そう‐おん〔サウ‐〕【騒音】例文一覧 24件

  1. ・・・たとえ、両国橋、新大橋、永代橋と、河口に近づくに従って、川の水は、著しく暖潮の深藍色を交えながら、騒音と煙塵とにみちた空気の下に、白くただれた目をぎらぎらとブリキのように反射して、石炭を積んだ達磨船や白ペンキのはげた古風な汽船をものうげにゆ・・・<芥川竜之介「大川の水」青空文庫>
  2. ・・・譚の言葉は僕の耳に唯一つづりの騒音だった。しかし彼の指さす通り、両岸の風景へ目をやるのは勿論僕にも不快ではなかった。「この三角洲は橘洲と言ってね。………」「ああ、鳶が鳴いている。」「鳶が?………うん、鳶も沢山いる。そら、いつか張・・・<芥川竜之介「湖南の扇」青空文庫>
  3. ・・・近代の忙だしい騒音や行き塞った苦悶を描いた文芸の鑑賞に馴れた眼で見るとまるで夢をみるような心地がするが、さすがにアレだけの人気を買った話上手な熟練と、別してドッシリした重味のある力強さを感ぜしめるは古今独歩である。       二 ・・・<内田魯庵「八犬伝談余」青空文庫>
  4. ・・・耳にもその騒音が伝わって来るように思えた。 葉書へいたずら書きをした彼の気持も、その変てこなむず痒さから来ているのだった。     雨 八月も終わりになった。 信子は明日市の学校の寄宿舎へ帰るらしかった。指の傷が癒っ・・・<梶井基次郎「城のある町にて」青空文庫>
  5. ・・・隣の病室でも、やかましく呻きわめく騒音が上りだした。 栗本は、何か重要なことを忘れてきたようで、焦点のきまらない方に注意を奪われがちだった。すべてが紙一重を距てた向うで行われているような気がした。顛覆した列車の窓からとび出た時の、石のよ・・・<黒島伝治「氷河」青空文庫>
  6. ・・・ 私の隣の家では、朝から夜中まで、ラジオをかけっぱなしで、甚だ、うるさく、私は、自分の小説の不出来を、そのせいだと思っていたのだが、それは間違いで、此の騒音の障害をこそ私の芸術の名誉ある踏切台としなければならなかったのである。ラジオの騒・・・<太宰治「鬱屈禍」青空文庫>
  7. ・・・少なくもわれわれ目明きの世界においては、一つの雑音あるいは騒音の聴覚によって喚起される心像は非常に多義的なものである。たとえば風の音は衣ずれの音に似通い、ため息の声にも通じる。タイプライターの音は機関銃にも、鉄工場のリベットハマーの音にも類・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  8. ・・・でも窓下の学生のセレネードは別として、露台のビア・ガルテンでおおぜいの大学生の合唱があって、おなじみのエルゴ・ヴィヴァームスの歌とザラマンダ・ライベンの騒音がラインの谷を越えて向こうの丘にこだまする。 ロシアでもドイツでも、男どうしがお・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  9. ・・・よく注意してみると、窓の外の街上を走る電車の騒音の中に含まれているどんどんというような音を自分の耳が抽出し拾い上げて、それを眼前の視像の中に都合よく投げ込んでいたものらしい。 同様に笛を吹く場面でもかすかに笛の音らしいものが聞かれた。こ・・・<寺田寅彦「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」青空文庫>
  10. ・・・哀れな姫君の寝姿がピアニシモで消えると同時に、グヮーッとスフォルザンドーで朗らかなパリの騒音を暗示する音楽が大波のようにわき上がり、スクリーンにはパリの町の全景が映出される。ここの気分の急角度の転換もよくできている。 モーリスがシャトー・・・<寺田寅彦「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」青空文庫>
  11. ・・・太平の夢はこれらのエンジンの騒音に攪乱されてしまったのである。 交通規則や国際間の盟約が履行されている間はまだまだ安心であろうが、そういうものが頼みにならない日がいつなんどき来るかもしれない。その日が来るとこれらの機械的鳥獣の自由な活動・・・<寺田寅彦「からすうりの花と蛾」青空文庫>
