せん‐し【戦士】例文一覧 28件

  1. ・・・ 人畜を挙げて避難する場合に臨んでも、なお濡るるを恐れておった卑怯者も、一度溝にはまって全身水に漬っては戦士が傷ついて血を見たにも等しいものか、ここに始めて精神の興奮絶頂に達し猛然たる勇気は四肢の節々に振動した。二頭の乳牛を両腕の下に引・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  2. ・・・そこには同志を求めて、追われ、迫害されて、尚お、真実に殉じた戦士があったか知れない。 彼等は、この憧憬と情熱とのみが、芸術に於て、運動に於て、同じく現実に虐げられ、苦しみつゝある人間を救い得ると信じていた。こゝに、彼等のロマンチシズムが・・・<小川未明「彼等流浪す」青空文庫>
  3. ・・・芸術戦線の戦士は、すべからくこの信念に生きなければならぬものです。 都会に、多くの作家があり、農村に多くの作家があるべき筈である。そして、彼等は、各の接触するところのものを真実に描かなければならぬ。そして、時に彼等の代弁となり、時に彼等・・・<小川未明「作家としての問題」青空文庫>
  4. ・・・ 芸術が、他のすべての自然科学の場合と同じく、独立して価値あるものでなくして、人生のために良心たり、感激たる上に於てのみ価値あるからには、芸術家は、すべからく、野に立って、叫ぶの戦士たらなければなりません。常に、自分を鞭打って止まざる至・・・<小川未明「自分を鞭打つ感激より」青空文庫>
  5. ・・・人間性の為めの勇敢な戦士であらねばならぬ。現実が極めて安意な無目的の状態に見えるのも、或いは希望の光りに輝いて見えるのも畢竟、主観的の問題である。其の人を離れて現実なく、其の人の主観を離れて現実の意味をなさぬのも、要するに以上の理由による。・・・<小川未明「囚われたる現文壇」青空文庫>
  6. ・・・斯くして人道主義の最も敬虔にして勇敢な戦士の赤誠を心ある人々の胸から胸へ伝えている。 こうした涙ぐましい、謙譲にして真摯の芸術こそ、今日のような虚偽と冷酷と圧迫と犠牲とを何とも思っていない時代によって、まさしく正しい人々の胸に革新の火を・・・<小川未明「民衆芸術の精神」青空文庫>
  7. ・・・文学界へ書くようになってからの北村君は、殆んど若い戦士の姿で、『人生に相渉るとは何ぞや』とか『頑執盲排の弊を論ず』とか、激越な調子の文章が続々出て来て、或る号なぞは殆んど一人で、雑誌の半分を埋めた事もあった。明治年代の文学を回顧すると民友社・・・<島崎藤村「北村透谷の短き一生」青空文庫>
  8. ・・・カアキ色のズボンをはいて、開襟シャツ、三鷹の町を産業戦士のむれにまじって、少しも目立つ事もなく歩いている。けれども、やっぱり酒の店などに一歩足を踏み込むと駄目である。産業戦士たちは、焼酎でも何でも平気で飲むが、私は、なるべくならばビイルを飲・・・<太宰治「作家の手帖」青空文庫>
  9.  東京は、いま、働く少女で一ぱいです。朝夕、工場の行き帰り、少女たちは二列縦隊に並んで産業戦士の歌を合唱しながら東京の街を行進します。ほとんどもう、男の子と同じ服装をしています。でも、下駄の鼻緒が赤くて、その一点にだけ、女の・・・<太宰治「東京だより」青空文庫>
  10. ・・・夕方、職場から帰った産業戦士たちが、その道場に立寄って、どたんばたんと稽古をしている。私は散歩の途中、その道場の窓の下に立ちどまり、背伸びしてそっと道場の内部を覗いてみる。実に壮烈なものである。私は、若い頑強の肉体を、生れてはじめて、胸の焼・・・<太宰治「花吹雪」青空文庫>
  11. ・・・夜にでもなったら古い昔のドイツ戦士の幻影がこの穴から出て来て、風雨に曝された廃墟の上を駆け廻りそうな気がした。城の後ろは切り立てたような懸崖で深く見おろす直下には真黒なキイファアの森が、青ずんだ空気の底に黙り込んでいた。「国の歴史や伝説・・・<寺田寅彦「異郷」青空文庫>
  12. ・・・一身の利害に対して頭がよい人は戦士にはなりにくい。 頭のいい人には他人の仕事のあらが目につきやすい。その結果として自然に他人のする事が愚かに見え従って自分がだれよりも賢いというような錯覚に陥りやすい。そうなると自然の結果として自分の向上・・・<寺田寅彦「科学者とあたま」青空文庫>
  13. ・・・に「戦士の亡骸が運び込まれたのを見ても彼女は気絶もせず泣きもしなかったので、侍女たちは、これでは公主の命が危ういと言った、その時九十歳の老乳母が戦士の子を連れて来てそっと彼女のひざに抱きのせた、すると、夏の夕立のように涙が降って来た」という・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  14. ・・・しかし自分の弱さと戦う戦士としては決して弱くなかった。平静な水面のような外見の底に不断に起こっていた渦巻がいかに強烈なものであったかは今私の手もとにある各種の手記を見ればわかる。そういう意味で亮は生まれつき強い人々よりも幾倍も強い男であった・・・<寺田寅彦「亮の追憶」青空文庫>
