せん‐や【先夜】例文一覧 16件

  1. ・・・出しては読み出しては読み、差し上げる手紙を書く料簡もなく、昨夜一ばん埒もなく過ごしました。先夜はほんとに失礼いたしました。ただ悲しくて泣いた事を夢のように覚えてるばかり、ほかの事は何も覚えていません。あとであんまり失礼であったと思いました。・・・<伊藤左千夫「春の潮」青空文庫>
  2. ・・・――では、先夜の僕がゆうべの青木になったのだ。また、うわばみの赤い舌がぺろぺろ僕の目の前に見えるようだ。僕はこれを胸に押さえて平気を装い、「それがつらいのか?」「どうしても、疑わしいッて聴かないんだもの、癪にさわったから、みんな言っ・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  3. ・・・ 先夜鷹見の宅で、樋口の事を話した時、鷹見が突然、「樋口は何を勉強していたのかね」と二人に問いました。記憶のいい上田も小首を傾けて、「そうサ、何を読んでいたかしらん、まさかまるきり遊んでもいなかったろうが」と考えていましたが、・・・<国木田独歩「あの時分」青空文庫>
  4. ・・・ぐと小生の事に思し召され候わば大違いに候、妻のことに候、あの言葉少なき女が貞夫でき候て以来急に口数多く相成り近来はますますはげしく候、そしてそのおしゃべりの対手が貞夫というに至っては実に滑稽にござ候、先夜も次の間にて貞夫を相手に何かわからぬ・・・<国木田独歩「初孫」青空文庫>
  5. ・・・との老先生の先夜の言葉を今更のように怪しゅう思って、彼は途々この一言を胸に幾度か繰返した、そして一念端なくもその夜の先生の怒罵に触れると急に足が縮むよう思った。 然し「呼びに来た」のである。不思議の力ありて彼を前より招き後より推し忽ち彼・・・<国木田独歩「富岡先生」青空文庫>
  6. ・・・ 娘さんは、その青年とあっさり結婚する気でいるようであった。 先夜、私は大酒を飲んだ。いや、大酒を飲むのは、毎夜の事であって、なにも珍らしい事ではないけれども、その日、仕事場からの帰りに、駅のところで久し振りの友人と逢い、さっそく私・・・<太宰治「朝」青空文庫>
  7. ・・・』先夜ひそかに如上の文章を読みかえしてみて、おのが思念の風貌、十春秋、ほとんど変っていないことを知るに及んで呆然たり、いや、いや、十春秋一日の如く変らぬわが眉間の沈痛の色に、今更ながらうんざりしたのである。わが名は安易の敵、有頂天の小姑、あ・・・<太宰治「喝采」青空文庫>
  8. ・・・私は、先夜、先生の千人風呂という作品を拝誦させていただきましたが、やはり興奮いたしまして、失礼ながらお手紙さしあげた筈でございますが。 ――あれは君、はずかしいものだよ。 ――しつれいいたしました。私の記憶ちがいでございました。千人・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  9. ・・・永野、吉田両君には先夜会った。神経をたかぶらせないでお身お大事に勉強してほしい。社の余暇を盗んで書いたので意を尽せないところが多いだろうが、折り返し、御返事をまちます。武蔵野新聞社、学芸部、長沢伝六。太宰治様。追伸、尚原稿書き直して戴ければ・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  10. ・・・ぼんやり眺めているうちに、柳町、先夜の望富閣を思い出した。近い。たしかにあの辺だ。私はすぐさま、どてらに羽織をひっかけ、毛糸の襟巻ぐるぐる首にまいて、表に飛び出した。甲府駅のまえまで、十五、六丁を一気に走ったら、もう、流石にぶったおれそうに・・・<太宰治「新樹の言葉」青空文庫>
  11. ・・・要するに、私の最も好かない種属の容色であった。先夜の酔眼には、も少しましなひとに見えたのだが、いま、しらふでまともに見て、さすがにうんざりしたのである。 私はただやたらにコップ酒をあおり、そうして、おもに、おでんやのおかみや女中を相手に・・・<太宰治「父」青空文庫>
  12.  私は先夜、眠られず、また、何の本も読みたくなくて、ある雑誌に載っていたヴァレリイの写真だけを一時間も、眺めていた。なんという悲しい顔をしているひとだろう、切株、接穂、淘汰、手入れ、その株を切って、また接穂、淘汰、手入れ、し・・・<太宰治「豊島與志雄著『高尾ざんげ』解説」青空文庫>
  13. ・・・ 先夜、あの新聞の記事読んで、あなたの淋しさ思って三時間ほど、ひとりで蚊帳の中で泣いたものだ。一策なし、一計なし、純粋に、君のくるしみに、涙ながした。一銭の報酬いらぬ。その晩、あなたに、強くなってもらいたく、あなたの純潔信じて居るものの・・・<太宰治「二十世紀旗手」青空文庫>
  14. ・・・ うまかったな、網野さんはなかなかうまい、と百花園のお成座敷の椽でお茶を飲みつつ更に先夜の笑いを新にしたのだが、その時網野さんのユーモアということが、作品にもつづいて私の頭に浮んで来た。「皮と身と離るゝ体我持てば利殖の本も買ふ気にな・・・<宮本百合子「九月の或る日」青空文庫>
  15. ・・・もう少し先刻来たものと見え、先夜の連れと、一つの籠をとり巻いていた。紅色帽の女が、何か云いながら、小さい見栄えのしない花束を二つずつ少女の両手に持たせた。そして、肩を押すようにして人通りの方に行かせた。私は、興味を持って、少女を見守った。僅・・・<宮本百合子「粗末な花束」青空文庫>
  16. ・・・ つい先夜も、玉の井あたりの小路をうろついていた若いものたちが二百何人か説諭をうけた写真が出ていた。そういう忠告も、勿論意味がある。けれども、忠告を与えている人々は、例えばテニス・コートなどが、工場の若い人たちのために夕刻から夜へ開放さ・・・<宮本百合子「若きいのちを」青空文庫>