せん‐さく【詮索】例文一覧 24件

  1. ・・・二葉亭も一つの文章論としては随分思切った放胆な議論をしていたが、率ざ自分が筆を執る段となると仮名遣いから手爾於波、漢字の正訛、熟語の撰択、若い文人が好い加減に創作した出鱈目の造語の詮索から句読の末までを一々精究して際限なく気にしていた。・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  2. ・・・の味を占め紳士と言わるる父の名もあるべき者が三筋に宝結びの荒き竪縞の温袍を纏い幅員わずか二万四千七百九十四方里の孤島に生れて論が合わぬの議が合わぬのと江戸の伯母御を京で尋ねたでもあるまいものが、あわぬ詮索に日を消すより極楽は瞼の合うた一時と・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  3. ・・・僕は、店子の身元についてこれまで、あまり深い詮索をしなかった。失礼なことだと思っている。敷金のことについて彼はこんなことを言った。「敷金は二つですか? そうですか。いいえ、失礼ですけれど、それでは五十円だけ納めさせていただきます。いいえ・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  4. ・・・私は、そのような奇怪の、ほの白い人の顔の出没に接しても、ただ単に、屈辱を感じただけで、それ以上の深い詮索をしなかった。ほかに、あれこれ考えなければならぬ事が多く、そんな、黄昏の人の顔など、ものの数で無かった。ばかにしてやがる。そう呟いて、窓・・・<太宰治「春の盗賊」青空文庫>
  5. ・・・この盲人の根気と熱心に感心すると同時に、その仕事がどことなく私が今紙面の斑点を捜してはその出所を詮索した事に似通っているような気もした。どんな偉大な作家の傑作でも――むしろそういう人の作ほど豊富な文献上の材料が混入しているのは当然な事であっ・・・<寺田寅彦「浅草紙」青空文庫>
  6. ・・・ これはむしろ学究的の詮索に過ぎて、この句の真意には当たらないかもしれないが、こういう種類の考証も何かの参考ぐらいにはなるかもしれないと思って、これだけの事をしるしてみた。もし実際かの地方で、始終伊吹を見ている人たちの教えを受けることが・・・<寺田寅彦「伊吹山の句について」青空文庫>
  7. ・・・俗に絵そら事という言葉があるが、立派な科学の中にも厳密に詮索すれば絵そら事は数えきれぬほどある。科学の理論に用いらるる方便仮説が現実と精密に一致しなくてもさしつかえがないならば、いわゆる絵そら事も少しも虚偽ではない。分子の集団から成る物体を・・・<寺田寅彦「科学者と芸術家」青空文庫>
  8. ・・・ これほど極端でないまでも、実際科学者としては日進月歩の新知識を修得するだけでもかなりに忙しいので、歴史的の詮索までに手の届かぬのは普通の事である。 しかし自分の見る所では、科学上の骨董趣味はそれほど軽視すべきものではない。この世に・・・<寺田寅彦「科学上の骨董趣味と温故知新」青空文庫>
  9. ・・・それがまた特に合議者間に平素から意思の疎通を欠いでいるような場合だと、甲の持ち出す長所は乙の異議で疵がつき、乙の認める美点は甲の詮索でぼろを出すということが往々ある。結局大勢かかればかかる程みんなが「検事」の立場になって、「弁護士」は一人も・・・<寺田寅彦「学位について」青空文庫>
  10. ・・・しかしそういうことを今詮索するのはもとより自分の任でもなんでもない。ただ自分は今回の惨禍からわれわれが何事を学ぶべきかについていくらかでも考察し、そうして将来の禍根をいくらかでも軽減するための参考資料にしたいと思うのである。 あんなにも・・・<寺田寅彦「函館の大火について」青空文庫>
  11. ・・・こんな平凡な景色の記憶がこんなに鮮明に残っているには、何かわけがあったに相違ないが、そのわけはもう詮索する手づるがなくなってしまっている。 中学時代に友人二三人と小舟をこいで浦戸湾内を遊び回ったある日のことである。昼食時に桂浜へ上がって・・・<寺田寅彦「涼味数題」青空文庫>
