せんてん‐てき【先天的】例文一覧 15件

  1. ・・・僕は先天的にも後天的にも江戸っ児の資格を失いたる、東京育ちの書生なり。故に久保田君の芸術的並びに道徳的態度を悉理解すること能わず。然れども君の小説戯曲に敬意と愛とを有することは必しも人後に落ちざるべし。即ち原稿用紙三枚の久保田万太郎論を草す・・・<芥川竜之介「久保田万太郎氏」青空文庫>
  2. ・・・とU氏は渋面を作って苦々しい微笑を唇辺に寄せつつ、「あの女は先天的に堕落の要素を持ってる。僕は裁判をしてこっちが羞恥を感じて赤面したが、女はシャアシャアしたもんで、平気でベラベラ白状した。職業的堕落婦人よりは一層厚顔だ。口の先では済まない事・・・<内田魯庵「三十年前の島田沼南」青空文庫>
  3. ・・・「イヤそれは嘘言だ、上村君にもし相手があったら北海道の土を踏ぬ先に変節していただろうと思う、女と言う奴が到底馬鈴薯主義を実行し得るもんじゃアない。先天的のビフテキ党だ、ちょうど僕のようなんだ。女は芋が嗜好きなんていうのは嘘サ!」と近藤が・・・<国木田独歩「牛肉と馬鈴薯」青空文庫>
  4. ・・・私のそんな親切なもてなしも、内実は、犬に対する愛情からではなく、犬に対する先天的な憎悪と恐怖から発した老獪な駈け引きにすぎないのであるが、けれども私のおかげで、このポチは、毛並もととのい、どうやら一人まえの男の犬に成長することを得たのではな・・・<太宰治「畜犬談」青空文庫>
  5. ・・・ その後偶然にたいへんに親切で上手でぐあいのいい歯医者が見つかってそれからはずっとその人にやっかいになって来たが、先天的の悪い素質と後天的不養生との総決算で次第にかんで食えるものの範囲が狭くなって来た。柔らかい牛肉も魚のさし身もろくにか・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  6. ・・・しかしその先天的の相違を認めてもらって、それ以外の要領を授かれば、結果においては同じ事になってしまうのである。それで先生は弟子の手首の格好を見ただけで弟子をしかるわけにはゆかない。 手首の問題についての自分の経験はまずこれだけであるが、・・・<寺田寅彦「「手首」の問題」青空文庫>
  7. ・・・ 歌人と俳人とではあるいは先天的に体質、従ってそれによって支配される精神的素質がちがっているのではないかという想像さえ起こし得られる。近ごろ流行の言葉を使えば、体内各種のホルモンの分泌のバランスいかんが俳人と歌人とを決定するのではないか・・・<寺田寅彦「俳句の精神」青空文庫>
  8. ・・・従ってこれらの大多数の純日本人は当然に俳諧連句に対する先天的の理解力も創作能力も付与されているのである。ただ現在では彼らの耳目の及ぶ範囲のそとに連句が放逐されているために、彼らはこの者の存在を全く忘れてしまっているのである。神田を歩いてあの・・・<寺田寅彦「連句雑俎」青空文庫>
  9. ・・・われわれ日本の芸術家の先天的に定められた運命は、やはりこうした置炬燵の肱枕より外にはないというような心持になるのであった。三 人種の発達と共にその国土の底に深くも根ざした思想の濫觴を鑑み、幾時代の遺伝的修養を経たる忍従棄権の・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  10.  僕は昔から「人嫌い」「交際嫌い」で通って居た。しかしこれには色々な事情があったのである。もちろんその事情の第一番は、僕の孤独癖や独居癖やにもとづいて居り、全く先天的気質の問題だが、他にそれを余儀なくさせるところの、環境的な・・・<萩原朔太郎「僕の孤独癖について」青空文庫>
  11. ・・・ 彼の、先天的に鋭い理智と、感情とは、小僧っ子の事で一杯になっていた。 四十年間、絶えず彼を殴りつづけて来た官憲に対する復讐の方法は、彼には唯一つしかないと信じていた。そして、その唯一つの道を勇敢に突進した彼であった。 その戦術・・・<葉山嘉樹「乳色の靄」青空文庫>
  12. ・・・彼女は先天的な精神力によって階級のコムベンションを打破し、家族制度や過去の道徳に反抗している。彼女は自分一人の自由は或る程度まで完うし得た。然し、彼女はこれからどのように発展し、明日の女性に向ってどんな予言を与えるか? 次の時代に役立つどん・・・<宮本百合子「アンネット」青空文庫>
  13. ・・・彼女がよしそれに驚いたにしても 彼女の彼に対する無限な愛と、彼女自身の中の『先天的罪』とは快く其を宥すのだ。そしてそれが又彼女を暗黒的に喜ばすのだ。」 此は、人が快感を以て行なう寛裕と云う態度の中の、或点を考えさせるものではあるまい・・・<宮本百合子「黄銅時代の為」青空文庫>
  14. ・・・ 私は、実の自己と云うものは、一個の肉体に宿る多くの意志、感情、智の中で、生れ出た時既に宇宙の宏大無辺の精力の中から分けられた精力が、その三つの中のいずれかに宿って居る時に、その先天的にある精力を自己と云いたい。 そう云えば、世の人・・・<宮本百合子「大いなるもの」青空文庫>
  15. ・・・更に彼はこれらの先天的に犯罪型の頭蓋をもって生れ、何か犯罪をやって現に拘禁されている者の両親は、大抵揃っていず女親だけで、その女親も売笑婦が高率を占め、又その女たちはアルコール中毒にかかっているか、さもなければひどい酒呑みが多いと結論してい・・・<宮本百合子「花のたより」青空文庫>