  15. ・・・あたかも明治の初年日本の人々が皆感激の高調に上って、解脱又解脱、狂気のごとく自己を擲ったごとく、我々の世界もいつか王者その冠を投出し、富豪その金庫を投出し、戦士その剣を投出し、智愚強弱一切の差別を忘れて、青天白日の下に抱擁握手抃舞する刹那は・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  16. ・・・海陸軍の医士、法学士、または会計官が、戦士を指揮して操練せしめ、または戦場の時機進退を令するの難きは、人皆これを知りながら、政治の事務家が教育の法方を議し、その書籍を撰定し、または教場の時間、生徒の進退を指令するの難きを知らざる者あらんや。・・・<福沢諭吉「学問の独立」青空文庫>
  17. ・・・を書いて、日本にもしたしまれているキュリー夫人の二女エヴ・キュリーは、一九四三年に「戦士のあいだを旅して」という旅行記をニューヨークから出版した。それがさいきん「戦塵の旅」という題で、ソヴェト同盟旅行の部分だけ翻訳出版された。一九四一年十一・・・<宮本百合子「明日の知性」青空文庫>
  18. ・・・そのときの彼女たちは、断髪に日の丸はちまきをしめて、日本の誇る産業戦士であった――寮でしらみにくわれながらも。彼女たちの働く姿は新聞に映画にうつされた。あなたがたの双肩に日本の勝利はゆだねられています、第一線の花形です、というほめ言葉を、そ・・・<宮本百合子「偽りのない文化を」青空文庫>
  19. ・・・ 事変以来、様々の勤労の場面に小学校の卒業生の求められている勢は殆どすさまじいばかりで、三月末の日曜日、東京の各駅には地方から先生に引率された「産業豆戦士」が、行李だの鞄だのを手に手に提げて、無言の裡に駭きの目を瞠りながら続々と到着して・・・<宮本百合子「国民学校への過程」青空文庫>
  20. ・・・大戦のときの無名戦士の記念碑には、煤でうすよごれた鳩たちの糞がかかっている。見上げるセント・ポールの正面の大石段の日向には上から下まで、失業した男たちがびっしりつまって、或るものは腰かけ或るものは横になり、あたりに散っている新聞の切れはしと・・・<宮本百合子「時代と人々」青空文庫>
  21. ・・・ もうここまで漕ぎ付ければ、後はひとりでに自分の懐に入って来るほかないいくらかの土地を思うと、優勝の戦士がやがて来る月桂冠を待つときのような心持にならざるを得なかった。 比類ない自分の精力と手腕をもってすれば、こんな相手を斃したこと・・・<宮本百合子「禰宜様宮田」青空文庫>
  22. ・・・しても、真理を求める精神は青春を保ち、一九三二年、世界的な規模で彼の文学生活四十年が祝われた時、ゴーリキイは、最も混り気ない献身、彼の文学的力量の全蓄積をもって、世界文化の発展のためにその先頭に立つ老戦士として自身を示したのであった。 ・・・<宮本百合子「逝けるマクシム・ゴーリキイ」青空文庫>
  23.  三月十五日に発行された文学新聞に、無名戦士の墓へ合葬された人々の氏名が発表されていた。そのなかに、譲原昌子という名をみたとき、わたしははげしいショックをうけた。今年の一月十二日に亡くなられたと書いてある。一人の家族もなくて・・・<宮本百合子「譲原昌子さんについて」青空文庫>
  24. ・・・そのような上野独特の旅客が山下まで溢れた中には、旧盆に故郷へかえる男女の産業戦士が大部分を占めていることも新聞に報告された。 同じ頃にやはり新聞が、青少年男女の産業戦士の病気になる率が急騰していることを報じていたことは、その上野駅頭の大・・・<宮本百合子「列のこころ」青空文庫>
  25.  この間うちの上野駅の混雑というものは全く殺人的なひどい有様であったようだ。その混雑の原因の一つは、お盆にあたって故郷へかえる男女の産業戦士たちの出入りであると云われ、密集して改札口につめかけている大群集の写真も新聞にのった・・・<宮本百合子「若きいのちを」青空文庫>
  26. ・・・しかし敵手が人間になり、さらに自分の心になると、彼らはもう立派な戦士ではない。彼らの活動は真生の面影を暗示する。しかしそれは彼ら自身の生活ではなかった。彼らは低い力と戦っている時にのみ強いのであった。 私は複雑な、深さの知れぬ人生のいろ・・・<和辻哲郎「生きること作ること」青空文庫>
  27. ・・・そうして私は彼らの内に勇ましい生活の戦士を見、生の意義を追い求める青年の焦燥をともにし得ると思った。彼らの雰囲気が青春に充ち、極度に自由であることをも感じた。彼らの粗暴な無道徳な行為も、因襲の圧迫を恐れない真実の生の冒険心――大胆に生の渦巻・・・<和辻哲郎「転向」青空文庫>
  28. ・・・この画かきさんが大なる決心と気概とをもって、霊の権威のために、人道のために、はた宇宙の美のために断々乎として歩むならば吾人は霊的本能主義の一戦士として喜んで彼を迎えたい。も少し精を出して大作を作り、も少し力を入れてウルサイ世人をばかにしたら・・・<和辻哲郎「霊的本能主義」青空文庫>