ぜん‐せん【前線】例文一覧 30件

  1. ・・・ 鯖ヒゲの中隊長が注意を繰かえした。 前線から帰ってくる将校斥候はロシヤ人や、ロシアの大砲を見てきたような話をした。「本当かしら?」 和田達多くの者は、麻酔にかかったように、半信半疑になった。「ロシヤが、武器を供給したん・・・<黒島伝治「チチハルまで」青空文庫>
  2. ・・・しかし彼の古いティンダル効果の研究はいつのまにか現在物理学の前線へ向かってひそかにからめ手から近づきつつあった。研究資金にあまり恵まれなかった彼は「分光器が一つあるといいがなあ」と嘆息していた。そうして、やっと分光器が手に入って実験を始める・・・<寺田寅彦「時事雑感」青空文庫>
  3. ・・・のためにほんの少しばかり消防が手おくれになって、そのために誤ってある程度以上に火流の前線を郭大せしめ、そうしてそれを十余メートルの烈風があおり立てたとしたら、現在の消防設備をもってしても、またたいていの広い火よけ街路の空間をもってしてもはた・・・<寺田寅彦「函館の大火について」青空文庫>
  4. ・・・「こわいもの見たさというか、男の虚栄心からか」前線へもゆきたがる作家を、陸軍の従軍報道班の人々は忍耐をもって、適当に案内し、見聞させ「戦争がその姿をあらわして来た」と亢奮をも味わせている。軍人は戦い、そして勝たなければならないという明瞭な目・・・<宮本百合子「明日の言葉」青空文庫>
  5. ・・・兵営と前線生活では婦人のすることがすべて不幸な召集された男の手によってされていた。銃後では、家庭を破壊されたすべての哀れな女性が、軍の労働者に代って武器製造をした。これがどんな人間らしくない、不幸の図絵であったかということは今日すべての男女・・・<宮本百合子「明日をつくる力」青空文庫>
  6. ・・・そして、軍部と軍国主義教育は前線で、日本人民がそれを自分たちの行為として承認することを不可能と感じるほどの惨虐が行われた。敵という関係におかれた他の国の人々に対して。また日本軍の兵士たちに対して。 一九四八年ごろから、日本におこっている・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」青空文庫>
  7. ・・・専門学校では文科系統の学徒が容しゃなく前線へ送り出され、理科系統のものだけが戦力準備者としてのこされた。何年間も否定されつづけて来た若き生の、肯定と回復の一つの気の如く、不安なつつみどころのない表現として、自然と自意識の問題を語るとき大多数・・・<宮本百合子「生きつつある自意識」青空文庫>
  8. ・・・ 女を前線に据えるなんざ……そういうなあ……ふむ、女ってものはそういうもんじゃねえんだ。」 ソモフは、出身から云えばボルティーコフと同じ労働者である。彼は、年こそ六十にもなっているが、インガの勤労者としての価値、及び解放された女がどうで・・・<宮本百合子「「インガ」」青空文庫>
  9. ・・・ さて、恐ろしい戦は終りました。前線に行っていらした皆さんの御兄弟はお帰りになった方もあるでしょう。しかし決してもう二度と帰らない御兄弟を持った娘さんもあるでしょう。それから皆さんのお父さんも、徴用から解除され、或は復員になって家庭にお・・・<宮本百合子「美しく豊な生活へ」青空文庫>
  10. ・・・毎日毎日たくさんの女の人たちが篤志看護婦となって前線へ出て行く。彼女も研究所を閉鎖して早速同じ行動に移るべきであろうか。 事態の悲痛さをキュリー夫人は非常に現実的に洞察した。科学者としての独創性が彼女の精神に燃えたった。マリアはフランス・・・<宮本百合子「キュリー夫人」青空文庫>
  11. ・・・さもなくて、どうしてすべての若い女を勤労動員し、すべての学徒の、文科学生だけを前線にかり出すことが出来たろう。献金、献金、供出、供出と強要できたろう。八月十五日が来たとき、日本じゅうに灰色の煙をたててそれらの血ぬられた統計は焼却された。・・・<宮本百合子「現代史の蝶つがい」青空文庫>
  12. ・・・はげしい前線の生活も経験して来た壮年の一部の作家たちが、戦後日本の錯雑した現実に面して、過去の私小説的なリアリズムの限界の内にとどまっているにたえないのは必然である。日本の社会現実を全面的にすくい上げようとして彼ら一部の作家たちは新しい投げ・・・<宮本百合子「現代文学の広場」青空文庫>
  13. ・・・は、皆が、不幸とか災難とかについては、その種類もその数の多さも大抵は知っていて、災難というと立ちどころに、ああと思うめいめいの心当り、危惧さえ日常生活の裡には存在しているという我々の現実を語っている。前線に愛する誰彼を出しているような人にと・・・<宮本百合子「幸運の手紙のよりどころ」青空文庫>
  14. ・・・ と命ぜられた、責任の重い生産における前線の部署である。いかに恥しめられようと、退かない。そこで、反革命分子がソヴェト法律を逆用して遂にその労働者出の工場管理者を国家保安部に捕縛させた。然し、工場内の革命的分子は、黙って見ていない。熱心な、・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」青空文庫>
  15. ・・・最も退嬰的であると考えられていた教員、全逓・官公庁の職員も婦人をこめて今は前線に進んでいます。農民組合は日本全国にわたって供出の合理化と公正な農地調整法の実現のために闘っており、日本でははじめて全国的な農民組合婦人部の大会が近々にもたれよう・・・<宮本百合子「国際民婦連へのメッセージ」青空文庫>
