ぜん‐めつ【全滅】例文一覧 25件

  1. ・・・ 自分はこの全滅的荒廃の跡を見て何ら悔恨の念も無く不思議と平然たるものであった。自分の家という感じがなく自分の物という感じも無い。むしろ自然の暴力が、いかにもきびきびと残酷に、物を破り人を苦しめた事を痛快に感じた。やがて自分は路傍の人と・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  2. ・・・「いや、僕の隊は最初の戦争に全滅してしもたんや。――さて、これからが話の本文に這入るのやて――」「まア、一息つき給え」と、僕は友人と盃の交換をした。酔いもまわったのであろう、友人は、気質に似合わず、非常にいい気持ちの様子で、にこにこ・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  3. ・・・ 浅草は今では活動写真館が軒を並べてイルミネーションを輝かし、地震で全滅しても忽ち復興し、十二階が崩壊しても階下に巣喰った白首は依然隠顕出没して災後の新らしい都会の最も低級な享楽を提供している。が、地震では真先きに亡ぼされたが、維新の破・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  4. ・・・扇谷定正が水軍全滅し僅かに身を以て遁れてもなお陸上で追い詰められ、漸く助友に助けられて河鯉へ落ち行く条にて、「其馬をしも船に乗せて隊兵――」という丁の終りまではシドロモドロながらも自筆であるが、その次の丁からは馬琴のよめの宗伯未亡人おミチの・・・<内田魯庵「八犬伝談余」青空文庫>
  5. ・・・そして、ほとんど、町の大半は全滅して、また負傷した人がたくさんありました。 この騒ぎに、あほう鳥の行方が、わからなくなりました。男はどんなにか、そのことを悲しんだでしょう。彼は、焼け跡に立って、終日、あほう鳥の帰ってくるのを待っていまし・・・<小川未明「あほう鳥の鳴く日」青空文庫>
  6.  今年の夏になってからのことでした。私は庭のありを全滅してしまわなければならぬと考えました。日ごろから、ありは多くの虫のなかで、もっとも利口であり、また組織的な生活を営んでいる、感心な虫であることは、知っていましたが、木や、竹に、油虫を・・・<小川未明「近頃感じたこと」青空文庫>
  7. ・・・また、威海衛の大攻撃と支那北洋艦隊の全滅を通信するにあたっては、「余は、今躍る心を抑へて、今日一日の事を誌さんとす」と、はじめている。これによって見ても、独歩が、如何に当時のブルジョアジーの軍国主義的傾向を、そのまゝ反映していたかゞ伺える。・・・<黒島伝治「明治の戦争文学」青空文庫>
  8. ・・・米国艦隊全滅す。帝国政府声明。全身が震えて恥ずかしい程だった。みんなに感謝したかった。私が市場のラジオの前に、じっと立ちつくしていたら、二、三人の女のひとが、聞いて行きましょうと言いながら私のまわりに集って来た。二、三人が、四、五人になり、・・・<太宰治「十二月八日」青空文庫>
  9. ・・・中の屋敷は全滅している。焼跡に義妹が、顔を真黒にして立っている。「兄さん、子供たちは?」「無事だ。」「どこにいるの?」「学校だ。」「おにぎりあるわよ。ただもう夢中で歩いて、食料をもらって来たわ。」「ありがとう。」・・・<太宰治「薄明」青空文庫>
  10. ・・・村はおかげで全滅をのがれ、あくる年からまたうるおいはじめたのである。 村のひとたちは、それでも二三年のあいだは太郎をほめていた。二三年がすぎると忘れてしまった。庄屋の阿呆様とは太郎の名前であった。太郎は毎日のように蔵の中にはいって惣助の・・・<太宰治「ロマネスク」青空文庫>
  11. ・・・変だと思ってよく調べてみると、星の世界には悪い黴菌がいないために黴菌に対する抗毒素を持合わせない彼の星の住民は、地球上の数々の黴菌に会って一たまりもなく全滅した。こういう架空小説を書いた人がある。 あまり理想的に完全なマスクをかけて歩い・・・<寺田寅彦「変った話」青空文庫>
  12. ・・・ 静岡へ着いて見ると、全滅したはずの市街は一見したところ何事もなかったように見える。停車場前の百貨店の食堂の窓から駿河湾の眺望と涼風を享楽しながら食事をしている市民達の顔にも非常時らしい緊張は見られなかった。屋上から見渡すと、なるほど所・・・<寺田寅彦「静岡地震被害見学記」青空文庫>
  13. ・・・ また一例を挙げると、三月十六日パレスタインで強風が砂塵を立てているに乗じてトルコの駱駝隊を襲撃し全滅させたという記事もある。その他各戦線にわたって天候のために利を得また損害を受けた実例は枚挙に暇ないほどある。ことに飛行隊の活動などは著・・・<寺田寅彦「戦争と気象学」青空文庫>
