ぜん‐しん【前進】例文一覧 30件

  1. ・・・強いて一町場ぐらいは前進出来ない事はない。が、そうすると、深山の小駅ですから、旅舎にも食料にも、乗客に対する設備が不足で、危険であるからとの事でありました。 元来――帰途にこの線をたよって東海道へ大廻りをしようとしたのは、……実は途中で・・・<泉鏡花「雪霊続記」青空文庫>
  2. ・・・二十日の夜行軍、翌二十一日の朝、敵陣に近い或地点に達したのやけど、危うて前進が出来ん。朝飯の際、敵砲弾の為めに十八名の死者を出した。飯を喰てたうえへ砲弾の砂ほこりを浴びたんやさかい、口へ這入るものが砂か米か分らん様であった。僕などは、もう、・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  3. ・・・人間の権利は平等であるから、生活の平等のみが文明の目的であり、同時に精神であるから。前進一路、人類の目的を達せんとするのが、即ち革命であり、また人類の飛躍ではあるのです。そして、同じく責任を感じ、志を共にするものゝみが、新しい世界を創生する・・・<小川未明「芸術は革命的精神に醗酵す」青空文庫>
  4. ・・・ 三日後、十一月十七日、日本軍は、全線に亘って、いっせいに前進を開始した。 彼等の属している中隊も前進した。そしてまもなく、前哨線の小屋のあるところに到達した。中隊長は、前哨に送った部下の偵察隊が、××の歩哨と、馴れ/\しく話し合い・・・<黒島伝治「前哨」青空文庫>
  5. ・・・左右の者があって、前進しだすと、始めて「前へ」の号令があったことに気づいて自分も立ち上る。 敵愾心を感じたり、恐怖を感じたりするのは、むしろ戦闘をしていない時、戦闘が始る前である。シベリアでの経験であるが、戦闘であることを思うと、どうし・・・<黒島伝治「戦争について」青空文庫>
  6. ・・・ 橇が、兵士の群がっている方へ近づき、もうあと一町ばかりになった時、急に兵卒が立って、ばらばらに前進しだした。でも、なお、あと、五六人だけは、雪の上に坐ったまま動こうとはしなかった。将校がその五六人に向って何か云っていた。するとそのうち・・・<黒島伝治「橇」青空文庫>
  7. ・・・ハリコフでの国際革命作家拡大プレナムの決議は日本のプロレタリア文学運動が、シッカリと大衆の中に根を張り、国際的な連関において前進して行くために、もっとも重要な、さしあたって第一番に議題として我々が討議し、具体化しなければならない幾多の貴重な・・・<黒島伝治「農民文学の問題」青空文庫>
  8. ・・・ 鉄橋の警戒隊は列車の窓を見上げて叫んだ。「よろしい! 前進。」 そして、列車は轟然たる車輪の響きを高めつゝ橋にさしかゝった。速力は加わったようだった。線路はどこまでも二本が平行して完全だった。ところが、中ほどへ行くと不意にドカンと・・・<黒島伝治「氷河」青空文庫>
  9. ・・・力あまって二三歩よろめき前進してから、やっと踏みとどまり、振り向いて見ると、少年が、草原の中に全裸のままで仰向けに寝ている。私は急に憤怒を覚えて、「あぶないんだ。この川は。危険なんだ。」と、この場合あまり適切とは思えない叱咤の言を叫び威・・・<太宰治「乞食学生」青空文庫>
  10. ・・・おまえは、稀代の不信の人間、まさしく王の思う壺だぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎えて、もはや芋虫ほどにも前進かなわぬ。路傍の草原にごろりと寝ころがった。身体疲労すれば、精神も共にやられる。もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐・・・<太宰治「走れメロス」青空文庫>
  11. ・・・ あたたかくなって、そろそろ桜の花がひらきはじめ、僕はその日、前進座の若手俳優の中村国男君と、眉山軒で逢って或る用談をすることになっていた。用談というのは、実は彼の縁談なのであるが、少しややこしく、僕の家では、ちょっと声をひそめて相談し・・・<太宰治「眉山」青空文庫>
  12. ・・・われ、事に於いて後悔せず、との菊池氏の金看板の楯の弱さにも、ふと気づいて、地上の王者へ、無言で一杯のミルクささげてやって呉れる決意ついたら、それが、また、君のからだの一歩前進なること疑う勿れ。 営利目的の病院ゆえ、あらゆる手段にて患・・・<太宰治「HUMAN LOST」青空文庫>
  13. ・・・ さればとて前進すれば必ず戦争の巷の人とならなければならぬ。戦争の巷に入れば死を覚悟しなければならぬ。かれは今始めて、病院を退院したことの愚をひしと胸に思い当たった。病院から後送されるようにすればよかった……と思った。 もうだめだ、万事・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  14. ・・・そのためにややもすると前進する勇気を阻喪しやすい。頭の悪い人は前途に霧がかかっているためにかえって楽観的である。そうして難関に出会っても存外どうにかしてそれを切り抜けて行く。どうにも抜けられない難関というのはきわめてまれだからである。 ・・・<寺田寅彦「科学者とあたま」青空文庫>
  15. ・・・この効果の最も著しく感ぜられる場合は、たとえば茂みの中を鉄砲を持って前進する猟者を側面から映写しながら追跡する場合である。スクリーンと自分の目とが静止しているとは思われなくて、スクリーンが猟者といっしょに進行するのを、絶えず目を横に動かして・・・<寺田寅彦「耳と目」青空文庫>
