センチメンタル【sentimental】例文一覧 23件

  1. ・・・という言葉は詩的に、センチメンタルに聞えるかも知れないが、民衆の利福を祈念するために、より正しい生活を人間の正義感に訴えて、地上に実現せしめんとする目的は、一片の空想的事実ではないのであります。 芸術に対しては、いろいろの見解が下される・・・<小川未明「自分を鞭打つ感激より」青空文庫>
  2. ・・・そんな豹一を見て、女は、センチメンタルなのね。肩に手を掛けた。豹一はうっとりともしなかった。間もなく退学届を出した。そして大阪の家へ帰った。三 学校をやめたと聞いて、「やめんでもええのに。しやけど、お前がやめよう思うんや・・・<織田作之助「雨」青空文庫>
  3. ・・・あれをセンチメンタルだと評する人もあるが、あの中には「運命に毀たれぬ確かなもの」を追求しようとする強い意志が貫いているのだ。 ただ私は当時物質的苦労、社会的現実というもの、つまり「世間」を知らなかったから、今の私から見て甘いことはたしか・・・<倉田百三「『出家とその弟子』の追憶」青空文庫>
  4. ・・・そんなセンチメンタルなことを書いたことがあった。 蒲団と一緒に、袷が入ってきた。 二三日して、寒くなったので着物をき換えたとき、袂に何か入っているらしいので、オヤと思って手探ぐりにすると、小さいカードのようなものが出てきた。・・・<小林多喜二「独房」青空文庫>
  5. ・・・春田が、どのような巧言を並べたてたかは、存じませぬけれど、何も、あんなにセンチメンタルな手紙を春田へ与える必要ございません。醜態です。猛省ねがいます。私、ちゃんとあなたのための八十円用意していたのに、春田などにたのんでは十円も危い。作家を困・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  6. ・・・どうにも仕様がないものだから、川へ飛びこんで泳ぎまわったりして、センチメンタルみたいじゃないか。」「傍観者は、なんとでも言えるさ。僕には、出来ない。君は、嘘つきだ。」 私は、むっとした。「じゃ、これから君は、どうするつもりなんだ・・・<太宰治「乞食学生」青空文庫>
  7. ・・・道の向う側の黒い板塀の下に一株の紫陽花が咲いていて、その花がいまでもはっきり頭に残っているところから考えると、或いは僕はそのとき柄にもなく旅愁に似たセンチメンタルな気持でいたのかも知れないね。「兵隊さん、雨に濡れてしまいますよ。」 ・・・<太宰治「雀」青空文庫>
  8. ・・・案外、センチメンタルね、先生は。しっかりなさいよ。先生はまだお若いわ。これからじゃないの。くだらん事を言っちゃいけない。僕はもう三十六です。都会の人たちと違って、田舎者の三十六と言えば、もう孫が出来ている年頃だ。からかっちゃいけませ・・・<太宰治「春の枯葉」青空文庫>
  9. ・・・あまり文章が、うまくなかったそうである。センチメンタル過ぎて、あまくて、三浦君は少し閉口したそうである。けれども、その手紙を読んで、下吉田の姉妹を、ちょっと懐しく思ったそうである。丙種で、三浦君は少からず腐っていた矢先でもあったし、気晴しに・・・<太宰治「律子と貞子」青空文庫>
  10. ・・・この自分の不幸を思うと、もう自分に幸福というものは一生ないのかと、それはセンチメンタルな気持でなく、何だかいやに明瞭にわかってきたようにこの頃感じます。 あれ、これと考え出すと私は酒を飲まずにおられなくなります。酒によって自分の文学観や・・・<太宰治「わが半生を語る」青空文庫>
  11. ・・・それに、新しい思潮が横溢して来たその時では、その作の基調がロマンチックでセンチメンタルにかたよりすぎている。『生』『妻』と段々調子が低く甘くなっていっているのに、またこのセンチメンタルな作では、どうもあきたらないというような気がする。また、・・・<田山花袋「『田舎教師』について」青空文庫>
  12. ・・・……少しセンチメンタルになる。 帰りに四馬路という道を歩く。油絵の額を店に並べて、美しく化粧をした童女の並んでいる家がところどころにある。みんな娼楼だという。芸妓が輿に乗って美しい扇を開いて胸にかざしたのが通る。輿をささえる長い棒がじわ・・・<寺田寅彦「旅日記から(明治四十二年)」青空文庫>