  16. ・・・ゆたかな声量と生粋のソヴェト人の歌好きのこころで「前線通信員」の活気横溢する歌をうたう、ゴルバートフ。一九一七年以後に成長して、社会主義建設の中で青年となった新しい気質のソヴェト作家が、あらゆる人々とともにナチスに侵略された自分たちの建設祖・・・<宮本百合子「ゴルバートフ「降伏なき民」」青空文庫>
  17. ・・・これから結婚しようとしている人、もうじき結婚をするような運びになっていた人、或いはもう婚約がある人々、そういう人たちが、急な境遇の変化で、対手の男を前線へ送らなければならないような事情がどっさりおこった。 既に結婚していれば、それがたと・・・<宮本百合子「これから結婚する人の心持」青空文庫>
  18. ・・・従来の文学青年的な純文学、神経質、非実行的、詮索ずきな作家気質をすてて、非常時日本の前線に活躍する官吏、軍人、実業家たちの生活が描かれなければならず、それ等の人々に愛読されるに足る小説が生れなければならないとする論である。「大人」という言葉・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  19. ・・・新聞は毎日毎日、勇壮無比な形容詞をくりかえして、前線の将士の善戦をつたえているが、現代の読者が、ああいう大ざっぱで昔風の芝居がかりな勇気というもののいいあらわしかたや、献身というものの表現を、不満なくうけとって、心持にそぐわない何ものをも感・・・<宮本百合子「祭日ならざる日々」青空文庫>
  20. ・・・自分たちだけは、様々の軍事上の名目を発明して、数の少い軍用機で、逸早く前線から本土へ逃げて翔びかえってしまった前線の指揮官があることを、これ迄何と度々耳にしていることだろう。軍人社会での階級のきびしさは、公的目的のための制度であったはずであ・・・<宮本百合子「逆立ちの公・私」青空文庫>
  21. ・・・文学の領域でもそれは当然明瞭なわけなのだが、十数年前にプロレタリア文学としての運動があったから、今日民主主義の文学というと、後退したような感じを与える。文学の前線が時によって出たり引っこんだりしているようにも思われる。しかし、それはけっして・・・<宮本百合子「作家の経験」青空文庫>
  22. ・・・今次大戦が始ってから彼女の良人である映画監督者は、レーニングラードの前線で記録映画のために働いていた。レーニングラードは包囲された。モスクワにいたヴェラ・インベルは飛行機でレーニングラードに飛び立った。そして、包囲軍を撃退する迄そこに留った・・・<宮本百合子「新世界の富」青空文庫>
  23. ・・・ すべてのアクティヴな作家は、前線に、また前線に近い銃後に赴いて、彼らの文学的記録・通信を送っていた。十数年前には、モスクワの細長い書斎で、日本から来た女を前におきながら、私は退屈してしまったわ、曲芸も見あきたし……というようなことをい・・・<宮本百合子「政治と作家の現実」青空文庫>
  24. ・・・ 新聞で私達は玉砕と言われた前線部隊の人々が生還していることを度々読んだ。死んだと思われた人が生きて還って来るといえば私達の心は歓びで踊るように思う。然しその本人達は、そのような歓びを無邪気に感じていられただろうか。自分を死んだものとし・・・<宮本百合子「青年の生きる道」青空文庫>
  25. ・・・より遠い前線というちがいしかなかった。世界はそれを明瞭に知っている。日本じゅうでは、戦災で良人や子供を喪った女性が決して少くないのである。これらの孤独になった妻たちは、一人として個人の身勝手からおこった事故で未亡人になった婦人たちではない。・・・<宮本百合子「世界の寡婦」青空文庫>
  26. ・・・日本から赤紙一枚で前線に送られた兵士たちは、平和な日常生活の習慣から切りはなされ、国家の権力で殺すことを命じられ、その方法を教えられ、人を殺すことについて人間の当然感じる恐怖心を麻痺させる訓練を日夜つまされた。東京裁判の記事を見ても、信じら・・・<宮本百合子「戦争でこわされた人間性」青空文庫>
  27. ・・・また来て下さい、と書いてデモで停留場まで送った。 この興味ある赤軍の国際的功績を、どの作家が書いているか? 一人も書いていない。映画があるだけだ。また前線を訪問した工場からの慰問隊の、断片的な手記しかなかった。ソヴェトの作家たちは、赤軍・・・<宮本百合子「ソヴェト文壇の現状」青空文庫>
  28. ・・・小さかったナチスがそういう支援・投資を得て怪物的な成長をとげ世界を攪乱しはじめて一九三八年以来、世界平和のため、自分たちの人民生活・国家の存在の擁護のために自分の息子たち孫たちを前線に送らなければならなくなったのは、ほかならぬかつてのナチス・・・<宮本百合子「それらの国々でも」青空文庫>
  29. ・・・ また文学戦線の問題も歴史的推進力を明瞭にしながら人権を守るという点をはっきりして、よりよく生きる可能の向上としておしすすめることで、民主的なものについて最後の線を守ることで前線に立つという最後の一線がなくてはならず、どなたもおいでなさ・・・<宮本百合子「批評は解放の組織者である」青空文庫>
  30. ・・・だが、その版図の前線一円に渡っては数千万の田虫の列が紫色の塹壕を築いていた。塹壕の中には膿を浮かべた分泌物が溜っていた。そこで田虫の群団は、鞭毛を振りながら、雑然と縦横に重なり合い、各々横に分裂しつつ二倍の群団となって、脂の漲った細毛の森林・・・<横光利一「ナポレオンと田虫」青空文庫>