  14. ・・・があるという事は、すべての人間の構成した学説に共通なほとんど本質的な事であって、しかもそれがあるために直ちにその学説が全滅するというような簡単なものとは限らないし、むしろそういう点を認める事がその学説の補填に対する階段と見なすべき場合の多い・・・<寺田寅彦「相対性原理側面観」青空文庫>
  15. ・・・世界の人間が全滅しても天然の事象はそのままに存在すると仮定する。これがすべての物理的科学の基礎となる第一の出発点であるからである。この意味ですべての科学者は幼稚な実在派である。科学者でも外界の実在を疑おうと思えば疑われぬ事はないが多くの物理・・・<寺田寅彦「物理学と感覚」青空文庫>
  16. ・・・わたくしはただ平和が得たいばかりに、自己の個人性を全滅させました。それが大失錯で、夫の要求は次第に大きくなるばかりでございます。今日のところでは、わたくしは主人に屈従している賄方のようなものでございます。そう云う身の上は余り幸福ではございま・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  17. ・・・砲弾にて破損せる古き穀倉の内部、辛くも全滅を免かれしバナナン軍団、マルトン原の臨時幕営。右手より曹長先頭にて兵士一、二、三、四、五、登場、一列四壁に沿いて行進。曹長「一時半なのにどうしたのだろう。バナナン大将・・・<宮沢賢治「饑餓陣営」青空文庫>
  18. ・・・「今夜は、毒蛾も全滅だな。」誰か向うで云いました。「さあどうかねえ。」私のとこのアーティストは、私の頭に、金口の瓶から香水をかけながら答えました。 それからアーティストは、私の顔をも一度よく拭って、それから戸口の方をふり向いて、・・・<宮沢賢治「ポラーノの広場」青空文庫>
  19. ・・・台湾旅客機エンボイ機が台北の北方七星山麓で遭難して八名の乗客操縦者全滅したのは三月十二日ごろのことであった。「日航」は当日の暴風と濃霧によって進路測定に誤差が生じたことを遭難の原因として詳細に地理的に報告した。そして「民間航空発展の貴い人柱・・・<宮本百合子「市民の生活と科学」青空文庫>
  20. ・・・ ○本所相生署は全滅。六日夜十一時頃、基ちゃんが門で張番をして居ると相生署の生きのこりの巡査が来、被服廠跡の三千の焼死体のとりかたづけのために、三十六時間勤務十二時間休息、一日に一つの玄米の握り飯、で働せられて居る由。いやでもそれをしな・・・<宮本百合子「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」青空文庫>
  21. ・・・智謀にも長け、情に篤く、大胆な決断力をも蔵していたであろうが、例えばバルチック艦隊全滅の勝利にしろ戦争は独り角力でない以上、対手かたの条件との相対的な関係というものが大きい作用をしている。 あの時分のロシアは、ヨーロッパの眠れる熊と呼ば・・・<宮本百合子「花のたより」青空文庫>
  22. ・・・震災で演劇雑誌が全滅したので、劇作家協会が主体となり、新潮社から『演劇新潮』を発行。推されて一年間その編輯主任となる。「熊谷蓮生坊」「大磯がよい」「女中の病気」「スサノヲの命」。 一九二五年。松竹キネマ製作の映画「坂崎出羽守」は戯曲「坂・・・<宮本百合子「山本有三氏の境地」青空文庫>
  23. ・・・ 私共がききかえす間もなく、「一日に大地震があった後に大火災で、全滅だと云うこっちゃが」 彼は、立ったまま、持って来た号外を声高に読み始めた。この時初めて、私共は、前日の地震が東京からの余波であったことを知った。号外によれば、一・・・<宮本百合子「私の覚え書」青空文庫>
  24. ・・・もう海軍力はどこの海面のも全滅している噂の拡がっているときだった。レイテ戦は総敗北、海軍の大本山、戦艦大和も撃沈された風説が流れていた。 珍らしいパン附の食事を終ってから、梶と栖方は、中庭の広い芝生へ降りて東郷神社と小額のある祠の前の芝・・・<横光利一「微笑」青空文庫>
  25. ・・・こういう場合には、八〇%が残っていても、全滅と変わりはない。 以上の四類型は国を滅ぼす大将の類型であるが、それによって理想の大将の類型が逆に押し出されてくる。それは賢明な、道義的性格のしっかりとした、仁慈に富んだ人物である。そこには古来・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>