  13. ・・・私はうれしいような悲しいような――いわばセンチメンタルな心持になる。祖母は八十四だ。女中はたった十六の田舎の小娘だ。たれに向って、私は、「ほう、おかしいことよ、私は少々センチメンタルになって来てよ」といわれよう! 私は、御飯時分にな・・・<宮本百合子「田舎風なヒューモレスク」青空文庫>
  14. ・・・彼の中には古いセンチメンタルしかない。 それに反してドミトリーは、生れながらの労働者である。インガに対して、彼はニェムツェウィッチのようにこしらえ上げた文句を云うことは知らない。「僕はあなたを愛している。」そういうだけが精々だ。 イ・・・<宮本百合子「「インガ」」青空文庫>
  15. ・・・ ここで、もう一つとりあげるべきことはこの裁判にはセンチメンタルなところがあると思われる点です。その点皆さん『朝日』や『毎日新聞』の方たちがおっしゃいましたけれども、被告は、私は生活苦からやったんじゃありませんといっている、それだのに、・・・<宮本百合子「浦和充子の事件に関して」青空文庫>
  16. ・・・稲子さんは、互の友情にも甘えないひとである。センチメンタルなところがすこしもない。これは女として新しいタイプであり、その点、稲子さんの良人となり友人となる者にとっては、或るこわさがある。対手を高める力として作用する隠されたこわさがある。稲子・・・<宮本百合子「窪川稲子のこと」青空文庫>
  17. ・・・ そうすれば何でも物事に感じやすい極く極くセンチメンタルになる頂上を少女小説は通って行くんです。 十五六から二十近くまでの娘の心と云うものはまるで張りきった絃の様にささやかな物にふれられてもすぐ響き、微風にさえ空鳴りがするほどで、涙・・・<宮本百合子「現今の少女小説について」青空文庫>
  18. ・・・クリスマスカロルなど、スエ子がきのうよんで、何だかいやな気がしたと、ひどく気分的に表現していたが主人公がここでも、全くあり得ぬようにセンチメンタルに架空的にとらえられているのです。 ねえ、私は用心しなければいけませんね。こうやってかいて・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  19. ・・・ガルボは、いい女優の特長として幅があるし、流動的だし、含蓄があるし、私は好きな女ですが、この平凡で謂わばセンチメンタルな映画を見て、私はどっち道不幸なめぐり合わせを描写して涙をこぼさせるようなのは、すきでないと感じました。この私の心持から或・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  20. ・・・一人が低い声で仕事とリズムを合わせて唄い出すと、やがて一人それに加わり、また一人加わり、終には甲高な声をあげ、若い女工まで、このストトン、ストトンという節に一種センチメンタルな哀愁さえ含ませて一同合唱する。 何とかして通やせぬストトン、・・・<宮本百合子「この夏」青空文庫>
  21. ・・・ けれ共相当の注意を無意識の裡に呼び起こされるほどセンチメンタルな言葉を洩して居た。 細い背の高い体と熱い様な光りの有る眼とを持って眼の上には長くて濃い□□(が開いて居た。 上っ皮のかすれた様な細い声は低く平らかに赤い小さな唇か・・・<宮本百合子「蛋白石」青空文庫>
  22. ・・・文学の仕事に転じて来た時、センチメンタルになり、人間の観方、文学的表現等では、非常に抵抗少く過去の文学的常套に伏するのは何故であろうか。こういう経歴の作家に通有な文学に於ける面白さが、やはりブルジョア文学の一部の作家がいう面白さと類似したも・・・<宮本百合子「ヒューマニズムへの道」青空文庫>
  23. ・・・その感傷が、当人達も自覚しない自然の力にも手伝われて、友達や教師にひどくセンチメンタルな手紙を書かせるようにもなるのでしょう。 そういう場合、異性の教師が、或る程度まで心理的な洞察力のある、人としてよい訓練を経て来た者なら互方の進んでゆ・・・<宮本百合子「惨めな無我夢中」青空文庫>