せん‐にん【仙人/×僊人】例文一覧 30件

  1. ・・・偶、その仙人に遇ったと云う事を疑う者があれば、彼は、その時、老人に書いて貰った、四句の語を出して示すのである。この話を、久しい以前に、何かの本で見た作者は、遺憾ながら、それを、文字通りに記憶していない。そこで、大意を支那のものを翻訳したらし・・・<芥川竜之介「仙人」青空文庫>
  2. ・・・私は仙人になりたいのだから、そう云う所へ住みこませて下さい。」 番頭は呆気にとられたように、しばらくは口も利かずにいました。「番頭さん。聞えませんか? 私は仙人になりたいのだから、そう云う所へ住みこませて下さい。」「まことに御気・・・<芥川竜之介「仙人」青空文庫>
  3. ・・・あなたは道徳の高い仙人でしょう。仙人でなければ、一夜の内に私を天下第一の大金持にすることは出来ない筈です。どうか私の先生になって、不思議な仙術を教えて下さい」 老人は眉をひそめたまま、暫くは黙って、何事か考えているようでしたが、やがて又・・・<芥川竜之介「杜子春」青空文庫>
  4. ・・・ 書生はこういう言葉と一しょに、この美しい隣の女が仙人だったことに気づきました。しかしもうその時には、何か神々しい彼女の姿は忽ちどこかへ消えてしまいました。うらうらと春の日の照り渡った中に木樵りの爺さんを残したまま。……――昭和二年・・・<芥川竜之介「女仙」青空文庫>
  5. ・・・融通のきかないのをいいことにして仙人ぶってるおまえたちとは少し違うんだから。……ところで九頭竜が大部頭を縦にかしげ始めた。まあ来てごらんなさいといったら、それではすぐ上がりますといった。……ところで、これからがほんとうの計略になるんだが、…・・・<有島武郎「ドモ又の死」青空文庫>
  6. ・・・瞬間に人間の運命を照らす、仙人の黒き符のごとき電信の文字を司ろうと思うのです。 が、辞令も革鞄に封じました。受持の室の扉を開けるにも、鍵がなければなりません。 鍵は棄てたんです。 令嬢の袖の奥へ魂は納めました。 誓って私は革・・・<泉鏡花「革鞄の怪」青空文庫>
  7. ・・・早地峰の高仙人、願くは木の葉の褌を緊一番せよ。 さりながらかかる太平楽を並ぶるも、山の手ながら東京に棲むおかげなり。奥州……花巻より十余里の路上には、立場三ヶ所あり。その他はただ青き山と原野なり。人煙の稀少なること北海道石狩の平・・・<泉鏡花「遠野の奇聞」青空文庫>
  8. ・・・粂の仙人を倒だ、その白さったら、と消防夫らしい若い奴は怪しからん事を。――そこへ、両手で空を掴んで煙を掻分けるように、火事じゃ、と駆つけた居士が、(やあ、お谷、軒をそれ火が嘗と太鼓ぬけに上って、二階へ出て、縁に倒れたのを、――その時やっと女・・・<泉鏡花「半島一奇抄」青空文庫>
  9. ・・・ この時、久米の仙人を思出して、苦笑をしないものは、われらの中に多くはあるまい。 仁王の草鞋の船を落ちて、樹島は腰の土を払って立った。面はいつの間にか伸びている。「失礼ですが、ちょっと伺います――旅のものですが。」「は、」・・・<泉鏡花「夫人利生記」青空文庫>
  10. 火遁巻 千曲川に河童が棲んでいた昔の話である。 この河童の尻が、数え年二百歳か三百歳という未だうら若い青さに痩せていた頃、嘘八百と出鱈目仙人で狐狸かためた新手村では、信州にかくれもなき怪しげな年中行事が行われ、毎年大晦日の夜・・・<織田作之助「猿飛佐助」青空文庫>
  11. ・・・「あれは仙人です。」「仙人だって人だ。」「それじゃ叔父さんは仙人ですか。」「市に隠れた仙人のつもりでおるのだ。」 これで武はまたも撃退されてしまったのである。       下 さて石井翁は煙草一本すいおわ・・・<国木田独歩「二老人」青空文庫>
  12. ・・・関羽だッてまだ生きているよ。仙人にならなくッても生きているよ。虫だッて中々に死ぬものはない。この世界は活世界だぞ。いつでも勢力が漲ぎッている天地だ。太陽が鼾をかいて寐たためしはない。月も星も山も川もなんでも動いていないものはない。凡眼で静か・・・<幸田露伴「ねじくり博士」青空文庫>
  13. ・・・こんな長閑気な仙人じみた閑遊の間にも、危険は伏在しているものかと、今更ながら呆れざるを得なかった。 ペンペン草の返礼にあれを喫べさせられては、と土耳舌帽氏も恐れ入った。人々は大笑いに笑い、自分も笑ったが、自分の慙入った感情は、洒々落々た・・・<幸田露伴「野道」青空文庫>
  14. ・・・ 久米の仙人に至って、映画もニコニコものを出すに至った。仙人は建築が上手で、弘法大師なども初は久米様のいた寺で勉強した位である、なかなかの魔法使いだったから、雲ぐらいには乗ったろうが、洗濯女の方が魔法が一段上だったので、負けて落第生とな・・・<幸田露伴「魔法修行者」青空文庫>
  15. ・・・画の本でもくれればいいのに、こんな仙人の本サ。」「仙人の本はよかった。」と、私も吹き出した。「これはとうさんでも読むにちょうどいい。」「とうさんだって、まだ仙人には早いよ。」「しかしお餞別と思えばありがたい。きょうは番町でい・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  16. ・・・君は、眠っちゃったじゃないか。だらしないね。」「眠った? 僕が?」「そうさ。可哀そうなアベルの話を聞かせているうちに、君は、ぐうぐう眠っちゃったじゃないか。君は、仙人みたいだったぞ。」「まさか。」私は淋しく笑った。「ゆうべから、・・・<太宰治「乞食学生」青空文庫>
