。戦災者や引揚者が住むに家なく警察の講堂に検束される形でやっと雨露をしのぐ有様が一方にあるのに。 第三は、インテリゲンチャの間から野間宏、椎名麟三、中村真一郎氏その他の作・・・<宮本百合子「一九四七・八年の文壇」青空文庫>
  19. ・・・そして今日生活の荒波にもまれている八〇〇余万の戦災者。夥しい引揚者と復員者。六〇万人以上の未亡人と一二万人の孤児と六〇万の戦争による不具者とが生じたのであった。 第二次世界大戦の間じゅう、他の諸国ではその恐しい戦争の底を縫って、国際的な・・・<宮本百合子「それらの国々でも」青空文庫>
  20. ・・・二十万人の戦傷不具者・二十万人以上の戦争未亡人、数しれない戦災者たちは、ひきちぎられ、根こそぎされた自身の生活権について、日本のファシズムこそ敵であったという事実を、どこまできもに銘じているだろうか。 米鬼を殺せ! と一頁ごとに刷ってあ・・・<宮本百合子「便乗の図絵」青空文庫>
  21. ・・・この連作で作者は戦災によってすっかり面がわりした東京の下街のあすこここを回想的に描き出しながら、そこを背景として、一人の勤労する少女が働く若い女となり、やがて妻、母として階級にめざめて行ったみちゆきを描いた。「私の東京地図」と「女作者」「虚・・・<宮本百合子「婦人作家」青空文庫>
  22. ・・・七十万人近くを殺し八百三十余万人の戦災者を出し、未亡人と遺児たちを作った。 私たちの人間らしいやりかたには、今はまだ小さくとも、納得出来る力を、自分たちのものとして守り立てて大きくして行くところにある。赤坊は、すぐものの役に立たない。資・・・<宮本百合子「婦人の一票」青空文庫>
  23. ・・・ 戦時中婦人を駆りたてて戦力の一部としたすべての婦人団体は、最もその責任を明らかにしなければならない今、尨大な数に達する婦人の離職者、寡婦、戦災孤児などの不幸な生存の危機を救う、どんな誠意も実力も喪っております。新聞は、大都市における婦・・・<宮本百合子「婦人民主クラブ趣意書」青空文庫>
  24. ・・・ 戦災で本富士署が焼けおちて数日後、わたしはあそこを通りがかった。第一に心にうかんだのは留置人で、やけ死された人はいなかったろうかということであった。「やぶそば」のありなしや「のんき」のあるなしはともかく、本富士署のあの留置場空気だ・・・<宮本百合子「本郷の名物」青空文庫>
  25. ・・・なぜなら、C子さんのお手紙だけで判断すると、C子さんは、東京で戦災にあった実家の両親や弟の消息をしらべるのに、何とあっけなくあきらめているでしょう。引きあげて来て、家族が戦災にあっていたとき、その消息をたずねる人の努力と熱心は実に何とも云え・・・<宮本百合子「三つのばあい・未亡人はどう生きたらいいか」青空文庫>
  26. ・・・夥しい戦死者がある。戦災を被った都会からの転出者との生活上の摩擦、昨今の供出の難かしい問題など、それは農村の封建的な土地との関係、家族の関係などを引くるめて、決して農村婦人の生活を、これまでよりも負担の軽い、楽しい明るいものとはしていないの・・・<宮本百合子「私たちの建設」青空文庫>