せん‐にゅう〔‐ニフ〕【潜入】例文一覧 10件

  1. ・・・感動の潜入とでも云えばいいのですか。 何と云っても私を強く感動させるものは大きな芸術です。然し聖書の内容は畢竟凡ての芸術以上に私を動かします。芸術と宗教とを併説する私の態度が間違って居るのか、聖書を一箇の芸術とのみ見得ない私が間違っ・・・<有島武郎「『聖書』の権威」青空文庫>
  2. ・・・人目を憚るのだから、忍びに忍んで潜入するのだが、いや、どうも、我折れた根気のいい事は、朝早くでも、晩方でも、日が暮れたりといえどもで、夏の末のある夜などは、ままよ宿鳥なりと、占めようと、右の猟夫が夜中真暗な森をさまよううちに、青白い光りもの・・・<泉鏡花「神鷺之巻」青空文庫>
  3. ・・・忍術というのは明治になっては魔法妖術という意味に用いられたが、これは戦乱の世に敵状を知るべく潜入密偵するの術で、少しは印を結び咒を持する真言宗様の事をも用いたにもせよ、兵家の事であるのがその本来である。合気の術は剣客武芸者等の我が神威を以て・・・<幸田露伴「魔法修行者」青空文庫>
  4. ・・・物騒な代の富家大家は、家の内に上り下りを多くしたものであるが、それは勝手知らぬ者の潜入闖入を不利ならしむる設けであった。 幾間かを通って遂に物音一ツさせず奥深く進んだ。未だ灯火を見ないが、やがてフーンと好い香がした。沈では無いが、外国の・・・<幸田露伴「雪たたき」青空文庫>
  5. ・・・iness は、ある学者の説では炭水素連鎖の屈撓性、あるいは連鎖が界面に横臥しうる性質と関連しているとのことであるが、現在の場合でも連鎖が屈伸自在であればあるほど、金属の molecular な空隙に潜入してこれを充填するのに好都合であろう・・・<寺田寅彦「鐘に釁る」青空文庫>
  6. ・・・そして、いつぞやの早まわりで賞品としてもらった小型フォードにのりこみ、ミュンヘンに潜入し、危険をおかしてひとたびはすてた家に忍びこんだ。そして原稿を盗み出し、真夜中に、もう二度とみる希望のないその家を去った。          二・・・<宮本百合子「明日の知性」青空文庫>
  7. ・・・もしまた、意図せざる結果として、客観的には人類の進歩性を後へひっぱる権力に利益を与えることになったのならば、それは如何なる意識下の力――作家ジイドが好んで潜入し、格闘するところの無意識の力に作用されてであるのか。それらのあらましが究明されな・・・<宮本百合子「ジイドとそのソヴェト旅行記」青空文庫>
  8. ・・・ けれども、相当の人格を持った者の間には、夫婦の情愛が、もう一歩鎮り、叡智的になった友情が深く生活に潜入していると思います。妻の知識はいつも良人のそれよりは低いのが常態であり、常に、良人が上位から注ぐ思い遣り、労わり、一言に云えば人情に・・・<宮本百合子「男女交際より家庭生活へ」青空文庫>
  9. ・・・確信ある出処進退という風に理解すると、今回のオリンピックに関しては勿論、四年後のためにされている準備そのものの中に、主としてそういう抽象名詞を愛好する人の立場から見ても何か本質的にそれと撞着する観念が潜入しつつあることが感じられるのである。・・・<宮本百合子「日本の秋色」青空文庫>
  10. ・・・毛利基は宮本の関係した党内スパイ摘発事件のとき、スパイを潜入させその活動を指導するための主役の一人であった。はじめて保護観察所によばれたとき、この毛利が鉈豆煙管をさげて出てきて、「どうだね、悪いことをしたと思うかね。」と言った。そのとき・・・<宮本百合子「年譜」青空文庫>