  16. ・・・た上にまた切りつめられてどこまで押して行くか分らないうちに、彼の反対の活力消耗と名づけておいた道楽根性の方もまた自由わがままのできる限りを尽して、これまた瞬時の絶間なく天然自然と発達しつつとめどもなく前進するのである。この道楽根性の発展も道・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  17. ・・・、わがいわゆる乗るは彼らのいわゆる乗るにあらざるなり、鞍に尻をおろさざるなり、ペダルに足をかけざるなり、ただ力学の原理に依頼して毫も人工を弄せざるの意なり、人をもよけず馬をも避けず水火をも辞せず驀地に前進するの義なり、去るほどにその格好たる・・・<夏目漱石「自転車日記」青空文庫>
  18. ・・・われらは渾身の気力を挙げて、われらが過去を破壊しつつ、斃れるまで前進するのである。しかもわれらが斃れる時、われらの烟突が西洋の烟突の如く盛んな烟りを吐き、われらの汽車が西洋の汽車の如く広い鉄軌を走り、われらの資本が公債となって西洋に流用せら・・・<夏目漱石「マードック先生の『日本歴史』」青空文庫>
  19. ・・・しかもそれは一人の前進的な人間の小市民的インテリゲンツィアからボルシェビキへの成長の過程であり、日本のプロレタリア解放運動とその文学運動の歴史のひとこまでもある。そのひとこまには濃厚に、日本の天皇制権力の野蛮さとそれとの抗争のかげがさしてい・・・<宮本百合子「巖の花」青空文庫>
  20. ・・・が、日本の民主的な文学の流れは、昭和のはじめ世界の民主主義の前進につれて歴史的に高まり、プロレタリア文学の誕生を見た。その当時、その流れの中からこそ、これまでとちがった勤労婦人の中からの婦人作家が出て来た。佐多稲子、松田解子、平林たい子、藤・・・<宮本百合子「明日咲く花」青空文庫>
  21. ・・・その研究の中にも、日本の文学を前進させる力がひそめられていることは疑いはないのである。〔一九三七年十二月〕<宮本百合子「明日の言葉」青空文庫>
  22. ・・・一見ささいなこの実力こそ私たちが大きい苦痛と犠牲を払って進んできた一歩前進の最もたしかな収穫であると思う。若い女性たちは自分もその一人としてきょうの人生を歩いている女性の大群の道幅というものを見きわめはじめてきた。あの道へはどういう過程で入・・・<宮本百合子「明日をつくる力」青空文庫>
  23. ・・・そして自分に即さず一つの社会的な事実としてこの事を観察すると、私は、日本の現在の階級対立のけわしさや、そのきびしい抑圧の中からも何かの可能性をひき出し、たとえ半歩たりとも具体的に前進しようとする階級の、いよいよ強靭にされる連帯性、積極性の大・・・<宮本百合子「新しい一夫一婦」青空文庫>
  24. ・・・ョン、ファシズムに抗議する声明書、それらの集団的な抵抗の裏づけとして本当に一人一人が、自分の生活態度の全面でどんな抗議を行っているか、それを明瞭に意識において見なければ、日本の民主化を守り通し、それを前進させるための実力としては足りないとい・・・<宮本百合子「新しい抵抗について」青空文庫>
  25. ・・・社会形成の推移の過程にあらわれて来ているこの女にとって自然でない女らしさの観念がつみとられ消え去るためには、社会生活そのものが更に数歩の前進を遂げなければならないこと、そしてその中で女の生活の実質上の推進がもたらされなければならないというこ・・・<宮本百合子「新しい船出」青空文庫>
  26. ・・・歴史が前進しないものなら、過去の天才は文学のテーマをかきつくしてしまえたろう。その人が自分の社会的・階級的人生を発見したからこそ、そこにおこるすべてのことの人間らしい美醜、悲喜の歴史的意味を知り、自分をもある時代の階級的人間の一典型として、・・・<宮本百合子「新しい文学の誕生」青空文庫>
  27. ・・・時計また二時前進。今度の旅行には時間表が買えなかった。大きい経済地図があるのを鞄から出して見る。モスクワは地図の上で赤ボッチ。自分達はシベリアの野と密林の間を一日一日と遠くへ走っている。 ある駅へ止る。ステーションの建物の入口の上に赤い・・・<宮本百合子「新しきシベリアを横切る」青空文庫>
  28. ・・・を、過去の作品としてうしろへきつく蹴り去ることで、それを一つの跳躍台として、より急速な、うしろをふりかえることない前進をめざす状態だった。 一九三二年の春から、うちつづく検挙と投獄がはじまった。その期間に作者はしばしば一人の人間、女とし・・・<宮本百合子「あとがき(『二つの庭』)」青空文庫>
  29. ・・・その間に、日本の社会は幾変転し、大衆の歴史は前進した。その歴史の歩みが、「貧しき人々の群」の作者をも成長させた。日本の文学がその発展として、文学の社会的意義の自覚と階級の観念を理解し摂取した。それが契機となって、わたしのぼんやりとしていた人・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第一巻)」青空文庫>
  30. ・・・「それは好いが、先生自分で鞭を持って、ひゅあひゅあしょあしょあとかなんとか云って、ぬかるみ道を前進しようとしたところが、騾馬やら、驢馬やら、ちっぽけな牛やらが、ちっとも言うことを聞かないで、綱がこんがらかって、高粱の切株だらけの畑中に立往生・・・<森鴎外「鼠坂」青空文庫>