  12. ・・・太平の夢はこれらのエンジンの騒音に攪乱されてしまったのである。 交通規則や国際間の盟約が履行されている間はまだまだ安心であろうが、そういうものが頼みにならない日がいつ何時来るかもしれない。その日が来るとこれらの機械的鳥獣の自由な活動が始・・・<寺田寅彦「烏瓜の花と蛾」青空文庫>
  13. ・・・御院殿坂に鳴く蜩の声や邸後を通過する列車の騒音を聞くような心持がする。<寺田寅彦「子規の追憶」青空文庫>
  14. ・・・という騒音の中で、特別な一つの種類であるところのさかな屋の盤台の音を瞬時に識別する能力はやはり驚くべきものである。 近代の物質的科学は人間の感官を追放することを第一義と心得て進行して来た。それはそれで結構である。しかしあらゆる現代科学の・・・<寺田寅彦「試験管」青空文庫>
  15. ・・・これを売っている露店商は特製特大の赤ん坊の頭ぐらいのを空に向けてジャンボンジャンボンと盛んに不思議な騒音を空中に飛散させて顧客を呼んだものである。実に無意味なおもちゃであるがしかしハーモニカやピッコロにはない俳味といったようなものがあり、そ・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  16. ・・・ただ拡声器からガヤガヤという騒音が流れだしている中に交じって早口にせき込んでしゃべっているアナウンサーの声が聞こえるだけであった。聞いてみるとそれは早慶野球戦の放送だというのであった。 彼はなんだかひどくさびしい心持ちがした。自分の・・・<寺田寅彦「野球時代」青空文庫>
  17. ・・・しかし歳月の過るに従い、繁激なる近世的都市の騒音と燈光とは全くこの哀調を滅してしまったのである。生活の音調が変化したのである。わたくしは三十年前の東京には江戸時代の生活の音調と同じきものが残っていた。そして、その最後の余韻が吉原の遊里におい・・・<永井荷風「里の今昔」青空文庫>
  18. ・・・鉄工場に働いたり、あるいは酸素打鋲器をあつかっている労働者、製菓会社のチョコレート乾燥場などの絶え間ない鼓膜が痛むような騒音と闘って働いている男女、独特な聴神経疲労を感じている電話交換手などにとって、ある音楽音はどういう反応をひき起すか、ど・・・<宮本百合子「芸術が必要とする科学」青空文庫>
  19. ・・・暑気が加わると、騒音はなおこたえた。私は困ったと思いながら、それなり祖母の埋骨式に旅立ったのであった。 フダーヤは、別に何とも云ってはいなかったのに、わざわざ廻り道をし、僅かなつてで家を見つけてくれた。彼女の心持や、新しい一夏をすごす家・・・<宮本百合子「この夏」青空文庫>
  20. ・・・ その恐ろしい騒音は、地上の何処へ行っても聴えるものではございますまいか。 其と同時に、此の騒音の最中から、何等の諧調を求めて、微かながら認め得た一筋の音律を、急がずうまず辿って行く、僅かながら、高く澄んだ金属性の調音も亦、天の果か・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  21. ・・・ 空気の裡には交響楽のクレッセンドウのように都会の騒音が高まる。遽しく鳴らす電車のベルの音が、次第に濃くなる夕闇に閉じ罩められたように響き出すと、私の歩調は自ら速めになった。もう私の囲りでは、誰一人呑気に飾窓などを眺めている者はない。何・・・<宮本百合子「小景」青空文庫>
  22. ・・・ 地殻から立ちのぼるあらゆる騒音や楽音、芳香と穢臭とは、皆その雲と空との間にほんのりと立ちこめて、コロコロ、コロコロと楽しそうにころがりながら、春の太陽の囲りを運行する自分達の住家を、いつも包んでいるように思われる。 二本の槲の古木・・・<宮本百合子「地は饒なり」青空文庫>
  23. ・・・無数の下駄の歯の音が日本的騒音で石の床から硝子の円天井へ反響した。 エスカレータアで投げ上げられた群集は、大抵建物の拱廊から下を覗いた。八階から段段段、資本主義商業の色さまざまな断面図。 ――まだここから飛び降りた奴あねえ。「も・・・<宮本百合子「未開な風景」青空文庫>
  24. ・・・しかし、最大の形容詞と最高の表現がくりかえしくりかえし、下らない落語の中にまで交って日夜反覆されると、それは自然、言葉としての生きた命を失って、ただのラジオの声或は騒音になってしまう。騒音には誰しもあきているのだから、調和のある音楽の音の方・・・<宮本百合子「ラジオ時評」青空文庫>