  17. ・・・資本主義的経済社会に住んでいることが裏切りなら、闘士にはどんな仙人が成るのだ。そんな言葉こそウルトラというものだ。小児病というものだ。一のプロレタリアアトへの貢献、それで沢山。その一が尊いのだ。その一だけの為に僕たちは頑張って生きていなけれ・・・<太宰治「葉」青空文庫>
  18. ・・・そんな風であるから、ともかくも彼が教育という事に無関心な仙人肌でない事は想像される。 アインシュタインの考えでは、若い人の自然現象に関する洞察の眼を開けるという事が最も大切な事であるから、従って実科教育を十分に与えるために、古典的な語学・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  19. ・・・巨人の掌上でもだえる佳姫や、徳利から出て来る仙人の映画などはかくして得られるのである。このようにカメラの距離の調節によって尺度の調節ができるのみならず、また、カメラの角度によって異常なパースペクティーヴを表現し、それによって平凡な世界を不思・・・<寺田寅彦「映画の世界像」青空文庫>
  20. ・・・この傾向がどこまでも続いたら、おしまいには昔話の仙人のように雲に駕して山から山を飛び歩けそうな気がする。仙人の話は存外こんな想像からも生まれ得たのである。 碓氷峠を下って関東平野にかかると今さらに景色の相違が目に立つ。落葉松、白樺、厚朴・・・<寺田寅彦「軽井沢」青空文庫>
  21. ・・・交通の不便な昔は、山の中に仙人がいると思っておったくらいだから、江戸には漱石といって仙人ではないが、まあ仙人に近い人間がいるそうだぐらいの評判で持ち切って下されば私もはなはだ満足の至りであったろうが、今日汽車電話の世の中ではすでに仙人そのも・・・<夏目漱石「文芸と道徳」青空文庫>
  22. ・・・気高いということは富士山や御釈迦様や仙人などを描いて、それで気高いという訳じゃない。仮令馬を描いても気高い。猫をかいたら――なお気高い。草木禽獣、どんな小さな物を描いても、どんなインシグニフィカントな物を描いても、気高いものはいくらもありま・・・<夏目漱石「模倣と独立」青空文庫>
  23. ・・・ 僕の天性の我がまま気儘も、これに輪をかけて自分を洞窟の仙人にした。人と人との交際ということは、所詮相互の自己抑制と、利害の妥協関係の上に成立する。ところで僕のような我がまま者には、自己を抑制することが出来ない上に、利害交換の妥協という・・・<萩原朔太郎「僕の孤独癖について」青空文庫>
  24. ・・・きほどにますます人間世界の事を忘却して、ひそかにこれを軽蔑するがゆえに、浮世の人もまた学者とともに語るを厭い、工業にも商売にもこれとともに事をともにせんとするものとては一人もなく、ただ学者と聞けば例の仙人なりと認めて、ただ外面にこれを尊敬す・・・<福沢諭吉「慶応義塾学生諸氏に告ぐ」青空文庫>
  25. ・・・なお正直にも彼は銭を多く貰いし時の思いがけなきうれしさをも白状せり。仙人のごとき仏のごとき子供のごとき神のごとき曙覧は余は理想界においてこれを見る、現実界の人間としてほとんど承認するあたわず。彼の心や無垢清浄、彼の歌や玲瓏透徹。 貧、か・・・<正岡子規「曙覧の歌」青空文庫>
  26. ・・・東の仙人峠から、遠野を通り土沢を過ぎ、北上山地を横截って来る冷たい猿ヶ石川の、北上川への落合から、少し下流の西岸でした。 イギリス海岸には、青白い凝灰質の泥岩が、川に沿ってずいぶん広く露出し、その南のはじに立ちますと、北のはずれに居る人・・・<宮沢賢治「イギリス海岸」青空文庫>
  27. ・・・ 下草はみじかくて奇麗でまるで仙人たちが碁でもうつ処のように見えました。 ところが次の日虔十は納屋で虫喰い大豆を拾っていましたら林の方でそれはそれは大さわぎが聞えました。 あっちでもこっちでも号令をかける声ラッパのまね、足ぶみの・・・<宮沢賢治「虔十公園林」青空文庫>
  28. ・・・お伽話というものは、例えば巖谷小波がこの正月にラジオで放送したああいう山羊の仙人というような話は、子供の話としてソヴェトにはないわけである。何故ないかというと、そういう風な全然子供自身が大人から聞かなければ知らないような、そういう幻想、それ・・・<宮本百合子「ソヴェト・ロシアの素顔」青空文庫>
  29. ・・・君だの、あの騾馬を手に入れて喜んだ司令官の爺いさんなんぞは、仙人だと思ったよ。己は騎兵科で、こんな服を着て徒歩をするのはつらかったが、これがあれば、もうてくてく歩きはしなくっても好いと云って、ころころしていた司令官も、随分好人物だったね。あ・・・<森鴎外「鼠坂」青空文庫>
  30. ・・・隠者仙人は人生と没交渉なると同時に社会の人として価値がない。一己の心霊の満足は目的でない。霊水に凡俗を浴せしめ凡界を洗うの信念が無ければ仙人は鶴と類を同じゅうせる生物に過ぎない。 真と義と愛と荘とに対する絶対の執着即神の憧憬と悪の憎悪は・・・<和辻哲郎「霊的本能主義」青空文庫>