  12. ・・・其婬心の深浅厚薄は姑く擱き、婬乱の実を逞うする者は男子に多きか女子に多きか、詮索に及ばずして明白なり。男女同様婬乱なれば離縁せらるゝとあれば、男子として離縁の宣告を被る者は女子に比較して大多数なる可し。然るに本書には特に女子の婬乱を以て離縁・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  13. ・・・一、維新の頃より今日に至るまで、諸藩の有様は現に今人の目撃するところにして、これを記すはほとんど無益なるに似たれども、光陰矢のごとく、今より五十年を過ぎ、顧て明治前後日本の藩情如何を詮索せんと欲するも、茫乎としてこれを求るに難きものある・・・<福沢諭吉「旧藩情」青空文庫>
  14. ・・・家を移すに豆腐屋と酒屋の遠近をば念を入れて吟味し、あるいは近来の流行にて空気の良否など少しく詮索する様子なれども、肺に呼吸する空気を論ずるを知りて、子供の心に呼吸する風俗の空気を論ずる者あるを聞かず。世の中には宗旨を信心して未来を祈る者あり・・・<福沢諭吉「教育の事」青空文庫>
  15. ・・・ あるいはいわく、倫理教科書は道徳の新主義をつくりたるに非ず、東西先哲の論旨を述べてその要を示したるまでのものなれば、その何人の手になり、また何の辺より出でたる云々の詮索は、無益の論なりとの説もあらんなれども、鄙見をもってすれば決して然・・・<福沢諭吉「読倫理教科書」青空文庫>
  16. ・・・就中彼らは耶蘇教の人なるが故に、己れの宗旨に同じからざる者を見れば、千百の吟味詮索は差置き、一概にこれを外教人と称して、何となく嫌悪の情を含み、これがために双方の交情を妨ぐること多きは、誠に残念なる次第にして、我輩は常にその弁明に怠らず。日・・・<福沢諭吉「日本男子論」青空文庫>
  17. ・・・ どんな若いひとたちにしろ、ただ友達の兄さん弟というだけのつき合いを一々母たちの詮索風な、また婿選び的鑑識の対象にされることは、うるさくて堪え難かろう。どんな息子にしろ、格別の感情を抱いてもいない妹の友達たち一人一人をやがての嫁選びのよ・・・<宮本百合子「異性の友情」青空文庫>
  18. ・・・いろいろとそういうような詮索が感じられて来て、読者は、これらの菊池寛のテーマ小説が、人間性に率直明白に立ちつつ、それらのテーマの本質は封建世界に向ってうちかけられている疑問であるが故に生新であるが、その基本は近代常識の極めて小市民風な実際性・・・<宮本百合子「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」青空文庫>
  19. ・・・従来の文学青年的な純文学、神経質、非実行的、詮索ずきな作家気質をすてて、非常時日本の前線に活躍する官吏、軍人、実業家たちの生活が描かれなければならず、それ等の人々に愛読されるに足る小説が生れなければならないとする論である。「大人」という言葉・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  20. ・・・仰向いて暗い天井を見ながら、見たばかりの夢の材料を一々詮索しておかしく思った。 家の普請や白木の目立った種は昨夕、エッチの処で或る人が豪奢な建築をし白木ばかりで木目の美を見せる一室を特に拵えたと云う話を聞いた。それに違いない。海岸は、矢・・・<宮本百合子「静かな日曜」青空文庫>
  21. ・・・女性によって書かれたこの二種の本は、業績の相異とか資質の詮索とかを超えて結局は人類がその時代に潜められている様々の可能を実現し、花咲き実らすためには、どのような良心と、精励とが生活の全面に求められているかということについて、男性の生涯へも直・・・<宮本百合子「はるかな道」青空文庫>
  22. ・・・犯した誤謬を、率直に認め、失敗の原因を根こそぎ詮索して、その経験をあらいざらい次の運動の中で発達のためのこやしにすることだ。 六月の『中央公論』に長谷川如是閑が文芸時評を書いている。プロレタリア文学についての意見の中で、取材、形式の固定・・・<宮本百合子「文芸時評」青空文庫>
  23. ・・・一天万乗の君の観念はつくられ、天皇の特権を擁護するために全力をつくした旧憲法が人民階層のどんな詮索もうけずに発布された。当時の笑い草に、憲法発布ときいた江戸っ子が、何でエ絹布のはっぴだって、笑わせるねえ、はっぴは木綿にきまったもんだ! と啖・・・<宮本百合子「平和への荷役」青空文庫>
  24. ・・・はっきりそれを言葉として云うか云わぬかは別として、人生の目的という観念そのものに詮索の目を向けている。怒らず働いて、生活の不安がなくなるものならば、どうして少年少女の時代から怒らず工場でよく働きつづけた今日の青年達が、弱体であり、知能が低い・・・<宮本百合子「私たちの社会生物学」青空文庫>